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映画『永い言い訳』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『永い言い訳』の概要:20年も連れ添った妻を突然の事故で亡くした作家は、妻の死を悲しめない自分に戸惑い、罪滅ぼしをするように、妻の友人家族の面倒を見始める。妻の死に対照的な反応を示す2人の夫を、本木雅弘と竹原ピストルが熱演している。西川美和監督作品。

映画『永い言い訳』の作品情報

永い言い訳

製作年:2016年
上映時間:124分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:西川美和
キャスト:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季 etc

映画『永い言い訳』の登場人物(キャスト)

衣笠幸夫(本木雅弘)
テレビにも出演している売れっ子作家。ペンネームは津村啓。大学時代に妻の夏子と知り合い、彼女の支えで作家になった。最近は仕事もプライベートも不調気味。夏子が事故で亡くなった時、愛人と浮気中だった。そのため、素直に夏子の死を悲しむことができない。
大宮陽一(竹原ピストル)
夏子の大親友・大宮ゆきの夫。トラック運転手。夏子と同じ事故で最愛の妻を亡くし、ストレートに悲しみや怒りを表現する。その悲しみを分かち合いたくて、幸夫に連絡する。幸夫とは正反対の愛妻家で、ゆきを失った悲しみからなかなか立ち直れない。
衣笠夏子(深津絵里)
幸夫の妻。大学時代に父親を亡くし、大学を辞めて美容師になった。親友のゆきと深夜バスでスキーツアーに出かけ、バス事故で亡くなる。献身的に幸夫に尽くしていたが、愛は冷めていた。幸夫のことは、ずっと“幸夫君”と呼んでいた。
大宮真平(藤田健心)
小学6年生になる陽一の長男。学習塾に通い、難関中学への進学を目指している。勉強には無関心な父親と気が合わず、インテリの幸夫に心を開く。
大宮灯(白鳥玉季)
5歳になる陽一の長女。兄が塾へ通う日は、幸夫が一緒に留守番をしてくれることになる。幸夫によく懐く。
岸本(池松壮亮)
幸夫のマネージャー。幸夫が夏子の死を悲しめないでいることを見抜いている。
鏑木(山田真歩)
子ども科学館の学芸員。両親が子育て支援活動をしており、陽一の力になろうとする。そのことで幸夫からは敵対視される。

映画『永い言い訳』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『永い言い訳』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『永い言い訳』のあらすじ【起】

売れっ子作家の衣笠幸夫は、有名野球選手と同じ本名を嫌い、津村啓のペンネームで仕事をしている。妻の夏子は美容師をしており、無名時代から幸夫のことを支えてきた。今日は高校時代からの親友・大宮ゆきと深夜バスでスキーツアーに出かける予定だったが、夏子は幸夫の求めに応じて、彼の髪を切ってやる。しかし幸夫の態度は冷たく、夫婦の会話は殺伐としていた。

髪を切り終えた夏子は、慌ただしく家を出る。ちょうど夏子がゆきと出発した頃、幸夫は愛人を家に連れ込んでいた。2人は夏子の留守中に伸び伸びと情事を楽しむ。

翌朝、幸夫の自宅に山形県警から連絡が入る。夏子の乗ったバスが崖下に転落し、多くの乗客とともに、夏子も死亡したらしい。現地へ到着した幸夫は、警察に夏子のことを質問される。しかし、幸夫は夏子がどんな服を着ていたのかも覚えていなかった。

幸夫は現地で夏子を荼毘に付し、3日後に東京で葬儀を執り行う。夏子と一緒に働いてきた同僚は、幸夫の冷たい対応に腹を立てる。葬儀には多くの報道陣がつめかけており、幸夫は妻を亡くしたかわいそうな夫を演じる。しかし内心は悲しんでおらず、世間が自分をどう見ているかばかりを気にしていた。

バス会社の説明会に出席した幸夫は、そこで怒りを爆発させて泣き崩れる大宮陽一と出会う。陽一は最愛の妻に先立たれ、2人の子供を抱えて途方に暮れていた。幸夫は初対面の陽一に“幸夫君”と声をかけられ面食らう。夏子だけが自分のことをそう呼んでいたからだ。それは、夏子とこの一家の親しさを示していた。

夏子がいなくなり、幸夫の生活は荒れていく。夏子は仕事をしながら家事も完璧にこなしていたので、幸夫は何もできなかった。罪悪感を感じていた愛人も、幸夫のもとを去っていく。

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映画『永い言い訳』のあらすじ【承】

幸夫は仕事の面でもスランプに陥っており、ここ3年ほどはいい作品を書けていなかった。出版社の人間は、そんな幸夫に夏子のことを書くように勧める。しかし幸夫は、夏子のことを書く自信がなかった。

そんなある日、家の留守番電話に陽一からのメッセージが入る。陽一は、幸夫と悲しみを分かち合いたいと思っていた。幸夫は取材をするような気持ちで、陽一に連絡してみる。

幸夫は行きつけのイタリア料理店で、陽一と子供たちと食事をする。陽一には、6年生になる息子の真平とまだ5歳の灯という娘がいた。そこで灯が甲殻類のアレルギー反応を起こしてしまい、陽一は急いで病院へ向かう。

幸夫は真平を自宅まで送り、陽一の帰りを待つ。そこで真平が中学受験を目指して進学塾に通っていることを知る。しかし真平は、塾をやめるつもりだった。陽一は長距離トラックの運転手をしており、真平が塾へ行くと、灯の面倒を見る人がいなくなるのだ。

事情を知った幸夫は、真平の塾の日は、自分がここへ来て灯の面倒を見ようかと陽一に提案する。陽一は喜んで、幸夫の好意に甘える。

子供がいない幸夫は、灯の扱いに戸惑いつつも、陽一の家に通い始める。真平が帰る時間には、灯と一緒にバス停まで真平を迎えにいく。真平は、2人のお迎えが嬉しかった。

幸夫は灯の保育園のお迎えまで行くようになり、灯もすっかり彼に懐く。真平も幸夫には心を開き、父親には言わない泣き言も言うようになる。真平は、勉強が苦手な陽一よりも、インテリの幸夫の方が話しやすいようだった。幸夫は夏子への罪滅ぼしをするかのように、大宮一家に尽くす。

映画『永い言い訳』のあらすじ【転】

幸夫のマネージャーの岸本は、そんな幸夫の気持ちを見抜いていた。岸本は、子育てが免罪符になることは認めるが、このままの状態を続けても、幸夫は救われないだろうと指摘する。確かに幸夫は真平と灯の存在に癒され、彼らに尽くすことで満足感を得ていたが、根本的な生活は立て直せていなかった。

夏。幸夫は陽一たちと海水浴へ出かける。陽一はそこでもゆきのことを思い出し、泣き出してしまう。母親の葬儀で泣けなかった真平は、陽一から“お前平気なのか”と言われて傷ついていた。幸夫が真平にかける慰めの言葉は、未だに泣けない自分自身の言い訳でもあった。

なんとなく夏子のことを語れる気がしてきた幸夫は、ずっと断っていたドキュメンタリー番組への出演を引き受ける。それはバス事故で妻を亡くした幸夫の姿を追うという企画の番組だった。

撮影へ向かう荷造りをしていた幸夫は、何気なく夏子の遺品のスマホをいじる。すると、事故直後は電源の入らなかったスマホが復活する。そこに残された幸夫宛の未送信のメールには、“もう愛していない ひとかけらも”という夏子の言葉が残されていた。幸夫は混乱し、スマホを破壊してしまう。

撮影中、“天国の奥さんに伝えたいことはありますか”と聞かれた幸夫は、感情的になって夏子への恨み言をぶちまける。岸本は大げさにそれを制し、幸夫が悲しみのあまり取り乱したように演出する。番組では、灯たちの世話をする幸夫の姿も放送され、妻や母親の死を乗り越えようとしている遺族のドラマチックなドキュメンタリー番組が完成する。岸本や番組スタッフは満足していたが、幸夫は自分の嘘くさい姿に嫌気がさしていた。

陽一たちと子ども科学館へ出かけた幸夫は、真平の気持ちを理解していない陽一に、“今の子供たちをちゃんと見てやれ”と忠告する。幸夫は、陽一のまっすぐさに、苛立ちを感じていた。

そこへ学芸員の鏑木という女性がやってきて、幸夫の番組を見て感動したと言い出す。しかし幸夫は冷たい態度で鏑木を突き放す。陽一は気を使い、鏑木の話を親切に聞いてやる。

幸夫から、ゆきを忘れて前を向くよう説教された陽一は、ずっと大事にしてきたゆきの留守電メッセージを消去する。

映画『永い言い訳』の結末・ラスト(ネタバレ)

冬になり、灯が6歳の誕生日を迎える。自宅で開かれたささやかな誕生日パーティには、鏑木も呼ばれていた。陽一は幸夫が忙しくなると聞き、子育て支援をしている鏑木の両親に灯の世話を頼むつもりにしていた。幸夫は無性に腹が立ち、酔っ払ってひどい悪態をつく。そのまま帰ってしまった幸夫を、陽一が追いかける。幸夫と陽一は初めて本気でぶつかり合い、感情的になった幸夫は、あの日自分が愛人と一緒だったことを暴露する。幸夫はずっと、そんな自分に夏子の死を悲しむ資格などないと思ってきたのだ。

それきり幸夫は灯の世話に行かなくなり、自暴自棄になっていく。真平からの電話に出る勇気もなく、寂しい日々を送る。

幸夫が来なくなり、陽一の家も荒れ放題になっていく。真平は、家のことにも受験のことにも無関心な陽一に怒りを感じ、反抗的な態度を取って陽一に殴られる。陽一は真平に、“お父さんみたいにはなりたくない”と言われてしまう。

心身ともに疲れ果てて仕事へ出た陽一は、山道で事故を起こす。陽一が運ばれた病院から幸夫に連絡が入り、幸夫は家を飛び出していく。

幸夫は灯のことを鏑木に頼み、真平と一緒に陽一を迎えにいく。真平は、お母さんよりお父さんが死んだ方がマシだと思ってしまったことを後悔していた。幸夫は、“自分を大事に思ってくれる人を大事にしないと、僕みたいになってしまうよ“と、優しく真平に語りかける。

幸い陽一の怪我は軽傷で、真平は陽一のトラックで帰っていく。幸夫は2人を見送り、帰りの電車で、泣きながら自分の想いを書き綴っていく。

その後幸夫は、夏子との20年を綴った「永い言い訳」という本を出版する。出版記念パーティには、陽一と一緒に、中学生になった真平と1年生になった灯も来てくれた。そこで灯は、大宮家と夏子が海水浴に行った時の写真を幸夫にプレゼントする。

夏子への永い言い訳を終えた幸夫は、彼女の愛用品をダンボールにしまい、ようやく自分の気持ちにケリをつける。幸夫の部屋には、灯のくれた写真が飾られていた。

映画『永い言い訳』の感想・評価・レビュー

他の女との不倫中に突然亡くなってしまった妻。泣けない夫。誰にも寄り添えない主人公が子供たちと触れ合いゆっくりと成長していく。
テーマとしてはよくあるのかもしれないが、繊細な感情を丁寧な描写で描かれた良質な作品。
大事な物は無くして初めて気が付くと色々な場所で言われ頭の中にはあるが、やはり大事にできていない日常。無くさないと気がつけない。
色々考えさせてもらえた作品。(女性 40代)


自己愛が強くて、家庭も顧みない主人公の性格には、正直あまり共感できませんでした。妻をしっかり愛することが出来ず、妻が亡くなった時には愛人と不倫しているという最低な設定で、「悲しい」「辛い」だけじゃない感情を抱いている姿は、見ていて複雑な気持ちになりました。
共に亡くなった妻の親友の子どもたちと触れ合ったり、自分とは全く真逆の性格の竹原ピストルと関わっていくうちに、少しずつ前に進んでいけるようになっているのは、救いのある描き方だなと思いました。(女性 20代)


不倫中に妻に先立たれた幸夫と、残された子どもたちとの交流を描いた作品。
物語は緩やかに進行するが、登場人物一人一人の気持ちがしんみりと伝わってきた。
女性監督だが男目線で描かれていて、幸夫が少しずつダメ男からましな男になっていくところが面白かった。
失って初めて得るものもある。
後悔しないように自分と向き合い、愛情はちゃんと表現して生きていきたいと思った。
邦題も全体の雰囲気を包み込んでいて素敵だと思う。(女性 20代)


大切な人を失った後の哀しみと、他者との関わりから生まれる喜びを描いた作品。
どこか物憂げな雰囲気の映像、胸に刺さるセリフ、余白のある演出に、感情が揺さぶられる。

主人公である幸夫の、人間としての酷さは見ていて痛々しい。疑似家族の存在が彼に日常の幸せを与えてくれるが、それでも素直になりきれず、自分が悪い人間だと開き直ってしまうところは、どうしようもなく惨めだ。でもきっと、自分の中にもそんな部分があるから、心に響くものがあるのだろう。

自分にとって大切な人、そして自分の生き方について考え直すきっかけとなる作品である。(女性 30代)


愛を大切にしなかった主人公が、妻の死と友人親子との繋がりをきっかけに愛を知っていく姿を描いた作品。とてもシンプルな描き方と個性的な出演陣の雰囲気がとても合っていて、作品の深さを感じたが、少し難しい作品にも感じた。
妻の「もう愛してない。ひとかけらも」というメッセージがとても印象的だった。亡くなった妻のその言葉は、愛を知った主人公の心に一生残るのだろうなと感じた。それが主人公への罪と罰のようにも思えた。(女性 30代)


目の前の小さな幸せを大切にできず、自分の感情に素直になれず、自己愛は強いのに自分に自信がない主人公の性格が、自分の欠点と重なりすぎて情けなくなりました。
自分が嫌いな自分の遺伝子を半分持った子どもを産むことが怖い、というようなセリフがあり、とても共感しました。自分と似ているのかもしれないと感じたシーンでした。
真平が、母ではなく父が死ねば良かったと思ってしまったと打ち明けるシーンも、強く感情移入して泣いてしまいました。真平はきっと深くものごとを考える子で、酷いことを考えてしまった自分を強く責めたであろうことが想像でき、傍で慰めてあげたいと心から思いました。
大切なものは存在している時にしか大切にできない、当たり前のことを改めて考えさせられました。(女性 20代)


映画を観る前に原作の小説を読みました。小説は、飄々とした主人公の幸夫が少しずつ妻の夏子への愛情を思い出していくような淡々とした印象だったのですが、映画になると生々しさが増していました。特に大宮家の灯ちゃんのお誕生日会のシーンは、いたたまれない気持ちになってしまいます。対照的な二人の男を、本木雅弘と竹原ピストルが違和感なく演じていました。誰のことも愛せないようでいて、いざ子供ができるとすごく可愛がってしまう人、いますよね。人間って根本的には寂しがり屋で誰かに必要とされたい。そういう部分はみんな同じなのだろうなと思います。(女性 40代)

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