映画『希望の国』の概要:2012年公開の日本映画。園子温が脚本・監督を務めた作品で、2011年に起こった大地震により今後の将来の生き方を選択させられたある家族の物語を淡々と描いているヒューマンドラマ。
映画『希望の国』 作品情報
- 製作年:2012年
- 上映時間:133分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:園子温
- キャスト:夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵 etc
映画『希望の国』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『希望の国』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『希望の国』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『希望の国』 あらすじ【起・承】
2011年起こった大地震。
それは日本の長島県で起こった。
問題は地震の揺れよりも、同県で事故を起こした原発である。
この事故のせいで放射能が漏れ出し、半径20キロ圏内が避難区域に指定されてしまう。
自分の庭が20キロ圏内の境界線になった酪農家の小野家。
向かいの家は避難しているのに、自分達は境界線よりも外だからと家に残ることになった。
小野は痴呆症の妻と、洋一という息子夫婦と暮らしている。
しかし東日本大震災の例もあることから、「息子達には未来があるのだから」と放射能の本や計測器を渡し引っ越しさせることに決める。
長島から離れた息子夫婦。
洋一は慣れない中、土木作業員としての仕事に就くことが出来た。
そして妻のいずみは念願の子供を授かった。
全てがうまくいっていた二人だったが妊婦検診の日、移り住んだこの場所でもセシウムが出ていることを聞いてしまい悩んでしまう。
いずみが出した結論。
それは防護服で暮らすという極論の解決法だった。
このことは小さな街ではあっという間に噂になり、洋一も職場の同僚からからかわれた。
心配になった洋一がいずみの産婦人科に相談すると、いずみは放射能恐怖症であると告げられる。
映画『希望の国』 結末・ラスト(ネタバレ)
事態は深刻化した。
長島に住み続けている洋一の両親達の家にも、遂に避難勧告がでた。
しかし昔気質の小野は、今更、他の場所には行きたくないと頑なに断る。
そんな中行政の説得に応じない小野に、可愛がっている牛達の殺処分命令が出た。
このままではもう未来もない。
そう感じた小野は自分の猟銃で牛を殺し、庭の手入れをしている妻に「一緒に死のうか」と問う。
妻は頷いた。
銃声が鳴り響いた後、主を亡くした住まいと二人が大事にしていた先祖代々の大木にも火がつき、燃えてしまった。
洋一夫婦は、とにかく長島県から遠くに移動しある海辺を散歩している。
良く晴れた日で全てが上手くいっているように思えた。
しかし洋一の持っていた放射能計測器のアラームが鳴った。
近づく洋一にいずみは「愛があれば大丈夫だ」と抱きしめるのだった。
映画『希望の国』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『希望の国』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
監督の理想の押し付け
本作品は架空の日本にある架空の県を舞台にしている。
長島県という場所で起こった大きな地震のせいで問題になる原発。
それに苦しむ住民達を描いている。
我々の記憶にも新しい2011年に起きた東関東大震災は劇中では既に起こっており、モデルにしつつも新たな地震被害という視点から描いているのもリアルな感じがする。
しかし監督の映画に対する理想像や、地震のせいで起こる人間の精神状態の崩壊などは、気持ちが悪くなるくらい非日常的なシーンが多い。
もちろん、本当にそのくらい壮絶なのだろう。
実際に酷く苦しんでいる人もいる。
作品にしてそれを露にすることに何の意味があるのかわからないし、こんなに精神状態がおかくしなってしまうと言わんばかりの描写もあまり好みではない。
良い意味でも悪い意味でも園子温の理想や考えを、観客そっちのけで押し付けている作品である。
幽霊シーンで突然のホラーテイスト
本作品に登場する一家の中に、向かいに住んでいる家族がいる。
彼らはギリギリ避難地域に設定されたため体育館で避難生活をしているのだが、この息子の彼女の親がどこの避難所にもいない。
息子は協力してあちこち一緒に捜す。
そしてやはり見つからず、自宅があった場所にいくとそこにはビートルズのCDを探している子供の姿が。
しかし振り向くと次にその子達は消えていた。
本編には何の説明もないが、恐らく幽霊。
しかしこの子供の出現で、リアルヒューマンな作風から一気にダークファンタジーに早変わりしてしまう。
何のために登場させたのか意味不明だし、気持ちの悪いシーンでもあり残念だった。
大きな震災を何度も経験している日本人にとって、こう言った震災をテーマにした作品は賛否あると思います。しかし、今作にリアリティを感じることはあまり無く、共感は出来ませんでした。
被災した方の多くが前を向いて頑張っている中で、先の見えない戦いに疲弊して死を選んだり、放射線に怯え、普通の生活ができなくなってしまう人もいるのでしょう。もちろん実際にそう言った苦しみを抱えている方もいると思います。しかし、今作に登場する彼らの演技は普通とは少しかけ離れていて、あくまでも映画の中のお話と現実と切り離して見るべき作品な気がします。(女性 30代)
本作は、2011年に日本で起こった東日本大震災において、将来の生き方を選択させられた一家の生き様と尊厳を描いた日本のヒューマンドラマ作品。
東日本大震災の流れを追った、非常に現実を直視した内容となっていて、当時の記憶が蘇る。被災者の苦しみや葛藤は計り知れないものだと改めて考えさせられた。
ラストの最期の場所を決めるシーンは本当に重かった。それは、ここが希望の国であってほしいというメッセージ性なのだと思った。(女性 20代)
東日本大震災の翌年によく公開できたなと、感心しました。フィクションではありますが、当時福島にいた人達の気持ちが偲ばれます。差別や放射能の恐怖に、どれほど苦しんだことでしょう。過剰な放射能対策をしている妻、いずみが印象深いです。常軌を逸していると他人に笑われようが、お腹の中の子を守るため必死なんです。そして、老夫婦が選択した悲しい最期は、園子温らしいクライマックスとなりました。物悲しさ溢れる内容で『希望の国』どころか、諦念の連続でした。(女性 30代)
映画『希望の国』 まとめ
この映画はリアルでドキュメンタリーチックに描かれた、ファンタジーである。
どこにでもありそうな話のくせに、話に入り込めない。
登場人物たちに全く共感出来ないのだ。
キャラクター設定などはもちろん面白く、ファンタジーとして見れば楽しめる。
しかし地震のリアリズムを求めるとしっくりこない。
見所は役者の演技の上手さだろう。
それ以外は取り立てて普通の作品であった。
園子温だからと期待してはいけない。
彼は猟奇的な描写は上手いが、実はノーマルな人間の心理描写は上手くないのかもしれない。
何かが足りないという残念な印象を受けた。
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