映画『めまい(1958)』の概要:アルフレッド・ヒッチコックの傑作サスペンス。ギャビンの妻マデリンが自殺したと見せかけての完全犯罪、その謎解きと復讐劇。出演はジェームズ・スチュアート、キム・ノバク。1958年製作の米国映画。
映画『めまい』 作品情報
- 製作年:1958年
- 上映時間:128分
- ジャンル:サスペンス、ラブストーリー
- 監督:アルフレッド・ヒッチコック
- キャスト:ジェームズ・スチュワート、キム・ノヴァク、バーバラ・ベル・ゲデス、トム・ヘルモア etc
映画『めまい』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『めまい』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『めまい(1958)』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『めまい』 あらすじ【起・承】
サンフランシスコ。警官達が屋根を伝いながら犯人を追いかけていた。辺りは暗く、警官のジョン・”スコティ”・ファーガスン(ジェームズ・スチュアート)は屋根の雨どいにぶら下がってしまう。
必死に手で支えているが、つい下を見てしまい、恐怖を感じてしまう。その後、同僚が地面に落ちて亡くなってしまった。スコティは、高所恐怖症と同僚を助けられなかったショックで警官を辞めてしまう。
ある日、スコティは女友達のミッジ(バーバラ・ベル・ゲデス)に会いに行った。ミッジは元婚約者で、下着のデザイナー。医者の話では、”もう1度、高所恐怖症を体験すれば治る!”と言うので、試してみるがやはり、恐怖を感じた。
その後、スコティは造船業をしている友人、ギャビン・エルスター(トム・ヘルモア)を訪ねた。ギャビンは、”妻を尾行して欲しい。何か危険な事が迫っているんだ!”と妻マデリン(キム・ノバク)を調査して欲しいと頼むのだった。
ギャビンの奇妙な申し出に驚くが、スコティはマデリンの様子を探ることに決めた。オペラを鑑賞した後に向かうという、レストラン”アーニー”でマデリンを初めて見た。緑のドレスを着て、優雅な女性だった。
次の日。マデリンは、車に乗り、まず花屋に向かった。そして、花束を買うと墓地に向かう。墓碑には、”カルロッタ・ヴァルデス”の墓とあった。次に彼女が向かったのは、画廊。絵に描かれた女性と同じ花束を持ち、同じ髪型をしているのだった。
尾行していた、スコティは画商に絵について尋ねた。すると、彼女が観ていた絵は、”カルロッタの肖像”というそうだ。その後、彼女はマッキトリック・ホテルへ行き、一瞬だけ窓を開けて姿を見せるのだった。
スコティは、そのホテルの支配人に会い、彼女について聞く。名前はミス・マデリンといい、2週間前に借りて2~3度来たと言う。彼が急いで、そのホテルの2階に上がった時には既に彼女の姿も車も消えていた。
カルロッタ・ヴァルデスについて調べるため、スコティはアーゴシー書店の主人ポップ・リーブルに会う。すると、マッキトリック・ホテルはカルロッタの家で、不幸にも彼女が男に捨てられ、生んだ子も男に取りあげられてしまったという過去が分かった。
そして彼女は、子供を探し続け、若くして亡くなってしまったらしい。スコティがこの事実をギャビンに告げると、マデリンはカルロッタの形見の宝石を身に着けては、時々、別世界を見つめているような素振りをすると言う。
またカルロッタは、彼女の曾祖母で錯乱して自殺したと話す。
映画『めまい』 結末・ラスト(ネタバレ)
今日も、マデリンは”カルロッタの肖像”を見つめていた。その後、彼女はゴールデン・ブリッジに向かい花束を海へ投げ入れていた。スコティは、注意深く彼女を尾行していたが、彼女が突然海に身を投げてしまう。
慌てて、スコティは海に飛び込んで彼女を助けた。スコティの部屋で目覚めたマデリンは、行ったのは覚えているけど、それ以外は分からないと話すのだった。
マデリンの夫ギャビンからの電話にスコッティが応対している間に彼女は車で帰ってしまう。次の日も彼女を尾行した。ぶらぶらして過ごすというマデリンと、スコティはドライブに出かけた。
2人は国立公園に行くが、マデリンは死を予感するような言葉を呟く。そして、海辺に出たマデリンは、スペインの村を夢で見たと話し、”狂っていない!死にたくない!”と叫ぶのだった。そんなマデリンを抱きしめ、キスをするスコティ。
ある日の朝、夢を見たとスコティを訪ねたマデリン。彼女の心を癒そうと、夢に出てきたという場所へ2人で行ってみることに。午後、2人は古いスペイン風の修道院を訪れた。
すると、彼女は”もう手遅れよ。私を失えば、私が愛したことが分かるわ。”と言って、急に教会へ駆け出した。スコティも必死で彼女に追いつこうとするが、教会の鐘楼へ続く階段まで来た時、高所恐怖症のため登れなくなってしまう。
スコティが気づいた時には、マデリンは鐘楼から飛び降りていた。マデリンを救えなかった想いから苦しむスコティ。やがて裁判が行われ、彼女の自殺が認定された。夫ギャビンはこの町を去ると言う。
スコティは悩み、精神病院に入院した。退院後、マデリンに似た女性を町で見かけたスコティは、その女性に会う。女性の名前はジュディ・バートン(キム・ノバク)。マデリンをあきらめきれないスコティは彼女を食事に誘う。
ジュディは、手紙でマデリンの事件について告白するが、破って捨ててしまう。
一方、マデリンだと確信したスコティは、明日も会いたいと誘う。翌日、スコティは自分好みの女性にするため、ジュディにマデリンに似せた髪型や服に着替えてもらう。
そして、マデリンが自殺した、スペイン風の教会へ向かう。嫌がるジュディだったが、スコティはついに謎を解き明かした。ギャビンとジュディが結託して、マデリンを殺し自殺に見せかけたのだと!
あの時と同じように彼女を追いかけて登るうちに高所恐怖症は消えたのだった。恐怖を感じていたジュディは、鐘楼の前に立った時、動く影を見た。
その瞬間、彼女は飛び降りてしまう。やがて修道女が登ってきて、彼女を慰めるように鐘を鳴らした。
映画『めまい』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『めまい(1958)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
緑のドレスを着た女に注意せよ!~完全犯罪と愛のトリック
「めまい」と言えば、めまいショットと呼ばれる見せ方が有名だが、キム・ノバク演じるマデリン/ジュディ(1人2役)の演技に注目してみたい。
マデリンは、印象的な緑のドレスを着て現れます。一見、不可解な彼女の行動も、26歳で死んだというカルロッタ・ヴァルデスの生涯になぞらえるという凝り性!
物語性が濃い分、探偵役のスコティは彼女に翻弄されます。ヒッチコックが起用する女優は、美しいが無表情な人が多い。その中でも、キム・ノバクは表情が豊かでかつミステリアスな女性像をあますことなく魅せてくれます。
絵画に描かれる女性が持つ花束やカルロッタの首飾り。前半で既にヒッチコックはいくつものヒントや答えをさりげなく散りばめているが、それが彼女の死とどう結びつくか。
答えを見せられてからが面白い!
後半にジュディと再会したスコティが、死んだはずのマデリンではないかと疑い、マデリンの髪型や服、行動を忠実に再現しようとします。その心理的恐怖が見どころです!
またマデリン/ジュディが愛したスコティは実像だが、スコティが愛したのはマデリンの虚像なわけで、まるでひとときの幻を見ていたような切なさも感じさせます。
高所恐怖症の人は観てはいけない?!ヒッチコックの変態さに乾杯!
探偵スコティの”高所恐怖症”という設定が、このミステリーをスリルある展開にしています。有名な”めまいショット”。カメラを後ろに移動させながら、ズームさせるという方法で、人物の”驚き”や”動揺”を表現しています。
冒頭で犯人を追いかけるシーンや修道院の塔に登るシーンに使われています。「めまい」以外の作品では、「サイコ」のノーマン・ベイツの館でもちらりと見せています。
またクローズアップも多用しています。女性の唇が赤く大きく強調され、ドキドキする効果を生んでいますよ。この様にヒッチコックの映像技法に注目して観ると、しつこいほどの緊張感を感じるでしょう。
当時の観客には画期的な技法でも、現在観る、私達にとってはちょっとうるさいんです!それに”死んだ人を真似る”という心理的恐怖も加わります。そんな、ヒッチコックの変態さあふれる作品です。
映画によっては先がある程度予測できるような作品もありますが、この作品は全く読めませんでした。そして、見終わってからも、結局はどのような展開だったのか理解するのに少し時間がかかりました。どこからが妻でどこからがフェイクなのか。なぜ妻を殺害する必要があったのか。疑問が残りながら最後のあっけない終わりに、最後まで疑問の残る作品でした。
夢のシーンのCGがいきなりすぎて一瞬何を観ているのか分からなくなります。ある意味、めまいを起こさせるような演出です。(女性 40代)
怖い映画だ。人が追い詰められていく様であったり、その立場が逆転したりといった過程に背筋が凍る。
一つ疑問が残るのは高所恐怖症の扱いだ。何かのきっかけで高所恐怖症になって、同じ目に遭えば治るというのは本当だろうか。ショックを受ける出来事があって何かがおこるのは、今ならPTSDとされるかもしれない。ヒッチコックが取り扱ったものは、それだけ時代を先取りしていたとも言える。
それ以外の部分の展開はスリリングで楽しめる。ラストシーンの修道女が不気味で怖い。(男性 40代)
映画『めまい』 まとめ
ヒッチコックの作品には珍しく、前半と後半のスピード感と変態度が大きなミステリーです。特に後半の、完全犯罪の謎を解き、キム・ノバク演じる、マデリン/ジュディ(1人2役)を追い詰めてゆくシーンは見事です。
心理面で面白いのは、ジェームズ・スチュアート演じる探偵スコティが、幻の女マデリンを愛するのに対して、マデリン/ジュディは現実の男スコッティを愛すること。男女の愛の姿勢が違う点が興味深い。
また、”高所恐怖症”をもう1度体験すれば治る!なんてこと、あり得るのだろうか?
筆者は無理だと思います。「めまい」を鑑賞する方は、その点にも注意して無理せずご覧下さい。
みんなの感想・レビュー
傑作映画は、往々にして不可解なショットやシーンを孕むものだと自分は思います。
ブルーレイのフリードキン監督の解説では登ってくる修道女の影をヒッチコック映画の中でも最も恐ろしいシーンとしていました。殺人への荷担を告白したときに現れた死神の影に見えたのかと。あと、根強い仮説で映画の後半は精神病院に入っているスコティの夢想という解釈もあり、自己治癒のためにマデリンとの再会と死の物語が必要であったのではないかと思えます。ブルーレイに収録されているもう一つのラストは後半登場してこなかった女友達のミッジの元にスコティが静かに戻ってくるシーンでした。私はこれを夢想の愛と死の物語を通して治癒し現実の生活に戻ってきたものと解釈しています。
傑作映画とは、観客に不可解な場面を持たせないことだと思うが、映画めまいでは、一つだけ不可解な場面がありました。それは、ジュディーが、ラストの教会のシーンで、落ちるシーンですが、修道女を見ただけで落ちるのでしょうか?それとも別に落下する理由があったのでしょうか?