映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』の概要:イタリア最長の環状高速道路周辺に暮らす人々の日常を、ありありと映し出したドキュメンタリー。観光では決して見ることのない、そこに暮らす人間達の「人生」が淡々と描かれる。
映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』の作品情報
上映時間:93分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督:ジャンフランコ・ロージ
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映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』の登場人物(キャスト)
- ジャンフランコ・ロージ
- 本作の監督。第70回ヴェネツィア国際映画祭にて、ドキュメンタリー映画では初めての金獅子賞を受賞した。2年間の撮影の後、編集に8ヶ月を費やした大作。
映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』のあらすじ【起】
グランデ・ラッコルド・アヌラーレは、ローマを囲むようにそびえるイタリア最長の環状高速道路である。ある救急隊員の男は緊急車両で高速道路を突き進み、河に落ちた男性を救助して病院まで搬送していた。一方で高速道路脇にあるヤシの木の林では、植物学者の老人が害虫の調査を行っていた。
ジムに通う元貴族の男性は、高速道路の近くにある自らの屋敷を、映画や写真の撮影、パーティの会場として貸し出していた。彼はその日、写真小説の撮影予約を取りつけた。
市営アパートの広場では、多くの住人や子供達が盛んに遊んでいた。そのすぐ近くの車道では、トレーラーで暮らす二人の老娼婦が朝食を摂っていた。酒と煙草ですっかり喉が焼けたブロンドの娼婦は、公道で淫らな行為をしたとして逮捕された際、調書に「車中で裸の女を逮捕した」と書かれていたことへ憤慨していた。やがて彼女は、得意のカンタータを口ずさんだ。
ボートで河を下るウナギ漁師の老人は、釣り小屋で網の手入れをする妻へ愚痴を溢した。イタリア政府はフランスやアメリカ、アフリカなどの国外産ウナギを輸入・養殖する方針を打ち出したが、長年漁師をしている彼は懐疑的だった。輸入したウナギの病原体を調査するには時間とコストがかかる上、イタリアの水質で育つかどうかも定かではない。老人は「俺たちは無知な連中に左右される」と嘆いた。しかし、妻は相槌の一つも打たず全く話を聞いていなかった。
映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』のあらすじ【承】
救急隊の男は、通報を受け交通事故の現場へ急行した。横転した車内から助け出された血塗れの運転手は、明日も仕事だから帰してくれと駄々を捏ねた。
高速道路脇の狭小マンションでは、むろん大勢の人間が日々の生活を営んでいる。ある一室ではインド系の男性がリビングを占拠し、DJ卓を広げてイベント用の曲をリミックスしていた。
またある一室では、立派な髭を蓄えた偏屈な老人・パオロが、独り身の娘・アメリアへ一方的に語り掛けていた。彼は、マンションの窓から見える一軒家に人が住んでいるのかどうか熟考した。別の部屋では若い親子が壁の色を塗り替えており、一人暮らしの女性は恋人へ電話を掛けていた。
日が落ちると、ナイトクラブには多くの人が訪れた。ダンサーの女性は狭い通路で派手な衣装に着替え、出番を迎えるとバーカウンターの上で踊った。出番を終え休憩に入った彼女達は、バックヤードでパンを齧った。
日が昇る前に帰宅した救急隊員の男は、ララレラとラビツへ電話した。電話はやがてビデオ通話になり、三人は近況を報告し合った。
ブロンドの老娼婦は、友人女性と車で落ち合い世間話をした。彼女は「金持ちばかり得をする世の中なんて嫌だわ」と溢し、いつものようにかすれた声でカンタータを口ずさんだ。
映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』のあらすじ【転】
夜を迎え、今夜も救急車は高速を走る。現場に到着した救急隊員の男は、重症患者へ救命措置を行うと、急いで病院へ向かった。
植物学者の老人は、ヤシの木の害虫であるヤシオオオサゾウムシは、組織化された社会構造を持つと説明する。群れの中にはリーダーのような役割を持つ個体がおり、遠く離れたところから獲物を捉えると仲間を呼び集める。大軍になったヤシオオオサゾウムシは一気に卵を産み付け、ヤシの木の形がなくなるまで食べ尽くすという。彼は、それを人の姿と重ねた。
売れない俳優のガエターノは、渋滞に巻き込まれながらも撮影所へ向かった。没落した旧貴族の屋敷を舞台に、彼は写真小説の撮影へ執事役として挑んだ。
とある広場では、インド系の人々が集まるイベントが開かれていた。リミックスした民族音楽を流すのは、あの狭小マンションに暮らす男性だった。同じ頃、そのマンションの一室では住人の女性達が「水漏れがして大変だった」と話す。パオロは窓辺でナスを切りながら、その日もアメリアへとりとめのない話を語っていた。
自らの屋敷を貸し出している元貴族の男性は、妻と娘・アナスタシアと共にめかし込み、招待したリトアニア大使と会食を行った。
映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』の結末・ラスト(ネタバレ)
植物学者の老人は、自宅のパソコンでヤシオオオサゾウムシの幼虫の鳴き声を解析し、彼らを遠ざける警告音を作成していた。老人は研究所へ調査結果を電話する中で、害虫達を一か所に集めて一気に撃退するアイデアを思い付く。
冬を迎えたイタリアには雪が降りはじめ、山奥にある墓地は一面白い雪に覆われた。高速道路上では立ち往生する車も見えはじめ、救急車はその間を縫って進んだ。
ウナギ漁師の老人は川を下り、友人女性の家を訪れた。写真小説を読む彼女は目が悪く、老人は登場人物の名前を教えてやった。
パオロは、アメリアが独り身であることを心配していた。しかし、当の本人は「考え方が古いのよ、パパもう寝たら?」と一蹴。寝る前に常用薬を飲み歯を磨くよう促されたパオロは、ブツブツと文句を言いながら従った。
救急隊の男性には、認知症の母があった。彼はぼうっとする母の手を取りキッチンまで連れて行き、何が心配なのか尋ねたが要領を得なかった。彼は不安を残しつつ仕事へ出掛けた。
植物学者の老人は、痛み始めヤシの木を調べた。木の内部から響く音を聞く彼は、ヤシオオオサゾウムシは仲間同士でコミュニケーションをとって連携していると語り、それを「レストランに響く人間の話し声みたいだ」と表現する。自宅へ戻った彼は、捕らえた数多の虫を窒息させる実験を行った。
イタリアには今宵も夜が訪れ、高速道路には無数の車のヘッドライトが連なっていた。
映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』の感想・評価・レビュー
テレビや雑誌では到底取り上げられることのない、その街に住む人々の日常にフォーカスを当てた斬新なドキュメンタリー映画だった。
私はよく電車で通過する駅や、運転する車内から見える景色に対し「ここにも人は住んでるんだよなあ」と人それぞれの“日常”を考える。自分は〇〇駅から決まったルートで自宅へ戻るが、一本違う道にも人の家はあり、彼らは目的地は同じでも自分と違う道を歩いている。「観光地」として有名な場所も、そこに暮らす人間と観光客とでは捉え方も見える景色も違う。
自分以外の“主役”がどんな生活を送っているのか、覗き見るような不思議な感覚に陥る作品だった。(MIHOシネマ編集部)
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