映画『レ・ミゼラブル(2019)』の概要:『レ・ミゼラブル』の舞台であるフランス・モンフェルメイユは、低所得者や移民が多く暮らす犯罪地域と化していた。この街の犯罪対策班に配属されたステファンは少年が引き起こした盗難事件の解決に臨むが、事態はあらぬ方向へ悪化の一途を辿る。
映画『レ・ミゼラブル』の作品情報
上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ラジ・リ
キャスト:ダミアン・ボナール、アレクシ・マナンティ、ジブリル・ゾンガ、ジャンヌ・バリバール etc
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映画『レ・ミゼラブル』の登場人物(キャスト)
- ステファン・ルイス(ダミアン・ボナール)
- シェルブールから異動して来た警官。以前は地域部の警官だったが、同業の前妻が異動になりモンフェルメイユ近郊へ引っ越したため、息子と会うために異動願いを出した。クリスから意地悪く「何故この街にヴィクトル・ユゴー校があるか?」と問われた際、『レ・ミゼラブル』の舞台だからと即答し彼とグワダを驚かせた。治安の悪さから威圧的な態度で均衡を保たせようとする警察と、理不尽な環境で生きている移民の実態を目の当たりにして葛藤する。
- クリス(アレクシ・マナンティ)
- ステファンが配属された犯罪対策班、通称BACの班長。ベテランの警官で経験豊富。それ故に威圧的・高圧的な態度で現地住民に接する。彼に反感を持つ住民はとても多い。妻と二人の娘がいる。
- グワダ(ジブリル・ゾンガ)
- クリスの相棒。アフリカ系移民。誤ってイッサの顔面へゴム弾を撃ってしまったが、反省の色はなく、むしろ子供達に責任を擦り付ける。母親と二人で小さなアパートに暮らしている。
- イッサ(イッサ・ペリカ)
- アフリカ系移民の少年。素行が悪く、度々補導されては警察署へ父親を呼ばれている。いたずら心からサーカスの子ライオンを盗むが、それが大きな事態へと発展してしまう。
映画『レ・ミゼラブル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『レ・ミゼラブル』のあらすじ【起】
サッカーワーッルドカップに熱狂するモンフェルメイユへ異動して来たステファンは、クリスとグワダに迎えられ警察署を目指した。警察車両に揺られるステファンは、彼らによって早々に“ポマード”とあだ名を付けられて揶揄われながら、警察署のあるボスケ地区がかつてドラッグ売買の中心地であったと説明を受けた。ドラッグを売りさばいていたムスリム同胞団を壊滅させたクリスとグワダは犯罪対策班・通称BACとして活躍する敏腕刑事で、現在はナイジェリア人の売春組織に手を焼いていると言った。
警察署へ到着したステファンはBACの一員として迎えられた。彼はルーマニア人から鶏を盗んだことで呼び出されていた少年・イッサを横目に、BACのオフィスへと通された。
警察署長のシャンディエはステファンを自身のオフィスへと呼び出し注意事項を述べた後、単独行動ではなくチームの団結力が重要と話した。ステファンはそのまま初日の任務にあたった。
内気な少年バズは、ドローンで近所の女性の着替えを盗撮することが趣味だった。屋上でドローンを飛ばしていた彼は“市長”に呼び出され、同じ団地の少年らと共に三人の男の前に連れ出された。男達はアッラーへ祈りを捧げると、バズや他の少年らのモスクでの態度を注意したが、当の本人達は適当に返事をしただけだった。
クリスとグワダに付いて街のパトロールに出たステファンは、不法移民が多く暮らす地区を見回った。クリスは、バス停でハシシを吸っていた少女達に職務質問を行い入手先を聞き出そうとしたが、少女達に不当逮捕よと騒がれてしまいその場を後にした。
映画『レ・ミゼラブル』のあらすじ【承】
ステファンは、ベストを着て作業をしている男達は何者なのかクリスへ訪ねた。クリスは、彼らは“市長”の下で働く肉体労働者で、投獄されない代わりに雑務を行っていると説明した。クリスはステファンを“市長”へ会わせるため市場へ向かったが、その正体はアパート一帯を取り仕切るギャング紛いの大柄な黒人だった。
マーケットを歩く三人は、怒号を聞き声のする方へ向かった。罵詈雑言を拡散していたのはサーカスの宣伝カーで、マイクを手にした団長のゾロは「ジョニーを無事に返さなきゃお前らをぶっ殺す」と怒りを露わにしており、誘拐犯を攫おうとしていた。クリス達はゾロの車を追った。
宣伝カーは一通り街を徘徊した後、“市長”の元を訪れた。ゾロは“市長”へ、団地に住む黒い服を着た黒人の少年がジョニーを盗んだと訴え、24時間以内に返せと迫った。要領を得ない話に困惑する“市長”とその手下はゾロと一発触発の緊張状態に陥ったが、駆け付けたクリス達が事情を聞いた。
ジョニーは、サーカスで育てているライオンの子供だった。クリスは“市長”へ子供達をしっかり管理するよう言い、ライオン探しへの協力を仰いだ。マシャは、警察が“市長”を頼ったことを受け自分達が下手に出る必要はないと言った。
ライオン探しを始めたクリスは、「アホなことしたら皆に見せたがる」と言い真っ先にインスタやツイッターなどのSNSをチェックした。クリスはその足でステファンをサラーの店へ行かせ、ジョニーを盗んだ人物について情報を得るよう指示した。
客が移民ばかりの店内に気圧されたステファンは、恐る恐るサラーへジョニー盗難について伺った。サラーは「ライオンは強さの象徴だから檻に入れてはいけない」とコーランの教えを説き、ステファンを帰らせた。サラーとのやり取りをクリスに報告したステファンは彼が何者かを問い、クリスは、サラーは元チンピラで今はここのボスをしていると答えた。
映画『レ・ミゼラブル』のあらすじ【転】
段ボールを手に帰宅したイッサは、母親へ箱に入ったライオンを見せた。彼は地下室へライオンを連れて行き、飼育しようとした。
SNSをチェックしていたクリスは、ライオンを抱いた写真をインスタにアップしていたイッサのアカウントを発見し、彼の元へ急いだ。三人はサッカー場で遊ぶイッサを発見し問答無用で彼を抑えつけたが、周囲の子供達の反撃により取り逃してしまった。逃げるイッサを追い詰めた三人だったが、グワダはイッサを庇おうと激しく抗議する子供達の大声で緊張感がピークに達し、尚逃げようとするイッサへ反射的にゴム弾を撃ってしまった。バズのドローンは、その様子を鮮明に捉えていた。
飛び立つドローンに気付いたクリスは救急車を呼ぼうとするステファンを制止し、先にドローンを回収すると言った。彼は顔面を負傷し気を失ったイッサを車に乗せ“ハイエナ”の元へ向かうと、彼へドローンを探すよう依頼してイッサをアジトへ預けた。
子供達は、イッサが警察からゴム弾で撃たれた場面をドローンが全て撮っていたと“市長”に報告した。警察を強請ろうと思い付いた彼はバズを捜した。
同じ頃、バズはドローンの映像を動画サイトへアップしようとしていた。そこへバズの居場所を突き止めたクリス達が押しかけたが、バズはSDカードを持ってサラーの店へと逃げ込んだ。
バズを追うクリス達と“市長”らは、サラーの店で一堂に会した。サラーは双方の主張を動じることなく聞き流すと、静かにケバブを作り始めた。ステファンは、グワダのゴム弾がイッサの顔を撃ったのは事故だとサラーへ説明し、動画が出回れば暴動が起きて街の秩序が乱れてしまうと説得した。イッサの安全を保障すると言うステファンを信用したサラーはバズのSDカードを彼へ渡したが、この件での民衆の怒りは避けられないと忠告した。
映画『レ・ミゼラブル』の結末・ラスト(ネタバレ)
イッサを連れ戻したクリス達は、ライオンの目撃情報を得てジョニーを保護、ゾロの元へ向かった。ゾロは犯人のイッサを見るや大人のライオンの檻に彼を連れ込み、興奮するライオンの前に突き出した。ステファンは銃を向けたが、ゾロは「からかっただけだ」とイッサを解放した。
クリスは、「傷は転んでできたと周囲に言え」とイッサを恫喝した。彼を帰したクリスはステファンへSDカードを渡すよう迫ったが、ステファンは「もう部下じゃない」と啖呵を切った。自分のミスが発露することを恐れたクリスはステファンを脅迫したが、グワダは「動画は奪っても口は塞げない」と彼を窘めた。
その夜、バーを訪れたステファンはグワダを呼び出すと、「ゴム弾の構造上“うっかり”はあり得ない」と切り出した。故意に発砲した理由を問われたグワダは、子供達の喚く声で頭に血が上ったと説明し、ステファンは事態を子供のせいにする彼へ説教した。しかし、グワダは最後まで謝罪や反省はせず、話し合いは無駄だと悟ったステファンは彼へSDカードを渡し「すべきことをしろ」と言って店を出た。
翌日、クリスとグワダと共にパトロールへ出たステファンは、イッサとその仲間達によってロケット花火での襲撃を受けた。クリス達はイッサ達が逃げ込んだアパートへ突入したが、黒いパーカーを来た大勢の子供達に上階と下階の両方から追撃され逃げ場を失った。
騒ぎを聞きつけてやって来た“市長”は、ギャングの真似事をする子供達へ「何が気にくわないんだ、何がしたいんだ」と攻撃を止めるよう叫んだが、彼らに袋叩きにされうずくまった。
クリスは投げられたガラス瓶で目を負傷した。騒ぎを止めに来た“ハイエナ”もまた、“市長”と同じく子供達に滅多打ちにされ、ステファンは近くのドアを叩いて助けを求めた。しかし、中にいたバズはそれを無視した。手も足も出なくなったステファンらの元へ、火炎瓶を手にしたイッサが近づく。ステファンは銃を構えて止めるように説得したが、イッサは火炎瓶を持つ腕を下げることなく、彼を見つめた。
映画『レ・ミゼラブル』の感想・評価・レビュー
エンドロール前に挿入された「友よ、よく覚えておけ。悪い草も悪い人間もいない。育てる者が悪いだけだ」という『レ・ミゼラブル』内からの引用が心に重くのしかかる。ラストシーンは文学好き(あるいは行間を読むのが好きな日本人)が得意そうな“含み”と余韻を秘めていて、「本当の結末はあなたの想像に任せます」という心地よい意地悪さがある。
鑑賞を終えた後は、とにかく鳥肌が止まらなかった。悪者は誰かと聞かれた時に分かりやすく説明できるのはクリスだが、彼だってああ振る舞いたくてやっていたわけではない。自分を守るための態度・言動が思想を変えてしまったのだ。
ステファンの立ち位置は観客側であり、彼が何をすれば正解だったかは一言では言い表せない。それはつまり、物語の中で起きている問題は、映画を観ている“私の責任”として考えさせられる仕掛けになっているからだ。現代社会への問題提起としてとても有効的な作品だった。(MIHOシネマ編集部)
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