映画『黒人魚』の概要:湖の畔にある別荘を訪れたローマは、ずぶ濡れの美少女に出会ってから恐ろしい幻覚に苛まれるようになる。婚約者のマリーナは、ローマの不調の原因が湖にあると感じ別荘へと向かう。邦題に「人魚」とあるが、原題はスラブ民族に伝わる伝承『ルサールカ』である。
映画『黒人魚』の作品情報
上映時間:87分
ジャンル:ホラー
監督:スヴィヤトスラフ・ポドガイエフスキー
キャスト:ヴィクトリヤ・アガラコヴァ、イェフィム・ペトゥルニン etc
映画『黒人魚』の登場人物(キャスト)
- マリーナ(ヴィクトリヤ・アガラコヴァ)
- ローマの婚約者。カナヅチのため、彼から泳ぎを教わっている。ローマの姉オリガと共に、彼を苦しめる原因を探って湖へと向かう。
- ローマ・キタエフ(イェフィム・ペトゥルニン)
- マリーナの婚約者。水泳選手。仲間と共に別荘で独身パーティを楽しんでいたが、湖で美少女と出会ってから幻覚を見るようになる。
- イリヤ・ロジオノフ(ニキータ・エレンベ)
- ローマの水泳仲間。結婚を控えたローマのために独身パーティを企画する。マリーナやオリガと共に彼の不調の原因を探る。
- ミシャ(イゴール・クリプノ)
- ローマと、姉オリガの父。湖で妻を亡くしてから精神に異常をきたしてしまった。子供達とは20年間音信不通。
- リーザ・グリゴリエヴァ(ソフィア・シドロフスカヤ)
- 過去に湖で溺死した少女。彼女の墓は岸に建てられたが、ダム建設の際に湖の中へ沈んでしまった。
映画『黒人魚』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『黒人魚』のあらすじ【起】
ロシアには、夜の湖には女の幽霊が出るから近づくなという伝承がある。幽霊と愛の言葉を交わした途端、湖に引きずり込まれるのだ。助かるためには自分の愛する者を全員差し出さなくてはならないが、この呪縛から逃れられた人間はいない。幽霊は、本当の愛を知らないからだ。
20年前にも幽霊の犠牲になった夫婦がいた。夫のミシャが幽霊に魅入られ連れて行かれそうになった時、妻のアーニャが助けに来た。ミシャは意識を取り戻したものの、代わりに妻が湖に沈んでしまった。
現代。カナヅチのマリーナは、婚約者のローマから泳ぎを教わっていた。ローマの友人イリヤは、結婚を控えている彼を独身パーティに誘う。会場はローマが父から譲り受けた湖畔の別荘で、結婚へ向けて多少ナーバスになっているマリーナを心配しつつも、彼らは別荘へと向かった。
ローマを見送ったマリーナは、彼の姉オリガと共にいた。マリーナに髪を切って貰うオリガは、子供の頃に母としていた、合わせ鏡に理想の人を映し出すごっこ遊びと、髪の毛には力が宿っているという話を思い出す。そして、何故弟が別荘に行こうと思い立ったのか疑問に思う。マリーナは、オリガとローマの父親から突然鍵が送られてきたことを話した。修理して住もうかと考えていることも打ち明けると、オリガは、父とは20年音信不通だったことを明かす。
映画『黒人魚』のあらすじ【承】
別荘で独身パーティを楽しむローマは、イリヤが呼んだストリッパー達の登場でマリーナに気負いし、一人湖へとやってきた。一通り湖で泳ぎ桟橋へ戻ると、古びた木製の櫛で髪をとかすずぶ濡れの女が立っていた。魅入られたローマは、虚ろな目で彼女にキスをする。女は「私を愛してる?」と不気味に笑い、ローマは気を失ってしまった。翌朝、仲間達が湖の畔で倒れているローマを発見。傍らには木製の櫛が落ちていた。
マリーナは、独身パーティから戻ったローマの服を洗濯しようとしていた。すると、服の間から木製の櫛が落ちた。マリーナは薄っすらと彼の浮気を疑うも、水泳の選考会を目前にしたローマに何も言わなかった。
選考会に向けてハードな練習をこなすローマは、著しく体調が悪くなってゆく。プールで泳いでいる最中に湖の幻覚を見て溺れてしまったローマは、背後に迫る女の姿と「私を愛してる?」という幻聴に悩まされ衰弱する。ローマ同様女の幻覚を見るようになったマリーナは、オリガに櫛を見せる。オリガが昔の家族写真を探ると、若き日の両親と共にこの櫛が映っていた。オリガはマリーナとローマ、イリヤを連れて父、ミシャの元へと向かう。
映画『黒人魚』のあらすじ【転】
ミシャの元を訪れた一行は、湖と櫛の秘密を訊ねた。虚ろな目で絵を描いていたミシャだったが、ローマやマリーナが悩まされている幻覚の話を聞くと、亡くなった母アーニャの話をした。ミシャもかつて、湖に出た女に魅入られ幻覚に苦しめられていた。しかし、アーニャが彼のために何かの儀式をしていたらしい。儀式の効果は定かではなく、結局はアーニャが湖に攫われミシャは正常な意識を取り戻したのだった。
マリーナ達は真相を知るため別荘へ向かう。オリガとイリヤが湖を調べると、水底には幻覚として現れる女、リーザ・グリゴリエヴァの墓が沈んでおり、彼女の幽霊の犠牲になった人々の水死体も無数に沈んでいた。
水を汲みに井戸へ来たマリーナは、離れにある浴室に人影を見る。後を付けると「宝と引きかえに彼を返して」という声と共に、儀式を行うアーニャの幻覚が現れた。マリーナは、リーザの幽霊を追い払うためアーニャと同じ儀式を遂行する。リーザを呼び出し、櫛を返せば解決すると考えたのだ。
マリーナによって召喚されたリーザは、ローマと同様イリヤにも「私を愛してる?」と聞く。彼女に魅入られ虚ろな目になったイリヤは「愛してる」と答えてしまった。しかし、マリーナの儀式を通してリーザが湖で死んだ理由が明かされると、衰弱していたローマの顔色は元に戻り、イリヤも意識を取り戻したのだった。リーザに櫛を返すと、水底に沈んだ彼女の墓は砕け散り、幽霊の姿も見えなくなった。
映画『黒人魚』の結末・ラスト(ネタバレ)
帰り支度をするマリーナ、ローマ、オリザは、イリヤがいなくなったことに気付く。意識が戻ったと思われたイリヤは、まだリーザの呪縛から解放されておらず、浸水した地下室へと引きずり込まれてしまったのだ。リーザに襲われながらもなんとか別荘から逃げた3人は、森の中で車が立ち往生し再び別荘へ戻ることに。
オリガは、弟を守るため、マリーナを生贄としてリーザに捧げようとした。そこへミシャが現れると、リーザはミシャを水の中へと引きずり込んだ。それを助けようとしたオリガが沈み、マリーナも溺れそうになった時、マリーナが咄嗟にリーザの髪を切ると彼女は恐ろしい形相で悶え苦しみ水の中へ消えていった。彼女の髪を切ったマリーナは、これこそ彼女を消滅させる方法だと思いローマの元へ。
マリーナは鋏を手に湖へ潜り、溺れかけながらもリーザの髪の端を切った。ローマは、陸へ上がってきたマリーナを抱きしめようとしたが、彼女の口から「私を愛してる?」という台詞が聴こえる。ローマはマリーナの髪を掴み、後ろ髪を全て切り落とした。マリーナの姿をしたリーザは悲鳴を上げながら消滅し、ローマは本当のマリーナを助けるために湖へと潜った。
助かったマリーナと完全に意識を取り戻したローマは、ずぶ濡れのまま別荘を後にした。
映画『黒人魚』の感想・評価・レビュー
ありきたりな展開と、大きな効果音でびっくりさせようという魂胆がいただけなかった。何より、邦題に「人魚」を使っているため話がややこしく感じる。怪異の正体である幽霊(リーザ)のビジュアルはしっかり怖いが、主役は「人魚」ではなく「水属性の幽霊」だ。
こじつければ、髪を切られ苦しむリーザの姿が一瞬深海魚のように見えるような気もするが、基本は振り向くといるタイプの普通の幽霊である。ファンタジーホラーのつもりで観ると肩透かしをくらう作品ではあるが、再生時間は90分未満なので暇つぶしには最適かもしれない。(MIHOシネマ編集部)
多分、多くの人がイメージしている「人魚」とはかなりかけ離れたビジュアルのモンスターが登場する今作。ストーリーは単純ですが、人魚の姿が想像とは全く違い、美しさはありません。深海に潜む生物のような、「退化」した人間のような、なんとも言えない恐ろしさがありました。
言ってしまえば夏にテレビで放送される『怖い話』のような、簡単に先が読める展開ではありますが、頭を使わずに見られるのでサクッと見るのにおすすめの1本です。(女性 30代)
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