映画『スローなブギにしてくれ』の概要:主演、浅野温子の幼い少女から大人の女性へと変貌していく様がありありと描かれた一作。ムスタングを乗り回す大人の男性、怖いもの知らずの青年と、小悪魔的な女子高生が織りなす80年代の日本版ハードボイルド作品。
映画『スローなブギにしてくれ』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:藤田敏八
キャスト:浅野温子、山崎努、古尾谷雅人、原田芳雄 etc
映画『スローなブギにしてくれ』の登場人物(キャスト)
- さち乃(浅野温子)
- 女子高校生。家出をしてあちこちを放浪して歩く野良猫のような少女。
- ゴロー(古尾谷雅人)
- 高速道路の路肩に捨てられたさち乃を連れて帰り、彼女にする。男尊女卑の時代を象徴するかのような男。
- ムスタングの男(山崎努)
- 会社役員だが仕事もせず好き放題に生活している。前妻と離婚し、輝男と敬子と敬子の妹由紀江、自分の子供かどうかも分からない幼児の5人で暮らしている。
映画『スローなブギにしてくれ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『スローなブギにしてくれ』のあらすじ【起】
高校生のさち乃は、ムスタングに乗る中年男性に誘われてドライブに出かける。高速道路を走行途中、男が突然さち乃の頭を掴み、無理やり自分の性器を咥えさせようとする。さち乃が連れていた猫に手を引っかかれた男は、猫とさち乃を高速道路に置き去りにする。
ムスタングの後ろを走っていたゴローは、路肩に放り出されたさち乃に声を掛け、一緒に連れて行くことにする。レストランで軽食を取っている最中、さち乃はムスタングに電話帳も含めた2万円の入った財布を忘れてきてしまったことに気付く。
さち乃をナンパしたムスタングの男は、友人輝男と敬子、敬子の妹と敬子が生んだ幼児の5人で旧米軍ハウスに暮らしていた。男がさち乃をナンパした日の夜、輝男は日課のジョギングに出かけたまま心臓発作で亡くなってしまう。
気持ちを落ち着かせるため、ムスタングに乗り好きなクラシックを聴いていた男は、車内にさち乃が忘れた財布を発見する。そのまま、電話帳に記載してある横浜の住所まで車を走らせた。
鉄道が真横に通るボロアパートのさち乃の実家に男が訪問すると、左手を骨折したさち乃の母春代が不機嫌そうな表情で男を迎える。男は春代に自身の連絡先を渡すと、アパートを後にした。
映画『スローなブギにしてくれ』のあらすじ【承】
輝男の父と母が男の自宅を訪れ、男と輝男と敬子の関係性を問う。仕事で輝男と敬子に出会い、3人が肉体関係を持つと同時に共同生活が始まったことを説明する
輝男の父とは母はその状況が全く理解できず、男が輝男を殺したのだと責める。異様な雰囲気の中電話が鳴り、次の日男は電話を掛けてきたさち乃と会う。
さち乃に財布を返し、さち乃をゴローのアパートの近くまで送る。男は別れ際、さち乃に力強くキスをした。
その年の秋、さち乃はゴローの行きつけのスナックのマスターに誘われお店で働き出す。一方で、ゴローはバイト先の店長と喧嘩をしてクビになり、逆ナンパされ知り合った美女とホテルで浮気をする。仕事を終えて帰ってきたさち乃に、ゴローは新しいバイクが欲しいと言い出し、さち乃に体を売るように暗に求める。
浮気したことを自慢げに話し、美女から貰ったお金をさち乃に見せびらかす。気持ち悪いとさち乃が嫌悪感を露わにすると、ゴローはさち乃に暴言を吐き部屋を出て行った。
次の日の朝、さち乃はムスタングの男に電話をしていた。さち乃が働いているスナックのクイーンエリザベスに男を呼び出す。来店した男を見てさち乃は涙を流し、男はさち乃を旅行に誘った。
映画『スローなブギにしてくれ』のあらすじ【転】
男からもらったお金で買った新しい服を着て、さち乃は男とドライブに出かける。高原のホテルに到着し、男がさち乃を求めるとさち乃はおずおずと応え、2人は一夜を共にする。
次の日男は、さち乃をホテルに置いて実子マリのビアノの発表会に赴く。演奏会終了後、離婚した元妻はマリを連れて足早に会場を後にし、娘とろくに会話もできなかった男は、1人やけ酒を食らい酔っぱらってホテルに戻る。
さち乃は、男の酒癖の悪さとマリから男宛てにかかってきた電話に嫌気が差す。
帰宅した後、さち乃がクイーンエリザベスで働いていると男が来店する。男はさち乃に惚れたと告白するが、さち乃は子供の代わりじゃないからと突っぱねた。肩を落とした男が店を後にし、さち乃も1人夜の街を歩いて帰る。しかし、部屋にゴローの影を見つけると、帰る気になれないさち乃は1人ぶらぶらと川沿いを歩く。
暗い夜道に大きめなバンが現れ、さち乃はなんとなく怪しいと思い警戒する。男2人があっという間にさち乃を攫い、さち乃はレイプされた。
いつまで経っても帰ってこないさち乃を心配したゴローは、バイクで町中を探し回る。電話ボックスでボロボロになったさち乃を発見し連れて帰るが、抵抗できなかったのかとさち乃を責める。更にさち乃を薄汚いと罵ったゴローは部屋を飛び出し、さち乃をレイプした犯人を捜して回る。
聞き込みをしても犯人は見つからなかったが、ある日クイーンエリザベスに犯人がやって来る。マスターから話を聞いたゴローは、犯人の職場まで乗り込み2人をリンチにする。仇を討ったと意気揚々とマスターに報告するゴローとは対照的に、ゴローから売春婦とまで言われたさち乃は、ゴローに嫌気が差して再び男に連絡する。
男はさち乃を自分の家に居候させるが、すぐに敬子と敬子の妹由紀江と折り合いがつかず、さち乃はそそくさと家を出て行く。さち乃が家を出たことで、敬子と由紀江も男の家を出て行く決心をする。
映画『スローなブギにしてくれ』の結末・ラスト(ネタバレ)
秋も終わり冬に入った頃、男は再びさち乃の実家を訪ねる。しかし、さち乃は戻っておらず、他に当てのない男はクイーンエリザベスに赴いた。そこにゴローも来店し、男を見るや否や暴言を吐きながらさち乃の居場所を問う。
だが、お互いに逃げられた同士だと分かった2人は苦笑いを向けた。ゴローが店を出て帰ろうとしたところで男2人に襲われる。男らはゴローを押さえつけ、ナイフを取り出す。
丁度店を出てきた男がゴローの助けに入り、ナイフで腹部を刺されてしまう。
男が入院していると、数か月ぶりにさち乃が姿を現した。男はさち乃に、ゴローと自分とどっちのセックスがよかったか問う。答えに困っていたさち乃に、男はゴローのところへ行ってやれと笑いかけた。
さち乃は男に持ってきた花を叩きつけ、その足で男の家に向かう。誰もいなくなった米軍ハウスは、廃墟のような薄気味悪さを纏っていた。さち乃は家に入ると、冷蔵庫の腐った食材を壁に投げつけ、家具で窓ガラスを割り、家をめちゃくちゃにして帰った。
全快したゴローは、クイーンエリザベスで退院祝いの酒を振る舞われる。ゴローが酔っぱらってトイレに立ったところで、さち乃が来店する。ゴローはさち乃を見て「にゃー」と鳴き、さち乃は「わん」と応えた。
次の夏、ゴローのアパートで洗濯物を干すさち乃のお腹は大きくなっていた。自転車で仕事に向かうゴローに手を振っていると、さち乃は腹部に痛みを覚えその場に倒れる。頭上には、真夏の太陽が燦燦と輝いていた。
映画『スローなブギにしてくれ』の感想・評価・レビュー
登場人物の男性が皆自分本位で荒っぽく、ストーリー全体が尖っていて少々閉口しました。殊に、子猫や女性の扱いが酷く、今の時代では許されない内容もしばしば散見されます。逆に言えば、80年代ならではの危うさとか荒みを堪能できる作品です。沢山の猫や風船が部屋を埋め尽くすシーンが気になります。当時は何でも数多く手に入れたら、幸せになれると考える風潮があったのかもしれません。ただ、浅野温子の魔性ぶりはどれだけでも見ていられます。あどけないのに、とんでもない色気が滲み出ています。(女性 30代)
始まりからめちゃくちゃエモい世界観で、どんな結末であれこの作品は良作だと確信しました。ノスタルジックな雰囲気が好きな人にはたまらない作品でしょう。
私が知っている浅野温子は派手なおばさんのイメージでしたが、今作の彼女はなんだか気だるくて気ままな猫のような雰囲気。それが物凄く可愛くて、共感できるような感じもあり心地よかったです。
主題歌の「ウォンチュー」もすごく良いですよね。作品の世界観にぴったりで何がとははっきり分からないけど「何となく好き」なクセになる作品でした。(女性 30代)
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