映画『もだえ』の概要:スウェーデンの巨匠ベルイマンが脚本を手がける。人間の暗い苦悩と確かな愛の姿が、サスペンス調で暴かれてゆく。監督は本作、そして『情婦マノン』でパルムドール賞を受賞したアルフ・シェーベルイ。
映画『もだえ』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:アルフ・シェーベルイ
キャスト:スティーグ・イェレル、マイ・ゼッタリング、アルフ・シェリン、グンナール・ビョルンストランド etc
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映画『もだえ』の登場人物(キャスト)
- ヴィドグレン(アルフ・チェリン)
- 卒業試験を控えた高校生。ベルタという娘と恋に落ちるが、高圧的な教師カリギュラの手によって生活が崩れてゆく。
- カリギュラ(スチーグ・イェレル)
- ラテン語の教師。生徒たちを脅かす存在として恐れられている。実は非常に繊細で、彼自身もまた恐怖に苛まれている。
- ベルタ(マイ・セッタリング)
- たばこ屋で働く娘。ヴィドグレンに出会って恋に落ちるが、カリギュラの精神的抑圧から逃れられない。
映画『もだえ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『もだえ』のあらすじ【起】
日曜の朝の礼拝が始まる。生徒たちは皆、教科書を片手に必死である。サディストと恐れられるラテン語の教師・カリギュラの授業が、彼らを待ち受けているからだ。
実際、授業中のカリギュラは楽しそうに生徒をいびる。ヴィドグレンはとりわけ嫌われていた。あらぬカンニングの罪を着せられ、卒業試験を目前に処罰を食らう。カリギュラは、ヴィドグレンの家にも報告を怠らない。両親に叱られ、彼の気分は最悪だ。
ヴィドグレンは友人と話すなかで、不特定の女と気ままに遊ぶより、誰かひとりの女を愛したいと打ち明ける。その帰り、彼は夜の町で、たばこ屋で働くベルタが千鳥足で歩いているのを見かける。警官から保護するため、彼女を家まで送り届ける。彼女は誰かに脅されているとひどく怯えていたが、決して訳を話そうとはしない。二人は特異な雰囲気に呑まれ、熱いキスを交わす。
校長は、近ごろ態度の不良な生徒を呼び出し、理由を尋ねる。生徒はカリギュラが恐ろしいあまりに、学業に専念できないのだと言う。早速、校長はカリギュラを注意する。だがカリギュラは、自分が軽蔑されるはずがないだの重い病気にかかって疲れているだの反抗し、聞く耳を持たない。また、校長に言いつけたのはヴィドグレンだと思い込み、もう敵意を持つことはしないよう彼に言いつける。
映画『もだえ』のあらすじ【承】
ヴィドグレンは、ベルタの家に通うようになる。二人は気を許し合い、穏やかなひと時を過ごす。だが、ベルタの恐怖は未だに消えていなかった。彼女を脅すという人物は、この家にも押しかけてくるらしい。思い出しては怯えて泣いてしまうベルタを、ヴィドグレンは抱きしめることしかできない。
ベルタはヴィドグレンに合鍵を渡し、キスを贈って彼と別れる。しかし部屋に戻ると、誰かが彼女を待ち構えているのだった。
カリギュラが監督官をするなか、ラテン語の試験が始まる。ペンを持つ手を止めながらも、試験を終えたヴィドグレンは、ベルタの家に向かう。彼女は出会った日のように泥酔していた。ヴィドグレンは彼女を揺さぶり、愛を確認し合おうとするが、彼女は応えない。彼はショックを受け、彼女に別れを告げて去ってゆく。
卒業まで残り一週間となる。授業内でカリギュラに指名されるが、失意の中にいるヴィドグレンはひどく反抗的だ。カリギュラは彼に、試験の結果や態度を含め、卒業の見込みはないと言い渡す。ひどく気分が悪くなったヴィドグレンは、意識を失ってしまう。
映画『もだえ』のあらすじ【転】
家のベッドで安静にするも、ヴィドグレンは悪夢を見る。カリギュラがいつものように脅して迫り、ベルタは「助けて」と繰り返す。カリギュラは嬉しそうに、ヴィドグレンを殺そうとする。
その頃、カリギュラはベルタの部屋にいた。彼女に無理やり酒を勧め、悩ましげに苦悩を吐露する。彼が人を脅してしまうのは、彼自身が恐怖に苛まれているからだと言うのだ。ベルタは話も聞かずに窓に張り付いて、今にも逃げ出さんばかりだ。
ベルタは通りでヴィドグレンを引き止めるが、振り払われてしまう。後をつけていたカリギュラは、すぐさまヴィドグレンに追いつくと、ベルタのことを聞き出そうとする。
帰宅したヴィドグレンだが、家にいても何も手がつかず、ベルタの家に向かう。ドアの鍵は開いており、ベルタはベッドの上で死んでいた。さらに彼が部屋を捜索すると、室内にはカリギュラが潜んでいた。身の潔白を主張する彼を部屋に閉じ込め、ヴィドグレンは通報する。
錯乱状態のカリギュラは取り調べを受ける。だが、ベルタの死因はアルコールの過剰摂取だと判明したため、解放される。
映画『もだえ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ヴィドグレンは校長室に呼び出される。校長の受け取った調書には、「カリギュラは、ヴィドグレンが品行の悪い女と付き合っていると知り、生徒のためを思って女に警告しに行った」という嘘の事実が書かれていた。ヴィドグレンは失望し、否定すらしない。そこへカリギュラがやってくる。彼を前に、怒りを抑えきれないヴィドグレンは、奴を罵った挙句殴りつけてしまう。
ヴィドグレンの言い分を両親も信じなかった。彼はすべてに信頼をなくし、家を出てゆく。
卒業を迎え、友人たちが賑やかに祝福し合うのを、ヴィドグレンは遠くから見ていた。彼はそのままベルタの葬儀に向かうと、彼女の棺をひっそりと見送る。
ベルタの家に住むことになったヴィドグレンを、校長が訪ねてくる。校長は、学校に対しての信頼を失わせたことに責任を感じていた。優しく諭し、両親の元へ帰るよう言い残す。
ベッドの奥に、ベルタが可愛がっていた猫を見つけ、微笑むヴィドグレン。猫を抱えて外へ出ると、カリギュラが待ち伏せていた。彼はままならぬ謝罪と共に、一切のことが自分の意思ではない、病気のせいだと縋るように言い出す。誰よりも恐怖に囚われている彼を、ヴィドグレンは見えていないかのように通り過ぎると、明るい町へと消えてゆく。
映画『もだえ』の感想・評価・レビュー
絶対的な悪魔として君臨するはずのカリギュラが、あまりにも人間臭く、脆いので、悲しくなった。恐怖に支配され、スターウォーズでいう暗黒面に落ちてしまった彼に、主人公ヴィドグレンは最後、背を向けて明るい昼間の町へと去ってゆく。頑なな学校制度や両親の無理解、つきまとう悲劇など、一切の抑圧からの解放を感じさせる爽快なラストだ。また、アルコール中毒に陥っているヒロイン・ベルタとの出会いのシーンは鮮烈だった。至るところに、脚本家ベルイマンの効果的なスパイスが散りばめられていたように思う。(MIHOシネマ編集部)
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