映画『味園ユニバース』の概要:「リンダリンダリンダ」「もらとりあむタマ子」などオリジナル企画で高い評価を得る山下敦弘監督最新作。落ち着いた画作りで物語を紡ぐ山下風味は本作でも健在。
映画『味園ユニバース』 作品情報
- 製作年:2015年
- 上映時間:103分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:山下敦弘
- キャスト:渋谷すばる、二階堂ふみ、鈴木紗理奈、川原克己 etc
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映画『味園ユニバース』 評価
- 点数:60点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★☆☆☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『味園ユニバース』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『味園ユニバース』のあらすじを紹介します。
暴行によって記憶を失った大森茂雄(渋谷すばる)は、大阪の街をさまよい歩く中で偶然ライブ中の公園にたどり着く。そこでは大阪に実在のバンド、赤犬がライブをしていたのだが、おもむろに彼はヴォーカルのマイクを奪い取ると、和田アキ子の「古い日記」を歌い出す。公演に居た人々はその突然の出来事と歌唱力に驚き、無言で彼を見つめる。そのとき、赤犬のマネージャーを務めていた佐藤カスミ(二階堂ふみ)の目に止まった茂雄はカスミの下で働くことになる。
カスミの実家は音楽スタジオやカラオケボックスを経営しており、そこでスタッフとして働くことになった茂雄であったが、自分の身分を証明するものを持ち合わせていなかったために、カスミに「ポチ男」と呼ばれることとなる。
仕事をこなしながら、自分の記憶を取り戻そうとする茂雄であったが、なかなかかつての記憶を思い出すことはなかった。そんな最中、赤犬のヴォーカルの代役として茂雄が指名されることとなり、バンドは茂雄を迎えた形で練習を行うこととなる。
しかし、不意にかつての記憶を取り戻した茂雄はこれまでどおりのならずものへと逆戻りしていく。ヴォーカルを失った赤犬のためにカスミがとった行動とは。
映画『味園ユニバース』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『味園ユニバース』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
地味だが味わい深い演出
山下作品全般に共通して言えることではあるが、基本的には地味な話がベースになっていることが多い。本作においても、記憶喪失になった男が記憶を取り戻すまでの話という骨格はあるものの、その枠からはみ出るようなことはなくあくまで日常の中におけるこじんまりとした話である。そのため、好みが合わない人にはひたすら地味に写ってしまうこともある作風である。
しかし、山下作品は映画的な演出のカタルシスに溢れてもいるのだ。例えば、本作では序盤でカスミが「自分の人生は四本の柱でできている」とこぼすシーンがある。それだけとってみれば単なるセリフにすぎないのだが、終盤、記憶を取り戻し再び悪の道に舞い戻ろうとする茂雄にカスミが対峙するシーンでカメラは不意にカスミの手のアップを映し出す。四本の指が写ったかと思うと、親指がその後に映り、最後にすべての指を握りしめた拳で茂雄に殴りかかろうとするのだ。凡百の監督であればセリフにして説明してしまうことだろう。「私の人生は四本の柱だと思っていたけど、あんたに出会ってからはあんたの存在が私の人生の五本目の柱になったんだ」などと。
終盤の展開に疑問
終盤、悪の道に舞い戻ろうとする茂雄をカスミが救済するのだが、そのシーケンスには全く納得出来ない。物語のテンションがそこだけ異様なのだ。悪く言えばマンガチックという感じだ。
実は本作ではこれまでの山下作品と大きく異なる点がある。それは脚本である。これまでの山下作品は脚本に向井康介を迎えることが多かった。向井康介以外にもピンク映画で活躍するいまおかしんじや「その街のこども」などで高い評価を得る渡辺あやを起用するなど脚本には実力派の面々が揃うことが多かった。
しかし、本作では山下作品では初となる菅野友恵が脚本を担当している。「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」「陽だまりの彼女」などで知られる彼女だが、はっきり言ってウェルメイドな脚本を書く人材ではない。もちろん、作品によってはよい脚本を書くこともあるが、正直言って山下敦弘との食い合せはお世辞によろしくなかったというほかないだろう。
映画『味園ユニバース』 まとめ
作品自体は地味に見えるかも知れないが、その中にきっちりとドラマを描き出すのが山下敦弘の持ち味である。ということは言い換えれば、普段何気なく生きている我々の日常生活の中にもドラマは存在しているということでもあるのだ。見る目を変えれば、意外なところにドラマは潜んでいるのかもしれない。
決して何か強烈なメッセージをこちらに訴えかけてくるような作品を撮るタイプの監督ではない。しかし、確実に観るものの心の奥に染みわたる作品の名手であるといえるだろう。気軽にみられる映画といつまでも心に残る映画の両面を両立している監督である。
本作の茂雄のように、自分が持っている才能とか持ち味というものになかなか自分では気づけないものなのかもしれない。それに気づかせてくれる他者との出会いというものはきっと尊いものなのだ。
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