映画『モンスターズ 悪魔の復讐』の概要:19世紀末、アメリカにて実際に起きた未解決猟奇殺人事件「リジー・ボーデン事件」を映画化。地元の名士で巨額の財産を持つボーデン家の夫妻が殺害された。容疑者として浮上したのは次女のリジーだった。
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:クレイグ・ウィリアム・マクニール
キャスト:クロエ・セヴィニー、クリステン・スチュワート、ジェイ・ヒューグリー、フィオナ・ショウ etc
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映画『モンスターズ 悪魔の復讐』の登場人物(キャスト)
- リジー・ボーデン(クロエ・セヴィニー)
- 地元の名士であるボーデン家の次女。姉エマとの仲は良い。てんかんの持病持ちで、発作に襲われると急に倒れて痙攣する。非常に賢く気が強い。
- ブリジット・サリヴァン(クリステン・スチュワート)
- ボーデン家に雇われたメイド。若くて美しい容貌で控え目。アンドリューの目に留まり弄ばれているが、必死に耐えている。リジーと親密になり関係を築く。
- アンドリュー・ボーデン(ジェイミー・シェリダン)
- ボーデン家の主人。強権的で娘達に愛情はあるものの、若いメイドを雇う度に手を出している。地元の名士でもあり不動産で度々、発生する問題に頭を悩ませている。娘のリジーに手を焼いており、施設へ入れようと考えている。
- アビー・ボーデン(フィオナ・ショウ)
- アンドリューの後妻。夫の不始末を全て知っていながら、静観している。その代わりに、広大な土地を相続することになっている。リジーから母親と認めてもらえず、一方的に嫌われている。
- エマ・ボーデン(キム・ディケンス)
- リジーの姉。妹を心配して何かと助言するものの、拒絶されることも多い。妹を気遣ってはいるが、父の命令には逆らえない。
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』のあらすじ【起】
1892年、ブリジット・サリヴァンは地元の名士、ボーデン家にメイドとして雇われる。ボーデン家は主人のアンドリュー、妻のアビー、継娘で姉のエマとリジーの4人家族で、ブリジットはマギーという名前を与えられる。
その日、リジーは1人で劇場へ観劇に向かった。名家の娘が1人で観劇に向かうなど、あまり見目の良いことではなかったが、彼女は気晴らしがしたいと強気の態度。ところが、リジーは観劇中にてんかんの発作を起こしてしまう。強いストレスのせいなのか、原因は判然とせずこの病気のせいで、彼女は32歳になっても実家から出ることができないのだった。
翌日、回復したリジーは納屋のハト小屋で過ごしていたが、そこへブリジットがやって来る。文字が上手く読めないと言うブリジットに本の読み方や文字の書き方を教え、次第に距離を縮めていく2人。
そんなある日、ブリジットはアンドリューから良くやっているから賃金を上げると言われる。加えて、彼女が起居する部屋は熱が籠もりやすいので、ドアを開けておくようにと。しかしその日の夜、彼女の部屋にアンドリューが忍び込み、ブリジットの体を弄ぶのであった。
メイドは雇われている立場であるため、主人の命令には逆らえない。その頃から、ボーデン家には差出人不明の脅迫状が届くようになっていた。筆跡から見るに、同じ人物の様子。深夜になると外で物音がするなど、行為は徐々にエスカレートしていたため、リジーは警察に届けてはどうかと進言。アンドリューは非常にケチで土地を巡って恨みを買うことが多い。脅迫状も恨みを抱える誰かではないかと思われた。
そこでアンドリューは事情を話し、義弟にリジーの後見人になってもらうよう打診。更にアビーに広大な土地を相続させると言う。その話を盗み聞きしたリジーは、父が出掛けるのを見計らってアビーの部屋を荒らし、さも泥棒に入られたかのように演出して金目の物を売り払ってしまう。エマはすぐにばれると言って妹を止めたが、リジーは言い出したら止まらない。
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』のあらすじ【承】
すぐに警察が呼ばれ、捜査が行われた。来たばかりのブリジットが疑われたものの、アンドリューはリジーの仕業だと気付いている様子。父は警察と話をつけると、娘が可愛がっていたハトを手ずから殺してしまうのだった。義母アビーは全てを静観し娘を労わるものの、リジーは本物の母親ではないとアビーを受け入れないのだった。
その日の夕食時、リジーはアンドリューに逆らって自室に引き籠り、てんかんの発作を起こしてしまう。エマは妹に馬鹿なことをしたと言う。リジーがやってしまった行動により、彼女が療養施設へと送られる可能性が濃厚になった。
そこで、リジーは自分にも財産が渡るようボーデン家の弁護士に相談。父が後見人に選んだ叔父を嘘つきで汚い男だと言うリジー。
夏のある日、逢瀬を続けるハト小屋にて、ブリジットがある手紙を持って来る。彼女の母親が闘病の末、亡くなったという報せだった。リジーは泣き暮れるブリジットを慰める。アンドリューも彼女を慰めたが、それ口実にブリジットとの関係を深めようとしていた。
その日の夜、物音に目覚めたリジーは、ブリジットの部屋から父の声を耳にする。話している内容からして、どうやら父がメイドに手を出していると察した彼女は割った鏡の欠片をブリジットの部屋の前に撒いておいた。すると、行為を終えた父が部屋から出る際、鏡の破片を踏み小さな悲鳴が聞こえた。
翌日、ブリジットから仕事のために主人から何をされても耐えているのだと言われる。彼女の立場を理解したリジーは落ち込んでしまうが、後になってブリジットが慰めてくれるのだった。以来、2人はメモのやりとりにて互いに気持ちを通わせるようになる。
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』のあらすじ【転】
しばらくして、出先から戻ったリジーは屋敷の玄関に手紙を置いている叔父を発見。脅迫文と叔父の筆跡が非常に似ていたころから、叔父が財産目当てで脅迫文を送りつけているのではないかとエマに相談した。夜にやって来た叔父へと詰問すると、彼はリジーを辛辣な言葉で攻め暴行を加えようとまでする。ブリジットが助けに入ったため、怪我をするようなことはなかった。そんなこともあってか、叔父は翌早朝、挨拶もせず屋敷から去って行く。
アンドリューが午前中で仕事を終え、ブリジットとの時間を取ろうと急いで帰宅。アビーが全てを知った上で夫を遠回しに詰っている頃、リジーとブリジットは納屋にて関係を深めていた。
その様子を窓越しに目撃してしまったアンドリューは、2人を引き離そうと躍起になる。ブリジットは9月になったら解雇することにし、リジーには外出禁止を言い渡した。
不安を抱えるブリジットを守ると言うリジー。彼女は深夜に父の遺言書を探し出し、燃やしてしまう。
そうして、その年の8月4日。事件が起きた。アンドリューとアビーが何者かに殺害されたのである。第一発見者はリジーで、彼女は警察に父親は多くの人に恨まれていたと証言した。
粛々と葬儀が行われたが、家のどこにも遺言書がないことが判明。凶器と思われる斧は発見されたものの、リジーにだけアリバイがないことから警察は彼女を逮捕した。
ところが、凶器の斧に付着していた血液と毛が鑑定の結果、動物のものだと判明。裁判は名家の事件として非公開で行われたが、確たる証拠が発見されず難航する。
ボーデン家では叔父が必死にアンドリューの遺言書を探し、ブリジットが家を出て行く。エマは彼女に妹を見捨てたら容赦しないと言ったが、ブリジットは何も言わなかった。
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』の結末・ラスト(ネタバレ)
単身者向けの下宿へと身を移したブリジットが後日、裁判の証人として出廷。彼女はリジーのアリバイがない時間、ずっと庭にいたと証言した。
裁判後、拘置所のリジーと面会したブリジットは、彼女にとって自分が何なのか問い詰める。
あの日、リジーは計画遂行のため、ブリジットを使ってアビーを寝室に呼び出し全裸になって義母を殺害。血塗れになったため、納屋で斧と自分の身体を洗った。その後、自室に戻り衣服を着用。その間、ブリジットが汚れた水を処理した。そして、アンドリューが帰宅。父に挨拶をしたリジーは庭先で時がくるのを待つ。ブリジットは逡巡した後、全裸になってアンドリューを殺そうとしたが、失敗。心配したリジーが現れ、斧で父を殺害した。
恐怖に慄くブリジットを労わったリジーはその後、洗った斧でハトを殺し、斧の柄を切り取ってストーブで燃やしてしまう。更に着替えたリジーは父の遺体を発見したかのように悲鳴を上げ、事後工作をしてブリジットに警察を呼ぶよう指示したのだった。
リジーは顔色一つ変えず両親を殺害したのだ。そんな彼女を恐れたブリジットは、リジーとの関係を断ち切ることを告げ、拘置所から去った。
その後、リジーが証言台に立つことはなく、裁判はわずか90分で終了。陪審員は無罪評決を下した。貴婦人が凶悪な殺人を犯すとは考えられないことだったからだ。
ブリジットはリジーと不仲になりその後、モンタナ州へと移り住む。彼女は農場で生活を送り82歳で他界。リジーは生涯未婚で友人は少なく、財産の大半を動物愛護協会に遺贈。67歳でこの世を去った。
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』の感想・評価・レビュー
実際に起こった事件を映画化しているが、今作ではリジーとメイドのブリジットが恋仲にあったという仮定で描かれている。そもそも、ボーデン家には巨額の財産があり、1人目の夫人が亡くなってから、相続について常に揉めていたらしい。史実によると、そのせいで屋敷は二分割されており2階で姉妹が、1階で両親が過ごしており、食事も共に摂ることがほとんどなかったらしい。
リジーが殺意を募らせる経緯が丁寧に描かれており、メイドと恋仲にあったと仮定してはいるものの、違和感のない流れができている。殺害動機が多過ぎる故に、メイドとのことはただのきっかけに過ぎなかったのかもしれない。その証拠にメイドと別れる際、惜しむ様子が見られず、淡々としている。鬱屈した内情を描いた秀逸な作品。(MIHOシネマ編集部)
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