映画『ヘイト・ユー・ギブ』の概要:黒人が多く住まう低所得者地区ガーデン・ハイツにて、白人警官による尋問中に黒人の青年が警官に射殺された。彼の幼馴染であったヒロインの目前で行われた殺害だった。彼女は人種差別という理不尽な問題と正面から向き合うことになる。
映画『ヘイト・ユー・ギブ』の作品情報
上映時間:133分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、青春
監督:ジョージ・ティルマン・Jr
キャスト:アマンドラ・ステンバーグ、レジーナ・ホール、ラッセル・ホーンズビー、アルジー・スミス etc
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映画『ヘイト・ユー・ギブ』の登場人物(キャスト)
- スター・カーター(アマンドラ・ステンバーグ)
- 白人が多く通う進学校に通う黒人の少女。ブラック・パンサー党に所属していた父から、黒人の誇りと利権を守れと教えられて育つ。幼馴染の少女を幼い頃に亡くし、残った幼馴染のカリムも殺され深い悲しみを抱き、黒人に対しての理不尽な扱いに憤りを抱くようになる。
- リサ・カーター(レジーナ・ホール)
- スターの母。かつてはキングの恋人で長男を出産後、キングの手下であった現在の夫と結婚。3人の子供の母親で、多様性があり白人が多く通う進学校へ長男とスターを通わせ教養と知識を持たせている。スターを守ろうとする。
- カリル(アルジー・スミス)
- スターの幼馴染。病気になった祖母と暮らしており、治療費を稼ぐために違法薬物の売人をしていた。スターに好意を寄せており、とても気の好い青年だが、警官に殺害される。
- カルロス(コモン)
- リサの兄弟で警官。白人の中で警官として働く数少ない黒人警官。警官側からの見識と複雑な立場にあることをスターに教える。
- キング(アンソニー・マッキー)
- ギャングのボス。スターの異母兄の継父で、麻薬の売買の総元締めをしている。痛ましい過去を経て忘れる努力をしろとスターに助言する。愛情がないわけではなく、深い悲しみと闇を抱えている。
映画『ヘイト・ユー・ギブ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ヘイト・ユー・ギブ』のあらすじ【起】
黒人の利権を守るブラック・パンサー党に所属していた父から、警察に止められた時の作法と黒人である誇りを持てと教えられたのは、娘のスター・カーターがまだ9歳の時だった。父はスターと異母兄、幼い弟にブラック・パンサー党の十綱領を覚えておけと言い聞かせた。
それから数年が経ち、スターと兄弟達は何事もなく真面目に育った。住まいは黒人が多く住まう低所得者地区であるガーデン・ハイツ。父は食料品店を営み低所得者の家庭でありながらも、比較的まともな生活を送っている。母のリサは子供達にガーデン・ハイツから外の世界へ出て欲しいと考え、子供達を進学校へと転校させた。
兄妹が通う進学校ウィリアムソン高校は、白人が多く通う学校である。スターは黒人社会と白人社会を日々、行き来しながら住み分けをしていた。白人が多く通う高校では、言葉遣いや態度に気を遣い馴染みやすい自分を演出しなければならない。彼女はそんな自分が嫌いだった。幸いスターの演出により、友人もおり恋人もできて高校生活は順調である。
そんなある夜、黒人の友人と共にホームパーティーへ参加したスターは、幼馴染であるカリルと久々に再会する。ところが、パーティー中に喧嘩が勃発。スターはカリルと共に脱出し車で帰路に就いた。カリルは祖母と暮らしていたが、病気になってしまったため、違法薬物の売人として稼ぎ家計を支えているらしい。思い出話に花を咲かせた2人だったが、車を走らせた途端、パトカーに止められる。カリルは警官の言葉に渋々、従い外へ出た。だが、彼は車内のスターを覗き見た隙に警官から撃たれてしまう。どうやらカリルが銃を手にしたと勘違いしたらしいが、彼が手にしたのはただのヘアブラシだった。カリルはそのまま命を落としてしまい、スターも警察へと連行されてしまう。
警察には両親が駆け付け、母リサと共に事情聴取を受ける。しかし、刑事はカリルのことばかりを聞いて、理由もなく発砲し彼を殺害した警官のことは一言も聞かない。警官である叔父カルロスのおかげでスターはすぐに帰ることを許された。
映画『ヘイト・ユー・ギブ』のあらすじ【承】
家族のおかげで気を持ち直したスターは、カリルの家へ。そこには警官であるカルロスも訪れる。彼からカリルを殺した警官の処分が、有給の休職扱いだけに留まったことを知らされた。更にこの事件に関して捜査は入るものの地方検事によるもので、裁判にはスターが証人として招聘されるだろうとのこと。この件に関して父とカルロスは口論となってしまい、スターは理不尽な憤りを抱いた。
黒人は脅迫を受け警官の標的になる。殺人事件であるため、ニュースでも大々的に報道される。スターは学校に行っても事件のことは一切、口外しないことにした。
かつて、スターの父もキングに仕えていた。だが、足を洗うため、キングの代わりに3年間服役し、現在の生活をようやく手に入れたのだ。もし、スターが証言台に立ちカリルがキングの手先で麻薬の売人だったことを話せば、キングからどんな報復があるか分からない。リサは危険を感じて引っ越そうと言い出す。両親の言い争いにスターは気落ちしたが、父からサグ・ライフを貫いた2PACの話と、悪循環を断ち切るきっかけを聞いた。
カリルの葬式へ向かったスターは、幼馴染の死に顔を目にして涙を流す。その葬式にて黒人の弁護士で、社会に立ち向かっている女性の演説を聞いた。彼女が葬儀後に警察署まで平和的な後進をしようと話したため、黒人たちは差別主義を持つ白人たちへの憤りを顕わにする。平和的と口にしながらも抗議運動へと発展してしまい、警察と衝突するに至った。
スターの家族は後進には参加せず、早々に帰宅。その後をニュースで見た。カリルの死が一気に黒人たちに火を点ける。誰もが彼の死に憤りを感じていた。
ところが、自宅に件の女性弁護士が訪ねて来る。彼女はカリルの代わりにスターが声を上げるべきだと言う。父も異母兄もこの話には乗り気だったが、リサは娘を守るために反対するのだった。
映画『ヘイト・ユー・ギブ』のあらすじ【転】
その後、学校へは普段通りに登校したスターだったが、抗議運動のために学校が休校となる。カリルの死を口実に学校をサボる白人の同級生たちに憤りを感じたスターは、友人らと別れてカルロスへと迎えを頼んだ。リサが看護師として働く病院へ来た彼女は、母に証人として証言台に立つことを告げるのだった。
まずはメディアを味方につけるため、テレビのトーク番組へ出演。すると、その帰りに家族で食事をしているダイナーにキングが現れる。父が表に出て追い返したものの、即座に警官が現れ尋問される。2人の警官のうち1人は白人で、父を不当にも捕縛しようとする。そこで、スターはスマホで動画を撮影。警官は警告だと言ってすぐに帰って行った。
帰宅後、3人の兄妹へと父が言う。黒人としての誇りを失わず、どんな手段を要しても不当な扱いには徹底的に抵抗するのだと。兄妹は泣きながら父の言葉を胸に刻んだ。
じきにプロムがやってくる。リサに友人とのいざこざを話すと、母は友人と付き合うことで得るものが少ないなら、付き合いはやめた方がいいと助言。
そうして、プロムの夜。恋人と会ったスターだったが、彼女はこれまで自分を偽っていたことを明かし、黒人と白人とでは互いを理解できないと話した。すると、彼はスターの人間性を見て好きになったのだと断言してくれるのだった。
スターは異母兄と共に両親へと恋人を紹介することに決める。ところが、父は娘の恋人が白人であることに抵抗を示す。恋人が帰宅後、家族で話し合いが行われ父の怒りも解けた。しかし、その直後に自宅が銃撃される。恐らくキングの手下による報復と思われる。父の一声で家族は一旦、カルロスの家へ避難したが、父と異母兄は家を守ると言って自宅へ戻るのだった。
映画『ヘイト・ユー・ギブ』の結末・ラスト(ネタバレ)
いよいよ、証言をする日がやってくる。スターはありのままの事実を全て話した。このことで異母兄がキングの手下に痛めつけられ、スターと恋人はキングの自宅から兄と異父妹の2人を連れて家を脱出。ところが、町ではデモ隊が抗議運動を行っている。裁判の結果、殺害した警官が無罪放免になったことがきっかけだった。デモ隊は市庁舎へと向かっており、スターは恋人に2人の異母妹を避難させるよう頼み、自分は異母兄と市庁舎へ向かった。
デモ隊の一部は暴徒化しており、パトカーに危害を加えている。警察は道を封鎖しデモ隊の行進を止めたが、彼らも仕事である。行進を先導しているのは女性弁護士。彼女に声をかけたスターは手渡された拡声器を手に車の上に立った。そして、声を張り上げカリルは生きていたのだと主張。だが、警察は主張を受け入れず武力行使へと移行。スターは催涙弾を警察へと投げ返し、異母兄と共に逃げた。
父の知り合いという人物が助けてくれ、父の店へ。そこで、父が2人を捜していたという話を聞く。リサからは怒りの留守電が入っていた。ところが、そんな時に店の入り口から火炎瓶が投げ入れられる。裏口は外から鍵がかけられていて逃げられなかった。
幸い、近所の店の人々が気付いて助けに来てくれ、知らせを聞いた父も駆け付けたので助かったが、そこへキングが現れる。父とキングは一触即発の状態となったが、一番幼い弟がなぜか銃を手に威嚇。一同は驚愕し固まった。パトカーが駆け付け、銃を持つ幼い少年が標的となる。そこでスターは両手を上げ、幼い弟の前に進み出た。彼女はこれ以上、何人殺せば気が済むのかと抗議。すると、警官もキングも銃を下ろし弟も銃を手放す。父は両手を上げて娘を抱き締めた。
店は火事で燃えてしまったが、暴動から2時間も経たないうちに父がやり直そうと言い出す。キングは放火罪で逮捕され、家族は元通りになった。一家は引っ越しをやめ、異母兄は無事に高校を卒業。大学への進学が決まる。恋人とも更に親密度を深めたスターは、カリルの荷物整理に伴い形見分けとして思い出の品を受け取るのだった。
映画『ヘイト・ユー・ギブ』の感想・評価・レビュー
2009年に起こったオスカー・グラント事件をヒントに書かれた小説『ヘイト・ユー・ギブ あなたがくれた憎しみ』を映画化した作品。現代では緩やかになりつつある人種差別をテーマに描かれているが、非常に重いテーマであることは否めない。
16歳の少女が差別に対し様々な感情を抱き、立ち上がる決意を固め成長していくのだが、ずっと悲しみや怒りを覚える。対して、作中では警官が晒される危険も描いており、この問題は低所得者の黒人社会が改善しなければ到底、解決しない問題だと思う。絡まりあった複雑な問題でもあるため、長い年月を要するだろう。複雑で重い問題を繊細に描いた非常に素晴らしい作品。(MIHOシネマ編集部)
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