映画『未成年』の概要:韓国の名優キム・ユンソクが初めてメガホンを取った一作。17歳の女子高校生の二人、互いの両親が不倫していることを知り交友を持ち始める。現実から逃げる大人を目の当たりに、少女たちは新たな命と向き合い始める。
映画『未成年』の作品情報
上映時間:96分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
監督:キム・ユンソク
キャスト:ヨム・ジョンア、キム・ソジン、キム・ヘジュン、パク・セジン etc
映画『未成年』の登場人物(キャスト)
- ジュリ(キム・ヘジュン)
- 不自由のない生活を送っていた優等生。父親の浮気を知ってしまい、母親に隠れて浮気相手を見に行ったところユナと出会う。父親の浮気を隠そうと必死だった。
- ユナ(パク・セジン)
- ジュリと同じ学校に通う問題児。友達ができず孤立していた。母親が営む鴨料理店の客との間に新たな命を授かっていると知り、親の不貞を全て暴露しようとしていた。
- ヨンジュ(ヨム・ジョンア)
- ジュリの母親。ユナが夫・デウォンの不貞を明かしてしまい、外に子供ができたことを知る。証拠を掴むため浮気相手のミヒと接触するが、ある事故を起こしてしまう。
- ミヒ(キム・ソジン)
- ユナの母親。鴨料理店を営みながら女手一つでユナを育てている。ヨンジュの夫・デウォンに家庭があるのを知りながら関係を続けている。
映画『未成年』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『未成年』のあらすじ【起】
薄暗い細道で、鴨料理屋の店内をのぞき込むジュリ。制服姿には似つかない高級店には多くの社会人が接待で利用しているようだった。その中にはジュリの父親・デウォンの姿もある。店主らしき女性と親しげに話すデウォンの姿を見つけ、ジュリは一度隠れた。
デウォンが帰ったのを見送った後もなおジュリは店内を覗く。店主らしき女性と目が合い、ジュリは慌てて隠れようとするが道路が凍っていて転んでしまった。ジュリは携帯電話を落としたことに気づかず、逃げ出すように走り出した。その様子を見ていた鴨料理屋の娘・ユナは携帯電話を拾い上げ、鋭い目つきでジュリの後姿を追うのだった。
前日、塾をさぼっていたジュリは同級生に何をしていたのかと聞かれるが答えを濁した。手紙でユナに呼び出されたジュリは屋上へと向かう。デウォンとユナの母親が不倫していることを互いに知っていた二人。拾った携帯電話を見せつけたユナは、タイミング悪くかかってきたジュリの母親・ヨンジュからの電話に出て「おばさんの夫とうちの母親は不倫している」と告げ口するのだった。
デウォンの不貞を隠しておきたかったジュリ。一方でユナは不倫を見て見ぬふりをすることはできず腹いせにジュリへキスし唇を噛み、傷をつけた。
映画『未成年』のあらすじ【承】
未成年ながら深夜のコンビニでアルバイトをするユナ。帰宅すると母親・ミヒは危ないから深夜のバイトを辞めるように諭す。反対にユナはジュリの父親との間にできた子供をおろすように諭すが、ミヒは「自分の人生などなかった」と不幸さを押し付けるのだった。
ミヒの態度に呆れかえったユナは、ミヒの携帯電話からデウォンに「あなたの浮気は世間が知っている」とメールを送りつけた。翌朝メールに気づいたデウォン。何か話そうとするヨンジュを振り切り、逃げるように仕事へ向かった。
両親のぎこちない空気感に堪えかねたジュリは、デウォンの後を追うが間に合わなかった。立ち尽くすジュリにヨンジュは声をかける。お弁当を持ってきたヨンジュだったが、ジュリ同様慌ててデウォンを追いかけてきたのか、足元は裸足だった。
ヨンジュはデウォンの持ち物からミヒの店を突き止め、こっそりと尋ねた。注文を終え、ミヒが電話をしている内容を聞いたヨンジュは相手がデウォンだと確信する。料理が到着する前に店を出たヨンジュ。心配そうに追いかけてきたミヒに声をかけられ、ヨンジュは咄嗟に突き飛ばしてしまった。
学校についたジュリはユナと目が合い取っ組み合いの喧嘩になった。強化ガラスを割ってしまうほど激しい喧嘩であったため、優等生のジュリと言い噂のないユナに何の共通点があるのかと教師は疑問を抱く。
ユナだけを教室に返し、「付き合う人を選べ」という教師に反抗してしまったジュリ。その矢先ユナが戻ってきてミヒが入院したことを知らせるのだった。
映画『未成年』のあらすじ【転】
ヨンジュに押され倒れた衝撃で、ミヒは早産してしまった。看護師は転倒だけが原因ではないとヨンジュに説明をする。そこへユナとジュリがかけつけた。あまりにも小さな新生児の姿を見て驚く二人。
病室から出たときジュリはデウォンの姿を見かけ追いかけた。しかしデウォンは逃げるように病院を後にする。傷ついたジュリに何も声をかけず、一緒に帰宅したヨンジュ。夜な夜な面会に来たデウォンに対して、ミヒは寝たふりをするのだった。
多額の治療費はヨンジュが立て替えていたことを知ったユナ。ミヒの口座に貯金がないことを知ったユナは、バイト代を前借してヨンジュに返済した。一方で逃げ続けていたデウォンはヨンジュに話し合いを申し出るが、ヨンジュは髪を切って家を売る決心をしていたため全てを拒絶した。
行き場を失ったデウォンは、友人が経営するペンションを訪ねる。しかしすでに倒産しており途方に暮れるのだった。
映画『未成年』の結末・ラスト(ネタバレ)
ユナはミヒに代わり弟を育てる決意を固めていた。ジュリとヨンジュに見捨てられたデウォンは、きちんとミヒと別れるために会う約束を交わす。その直後デウォンは見知らぬ若者たちに襲われてしまうのだった。
出生届を出したユナだったが、弟は生まれたときに起こした脳出血が原因で命を落としていた。現実を受け止めきれないユナの代わりに、ジュリが遺体を預かった。一方でヨンジュは一人退院準備を進めるミヒの見舞いに行った。和解することはないが、一人の男に裏切られた傷を理解し合うように二人は言葉を交わすのだった。
名前の欄に「おバカちゃん」と書かれている母子手帳を見つけたユナ。帰宅したミヒを責めることしかできなかったユナは現実逃避し、ジュリとの関係も断ち切ろうとした。前に進むためにユナを連れ出したジュリは、弟を火葬し遺骨をユナに渡すのだった。
ジュリはデウォンの携帯電話に残っていたミヒとのツーショット写真を思い返した。撮影された遊園地を見つけ、ユナを案内する。閉園した遊園地に潜り込んだ二人は、弟のわずかな遺骨をイチゴミルクとチョコミルクに混ぜ飲み干した。
ジュリはお腹の音がなってしまい「私じゃない」と平然と言い切る。ユナはその様子を見て、始めて心から笑うのだった。
映画『未成年』の感想・評価・レビュー
「女子高校生」という複雑な時期に、「親の不倫」という刺激を与えてみたらどうなることか。優等生と問題児のかけ合わせもまたいいポイントである。教師の鬱陶しさが現実の優越を示しているようだった。親の秘密により同じ傷を負いながら、対処法が真逆であった少女たちの選択が同じ方向を指し示した時、流れてきた柔らかなピアノのメロディーも相まってとても安堵感のあるエンディングだったように思う。鮮度高い若手女優の魅力を堪能できる一作であった。(MIHOシネマ編集部)
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