映画『ねことじいちゃん』の概要:過疎化が進んだ離島にて、妻に先立たれ飼い猫と暮らしている主人公は70歳。彼と猫は毎朝日課の散歩を欠かさず行っている。ある日、島に新しいカフェができ、店主の女性と仲良くなった主人公は妻が遺したレシピノートを完成させようと思い立つ。
映画『ねことじいちゃん』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:岩合光昭
キャスト:立川志の輔、柴咲コウ、柄本佑、銀粉蝶 etc
映画『ねことじいちゃん』の登場人物(キャスト)
- 大吉(立川志の輔)
- 妻のよしえに先立たれ、飼い猫のタマと一人暮らしをしている。穏やかでのんびり屋さん。美智子の店の常連になり、一緒にレシピノートを作る。
- 美智子(柴咲コウ)
- カフェ、シャルトリューの店主。若くして島へ渡り、1人で店をやりくりしている。美しく穏やかで、優しい人。猫に好かれている。大吉のレシピノートを作る協力をしてくれる。
- 若村健太郎(榎本佑)
- 島の診療所の医師で若先生と呼ばれている。真面目で冗談が通じないところがあり、大吉と巌によくからかわれている。美智子に一目惚れする。
- サチ(銀粉蝶)
- 上品な雰囲気のおばあさん。若い頃、巌に恋心を抱いていたが叶わず。巌とダンスホールへ行く約束をしていた。美智子の店の常連になる。三毛猫のミーちゃんを溺愛している。
- よしえ(田中裕子)
- 大吉の妻。料理上手で子猫のタマを拾って可愛がる。いつもタマのことを思い、愛情たっぷりに育てるが、病に罹り亡くなる。
- 巌(小林薫)
- 漁師で大吉の親友。猫が嫌いなのに、猫に囲まれる。ツンデレなところがあり、おおらかで不器用な優しさを持っている。
映画『ねことじいちゃん』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ねことじいちゃん』のあらすじ【起】
妻に先立たれ70歳の大吉は猫のタマと暮らしている。妻よしえの仏壇に好物のコーヒーを捧げ、朝食後の日課はタマと近所を散歩すること。散歩のルートには通学路があり、学生さんをお見送りしつつ港へ向かう。幼馴染の巌は漁師で猫たちは巌さんが大好きだが、本人は嫌いだと言い張っている。
そんなある日、港の近くに新しい店が作られているのを見つける。この島には高齢者が多く日中はじいさんとばあさんしかいない。出来るならコンビニがいいというばあさんもいて、なかなかに面白い。何ができるか期待しつつ、タマは大吉を置いて自分の縄張りの見回りへ向かうのだった。
急にいなくなったタマを探し、大吉は歩き回る羽目に。巌さんは呆れ顔だったが、大吉について歩く。その頃、タマは首輪をした美しい三毛猫を発見するが、牽制され逃げられてしまう。タマを探し歩いていると診療所の医師、若村健太郎と遭遇。若い彼は真面目な性格だが、大吉と巌さんの冗談にたじたじ。しかも、生きた生魚は苦手だと早々に去ってしまうのだった。
猫の泣き声を聞きつけ細道の先に向かうと猫の集会所に出る。タマはそこにいたが、大吉に捕まる前に逃げて行く。追いかけるとそこに若い女性がいた。タマはその女性にとても懐いている。猫はベタベタされるのを嫌うし、実はよく人を見ているとは大吉談である。島へと新たにやって来た女性、美智子はどうやら猫に好かれる好人物のようだった。
新しく出来たお店はおしゃれなカフェになっていた。その日がオープンということだが、どうにも気後れして入れず、大吉も巌も近所のおばあさんたちも店先から眺めるばかり。そこへ店から美智子が現れ、気軽に入ってくださいと言う。タマが一番乗りで店の客になり、猫も一緒でいいと言うため、上品な雰囲気のサチさんと巌、大吉でテーブルを囲む。店はお年寄りが集まる場所として繁盛しているが、そこへ健太郎がやって来る。彼は若先生とお年寄りにも人気があるが、美智子を目にして呆けたように立ち尽くしていた。
映画『ねことじいちゃん』のあらすじ【承】
健太郎は美智子に一目惚れした。大吉はにやにやと笑う。巌は猫が嫌いだと言いながら、たまにおかずをお裾分けする。優しい人故に、猫も寄って来るのだ。
やがて、美智子と彼女の店は近所のお年寄りにも受け入れられ、大吉とタマの散歩コースにも加えられた。
ある日の朝、サチが大量のえんどう豆を貰ったと美智子の元へお裾分けとして持って来る。そこで、美智子がよしえのレシピがどこかに残っているといいのにと話す。大吉は早速、自宅にてよしえのレシピノートを探すことにした。ところが、どこを探しても見つけられない。そういう時に限ってタマが遊べと要求するので放っておくと、タマはタンスの上に乗って上から物を押し出すのだった。
落ちて来た箱の中にはよしえのレシピノートが入っていた。開くと豆ごはんのレシピもちゃんと書いてある。大吉はよしえのレシピ通りに豆ごはんを作った。かつて、妻が作ってくれた匂いと同じだった。しかし、レシピノートは4ページしかなく、拍子抜けする大吉。
翌日、美智子とサチ、巌に見せたが、続きは大吉が書けばいいという話になる。そこで、美智子が巌から貰ったタイでカルパッチョを作ってくれた。
急にハイカラになったと笑ったところへ、慌てた健太郎がやって来る。呼ばれて行ってみると、いつも喧嘩ばかりしているばあさん達が、子猫を巡って更なる口論を繰り広げていた。どうやら健太郎は引き籠り気味の女性に子猫を飼ったらどうかと打診したらしい。その女性はいつも怒ってばかりで否定的だった。彼女は家に入ろうとして転倒し、足を挫いてしまう。
タマが片思いしている三毛猫はサチの飼い猫ミーちゃんだった。日々を過ごす内に2匹は徐々に寄り添い合うようになる。結局、子猫は美智子の店で飼うことになったが、彼女は子猫は皆の猫だと言うのだった。
よしえの3回忌を終え、息子と近況報告をし合う。よしえのレシピノートを完成させるべく、大吉は美智子の元で料理を習っていた。元々、タマはよしえが拾って来た猫だ。彼女はタマをとても可愛がり、病床に伏せていてもタマが寄って来ると笑顔を見せていたものだ。息子は一人暮らしをする父を心配し、東京で一緒に住もうと言ってくれたが、大吉はすぐに答えが出せなかった。
映画『ねことじいちゃん』のあらすじ【転】
郵便局の青年は猫好きだが、猫にはいつも逃げられる。タマにもよく逃げられていて、何度試しても失敗していた。青年は猫がいる島が好きだと言う。だから彼は地元で働くことにしたと笑っていた。そんな彼が、島民全員が参加できるイベント開催したいと美智子に相談したらしい。そこで、大吉たちは様々な案を出したが、巌さんはダンスホールがいいと言う。一同ははっとしてその案に賛同。早速、小学校の体育館を利用し準備が始まった。そこで、引き篭もり気味の女性にも声をかける。いつも喧嘩腰で怒鳴り合う仲間がいないと寂しいと言葉をかけた。
数日後の夜、ダンスホールイベントが開催。大吉は軽食コーナーの係で、飲み物や食べ物を提供。そこへ、引き篭もっていた女性も着飾って来てくれる。喧嘩仲間の女性は安心したと笑っていた。思い思いのダンスを踊り、楽しい時が流れる。美智子は都会での暮らしに息が詰まり、島へ渡って来たらしい。彼女はこの島の穏やかな雰囲気の中、ようやく癒され自分を取り戻しつつあると言う。屋根の上ではタマとミーちゃんがデートしていた。
その昔、サチが嫁に行く前、巌は彼女にダンスホールへ連れて行く約束していた。そこで、彼はイベントの案を出す時、ダンスホールと言ったのである。2人は若い頃、淡い恋心を互いに抱いていたが、実ることはなかった。だが、70歳を迎えようやく約束が果たされ、幸せな一時を過ごしたのだった。
それからしばらく後、サチが息を引き取った。ちょっと具合が悪いと言って寝込んだ途端、そのまま逝ってしまったと言う。通夜の席でミーちゃんをどうするか話し合いがされ、大吉は巌が引き取ればいいと言ったが、彼は頑として了承しない。結局、ミーちゃんは美智子の元に引き取られ皆の猫になった。タマはあれからミーちゃんを励ますように寄り添い続けている。
もうじき冬がくるという頃、大吉はタマの餌を用意しようとして倒れてしまう。意識が朦朧とする中、よしえがよく居間の引き戸を少しだけ開けていたことを思い出す。タマは引き戸を自力で開けられないからだ。すると、たまたまそこへ美智子が訪問。大吉はすぐさま診療所へ運ばれた。加齢による心臓発作だった。駆け付けてくれた息子が付き添いをすることになり、一晩を診療所で過ごした。
映画『ねことじいちゃん』の結末・ラスト(ネタバレ)
1匹残されたタマは家中をさ迷い歩く。ドアの音を聞きつけ、一目散に玄関へ。大吉は具合が悪そうで帰宅早々、床に就いてしまった。タマは餌があっても、しばらく大吉の傍から離れなかった。
翌朝、起きるとタマの姿がない。大吉は散歩コースを巡りタマを探し歩いた。集会所にも港にもいなかった。
それから3日経っても、タマは帰って来ない。猫が突然、姿を消すということは、自分の生い先を悟った時だと言う。ミーちゃんもまた、サチの家に毎日戻ってしまうらしい。その日の夜遅く、帰宅すると玄関の上がり框にスズキが置いてあった。家に入るとタマが大吉の服に潜って丸くなっている。どうやら、タマは家を出たものの大吉が心配になって戻って来たらしい。大吉もタマを心配していたが、その気持ちがとても嬉しかった。
いつものようにタマの重さで目が覚める。タマと共に食べるその日の朝食は格別だった。口喧嘩仲間も復活し、朝から煩く喚き合っている。郵便局の青年はようやく、ミーちゃんを撫でることができたが、タマはまだ許してくれない。その日は大吉の息子が来てくれたが、大吉はタマと共に島に残る決断を下す。彼は息子にレシピノートを渡した。美智子の店で、皆で作ったレシピが大半を埋めている。1人と1匹、この島で穏やかに過ごす。息子は父の決断を受け入れてくれるのだった。
春がきて、レシピノートは2冊目へ突入。その日の朝も桜が咲く道をタマと散歩する。まだまだこれから。大吉は笑ってタマと共に散歩を楽しむのだった。
映画『ねことじいちゃん』の感想・評価・レビュー
動物カメラマンの岩合光昭、初監督作品。彼の作品と言えば、多いのは猫を撮影したものだろう。NHKでも冠番組を持つほどの人気カメラマンである。作中でも得意のアングルで撮影された猫のシーンが多く使われ、猫好きにはたまらない作品となっている。
主人公は70歳のおじいさん。彼が住む離島は過疎化が進んで独居の高齢者が多い。それでも生まれ育った島と家には思い入れがあって、離れることができない。それだけ大切な場所だからだ。そんな高齢者の姿と寄り添う猫の穏やかな生活が描かれ、とてもほんわかする。(MIHOシネマ編集部)
本作は、妻に先立たれたじいちゃんとペットのタマの2人暮らしを描いた世界的動物写真家の岩合光昭監督によるヒューマンドラマ作品。
さすが猫と仲良しの岩合さんが撮られただけあって、どのアングルにも猫が映っているカメラワークには特にこだわりを感じられた。
そして、猫のタマがとにかく可愛くて、演技をしているようにも見え、その演技力の高さに心底驚いた。
猫とじいちゃんの周辺の人々との交流も描かれていて、穏やかな島の雰囲気が感じられた。
猫たちのほのぼのとした日常に癒され温かい気持ちになれる作品。(女性 20代)
みんなの感想・レビュー