映画『マリアの乳房』の概要:他人の死期が分かってしまうとき、貴方なら死の恐怖をどうやって拭い去ってあげるだろう。低所得者が集まり、身を縮こませながら荒涼とした町で死を迎える人たちに、真生は自分の体を差し出し、そっと死へ送っていく。
映画『マリアの乳房』の作品情報
上映時間:86分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:瀬々敬久
キャスト:佐々木心音、大西信満、松永拓野、飯島大介 etc
映画『マリアの乳房』の登場人物(キャスト)
- 塚本真生(佐々木心音)
- 幼少時、超能力少女として一世を風靡する。6歳の頃、たった1度行ったインチキで批判の嵐に呑まれ、それからはひっそりと売春をして暮らす。
- 立花(大西信満)
- 中学校の理科教師。真央の超能力の話が聞きたいと近寄ってくる。
映画『マリアの乳房』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『マリアの乳房』のあらすじ【起】
塚本真生は、かつて超能力少女としてテレビに出ていた有名な少女だった。成人した現在、真生は老人や浮浪者を相手に服を脱ぎ、自分の体を使って安らぎを与えている。
真生がいつものように町の路地裏で男に体を見せていると、ベージュのロングコートを着た男が真生をじっと見ているのに気付く。別の日、真生が客だった老人の家を訪れると、その場にも男は現れ、一定の距離を保ちながら真生の後を追ってくる。
男性は立花と名乗り、突然真生に話を聞かせて欲しいと言うが、真生は何も言わず一目散に逃げる。それからも立花は真生の自宅前で待ち続け、根負けし近づいてきた真生に、町で噂になっている人の寿命がわかるストリートガールが真生ではないかと問う。
訝しがる真生に立花は中学校の理科教師だと伝え、勝手に真生の家に上がり込むとキッチンからスプーンを持ち出し真生に渡す。真生は立花の申し出を拒否し、裸足のまま家から出て行ってしまう。
歓楽街のはずれで、真生が相手をした浮浪者が心臓マヒで亡くなっていた。数人の男たちが浮浪者の遺留品を漁っていると、真生に気が付き真生を悪魔だと罵倒した。
立花は真生の帰りを真生の自宅で待っていたが、その後、真生が行きそうな場所を歩き回る。海辺で真生が熱を出して倒れているのを発見すると、真生を病院へ連れて行き、服を買い与え、食事を御馳走する。
家に帰ると、真生はお礼に1つだけ力を見せると言い、3つのカップのどれかに入っている赤い飴玉を悉く言い当てる。スプーン曲げの方が中学生たちには魅力的に映るという立花に、真生は少しがっかりしたようにそうですねと返答する。
過去に1度、6歳の頃の真生はテレビの前で超能力ではなくトリックを使った。期待と羨望の入り混じる多くの人からの視線に耐え切れなかった当時の真生は、力を上手に使えなかった。
テレビ局の人に、できなければ曲がったスプーンとすり替えても良いと言われていた真央は言う通りにする。しかしそれから、真生の元には謂れのない非難が聞こえるようになる。
立花が帰り1人になった真生は、部屋でスプーンに念じる。スプーンは段々と首を曲げ、次第にぽとりと柄の部分から先端が離れて落ちた。
映画『マリアの乳房』のあらすじ【承】
立花は殺風景な自室でビデオを回し、過去に真生を取材した妻の記録を見直す。フリーのテレビディレクターだった妻は、その取材で真生から3か月以内に死ぬと宣告されていた。
夜が明けて、立花が再び真生の後を追いかけると、真生は古びた工場に入り、そこで初老の男性と情事に及んでいた。真生は男性に、怖くないから安心してと囁きかけている。
工場から出てきた真生に理由を問いかけるが、真生は立花を無視して歩く。廃工場の男性は、工場の梁から吊るしたロープから首を吊った。
真央は立花に、トリックと言われてから両親や友人に見放され、中学3年生の頃に話しかけられた不良少女には騙されて、男たちに輪姦された過去を語る。そして、車に轢かれたときに不思議な現象を体験してから自分は変わり、人の死が分かるようになったとのこと。
立花は真生のしていることに怒り、真生を再び先程の工場に連れて行く。工場の男性の妻が男性の死体に縋りついて泣いている姿が見えた。
真生は死の恐怖から人を救いたかったと涙を浮かべるが、立花は他に方法があったはずであり、真生のやり方はそれらを全て断ち切り、希望まで奪い去ると罵倒する。だが、真生の人はどうせいつか死ぬという極論に、返す言葉もなかった。
立花は自宅のソファに横になりながら、妻の残したビデオレターを流す。病院で自らの死期を悟った妻が残したメッセージには、なぜ自分に病気のことを隠したのかと涙ながらに立花を責める妻の姿が映っていた。何度も繰り返し見た映像に、立花はビデオカメラを抱きしめ、今日も涙を流した。
映画『マリアの乳房』のあらすじ【転】
少年は自殺の名所として名高い橋から、思いつめた表情で川を眺める。そこに、いのちの電話が設置されていることに気付き、ダイヤルボタンを押した。電話の向こう側で女性が少年に大丈夫と話しかけていたが、少年はすぐ近くで男性がじっと自分を見ていることに気付き電話を切る。
偶然少年を見ていた立花は、少年を追いかけ、怖かったから自殺するのかと問いかけた。少年は立花に言われ、駅前でじっと立っている真生に近づく。真生は少年と情事に及び、少年がクラスメイトからいじめに遭っていたことや、激しく暴力を奮う父に怯える日々を過ごしていることを超能力で感じ取る。
怖くないよと少年に囁きかけ、真生は少年の体をそっと抱きしめた。2人がベッドで交わりあっている姿を、立花はじっと隠れて見つめる。少年が部屋から出ていくと、真生の前に姿を現し、真生を連れて少年を追いかける。
2人の目の前で少年はビルから飛び降りた。足が竦み動けない真生に、無理やり少年の生々しい死体を見せる。真生は叫び声を上げ後退りをするが、立花が真生の腕を掴む。そして、一度は死ぬのを躊躇ったのに、君が関わったせいで少年は死んだと真生に声を荒げる。ずっと1人で隠れて生きてきた真生は、人の役に立ちたかったと泣き崩れた。
立花は泣きつかれた真生を自宅に送り、横になっていた真生に飴玉を差し出す。真生はドラえもんの便利な道具に「思い出キャンディー」があれば良いと語る。それは飴玉を舐めれば楽しかった思い出がもう一度体験できる道具らしい。
立花は唇を震わせながら、子供が考えそうなことだと呟いた。帰ろうとする立花の腕を真生が掴むと、真生は自分が立花を刺してしまう未来を見る。
余りの事に真生は驚き言葉を無くすが、それを立花に話す気にはなれなかった。
映画『マリアの乳房』の結末・ラスト(ネタバレ)
立花のことが気になった真央は、立花の自宅を訪れる。ベッド脇に置いてあったビデオカメラを興味本位で再生すると、過去に自分を取材してきた女性のビデオレターが流れ、女性が立花の奥さんだったことを知る。そして同時に、奥さんが病気を知ったことで自殺していた事実を知る。
戻ってきた立花に、真生は取り乱しながらナイフを向ける。立花は、真生の死の恐怖を安心させたいという思いは共感するけれども、死は出発ではなく終わりなのだと言う。
唇を震わせ涙を流す立花を真生は強く抱きしめ、2人は体を重ね合わせた。翌朝、目を覚ました立花の手を取り、真生は未来が変わったことに安心する。立花は真生に、一緒に町を出ようと微笑みかけた。
真生は自室でスプーンとフォークの入った引き出しを開け、真っ直ぐのスプーンに念じてみる。スプーンは一向に曲がらず、真生は笑みを浮かべた。
立花の待つ駅まで歩いていくと、真生は道の途中で警察官2人が取り押さえているナイフを持った男と目が合った。男は顔中を血だらけにし、ナイフにも血がべっとりと付いていた。
眉を顰めながらも、真生は前方に立花の姿を発見する。立花は真生の姿を見て微笑み、その場に倒れる。立花の腹部からは大量の血が流れ出ており、立花は虫の息だった。
死なないでと懇願する真生に、立花は飴玉を差し出す。血だらけになった包装紙から飴玉を取り出すと、真生は立花の口内に飴玉を入れてあげた。
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