映画『レイトオータム』の概要:1966年に制作された韓国映画「晩秋」をキム・テヨン監督がリメイクした一作。夫殺害の罪で服役中の身の女性。母の葬儀のため外出した先で出会った男性と過ごす、限られた時間を描く。
映画『レイトオータム』の作品情報
上映時間:113分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:キム・テヨン
キャスト:ヒョンビン、タン・ウェイ、キム・ジュンソン、キム・ソラ etc
映画『レイトオータム』の登場人物(キャスト)
- アンナ(タン・ウェイ)
- 夫の暴力に耐えかね、殺害してしまったため服役していた女性。一時外出中にフンと出会い少しずつ閉じこもった殻から抜け出し始める。
- フン(ヒョンビン)
- 「エスコート・サービス」という女性をもてなす仕事をしている。上顧客の夫に不倫と疑われ逃げている最中にアンナと出会う。心を開かないアンナに興味を持ち、客ではなく人として接していく。
映画『レイトオータム』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『レイトオータム』のあらすじ【起】
くたびれた表情で人気のない住宅街を走り出す女性。彼女の名前はアンナ。顔には複数のあざがある。思い立ったように来た道を戻ったアンナは、自宅へ向かった。そこには大の字に倒れる男性がいた。アンナは夫の暴力に耐えかね、殺害してしまったのだった。
7年の月日が経ち、アンナは服役中に母の死を知らされた。葬儀に出るため、72時間という限られた時間だけ、定期的に電話に対応するという条件で外出の許可を得たアンナ。シアトル行のバスに乗っていると、一人の男性が駆け込み乗車してきた。そして唯一アジア人であったアンナに、バス代を貸して欲しいと話しかけてきたのである。仕方なくお金を貸したアンナに、その男性は「大切なものなんだ」と良いお金を借りた保証として時計を渡してきた。男性の名前はフン。フランクなフンの振る舞いをアンナは少し疎ましく思っていた。
長いバス旅の道中、フンは何度か電話で誰かに“状況”を確認していた。誰かに探されている様子である。ようやくシアトルにある母の家に着いたアンナ。数年振りに再会した家族たちは仰々しく、居心地は良いものではなかった。早々に母の家を売るという話を受け、いざこざに巻き込まれる。気分転換に家を出たアンナは、幼馴染のワンと再会する。同情したようなワンの態度にアンナは虚しさに苛まれるのだった。
映画『レイトオータム』のあらすじ【承】
その頃、フンは仕事をしていた。それはあらゆる女性からの依頼に対応する「エスコート・サービス」である。
気分転換にアンナは街へ買い物に出た。服役中に閉じ切ったピアスの穴を久々に使い、着飾ったことで満足した矢先に刑務所から所在確認の電話が来る。どういった立場に置かれているのか痛感したアンナはトボトボと駅のトイレへ向かい、元の服装に着替え直すのであった。仕事を終えたフンは、街中で一人ぼーっと座り込むアンナを見かけた。借りたお金を返そうとしてもアンナは返事をしない。そして、「私と寝たい?」と言い出すのだった。
フンはアンナを泊まっているホテルへ迎え入れた。手慣れた様子でアンナに触れるフンだったが、咄嗟に拒まれ突き飛ばされてしまう。ずっと暗い表情のアンナに、フンは一緒に外出しようと誘う。食事をしながら初めてお互いの名前を伝え、面と向かって会話をした二人。フンはシアトルを案内すると提案し、水上バスのツアーにアンナを連れ出した。
ツアーの団体と離れた二人。フンは遊園地を目指した。あいにく休園日であったが、こっそり忍び込み二人はメリーゴーランドに乗る。この頃にはもう、アンナは強張った表情は見せなかった。少しずつ打ち解け始めた二人。アンナは初めて自分のことを話し始めた。72時間という制限の中で、シアトルにいること。そして服役中の身であることも。
映画『レイトオータム』のあらすじ【転】
実はアンナは幼馴染のワンと付き合っていた。しかしワンはアンナではない女性と結婚。アンナも諦めて別の男性と結婚したが、ワンが再び目の前に現れたことで人生が変わり始める。過去の関係に踏ん切りがついていなかったワンは、復縁を求め「駆け落ちしよう」と提案してきたのである。計画はすぐに夫に知られ、アンナを暴力でねじ伏せようとしていた。耐えきれなくなったアンナは、夫を殺害。刑に服しているという。
辺りが明るくなり始める時間帯まで二人は一緒にいた。フンに上顧客から連絡が来る。状況を察したアンナは別れを伝え、料金を払おうとする。貸していた30ドルを相殺して、手元にある10ドルを手渡すが、フンは「30分だけ待っていて欲しい」と伝えその場を去った。
フンは上顧客が待つホテルのラウンジに向かった。実は、この上顧客の夫に不倫相手だと勘違いされ追われていたのだった。女は「自分と一緒に居たらいい」と大金を手渡すが、フンはホテルの部屋まで送り届け上顧客の元を去るのだった。
アンナは、フンを待ちながら悩んでいた。刑に服している身分であるからだ。アンナは部屋にフンの腕時計を残し、母の葬儀場へと向かう。そして、ぎすぎすとした関係の兄弟に見られず、たった一人で母と最期の会話をした。
映画『レイトオータム』の結末・ラスト(ネタバレ)
葬儀にはワンも参列していた。表向きは幼馴染であることから、平然としていたがアンナの気持ちは複雑だった。そんな時、フンが葬儀に来たのである。葬儀後の食事は母の経営していたレストランで行われる。一人座るフンと同席したアンナ。深くは聞かないフンにアンナはほっとする。しかし、そこへワンの妻が声をかけてきた。ワンも同席し、気まずい時間が流れるが、フンが見事な話術でワンの妻をだました。
その様子が気にくわなかったワンはフンにケンカを仕掛けてくる。取っ組み合いになる二人を仲裁したアンナに対して、フンは「人のフォークを使った」と理由を告げる。それは妻がいながらアンナに駆け落ちを持ちかけたワンへの皮肉である。それを読み取ったアンナは泣き崩れながら、ワンにこれまでの怒りをぶつけた。ようやくこれまで抑えていた感情をぶつけることができたアンナ。刑務所に戻るためバスに乗り込むと、フンは隣に座った。初めて会った時のように並んで座った二人は、互いのことを話し始めた。
バスが濃霧のため休憩に入った時、フンの電話が鳴る。突如頭に袋をかぶせられたフン。目の前には複数のガタイの良い男と、上顧客の夫が立っていた。そして上顧客は殺されたと聞かされる。じきに警察が自分を探しに来ることを知り、フンはアンナの元へ戻った。そしてキスを交わすのであった。ようやくフンを受け入れたアンナ。そうしてフンとアンナは約束する。「またここで会おう」と。心配されぬよう、バスに戻りアンナが眠っている隙にフンは姿を消した。
2年後、出所したアンナはフンと約束した場所に向かう。来る確信もないままに。
映画『レイトオータム』の感想・評価・レビュー
とてもグレーな状況下で少しずつ愛を育む二人を繊細に描き切った一作であった。決して笑顔を見せないヒロインと、女性をもてなすプロの男。交わることがなさそうな二人が共に過ごしたのは、時間にするとたった72時間。物語として派手やかなものではないが、余韻が深く記憶に残るものである。見る年代により受け取り方は異なるであろうが、「大人」と呼ばれる人たちには見てほしい作品である。(MIHOシネマ編集部)
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