映画『7番房の奇跡』の概要:身に覚えのない罪で死刑判決を受けた父が、幼い娘と無理矢理に引き離され刑務所へ収監。娘も父と会えない寂しさを募らせ、親子に関わった囚人と課長は、彼らを何としても共に過ごさせようと奮闘する。知的障害を持つ父とその娘の強い絆を描いた切なくも悲しい作品。
映画『7番房の奇跡』の作品情報
上映時間:127分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:イ・ファンギョン
キャスト:リュ・スンリョン、パク・シネ、カル・ソウォン、チョン・ジニョン etc
映画『7番房の奇跡』の登場人物(キャスト)
- イ・ヨング(リュ・スンリョン)
- イェスンの実父。知的障害を持つも天真爛漫で真面目。幼児殺害事件に巻き込まれ、容疑者として逮捕されてしまう。娘を深く愛している。
- イェスン(子供:カル・ソウォン / 大人:パク・シネ)
- ヨングの実娘。幼いながらも知的障害を持つ父親の世話をするほどに賢い。ヨング亡き後、父親の無実を証明するため、弁護士を目指すようになる。
- ソ・ヤンホ(オ・ダルス)
- 暴力団構成員でヨングが収監された7番房の房長。字の読み書きができず、イェスンと関わることで練習するようになる。ヨングとイェスン親子により改心し、後にキリスト教の牧師となる。
- 刑務所課長 / イェスンの義父(チョン・ジニョン)
- 刑務所課長でヨングとイェスン親子を傍で見守る。ヨングの無実を訴えるが、進言は無視されてしまう。陰ながら親子を支え、ヨング死刑執行後はイェスンを引き取り育てる。自身も1人娘を亡くした経緯があり、人情味が厚く真実を見る目を持っている。
映画『7番房の奇跡』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『7番房の奇跡』のあらすじ【起】
1997年2月。知的障害を持つイ・ヨングと娘のイェスンは2人暮らし。しっかり者のイェスンはじき小学校へ入学する年頃で、父親の世話をする賢い娘だった。ヨングは車の誘導員として一生懸命働き、アニメセーラームーンに憧れる娘のために、給料が出たらセーラームーンのランドセルを購入しようと考えていた。
しかし、家の近くの店にあったランドセルが売れてしまう。給料日、そのランドセルを背負った女の子がヨングを見かけて声を掛けてくる。売っている店へ案内してくれると言うので、彼は少女に言われるまま後をついて行った。だが、少女は何者かに殺害。ヨングは何があったのかも理解できぬまま、幼児誘拐殺人とわいせつ罪により逮捕。イェスンとも引き離され、刑務所へと収監されることになる。
7番房へ収監されたヨング。元暴力団構成員ヤンホが房長をしている房には、他にも4人の囚人がいた。ヨング以外は誰もが罪人である。歓迎代わりに痛めつけられてしまうヨングだったが、刑務所内でライバルとの諍い中、たまたまヤンホを助けたことにより認められるようになる。
自分を助けてくれた礼に1つ願いを聞いてくれるとヤンホが言うので、ヨングは娘のイェスンと会いたいと願った。房内の仲間達はあらゆる手を使い、キリスト教を信仰する保育園に引き取られたイェスンが、刑務所へ訪れる情報を入手。そしてその日、密かにイェスンを7番房へ連れて来ることに成功するのである。
そうして、父親と娘は涙ながらに再会を果たした。遊戯の時間は2時間あったが、神父が倒れたことにより、遊戯は30分で終了となる。父子がぐずっている間に、バスはイェスンを置いて発車。少女は7番房で一時を過ごすことになってしまうのであった。
映画『7番房の奇跡』のあらすじ【承】
7番房の面々は何だかんだ言いつつも、協力してイェスンを上手く匿い続ける。次の遊戯の際に帰そうとするも、宗教違いで帰すことができなかった。ヤンホは仕方なく、イェスンを7番房へ戻すことにした。しかし、2日目にしてとうとう、イェスンは刑務官と刑務所課長に発見されてしまうのである。
課長はただちに全房の立ち入り検査を行い、ヨングを独房へ隔離。イェスンはすぐさま保育園へと返された。それは、酷い雷雨の夜だった。
このせいで、他の囚人が異を唱え刑務所に放火。課長は全囚人を避難させ、自分は犯人の説得に残った。だが、火事の騒動で意識を失ってしまう。そこへ、突入して来たヨングが課長を助けるのだった。
このことにより、ヨングの人柄に注目した課長。後日、学校の担任と一緒に面会へ来たイェスンとヨング親子のやり取りを観察。父子の絆は強く、父は娘を深く愛しているようだった。課長はその姿に疑問を覚え始める。そうしている内にイェスンが食を絶ち、入院。哀れに思った課長はイェスンを密かに7番房へ送り込むことにした。
そして、ヨングの事件の見直しを始め、殺された娘が警察庁長官の娘であったことが分かる。
休日の度にイェスンを7番房へ。彼女のお陰で7番房の囚人達には活気が現れ始める。そうして、ヨングの話から当時の事件状況の検分を始めるのであった。ヨングは誘導員だったため、人命救助の講習を受けていたと言う。
映画『7番房の奇跡』のあらすじ【転】
事件があった2月27日。当時の気温はマイナス18度と非常に寒かった。道路や通路は凍結しており、少女の後を追っていたヨングも滑って転んだ。その際、悲鳴が聞こえ駆け付けると、少女が頭部から血を流して倒れていたのだ。ヨングは少女を助けるため、人命救助の講習に則って行動したのだった。恐らく、少女も凍結した地面で滑って転んだのだ。そして運悪く、頭部にレンガが落下し命を落としたのだろう。
課長は長官へ会いに行き、ヨングが無実であることを進言するも、愛娘を亡くした父親は復讐に燃えていた。
その頃、7番房では裁判に向けて準備を始めていた。ヨングにちゃんと証言させるため、文章にまとめて覚えさせる。そして、囚人達は協力して嘆願書を作成。課長はヨングの弁護士に嘆願書と陳述書を渡した。
誰もがヨングは無実であることを知っている。しかし、ヨングは裁判にて検事の質問に何も答えられず、更には自分の罪を自ら認めてしまった。開廷寸前、長官に殴られイェスンに害を成すと脅されていたからだ。これには課長も耳を疑い、場内は騒然とした。ヨングはひたすら、自分がやったと言い娘を助けて欲しいと頭を下げるのである。これにより、ヨングは一審と同様に死刑判決を受けてしまう。
夏から秋へ季節は巡る。そして、冬。イェスンとヨング親子を見守り関わる人々は、ともすれば沈みがちになる心を叱咤しつつ、いつも通りの生活を心がける。
課長はイェスンを自宅へ招き親交を深めつつ、父親との面会を優遇させた。
そうして、とうとうヨングの執行日が確定される。12月23日、奇しくもその日はイェスンの誕生日でもあった。
映画『7番房の奇跡』の結末・ラスト(ネタバレ)
毎年恒例、刑務所での一大イベントがあった。そこの出し物で優勝した者には、1晩だけ家族と過ごす権利が与えられる。7番房の仲間達は死刑執行日が確定したヨングのために、ひと肌脱ぐことにした。
仲間達は囚人達に協力を得て刑務所内にある道具と布で気球を作った。
イベント当日、イェスンとヨングは気球に乗り込み空へ飛び立つ。課長もこれには見て見ぬふりをした。あわよくば脱獄でも果たせばいいという思いもあった。
だが、気球から伸びたロープが刑務所の壁の有刺鉄線に引っかかり、気球は止まってしまう。それでも、親子は塀を越えた先に見える夕日を眺め一時、心の平安と癒しを得るのだった。
12月23日。同房の仲間達とイェスンは食事を共にし、少し早いクリスマスのプレゼントを交換した。ヨングは1年越しのランドセルを娘にプレゼント。事件のきっかけとなったセーラームーンの黄色いランドセルは、ずっとイェスンが欲しがっていた物だった。
最後の別れ、何度も何度も別れを口にする親子。ヨングの悲痛な叫びは刑務所内に響き、誰もが目に涙を浮かべた。
その後、課長はイェスンを引き取り、彼女を育てる。イェスンは父が無実であったことを証明するため、弁護士を目指した。
そして、当時を共に過ごしたヤンホと仲間達に声をかけ、模擬裁判にてヨングの無実を証明しようと集める。
画して、裁判が始まりイェスンは自分が見てきた全てのことを明かして、父ヨングの無実を証明。判決を見事に覆すのであった。
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