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映画『恋人たち(2015)』あらすじネタバレ結末と感想

映画『恋人たち(2015)』の概要:前作「ぐるりのこと。」で国内の映画祭を総なめにした橋口亮輔監督の最新作。自らの体験をベースに作り上げたオリジナル脚本のこの映画は、三人の現代社会のマイノリティを主人公に、様々な形の切実な愛を描く不朽の名作です。

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映画『恋人たち』 作品情報

恋人たち

  • 製作年:2015年
  • 上映時間:140分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:橋口亮輔
  • キャスト:篠原篤、成嶋瞳子、池田良、安藤玉恵 etc

映画『恋人たち』 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★☆☆
  • 設定:★★★★☆

映画『恋人たち』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『恋人たち(2015)』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『恋人たち』 あらすじ【起・承】

橋梁点検の職人アツシは、正確な耳を仲間からも信頼される寡黙な男です。しかし彼には、通り魔事件で妻を失ったという暗い過去がありました。
彼はその事件以来、通り魔事件の犯人を追い詰めるため、多額の報酬を弁護士に払い、事件解決を目指しながら、ひたすらに仕事の日々を生きてきました。しかし、ブルーカラーの仕事はそれほど儲かりません。弁護士報酬のために、彼の生活は困窮していました。

郊外の小さな家に住む瞳子は、夫とその母と同居しながら、惣菜やデパートをする日々を送っていました。口数の少ない夫と、小言ばかりの義母に鬱憤を溜める日々の中で、彼女の唯一の癒しは少女漫画を描くことだけでした。
皇后に憧れ、漫画の中のヒロインに憧れる彼女は、ある日パート先にやってきた男と恋仲になります。彼は、彼女の漫画を褒め、甘く笑いかけるのでした。

企業法務専門の弁護士四ノ宮は、とある事故で入院していました。仕事も順風満帆の彼でしたが、誰にも言えない秘密を抱えていました。彼は、親友の男に恋をしていたのです。しかし、ゲイであることは打ち明けられず、年下の恋人にもつらく当たってしまう彼は、深い孤独を抱えて生きていました。

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映画『恋人たち』 結末・ラスト(ネタバレ)

不調から病院を訪れるアツシでしたが、彼の保険は切れていました。それほどまでに困窮する彼の生活に、役所の人間は辛く対応します。また、アツシの生活を心配して訪れた妻の姉は、自分の妹が殺されたことで自分の生活も狂ってしまったと、涙を浮かべます。通り魔事件の犯人は、精神疾患を理由に不起訴が決まりました。そんな世間の不条理に嘆き苦しむ彼でしたが、ある日、街中でばかみたいに幸せそうな恋人たちを見かけます。彼らの幸せを目の当たりにした彼は、どうしようもない日常の中で、それでも、妻との日々を愛おしく思い返すのでした。

瞳子は、夫や義母との家族関係よりも、恋人との日々を優先するようになっていました。男は瞳子に、起業の夢を語ります。一緒に引っ越して、新しい生活を始めようと彼女を誘います。新しい生活に夢を見た彼女は、普段は着ない派手なワンピースを着て彼のアパートへ走ります。
しかし、その部屋で彼女が見たものは、薬に依存し目つきの変わった男の姿でした。その部屋には売人らしき女の姿もあり、「この男はどうしようもない」と言い捨て出て行きます。夢から覚めた瞳子は何も言わずに部屋を出て家族の元へ帰ります。
いつもの日常に戻った彼女に、夫は、「子どもを作ろう」と持ち掛けます。彼女はそんな夫を見て、微笑むのでした。

弁護士四ノ宮は、親友と連絡が取れないことに悩んでいました。けがをした足を引き摺り、彼のもとに会いに行きますが、よそよそしく対応されます。親友の息子にも会いたいと申し出ると、親友は重い口を開きました。
「嫁さんがさ、お前が息子を見る目が変だっていうんだよ。」
あらぬ疑いをたてられ憤慨する四ノ宮でしたが、それと同時に深い悲しみが彼を襲います。
彼と別れた後、四ノ宮はひとり夜の町で涙にぬれます。
「俺、お前に好きだって言わなかったじゃん。」

吹っ切れた様子のアツシに、先輩が声をかけます。
「笑うのはいいんだよ。腹いっぱい食べて笑ったら、人間なんとかなるからさ。」

映画『恋人たち』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『恋人たち(2015)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

素人同然のキャスト

橋口監督が自ら開催したワークショップにより選出された主演の三人。そのワークショップ以前は、ほとんど俳優活動について未経験の彼らを、主演に据えること自体一種の賭けであったと思います。
しかし、橋口監督はその賭けに勝ちました。
殆ど「市井のひと」そのものである彼らに、ひょんなことからマイノリティとして世間から追いやられてしまったキャラクター達を演じさせることで、そのリアリティは濃度を増しています。演技については、確かに上手くはありませんが、時間をかけた演出とワークショップからの信頼関係の成せるわざか、観客の胸を掴むものがありました。
とくに主演の篠原篤さんは、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、映画界にも認知される存在になりました。

明星/Akeboshiの作る優しい世界

今作の音楽は、橋口監督とのタッグの多い、シンガーソングライターの明星/Akeboshiが担当しています。彼の特色であるアコースティック・サウンドは、特にラストシーンで、まるでこの映画の救いそのもののように優しく響きます。「Usual life_Special Ver.」というタイトル通り、普通の生活に溢れる幸せを凝縮したようなサウンドです。

自叙伝

橋口監督はインタビューの中で、前作「ぐるりのこと。」のヒットに際し、プライベートで失恋をはじめ苦しいことが続いたと語っています。その、苦しいことの中で生まれたのが今作の脚本だったそうです。
橋口監督と言えば、自身もゲイ・セクシャルであることを公表しています。そんな彼だからこそ、マイノリティに寄り添う、こんなにも優しい映画が撮れたのではないかと想像に難くありません。


暗い内容の物語になっていますが、個人的に救われたと感じた作品でした。演技・演出・セリフ、全てにおいてリアルが追及された大傑作だと思います。人生は厳しいことの方が多いものです。それでも食べて笑えば何とかなる。本当に心に沁みる作品でした。主役級の役にはそこまで有名でない俳優さんを起用し、脇役に有名な方を起用する配役が絶妙です。出番が少なくとも記憶に残る人物が多く、出演した役者が誰一人欠けていても完成しなかったであろう作品になっています。(男性 20代)


見終わった瞬間に「はあ…」という多い溜め息と共に涙がポロポロとこぼれ落ちてきて生きることの理不尽さ、それでも生きていかなければいけないもどかしさに押しつぶされそうになれました。
本当だったら生きていればなんとかなる、と感じて前を向くべき作品なのだと思いますが、彼らに与えられた「誰にでも起こりうる」「当たり前」の試練が物凄く辛く感じてしまって、どうしてこんなにも幸せは遠いのだろうと悲しくなってしまいました。(女性 30代)

映画『恋人たち』 まとめ

映画を観終わったあと、涙で前が見えないほど嗚咽に濡れたのは、今作が初めてでした。小さな映画館の隅の席で、暫く立てないほど、この映画に掴まれてしまいました。
今作の中で傷付いている人々は、自分とそう違わない場所で生きている人間たちだと、映画を観始めてすぐに気づきます。だからこそ、そんな彼らが少しでも救われるラストに、泣いてしまったのかもしれません。
人生に絶望した経験のあるひと、悲しいことがあったひと、そんな、少し疲れてしまった人たちに贈る、至上のヒーリングムービーです。

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みんなの感想・レビュー

  1. 村上 英夫 より:

    恋人たちを観ました。
    私生活でも、主人公の境遇と重なる部分があり、ラストは救いようのない終わり方をするのかと思い、一度DVDを止めてしまいました。多少自分もうつ気味でありこれ以上萎えたくないとの思いからでした。
    仕事上での事でそうなったのですが、だんだん観てるうちにこの主人公達に親近感を感じて来ました。
    あまり、普段は見慣れない俳優さんが演じていたので、その部分も良かったのかもしれません。周りはリリーさんや光石研さん、木野花さんなどで固めておりましたが、主人公3人の存在感が逆に目立ちました。
    ラストはそれぞれが心境をハッキリ伝える部分があり、それがとても共感を呼びました。
    成島瞳子さんは特に印象が残り、この普通のおばさんパートと特に目を離せなくなりました。
    ラストは救いのある終わり方で、自分達が学生時代に8ミリ映画を二本作った際に二本目のラストは主人公が心を開いて行くシーンとして部屋の窓が開け放っている場面と重なりました。
    文面がまとまらないと思いますが、黒田さんの言う通り、お腹いっぱいになって笑えて過ごせればと思います。最近同じ事を言ってくれる方が現れたのもちよっと不思議が感じがしました。
    黒田さんの存在もかなり大きいですね。この映画で一番ホッと出来るシーンでした。
    つたない文面ですみません。
    私の映画仲間が絶賛の映画でした。劇場で観れたら最高でしたね。でもDVDでもグッと来たというのは名作なんですね。