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映画『わたしはロランス』あらすじ&ネタバレ感想

撮影時弱冠23歳の若き才能グザヴィエ・ドラン監督がメガホンを取ったラブストーリー。男性教師がある日突然女性になりたいとカミングアウトしたことで、彼女や家族との関係が揺らいでいく。メルヴィル・プポー主演。

映画『わたしはロランス』 作品情報

  • 製作年:2012年
  • 上映時間:168分
  • ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
  • 監督:グザビエ・ドラン
  • キャスト:メルビル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ etc…

映画『わたしはロランス』 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『わたしはロランス』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『わたしはロランス』のあらすじを紹介します。

カナダのモントリオールで国語教師をするロランス(メルヴィル・プポー)は生徒からの信頼も厚く、フレッド(スザンヌ・クレマン)との交際も順調だった。しかし彼にはある秘密があった。自分の気持ちと身体が一致しておらず、内心では女性になりたいと思っていたのだ。30歳の誕生日を機にフレッドにこのことを告白するロランス。突然のことに動揺し非難するフレッドだったが彼を応援することを決意し、服やメイクなどのアドバイスをするようになる。しかし周囲の視線は冷やかだった。職場でカミングアウトすると、友人たちは理解してくれたものの精神病と判断され解雇される。母親のジュリエンヌ(ナタリー・バイ)にも受け入れてもらえない。ついにはフレッドも耐えきれなくなり2人は破局してしまうのだった。

数年後2人は別々の生活を送っていたが、ある日フレッドはロランスが出版した詩集の中に自分へのメッセージを見つける。再会を果たした2人はそれまでの生活を投げ捨てて旅に出る。それは2人のこれからを探す旅だった。しかしフレッドがかつて2人の子を中絶していたことを告白し、2人の旅は終わる。

更に数年後、作家として名をあげたロランスはカフェでフレッドとまた再会する。しかし2人はお互い別々の道を歩むことを決意していた。ロランスは2人が初めて出会った頃のことを思い出しながら去るのであった。

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映画『わたしはロランス』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『わたしはロランス』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

マイノリティの苦悩、周囲の苦悩

ロランスは性同一性障害のマイノリティであり、カミングアウトの代償に職場を解雇されるなど苦悩を背負っている。しかしカミングアウトされた側のフレッドも同等かそれ以上の苦悩を背負わされる。ロランスの人間性を愛しながらも、社会的に一緒にいることに不安を感じ結果中絶に至る。カフェでの圧巻の啖呵は彼女の苛立ちが良く表現されている。

ロランスは同じ境遇の仲間たちに出会い居場所を見つけることができたし、小説家になるという夢だってある。母親も最後には理解者となってくれる。ところがフレッドはそうはいかない。彼女の苦悩は誰にも理解されず、逃れるように作った家庭も本当の居場所にはならない。セクシャルマイノリティーの苦しさは勿論、それを受け入れる側の苦しみを描いているのだ。

修復された母と子の関係

ロランスの母ジュリエンヌもまた、ロランスの変化を受け入れられない。母親は息子の成長の過程でその性を意識せざるを得ない。つまり男にとって母親は、恋人や妻に並ぶ異性の存在なのだ。さらに彼女の夫つまりロランスの父親は厳格な人間であり、家族全体が保守的かつロランスも家族の愛を十分に得ていなかったことが想像できる。そんな状況で息子を否定するジュリエンヌだが、心身共にボロボロになったロランスを見てついに彼(彼女)を受け入れる。ただしそれは性をもった存在ではなく、守るべき子供としてだ。息子の性の転換が皮肉にも、母と息子の間に横たわる性の違いを取り除き、親子の関係性を改めて修復するきっかけを生んだのだ。


本作は、主人公の男性国語教師のロランスがある日「女性になりたい」とカミングアウトし、変化していく彼女や家族との関係を描いたラブストーリー作品。
映像技法やフレーミング、ファッション、色彩感覚などセンスに溢れていて素晴らしかった。ロランスがカミングアウトしてから、女装し始め見た目が変化すると同時に周囲の目も変わっていく様子が描かれているところも良くて、本作の軸でもあるトランスジェンダーの宣言的な描き方は大変興味深かった。
特に、パーティーシーンには目が離せなかった。(女性 20代)

映画『わたしはロランス』 まとめ

23歳とは到底思えない映像のセンスが光る作品。ビビットな色づかいに、巧みに用いられるジャンプカットやスローモーションといった映像言語。まるでPVでも見ているかのようなファンタスティックな映像で観るものを圧倒する。そしてとにかく何かが降ってくる映画だ。バケツをひっくり返したような大量の水、落ち葉、そして色とりどりの洗濯物。悲しいシーンに雨を降らすなんてのは定番の演出だが、グザヴィエ・ドランはその遥か先を行っている。ここまで感情を映像化することに長けた監督はそういないだろう。セクシャルマイノリティーの繊細な描き方も素晴らしい。初めて出会った時を思い出すラストシーンでは思わず涙してしまう。惜しむべくは168分とあまりにも上映時間が長いことだろう。

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