映画『心のカルテ』の概要:グループホームを追い出された拒食症の主人公が、風変わりな治療をすると有名な医師が運営するグループホームへ入所。施設での生活を送りつつ治療を行うことになるが、主人公の心の傷は自らの命を危険に晒すまでの根強いものだった。
映画『心のカルテ』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:マーティ・ノクソン
キャスト:リリー・コリンズ、キャリー・プレストン、リリ・テイラー、キアヌ・リーヴス etc
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映画『心のカルテ』の登場人物(キャスト)
- エレン(リリー・コリンズ)
- 絵を描く才能を持っているが、学生時代にその絵がきっかけで拒食症の少女が自殺を図ったことにより、生きる希望を失い自らも拒食症になってしまう。実母が同性愛をカミングアウトしたことにより、周囲からの偏見に晒されている。
- ウィリアム・ベッカム(キアヌ・リーヴス)
- 拒食症患者を多く診察している医師で、生きる意志がない患者は診ない。患者自身の心の救済を目的とした診療方法を用いており、自らグループホームを経営している。
- スーザン(キャリー・プレストン)
- エレンの義母。非常におしゃべりでインテリ。夫からエレンの管理を任されており、英才教育を施そうとする。エレンのことを心配しているが、当人には気持ちが通じていない。
- ジュディ(リリー・テイラー)
- エレンの実母。夫と別れた後に同性愛をカミングアウト。同姓のパートナーと共にエレンを引き取り育てていた。娘の絵の才能を伸ばそうと考えている。スーザンとは教育方針でいつも口論になる。
- ルーク(アレックス・シャープ)
- ウィリアムのグループホームに入所している先輩。元ダンサーで左足を負傷したことにより、精神を病み拒食症になる。現在は治療により食事を摂ることができるようになり退所を目前としている。エレンに恋心を抱き、いつも励ます。
映画『心のカルテ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『心のカルテ』のあらすじ【起】
拒食症のエレンは専門のグループホームに入所していたが、他入居者に悪影響を与えるとして施設を追い出されてしまう。彼女は両親と妹の4人家族だったが、両親はいつも忙しくほとんど家にいない。義母のスーザンは妹の実母だったが、どこかよそよそしく口ではエレンを心配していると言いながら、事務的で遠慮のない言葉を吐く。エレンはそんな義母を嫌いながらも、すでに抵抗する気力もなく諾々と命令に従っているのだった。
帰宅してすぐ、スーザンが探してきた新たなグループホームへ。医師ウィリアム・ベッカムとの面談にて、おしゃべりのスーザンはエレンの実母ジュディのことも悪し様に話す。ウィリアムはちょっと風変わりな医師でエレンの診察をしながら、彼女から拒食症となった動機を聞き出した。
エレンは痩せている方が得だと話したが、多くの拒食症患者を診てきたウィリアム曰く、患者らは胸糞が悪い連中ばかりらしい。周囲から向けられる奇異な目をも楽しんでいるところがあり、それがやめられずに拒食症でい続ける。だが、身体は命を守るために必死になってシグナルを発しているのだ。ウィリアムは入所するためのいくつかの条件を提示。
食べ物の話はしないこと、自分の言葉で話すこと、親がしゃしゃり出ないこと、最低でも6週間は入院して治療することである。
ウィリアムのグループホームは条件が厳しく入所することも困難で有名だったが、エレンは条件を飲むことで入所を許されるのだった。
このことでスーザンは大喜び。妹も今度の施設では本気で取り組んで欲しいと願っており、姉を心から応援している。エレンも少しだけ前向きになることにした。
入所の日、向かった施設は一般的な一軒家で同年代の青年や女性が共同生活を送っていた。サプリや通信機器は全て没収されるという徹底ぶりに呆れたエレンだったが、施設の詳しい案内は同じ患者のルークがしてくれる。施設では雑用をこなすことで、ポイントを得られる。ポイントが貯まることでレベルが上がり、制限が少しずつ解除されるらしい。
紹介も兼ねて談話室で入所者7名が全員集まり、1人ずつ悩みなどを打ち明ける。グループセラピーである。食堂は彼女らにとって拷問部屋に等しいが、食事をすることによってポイントが稼げる。だが、食べてすぐにトイレを利用することも、カロリーを消費するために運動することも禁止されていた。それでも、入所者たちは密かに運動しカロリーを消費するなど、涙ぐましい努力を続けているのだった。
映画『心のカルテ』のあらすじ【承】
翌日はファミリーセラピーが行われた。実母のジュディは同性愛をカミングアウトしており、パートナーと共に遠方から駆け付けてくれる。だが、父親は仕事が忙しいことを理由に来てはくれなかった。ウィリアム曰く、今回の目的は家族の全体を知ることらしい。エレンの母親は合計3人で、他には妹の計5人である。
ところが、3人の母親は互いにいがみ合っており口論が勃発。妹もエレンもこれには呆れ果ててしまう。1年半前までは実母と生活していたエレンだったが、父親との関係修復も兼ねて父親の家へとやって来た。だが、父親はいつも家におらずスーザンがエレンの管理を任されている。母親達の口論を聞いたエレンは、周囲にとって自分は厄介なお荷物だと感じていたが、妹だけは姉のことを心から思いエレンにとっても心の支えとなっているようだった。
その日の夜、他の入所者を励まし食事を促していたルークに酷い言葉を吐いてしまったエレン。そこで、考え直した彼女はルークの部屋を訪ねる。すると、彼がエレンの絵のファンであったことが判明。仲直りしたエレンは高カロリーのお菓子を一袋食べられたらいいのにと、ちょっとした希望を口にして自室へと戻った。
翌日の夜、談話室にいたエレンの元へルークがやって来る。彼はおもむろにお菓子を出して食べるよう促す。そのお菓子はエレンが昨夜、食べたいと言っていたお菓子だった。しつこく食べろと言うルークをエレンは強く拒絶してしまった。
ウィリアムの診察にて、施設での生活が自分に良い影響を与えているようだと感じ始めたエレンが前向きなことを言い出した。ウィリアムは良い傾向だと思い、家族とのセラピーを止めることにする。家族の中で本当にエレンを心配しているのは妹だけ。そこで、ウィリアムはエレンに改名してはどうかと提案し、イーライという名前に決定した。
映画『心のカルテ』のあらすじ【転】
新たな自分を迎え入れるには良い案である。イーライに改名した彼女は、今日からは新しい自分だと気分が少しだけ上向きに。得点での外出の際、1人だけ一緒に行く人を選ぶことができるルークは、彼女を外出に誘うことにした。
レストランにて一緒に食事をしたが、エレンは食べ物を口にしては吐き出すという行為を繰り返す。味だけを味わって飲み込まないのである。楽しい時間を過ごし施設へと帰所。
数日後、ウィリアムが入所者全員をアート博物館へ連れて行ってくれる。生きる喜びや人生の素晴らしさを彷彿とさせるアートに触れた患者達が全員でエレンを励ます。すると、その日の夕食時、エレンはお菓子を食べることができた。以来、全員の心が1つになり、前へ向かって歩き始める。
それから共に過ごす時間を経て、惹かれ合ったルークとエレン。ある夜、ルークがエレンとの関係に一歩踏み込もうとしてエレンに拒絶されてしまう。ルークは2年前からエレンの絵を通して彼女に恋心を抱いていたが、エレンはまだ彼と出会って3週間しか経過していない。急激な変化に追いつかないエレンは、自分が抱える重大な心の傷を彼に話して聞かせることにした。
2年前、学生だったエレンは、自分の絵をネットにアップしたことで多くの人々から称賛を得ていた。ところがファンの1人であった拒食症の女の子が手首を切って自殺。その子が遺書にエレンの絵が原因であることを書いていたのである。娘を亡くした両親は、その遺書の画像をエレンの元へと送りつけ、エレンは自分の絵が原因で自殺した人がいることを知って酷くショックを受けた。複雑な家庭環境に於いて、絵を描くことで心の均衡を保っていた彼女は、そのせいで均衡を崩し生きる理由を見失ってしまったのだ。エレンにとって愛情とは、自己満足を満たすだけの欺瞞としか思えなかった。故にルークからの好意を素直に受け止めることができないのである。
その日の夜中、バスルームから悲鳴が聞こえ、全員が飛び起きた。妊娠中だった1人の患者が流産してしまったのである。拒食症であったが、子供のために一生懸命食事をするようにしており、その姿が全員に力を与えていた。女性は病院に搬送され命は助かったが、子供は助からなかった。ウィリアムは人生には悲しみは付きものだと話し、入院中の女性からの手紙を読み聞かせた。
映画『心のカルテ』の結末・ラスト(ネタバレ)
このことにショックを受けたエレンは落ち込んでしまい食事を一切しなくなってしまう。ウィリアムは彼女を診察したが、エレンは心の痛みと向き合うこともせず逃げようとしてばかり。彼女はウィリアムへの信頼を失い、ルークの制止も聞かずに施設から勝手に出て行ってしまうのだった。
夜行バスに乗ってジュディの元へ辿り着いたエレン。ジュディは娘を助けるべく様々な方法を模索しているらしい。ウィリアムの話では今以上、体重が減ればエレンは死の危険を迎える。故にジュディはどんな方法でも試したいと考えていた。そこで、母親は改めてエレンへと授乳したいと言い出す。弱り果てていたエレンは、母の希望に沿い授乳させてもらうことにした。
深夜、荒野をさ迷ったエレンは、死を迎える穏やかな気分で満月を見上げ目を閉じた。月が眩い太陽になった時、なぜかルークが現れ近くに木があるから身を寄せた方がいいと言う。木陰へ向かったエレンはルークと口づけを交わした後、促されて木の根元に横たわる人を見た。そこには痩せ細って醜い自分がいる。あれが自分かと衝撃を受けたエレン。促されるまま渡された木の実を口にした。
そこで目が覚めたエレンは、自分がまだ生きていることを確認し、湧き上がる喜びを得る。それから更に歩き回り、スーザンと妹が待つ家へと戻った。自分の闇を乗り越えた彼女は、心配していたスーザンと妹にもう大丈夫だと笑い、再びウィリアムのグループホームへと戻るのであった。
映画『心のカルテ』の感想・評価・レビュー
監督マーティン・ノクソンのデビュー作で、一般劇場公開はせずNETFLIXから世界各国へ配信が行われている作品。拒食症患者のありのままを描き、どうしようもない懊悩や衝動と戦う姿を映し出している。
食べたら吐く、吐けなければ運動してカロリーを消費する、そうでなければ下剤でカロリー摂取を絶つ。拒食症患者の涙ぐましい努力は凄まじいと感じた。作中でははっきりと痛みから逃れているだけだと告げている。分かっていてもどうにもできないのが、心の病なのだと思う。主人公が生きることを前向きに捉えるまでを描いた凄まじい作品。(MIHOシネマ編集部)
エレンの顔色が常に悪く、食事が足りていないことは明らかだった。化粧の力も借りているのかもしれないが体の細さを見ると、リリー・コリンズは相当な努力をして彼女を演じたのではないだろうか。拒食症を患っているエレン本人だけでなく、彼女のことを心配している周囲の人達も辛そうだった。ただ食べればいいという簡単な問題ではなく、心に抱えている葛藤や悩みに打ち勝たなければ症状は改善しない。難しい病だと思う。(女性 30代)
本作は、痩せることに執着し食べることに対して抵抗する重度の「拒食症」と闘う女性エレンを描いたヒューマンドラマ作品。
骨と皮になった彼女が朝目覚めて、ここはあの世か現実かを確かめるシーンが印象的だった。
主人公を演じたリリー・コリンズ自身も拒食症を患っていた過去があり、その全てをさらけ出す演技と、美しさを維持したまま減量した体型には説得力があり、拒食症と向き合う人たちの気持ちが繊細に表現されていて、安易に解決できない拒食症への理解が深まった。(女性 20代)
「拒食症」について最も深く理解できた作品でした。今まで拒食症についてテレビ番組やネットで様々な情報を見てきましたが、心の病という事がイマイチ理解できず、なぜ食べられないのだろうとそこばかりが気になっていました。
しかし、今作を見ると様々な理由があって食べられなくなってしまったことや、食べたらそのカロリーを消費するために、きつい運動をしているなど、過去のトラウマや経験から食べない努力=食べることから逃げているのだと知りました。
自分とは違う立場なので全てを理解するのは難しいですが、心の病に寄り添ってあげることはすごく大切だと感じました。(女性 30代)
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