映画『武曲 MUKOKU』の概要:剣の道をただ一筋に生きる父親に育てられた研吾。だが、ある事故がきっかけで、今ではすっかり酒浸りになり、剣道からも離れてしまった。そんな時、ラップ好きの高校生・融が現れる。彼は研吾の救いとなるのだろうか。
映画『武曲 MUKOKU』の作品情報
上映時間:125分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:熊切和嘉
キャスト:綾野剛、村上虹郎、前田敦子、片岡礼子 etc
映画『武曲 MUKOKU』の登場人物(キャスト)
- 矢田部研吾(綾野剛)
- 幼い頃から父・将造に厳しく育てられた。自分も剣の道で生きるつもりでいたが、ある事故が原因で剣道から離れてしまう。毎日、酒浸りとなり、髪も髭も伸び放題。以前は高校の剣道部のコーチをしていたが、それもやめてしまう。将造のことが好きなのか、憎んでいるのか、自分でも分からずに苛立っている。カズノという恋人がいる。
- 羽田融(村上虹郎)
- ラップが好きな高校生。以前、洪水の時に死にかけており、それがリリックにも反映されている。だが、それ以来、死に魅了されているところがある。洪水に巻き込まれた時、車のライトが美しく、天国かと思ったそうだ。剣道にはまるで興味もなかったが、研吾と対決したことで、興味が湧いてくる。
- 矢田部将造(小林薫)
- 研吾の父。剣道の達人で、多くの弟子から尊敬されていた。妻の静子が亡き後は落ちぶれていき、酒浸りとなる。ある事故が原因で植物状態となってしまう。口癖は、“研吾、剣を取れ”
- 光邑(柄本明)
- 高校の剣道部にコーチであり、寺の和尚。昔は研吾の練習相手でもあった。思い悩んで落ちぶれていく研吾を救いたいと思っている。融と出会ったことで、彼に才能を見出し、剣道の道を勧める。
映画『武曲 MUKOKU』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『武曲 MUKOKU』のあらすじ【起】
矢田部研吾は幼少の頃から父の将造に剣道を指南されていた。だが、その教育は過酷だった。将造は、相手を殺すほどの強い剣道を教えることに熱心になり、研吾にも早々に木刀を持たせた。時には真剣を持ち出して、面も付けずに打ち合いをするほどだった。
研吾が成人する頃、母の静子が亡くなる。それを機に、すっかり酒浸りになってしまう将造。剣の道に生きていた将造の成れの果てに失望した研吾。将造は研吾に“お前など、いつでも殺せるぞ”と毒づいた。二人は木刀で打ち合いを始める。その時、研吾の面が将造の脳天に直撃してしまう。
研吾の一撃で、将造は植物状態になってしまった。研吾は罪の意識を感じ、それ以来、剣道から離れてしまう。高校の剣道部のコーチもやめ、酒浸りの生活を続けていた。
高校生の羽田融はラップに夢中だったが、ある時、剣道部と口論になる。剣道部の主将と勝負することになり、コーチで和尚の光邑の前で、見事な下段を披露する。その腕を見た光邑は才能を感じ、融に薪割りのバイトを頼んだ。
映画『武曲 MUKOKU』のあらすじ【承】
5日間、薪割りをした融に光邑はバイト代を払うという。喜んでついていった融が渡されたのは、剣道の道着と木刀だった。剣道などする気がない融だったが、光邑に諭され、剣道部に入部することになった。
光邑から研吾の所へ届け物を頼まれた融。だが、家に着くなり、フラフラになった研吾に木刀を取られてしまう。酔って頭の回らない研吾には、何を言っても話が通じない。しびれを切らした融は届け物を玄関に置くと、その場から立ち去った。
翌日、剣道部の稽古中に研吾が木刀を持って現れた。奪った木刀を置いて帰ろうとすると、光邑から融と一戦交えてみろという。“今のお前はこの小僧より弱い”と言われた研吾は、融を一方的に攻め始める。しかし、不意を突かれ、融に一本を決められてしまった。
苛立った研吾は剣道そっちのけで暴れだし、剣道部員たちを殴り倒していく。だが、そこに融が下段の構えで立ちふさがった。研吾はそこに将造の影を見て、思わず身震いした。立ち去ろうとする研吾に、光邑は今すぐに酒をやめろと言うが、聞く耳を持たない。
いつもより更に深酒した研吾は、家に戻ると真剣を取り出し、将造との過去を断ち切るように、めったやたらに振り回した。
映画『武曲 MUKOKU』のあらすじ【転】
融はラップよりも剣道に夢中になり始めていた。融は研吾に勝つことだけを考えるようになる。その姿を見た光邑から“お前は研吾を懼れている。今のお前では勝てない”と言われてしまう。
融は研吾に会いに行き、果し合いを申し込む。融は以前、洪水に巻き込まれて死にかけており、それ以来、死の恐怖に魅了されていた。研吾を焚きつけるため、どうやって将造を殺したのかと尋ねる融。だが、研吾は気のない素振りで立ち去って行った。
台風が近づいてきた日の夜。融は研吾の家を訪ね、再度、果し合いをしたいとお願いした。融が木刀を出すのを見た研吾は、庭から竹刀を探し出す。台風がやってきて、大粒の雨が降り出してきた。二人はずぶ濡れになりながら、剣を交えていく。
洪水の時に味わった死の気配を感じた融は、思わず恍惚の表情を浮かべる。打ち合いの末、融の胴が決まった。斬ったと喜ぶが、研吾はやめる様子がない。“早く俺を殺してくれ”と融に飛びかかっていく。
雨が上がり、静寂が辺りを包んだ。その時、融が将造に見えた研吾は、思わず突きで喉を強打してしまった。喉をやられた融はその場に倒れこむが、その姿も研吾には将造に見えていた。
映画『武曲 MUKOKU』の結末・ラスト(ネタバレ)
入院中の将造の元へやってきた研吾を、光邑たちが取り押さえた。寺に監禁された研吾は、酒が抜けた頃、融と会わされる。融が首に巻いた包帯を取ると、そこには大きな痣ができていた。研吾は自分がやったことを思い出し、放心状態になる。融はかすれた声で、すみませんでしたと言い、涙を流した。
将造が亡くなり、葬儀が行われた。研吾は光邑の寺で世話になり、四十九日が過ぎる頃には、すっかり毒気も抜けていた。光邑は、生前に将造からもらったという手紙を研吾に渡し、読んでみろという。
将造は剣の道に生きる業と自身の不徳から、研吾と生死をかけた一戦が来ることを予期していた。そして、研吾に殺されるつもりでいた。研吾は自分と妻・静子との大事な息子なので、自分の亡き後は、よろしくお願いしますと光邑に頼んでいたのだった。
手紙を読んだ研吾は、将造がわざと自分に打たれたのかと光邑に問いかけた。光邑は、今となっては分からないと返すだけだったが、“将造も放たれて、楽になっただろう”と言葉を続けた。その言葉に研吾は嗚咽しながら、はいと答えた。
融はあの果し合い以来、剣道の稽古に出ていなかった。研吾は融に会いに行き、もう一度、お前の下段と俺の面で対決したいと言い、木刀を置いていく。
翌朝、道場からは融が素振りをする音が響いていた。そこに、道着に着替えた研吾がやってくる。ボサボサだった髪は短く切られ、髭も剃られていた。二人は深く一礼し、面を付けると竹刀をぶつけ合った。そして、念願の下段と面の対決が行われた。
映画『武曲 MUKOKU』の感想・評価・レビュー
主演の二人のファンなので観ました。予習せずに観たのですが、途中で話が分からなくなってしまい、後であらすじやネタバレを観て理解したので、これから観る方は予習されることをお勧めします。二人とも雰囲気がありかっこよく、特に村上虹郎さんは若いのに迫力も色気もあり、益々これからが楽しみな俳優さんだと感じました。
剣道にあまり詳しくないのですが、他のスポーツよりも精神面の鍛錬が重要な印象があり、この作品はそういった点がしっかり表現されていたのではないかと思います。(女性 20代)
みんなの感想・レビュー