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映画『去年マリエンバートで』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『去年マリエンバートで』の概要:フランス調の庭園がある迷路のようなホテルでは、陰鬱とした空気の中で無表情の客達が永遠の時を過ごしている。男は、去年駆け落ちの約束をした女を連れ出しにやって来た。しかし、彼女は何も覚えていないと言う。

映画『去年マリエンバートで』の作品情報

去年マリエンバートで

製作年:1960年
上映時間:94分
ジャンル:ラブストーリー、サスペンス
監督:アラン・レネ
キャスト:デルフィーヌ・セイリグ、ジョルジョ・アルベルタッツィ、サッシャ・ピトエフ etc

映画『去年マリエンバートで』の登場人物(キャスト)

男X(ジョルジョ・アルベルタッツィ)
1年前に女Aと恋に落ち、駆け落ちの約束をした男。自分との記憶を一切持たない彼女に語りかけ、二人でホテルを抜け出そうとする。
女A(デルフィーヌ・セイリング)
男Xが持つ自分との記憶を聞かされる内に、断片的に彼との思い出が蘇る。
男M(サッシャ・ピトエフ)
男X曰く、女Aの“夫らしき”人物。女Aの動向を監視しており、男Xと二人きりになるのを防ごうとしている。

映画『去年マリエンバートで』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『去年マリエンバートで』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『去年マリエンバートで』のあらすじ【起】

バロック風の不気味で巨大なホテルの廊下は、どこまでも果てしなく続いていた。足音は絨毯に吸い込まれ、本人にさえも聞こえない。壁や扉は装飾過多である。男Xは延々と続く回廊を歩き続け、やがて劇場へ辿り着いた。そこには夜会着に身を包んだ多くの男女が、無表情に同じ台詞を繰り返す劇を見つめている。

男Xは女Aを想い、自分の言葉と台詞を重ねた。遂に台詞が変わり、役者の男が「行きましょう」と言うと、説得に応じた女は「ご一緒します」と回答し舞台は幕を閉じた。鑑賞を終えた客らは一斉に歓談を始めたが、時折、時が止まったように固まっては再び内容の無い会話をはじめる。劇場を出た彼らはホテル中に散った。

出番を終えた役者の男は、相手役の女性に「この役どころはうんざりだ。沈黙、壁、ささやき声の中に監禁される」と不満を漏らした。男Mはそんな二人をじっと見つめ、それに気付いた女は発言を慎むよう男を窘めたが、彼は喋ることを止めず支離滅裂な言葉の羅列を繰り返した。

男Mは「フランクは彼女に父の知人と思わせた。彼女を監督すると称し寝室にも入り込み、彼女は不信感を抱いた」と知人へ話した。同席していた女Aは、愛想笑いをしながら目を伏せた。

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映画『去年マリエンバートで』のあらすじ【承】

男Xは群衆の中に女Aを見つけると、「あなたは同じだ、記憶にないようだが」と声をかけた。男Xは、彼女の性格や癖を言い当てた。彼女は「こんな詳しい解説者は初めて」と返し、二人はダンスに興じた。一方で男Mは、射撃場で銃を撃っていた。

男Xは女Aへ、「初対面はフレデリクスバートの庭園でした」と言った。「人違いです」と言い切る女Aだったが、彼は二人で交わした会話や見た情景を細かに語る。

男Xは、1年前に出会った女Aの動作を鮮明に覚えていた。彼は庭の遊歩道を歩いていた女Aに話しかけ、近くにあった男女の銅像について意見を交わした。しかし、すぐに誰かが近づいて来て長く話せなかったと言う。そして男Xは女Aの手を取ろうとしたが、彼女はフレデリクスバートへは行っていないと言う。男Xは「では別の場所でしょう。カールシュタット、マリエンバート、バーデン・サルサ、この広間かもしれない」と、壁に飾られた絵画へ向き直った。そこには庭園にある銅像が描かれており、男Xは「男が女を制止しているのか、女が男を制止しているのか」と、1年前と同じ会話を繰り返す。そこへ男Mが現れ、「この彫刻はシャルル3世とその妃です。反逆罪の裁判の際の議会での宣誓です」と説明した。

女Aは、静止した客達の間を縫って進む。彼女が階段を昇ろうとした時、男Xから「あなたを待っていました」と呼び止められ、彼女は「夢の中で?」と答えた。男は彼女との思い出を語り始める。

映画『去年マリエンバートで』のあらすじ【転】

男Mと“ニム”で対戦する男Xは、1年前一緒に庭園を歩いていた女Aのヒールが取れてしまい、彼女が自分の肩に手をかけ靴を脱いだ記憶を回想した。

男Xは、バーで女Aへ、1年前のある晩、彼女の部屋を訪れたと明かした。自分の記憶を辿った女Aは、彼の来訪に驚いてグラスを割った事実を思い出し、持っていたグラスを落として割ってしまった。

男Xは、無言で佇む人々の間を抜けた。彼は頭の中で「会話は空回りし言葉は無意味に聞こえる。意味を禁じるかのように。口にする言葉は不意に凍結し、保留される」と独り言ちた。至るところに張られた紙には“お静かに”と記されている。

女Aは、男Xと廊下で鉢逢い怯んだ。女Aは一人にしてほしいと告げたが、記憶は断片的だが戻りつつあった。1年前のある晩、彼が部屋にやって来た際も「一人にしてほしい」と言ったのを思い出したのだ。

男Xは、女Aに駆け落ちを提案したと明かした。男の記憶では「私が再びあなたの部屋に入る時、男Mの部屋は客間を挟んだ隣。その時間彼は娯楽室にいる。男は女へ来訪を告げており、部屋はどの扉も半開きだった。」部屋への侵入者を目の当たりにした女Aは悲鳴を上げていた。

それを聞いた女Aは知らないと言いつつも、当時の部屋の暖炉の上には絵が飾ってあったこと、化粧台に鏡が付いていたことなどを思い出していた。さらに男Xは、1年前に庭園で撮ったという女Aの写真を見せた。そしてあの晩女Aは、羽毛の飾りの付いた白い部屋着でベッドの端に座って怯えていたと言った。

映画『去年マリエンバートで』の結末・ラスト(ネタバレ)

男Xは、あの晩女Aは男Mと言い争いをし、男Mが出て行ったのだと言った。男Xの記憶では、白いドレスを身に纏った女Aは終始笑顔で自分と会話し、かつ駆け落ちに同意していた。

女Aは、当時のことを思い出していた。黒いドレスを着てベッドに横たわった彼女の元へ男Mが訪ねて来る。彼が化粧台に置かれた写真について聞くので、女Aは去年フランクに撮られた写真だと答えた。しかし、男Mは、去年はフランクはいなかったと言う。

男Mは部屋を去った後、再び戻り女Aを撃ち殺した。

黒いドレスを纏った女Aはベッドに横になり、男Xの来訪にたじろいだ。彼女と自分の記憶の相違に取り乱した男Xは「嘘だ、合意の上だ!」と叫ぶ。彼の記憶の中では、女Aは部屋を訪れた自分に向かって腕を広げ、笑顔で迎えてくれていた。

黒いドレスとケープを纏った女は、庭園で待つ男Xの元に駆け寄ると、駆け落ちを1年先延ばしにするよう懇願した。そこで人の気配を感じた女Aは、咄嗟に男Xへ隠れるよう言った。近づいて来たのは男Mであった。怯える女Aの後ろでは大きな物音が響き、それは男Xが隠れようとして手をかけた石橋の崩れる音だった。女Aは悲鳴を上げた。

白いドレスに身を包んだ女Aは、ベッドに横たわって男Mに助けを乞う。しかし、男Mは「手遅れだ、明日私は一人ぼっちになる。君の部屋はからっぽだ」と言って去ってしまった。

劇の演目はROSMERであった。客がこぞって演劇を鑑賞する一方で、女Aは外出着に着替えて男Mが自分を引き留めに来るのを待った。しかし、彼は現れず、約束の時間に男Xが彼女の前に現れた。遂に二人はホテルの外へ向かって歩き出し、男Mは彼女のいなくなったロビーに佇んだ。

男Xは言う。「そのホテルの庭園はフランス調だった。最初、迷うことはありえないと思えた。そこで、あなたは今すでに迷いかけている。永遠に、静かな夜の中、私と二人きりで」

映画『去年マリエンバートで』の感想・評価・レビュー

軽い気持ちで鑑賞しはじめたら、考察のために頭をフル稼働させるはめになり頭痛がした。

ホテルは生と死が混在する場所であり、既に死んでいるXは恋焦がれたAへの未練で思い出の中を彷徨い、彼女を自分のいる死後の世界へ連れて行こうとしている?と考えた。結論付けたわけではないので様々な考察を見てみたいが、劇中でAがMに撃たれる場面があるのでAも死んでいるのは確実だろうから、彼女は自分の居場所をどこにしようか彷徨っている状態だろうか。

自殺者は天国にも地獄にも行かず、自分が死ぬ瞬間をループし続けるという日本独自の生死観を思い出させる内容だった。(MIHOシネマ編集部)


ホテルの存在や迷路のような庭の意味、男Xの行動などとにかく謎だらけでものすごく頭を使う作品でした。
個人的にはこのホテル自体が生と死の境界線で、死ぬことを迷っている、あるいは死にかけている人が自分はどこに行くのか彷徨っている場所なのかなと感じました。
男Xは既に死んでいて、男Mから女Aを奪い、死の世界に連れ込もうとしているような雰囲気があります。作中には女Aが撃たれる描写がある為、彼女も死んだのだと解釈しましたが、本当の意味や何を伝えたかったのかは、よく分かりません。(女性 30代)

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