映画『未来よ こんにちは』の概要:哲学者であり教師でもあるヒロイン。ある日、長年連れ添った夫から不倫を告げられる。認知気味な母親の介護と仕事と、忙しい日々を送る中で夫の不倫までもが明らかになり、別居することに。人生思う通りにはいかないという、ある女性の日常を描いた作品。
映画『未来よ こんにちは』の作品情報
上映時間:102分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ミア・ハンセン=ラヴ
キャスト:イザベル・ユペール、アンドレ・マルコン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブ etc
映画『未来よ こんにちは』の登場人物(キャスト)
- ナタリー(イザベル・ユペール)
- 高校にて哲学を教えつつ、監修本の執筆をしている。その傍ら、母の介護も行い日々を忙しく過ごしている。2人の子供の母親。教え子ファビアンと深い親交を持っているが、男女の関係ではなく飽くまでも同志といった関係。
- ハインツ(アンドレ・マルコン)
- ナタリーの夫で翻訳家。結婚25年目にして浮気していることを告白し、ナタリーと円満離婚する。体格が良く穏やかな気質で、ナタリーとは掛け合いのような会話をする。ファビアンに良い印象を持っていない。
- ファビアン(ロマン・コリンカ)
- ナタリーの教え子。学生時代にナタリーの授業にて哲学の面白さを教えてもらい、師範学校へも推薦される。現在は地方の農場に仲間や恋人と共に住み、哲学についての執筆をしたり、近くの大学で哲学を教えたりしている。ナタリーとはプラトニックで深い親交がある。
- クロエ(サラ・ル・ピカール)
- ナタリーとハインツの娘。すでに成人しており両親からは独立している。父ハインツが浮気している事実を知り、はっきりしろと詰め寄る。そのせいで、家族をバラバラにしてしまったと悔恨を抱えているが、母ナタリーには決して明かさない。
映画『未来よ こんにちは』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『未来よ こんにちは』のあらすじ【起】
夫ハインツと2人の子供と暮らすナタリー。高校で哲学を教える傍ら、パリ市内に住む母の介護をする彼女は忙しいながらも充実した日々を過ごしていた。
学校では改悪についてストが発生していたが、ナタリーはストなどバカげていると平気で授業を開始。学生達と討論を交わし、かつての教え子ファビアンからもアドバイスを請われてはまめにやりとりをする。ファビアンは現在、仕事を辞め哲学についての執筆活動に入っており、執筆一本で生活を送っている。家族とも顔見知りでよく自宅へもやって来る。
ナタリーの母は若い頃、モデルをやっていた経験からやや認知気味となった今もモデルとして働いていると思い込んでいる。昼間は寝てばかりいるが、急に活発的になり苦しい時はどんな時間でも娘を呼ぶ。
哲学について何冊か本を出版しているナタリーは、出版社からの依頼で新しい教科書の監修も行うなど、毎日はとにかく目まぐるしく過ぎていく。故に、長年連れ添った夫ハインツが浮気しているなど、知る由もなかった。
そうしてある日突然、ハインツから好きな人がいるのだと告白されるのである。
映画『未来よ こんにちは』のあらすじ【承】
そんな中、母の認知が酷くなりとうとう施設へと入れることにしたナタリー。意外にも母は抵抗することもなく、息子と共に施設へと送って行った。
ハインツとは別居することにし、いずれは離婚するつもりである。ファビアンは仲間と農場を買い、そこでチーズを作ると言う。教え子ではあるものの、ナタリーは哲学を語る上でも彼のことを同志であり親友だと思っている。
ハインツと別れるにあたり、心残りとなるのはブルゴーニュにある彼の実家へと行けなくなることだ。彼の実家は海辺にあり、風と波の音が非常に魅力的だった。そこで、ナタリーは別居前に夫と共にブルゴーニュの実家で過ごすことに。
ところが、施設へ入った母が3日前から絶食しているという報告を聞き、急いでパリへと戻ることに。いつもの虚言であれば良いのだが、虚言であっても絶食していることは事実なのだ。
日が暮れる頃、ようやく施設へと到着。すると、母は娘を一目見た途端にお腹が減ったと言うのだった。
休暇が明け、自宅へ学生達が訪れる。彼らは哲学のサイトを立ち上げ、編集者として書き手を募ると言う。そこで、ナタリーにも協力して欲しいと要請。
その日の夜、一人で映画を観に行ったもののしつこい男に邪魔をされて、映画を観ることができず。仕方ないので帰ろうとしたが、その途中で施設から母が部屋から飛び降りて昏睡状態だという報せが入るのだった。
映画『未来よ こんにちは』のあらすじ【転】
時を置かずに息を引き取った母の葬儀を行う。泣く暇などどこにもなく、しばらく経ってからバスに乗降中、不意に思い出して涙ぐむ。しかも、窓から外を眺めていると、町中を恋人と歩くハインツを目撃し、思わず笑ってしまうのだった。
出版社へ向かうとナタリーの監修本について、新たにチームを編成して内容を見直すことになったと言われる。契約は後続されるようなので、それでいいと返答した。
自宅へ帰るとハインツからのメモが残されている。自分の荷物を一通り運び出したようだった。
ファビアンに誘われ、彼が過ごす農場へ向かったナタリー。子供達はすでに独立し、夫とも別れた。母も他界し、今やナタリーは自由の身である。どこへ行こうと気にすることもなく、好きなように過ごすことができる。
ところが、一緒に連れて来た母の猫が家の外に出て戻って来なくなる。家猫であったため、野生では生きられないはずだが、日が暮れても戻って来ない。ナタリーは猫アレルギーで欲しい人がいたら譲ると言っていたが、いざいなくなると心配になってしまう。猫は朝方になってネズミを捕獲し、ナタリーの元へ戻って来るのだった。
映画『未来よ こんにちは』の結末・ラスト(ネタバレ)
ファビアンの家には彼以外にも数人、共に暮らしている。いずれもナタリーより若くそれぞれに思想を持っていた。彼らはナタリーに対し考えが少し古いと言う。ファビアンは現体制に革新的な革命を起こしたいと考えているようで、ナタリーの思想では何も変わらないと断言したが、ナタリーはファビアンのように自分で考えて行動することのできる若者を育てることを目標としていた。故に、彼は成功例であると言える。彼女は辛辣な言葉に怒ることもしないのだった。
自然溢れる農場で穏やかに過ごすナタリーであったが、時に酷い孤独が彼女を襲う。若者達は人生を謳歌しているが、ナタリーは夫や母を失って自由を取り戻している。喪失感に耐え切れない時もあるのだ。ナタリーは自宅が漏水していると報告があったと嘘を吐き、ファビアンの元から去ることにした。
1年後、クロエが恋人との間にできた子供を出産。病院へ駆け付けるとすでにハインツが赤ん坊を抱いていた。彼とは円満離婚であるため、笑顔で挨拶を交わす。
相変わらず高校で哲学を教えているナタリー。ファビアンとも親交は続いており、冬に彼らの農場を訪ねた。
猫をもらってくれると言うため、1年ぶりに猫も連れて来た。ナタリーの生活はほとんど変わることなく、新たな出会いもない。唯一、孫が誕生したくらいだろうか。
その年のクリスマス。ハインツの恋人が実家へ戻って一人で過ごすと言っていたが、相手にはせず数人の学生と娘夫婦を招待し、自宅で過ごすことにした。ナタリーは初孫を胸に抱き、あやしながら子守歌を唄うのであった。
映画『未来よ こんにちは』の感想・評価・レビュー
日常の雑事に追われる女性哲学教師の、人生のワンシーンを切り取ったかのような作品。主人公ナタリーのモデルは、今作の監督ミア=ハンセン・ラヴの母親であるらしいが、イザベル・ユペールの当て書きでもあるようだ。そのためかまるで違和感がなく、ナタリーという役柄であってもまるで本人であるかのように、完璧に演じている。
主婦であり母であり、教師であり哲学者。そして、妻でもある主人公の日常は、とにかく目まぐるしい。作中では、次々に発生するトラブルにあまりショックを受けていないように描かれているが、時に酷く落ち込み泣き出すシーンが挟まれる。泣く暇がないとでも言わんばかりだ。だが、主人公は悲しみを表に出さず、一心に前を向いて人生を歩む。そんなある女性の人生の一コマが描かれた素敵な作品。(MIHOシネマ編集部)
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