映画『イップ・マン外伝 マスターZ』の概要:『イップ・マン 継承』からスピンオフとして制作された作品。詠春拳の正統争いにてイップ・マンと対決し、敗北したチョン・ティンチ。彼はその後、武術界から引退し息子と穏やかな暮らしを送っていた。ところが、香港に麻薬が蔓延。麻薬売買撲滅のために奔走する。
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:アクション、ヒューマンドラマ
監督:ユエン・ウーピン
キャスト:マックス・チャン、デイヴ・バウティスタ、トニー・ジャー、ミシェル・ヨー etc
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』の登場人物(キャスト)
- チョン・ティンチ(マックス・チャン)
- かつて武館を持つほどの詠春拳の達人でイップ・マンに挑んだが、敗北。幼い一人息子を連れて武術界から引退する。現在は食料品店を営んでいるが、詠春拳は封印中。義理堅く愛情深い。正義を重んじる人物だが、頑固な面があり人に阿るのが苦手。
- デヴィッドソン(デイヴ・バウティスタ)
- 西洋人で高級レストランの経営者。香港の発展と地域還元を目指し商工会を組織しているが、実はマフィアのボスで香港の麻薬売買を取り仕切っており、キットと手を組む。ステーキに並々ならぬこだわりを持っている。大柄な体格で武術のたしなみがある。
- フー(シン・ユー)
- 香港の酒場街で大店のバーを経営している。酒場街を仕切っている人物で、情に厚くティンチの良き友となる。妹ジュリアの親友ナナと恋仲になり結婚の約束をしていた。街の英雄と呼ばれており人望を集める元武術家。
- クワン(ミシェル・ヨー)
- マフィア長楽の女ボス。父親の座を受け継ぎ裏稼業で莫大な資産を保持しているが、3年以内に組織を堅気に戻そうとしている。粗暴で荒くれ者の弟キットと対立し、手を焼いている。
- ジュリア(リウ・イエン)
- フーの妹で兄が経営するバーで働いている。親友のナナがアヘン中毒であることを知り、窮地を救う。ティンチと知り合いフーの店での働き口を紹介。ティンチ親子に住処を提供し、良い仲になる。
- ナナ(クリッシー・チャウ)
- ジュリアの親友でフーの恋人。バーでホステスとして働いているが、アヘン中毒になっている。ジュリアに救われてからアヘンを断っていたが、キットに襲われ殺される。
- キット(ケビン・チェン)
- クワンの弟。粗暴で荒くれ者。アヘンの売買で稼いでいるが、姉クワンが組織を正道にするという言い出したことで対立。デヴィッドソンと手を組み、ヘロインの売買で勢力を拡大する。手打ちとして姉に右腕を切断され、麻薬売買から手を引く。
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』のあらすじ【起】
詠春拳の正統争いでイップ・マンと対決し敗北を期したチョン・ティンチは、自らの武館を閉め幼い一人息子を連れて武術界から引退した。彼はその後、詠春拳を封印し小さいながらも食料品店を営み、穏やかな生活を送っている。そんな父親に息子は不満を抱いているようだったが、ティンチは多くを語らなかった。
息子の誕生日。ティンチは予てより息子が憧れを抱いているヒーローのオルゴールを購入。夜には気張ってレストランで食事をする予定だった。しかし、プレゼントを購入後、追われている2人の女性ジュリアとナナに遭遇。ティンチはひょんなきっかけから、マフィア長楽のボスの弟、キット一派と事を構えることに。詠春拳を封印してもティンチの武術は達人並である。奴らを叩きのめした後、ティンチも警察へと連行されてしまい、約束の時間を過ぎてしまう。しかも、キットは警察上層部を牛耳る西洋人と取引をして、すぐに釈放。ティンチと女性2人もようやく解放されるのだった。
だが、レストランはすでに閉店の時間を迎えており、オーナーのデヴィッドソンから断られてしまう。仕方ないのでプレゼントだけを渡し、屋台で食事することにした。
その頃、長楽では幹部が集合し、会議を開いていた。女ボス、クワンは長楽を正道へ導くべく裏稼業から足を洗う決断を下す。だが、弟のキットだけは姉の案に反対するのだった。
近所の子供達と喧嘩をし、息子が青痣を作って帰った夜、ティンチの住宅兼店舗に火炎瓶が投げ込まれる。ティンチは幼い息子を抱えどうにか脱出。すると、店の外にはキット一派が待ち構えており、襲い掛かって来る。ティンチは息子を抱えて逃げ出したが、途中でジュリアを見かけ彼女に息子を一時、預けた。そして、襲い掛かって来るキット一味へと反撃。追い返した後、息子が高熱を出したため、病院へと急いで連れて行った。
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』のあらすじ【承】
心配したジュリアも付き添ってくれていたが、警察は犯人が明らかであるにも関わらず、放火ではなく失火だと断定。家を焼け出され無一文となったティンチ親子。不憫に思ったジュリアは兄フーが経営するバーへの就職口を紹介し、ジュリアとナナが暮らす家に同居するよう話した。
ひとまずは生活場所を確保できたことで、ティンチはキットが支配するアヘン窟を急襲。復讐のつもりで火を放った。
翌日、アヘン窟の放火がティンチの仕業だと知ったキットは報復すると騒いだが、クワンがそれを止めアヘン窟の支配権を取り上げ閉鎖した。そのせいで、キットは更に怒りを募らせる。
その日の夜、バーにクワンが訪れる。ティンチに高額な賠償金を払うと言って引かない。しかし、彼も報復としてアヘン窟を燃やしたため、金は受け取らないと固辞。結局、クワンは賠償金をバーの飲み代としてフーに手渡し帰って行った。
後日、焼けてしまった自宅へ。ほぼ全焼であったが、息子のヒーローのオルゴールと詠春拳の型を練習する木人樁(もくじんとう)は形を残していた。だが、今やこの木人樁も洋服かけにしか使われておらず、本来の目的を果たしていない。ジュリアが俄仕込みで型の練習をすると、壊れてしまうのだった。
その日の夜、改めて息子の誕生祝いを行う。デヴィッドソンのレストランでフー兄妹、ナナに祝ってもらった。更にデヴィッドソンの好意で誕生日ケーキまで用意してくれる。オーナーはとても紳士的で、養護施設で貰ったというヒーローのマークがついたブレスレットをしていた。
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』のあらすじ【転】
デヴィッドソン主催によるチャリティーオークションが行われた夜、ジュリアと帰宅していたティンチは、酒場街の裏通りで麻薬を吸おうとしている男を発見する。出所を聞くとキットの手下の名前が出た。キットは姉の言うことを聞かず、酒場街で麻薬を売り捌き荒稼ぎしているようだ。ティンチとジュリアは協力して売人の1人から薬を奪った。
その頃、デヴィッドソンの元にキットが現れる。彼は伝手のある仲間を銃殺し、デヴィッドソンと手を組みヘロインの売買を手広く始めようとする。表では地域貢献と言いながら、デヴィッドソンは裏で麻薬売買の太いルートを幾つも保持する元締めだった。
奪った麻薬を手にクワンの元を訪れたティンチ。キットが麻薬売買を続けていると話すと、クワンはこの件について任せて欲しいと話す。
その夜、バーの裏通りでたまたま隠してあった麻薬を発見してしまったナナ。キット一派に捕まってしまい、痛めつけられる。彼女はティンチに助けられて以来、薬は絶っていたが、キットによって大量の麻薬を服用させられる。異変を察してジュリアが見つけた時には、すでに虫の息でナナはそのまま息を引き取ってしまう。
このことで激怒したフーとティンチ。クワンの事務所へ突撃したが、中ではすでにキット一派とクワンが対立していた。即座に乱闘が開始されたが、2人はたちまちのうちに雑魚を倒してしまう。ティンチは麻薬で死人が出たことを明かし、クワンと激しい戦いを展開。クワンは弟の右腕を切り落とすことで落とし前をつけることにした。
キットから麻薬の隠し場所を聞き出し、警察に通報したフーとティンチ。2人は互いに気を許し合い、友情を深めた。
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』の結末・ラスト(ネタバレ)
大量の麻薬が発見されたことにより、香港の麻薬取り締まりが強化される。デヴィッドソンもまた、窮地に立たされることになり一計を案じることに。警察を使ってフーに偽りの嫌疑をかけ捕縛したのである。フーは西洋人に囲まれ署ではなく、デヴィッドソンが待ち構える廃倉庫へ。両手を拘束されながらも抵抗したフーだったが、奴は体格も良く武術にも長けている。ひたすら殴られたフーは、デヴィッドソンによって殺されてしまう。
報せを聞きフーの遺体を確認しに来たティンチとジュリア。警察によると逃亡を図って崖から転落死したと言うが、明らかに嘘である。ティンチは彼の死を悼み拳に触れたが、ある物が握られているのを見つけてしまう。それは、デヴィッドソンが身につけていたヒーローのブレスレットだった。
覚悟を決めたティンチは、ジュリアを説得して息子を頼み単独で奴の店へ。同じ頃、クワンは暗殺を得意とするマフィアのボスにデヴィッドソンの暗殺を依頼した。
一方、デヴィッドソンは大量の麻薬を別の場所へと運び出そうとしている。そこへ、ティンチが現れ例のブレスレットを提示。双方、睨み合った後、勝負が開始される。
しかし、体格や腕力の違いによりデヴィッドソンに何度も投げつけられ、追い詰められたティンチ。とうとう、自らに課した封印を解き詠春拳を使うことにする。腕力の差はあれど、技の数は詠春拳の方が多い。これにはデヴィッドソンも追い詰められ、逃走しようとする。そこへ、警察が到着。
奴は上層部に助けを求めティンチを捕まえようとするが、デヴィッドソンが麻薬売買の元締めであることを明かし、奴を捕まえるべきだと主張すると、集まって来た民衆が西洋人のやり方に抗議し、暴動が勃発。西洋人の身勝手な言い分と無力な市民を殴りつける行いに、中国人の警官が動いた。店の裏の車にあった麻薬を証拠として出し、西洋人の上層部を逮捕したのだ。
この逮捕劇に市民は拍手喝采を送ったが、混乱の最中、デヴィッドソンが逃走。ティンチが追いかけて行ったが、すでに殺し屋によって殺害された後だった。
その後、無事に帰宅した彼は、笑顔を浮かべジュリアと息子の3人で朝食を摂るのであった。
映画『イップ・マン外伝 マスターZ』の感想・評価・レビュー
『イップ・マン 継承』のスピンオフ作品で、対決に敗北したチョン・ティンチを主人公に描いている。継承ではかなり驕った態度を見せていたティンチだったが、今作では鳴りを潜め本来の性質がようやく表れたように思う。主演のマックス・チャンは元々、武術指導やスタントをやる裏方であったらしい。
ティンチは敗北したことで詠春拳を封印し一切使わないが、それでも達人の域に達しているため、かなり強い。終盤でようやく詠春拳を使うが、強さが桁違いである。もしや、イップ・マンが達した域に近づきつつあるか、或いは同じ域に達したのではないだろうか。(MIHOシネマ編集部)
『イップ・マン』シリーズに登場したチョン・ティンチが主人公のこの作品。スピンオフ作品というと、だいたい本編より劣り、面白みに欠けるものが多いですが、この作品はかなり完成度が高く、ストーリーもはっきりしているので、今作だけ見ても1つの作品として楽しめるものになっていました。
チョン・ティンチを演じるマックス・チャン。彼の演技と表情から見せる色気が素晴らしいです。アクションシーンのスイッチが入る感じがたまりません。ファンは大満足の一本でしょう。(女性 30代)
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