12000作品を紹介!あなたの映画図書館『MIHOシネマ』

映画『百万円と苦虫女』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『百万円と苦虫女』の概要:就職に失敗し、前科がついてしまった女性が、100万円貯めたら違う町へと引っ越しを続け、様々な恋や人付き合いを体験していくロードムービー。監督・脚本はタナダユキ。主演は蒼井優。

映画『百万円と苦虫女』の作品情報

百万円と苦虫女

製作年:2008年
上映時間:121分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
監督:タナダユキ
キャスト:蒼井優、森山未來、ピエール瀧、竹財輝之助 etc

映画『百万円と苦虫女』の登場人物(キャスト)

佐藤鈴子(蒼井優)
短大卒業後、レストランでウェイターのバイトをしていた就職浪人生。友達がいない。普段は物静かで大人しい女性だが、キレると思いがけない行動を起こす。かき氷の才能、桃をもぎる才能といった、あまり役に立たない才能がある様子。前科がついた後、100万円貯めたら自分を知る人がいない町に引っ越しをすると決め、各地を転々とすることになる。手作りのカーテンを使っていて、引っ越すたびに拓也に手紙を出している。
拓也(斎藤隆成)
鈴子の弟。小学校でいじめられている。頭がいい。中学受験をして、いじめっ子たちと別の学校に進学しようとしている。かつての同級生たちの嫌がらせに屈しない姉の姿を見て、尊敬するようになる。
中島亮平(森山未来)
地方都市で、鈴子と同じホームセンターのバイトをしていた男性。鈴子と同い年で、大学で心理学を専攻している。鈴子の前科を知っても、好きだと告白してくる。

映画『百万円と苦虫女』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『百万円と苦虫女』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『百万円と苦虫女』のあらすじ【起】

就職浪人の鈴子は、バイト仲間のリコからルームシェアの提案をされる。
住む部屋も無事に見つかるが、リコの彼氏のタケシと3人でのルームシェアだと言われる。
そして引っ越し当日、タケシと別れたリコは部屋に来なかった。

成り行きで、タケシと共同生活をすることになってしまう鈴子。
鈴子が拾った子猫に苛立ちをぶつけたタケシは、子猫を勝手に捨てる。
その報復として、タケシの荷物をすべて捨てた鈴子。

その中に100万円あったと言い張るタケシは警察に通報し、鈴子は刑事告訴されてしまう。
裁判の結果、鈴子は罰金20万円を課せられた。

中学受験を控えた弟の拓也に文句を言われ、苛立ちばかりが募った鈴子は、100万円貯まったら家を出ると宣言する。

いじめられている拓也は、学校帰りに、同級生に嫌がらせを受ける鈴子の姿を見かける。
拓也は鈴子に、引っ越したら住所を教えてくれと頼んだ。

100万円貯めた鈴子は引っ越し、海の家で働きはじめる。
そしてまた100万円貯まったら、別の町に引っ越すことにした。

映画『百万円と苦虫女』を無料視聴できる動画配信サービスと方法
映画『百万円と苦虫女』を無料視聴できる動画配信サービスと方法を分かりやすく紹介しています。

映画『百万円と苦虫女』のあらすじ【承】

海の家でユウキからナンパされ、猛アプローチを受ける鈴子。
ユウキは鈴子をパーティーに誘い、海の家のマスターの息子に付き添う形で、鈴子は参加することになる。
ユウキからのアプローチに応えることをせず、100万円貯まった鈴子は、次の町へ引っ越した。

喫茶店のマスターの紹介で、住み込みで桃農家の収穫のバイトを始めた。
鈴子を起こすため、勝手に部屋に入る長男の春夫に戸惑う鈴子。
母の絹の、年寄り特有の冗談にもついていけない。

ある日町長に、村おこしのキャンペーンガール“桃娘”になってほしいと頼まれる。
やりたくないという気持ちを、喫茶店のマスターに相談するが、鈴子が“桃娘”になることは強引に決められてしまっていた。

集会が開かれ、鈴子は辞退の意思を伝える。
全国テレビの放送も決まっていると言い、無理やり鈴子に“桃娘”を押し付けようとする村民たち。
耐えられなくなった鈴子は、自分には前科があると告白し、集会場から逃げ出した。
その後、自分たちの手で工夫するべきだと訴えた春夫。

鈴子は収穫途中でバイトを辞め、村を出ることになった。

映画『百万円と苦虫女』のあらすじ【転】

東京に近い、地方都市に引っ越した鈴子。
また、100万円貯まるまでの暮らしが始まった。

ホームセンターのガーデニングコーナーで働き始めるが、初日から主任に怒られてばかり。
同僚の中島亮平は、何かと鈴子と世話を焼き、面倒を見てくれた。

買い物中に亮平と会い、お茶に誘われた鈴子は、ルームシェアのことから刑事告訴されたこと、各地を転々としてきたことを話す。
自分探しの旅かと聞かれれば、自分を探したくないからこそ引っ越し続けると答えた鈴子は、言い過ぎたと気付いて慌てて店を出る。
追いかけてきた亮平に告白され、鈴子はそれを受け入れた。
そして2人は付き合い始めた。

バイト先のホームセンターに、新人が入ってくる。
亮平の大学の後輩で、鈴子は2人のことが気になって仕方がない。

やがて亮平は、鈴子から頻繁にお金を借りるようになる。
デート代も、鈴子が出すようになっていった。
お金目的だとわかってはいたが、我慢の限界になった鈴子は、亮平に別れを告げた。

映画『百万円と苦虫女』の結末・ラスト(ネタバレ)

アパートに、拓也から手紙が来ていた。

そこには、机の上に置かれた花瓶を見て、怒ってそれを割ったこと。
いじめっこに反撃して怪我をさせ、児童相談所に連れていかれたことが書いてあった。
怪我をしたいじめっ子は拓也を許さず、両親は転校を勧めていた。
しかし、姉の鈴子を見習い、逃げずに同じ中学に通うことを決めたという拓也。

鈴子は、ずっと拓也に手紙を出していなかった。
何も言わないことが、幸せへの近道だと思うようになっていた鈴子は、何も言えない人になっていた。
それに気付き、荷物をまとめた鈴子は、アパートを引き払った。
バイト先にも、辞めたいと伝えに行った。亮平は、鈴子から借りていたお金を返した。

お金が貯まり、鈴子が引っ越してしまうのが嫌で、鈴子にお金を出させていた亮平。
このままでいいのかと後輩から言われ、亮平は駅へと急ぐ。
しかし、途中で買い物に寄った鈴子と、亮平は会うことはできなかった。

そして鈴子は、別の町を目指して歩きだした。

映画『百万円と苦虫女』の感想・評価・レビュー

不器用な人間が送るロードムービー。のようだが、よく見ると劇中に器用な人間なんか出てこない。いるのは誰かのせいに出来る人間と出来ない人間ではないだろうか。彼女の生活がいいものだとは思わないが自分でやり遂げる意志の気高さは賞賛されるべきだろう。この脚本を書けてしまうタナダユキ監督の才能は素晴らしいの一言。まあ今頃は苦虫女の彼女も幸せになっているんだろう。(男性 30代)


若き頃の蒼井優の魅力が光る作品。素朴でどこか影があり、独自の存在感を放つ彼女にぴったりの役である。
全体的に暗い雰囲気の作品だが、森山未来が演じる中島と出会って恋が始まるシーンは甘酸っぱくて可愛らしい。中島が鈴子を引き留めるためにお金を借り続けるという、不器用な愛情がまた良いのだ。二人がすれ違うラストシーンも見所である。
鈴子のように自分の所在がどこにもなくとも、ちゃんと自分の足で立って生きていけたらと思う。(女性 30代)


ふらふらしている主人公でストーリーも矛盾だらけに見えてくるが、実際の生活や人はこの位矛盾しているよなと妙なリアルさに納得することが出来た。人生って理不尽でおかしくて、すごく大変なものだよねと頷きながら観ることが出来る作品だった。ラストはなんだか突然終わってしまったと私は感じたので少し残念だった。

少し常識とは違うような雰囲気を出す女の子を蒼井優さんがとても上手に演じていて、素晴らしい演技力だなと思った。(女性 20代)


拓也は、鈴子が100万円貯まったら違う場所に行ってしまうのが嫌でわざとお金を借りたり、デート代を払ってもらったりして、鈴子がこの街に留まるようにした。
一方で鈴子は、それが嫌なのに良い人ぶって、言うとおりにして、結局限界を感じて別れを告げる。
最後も二人は会うことができず、鈴子は新たな居場所を見つけに行く。
せっかく胸の内を話せる人と出会えたのに、すれ違う二人の気持ちを思うと切なかった。
そんな不器用な人たちの物語。
2人の空気感がとても自然で、近すぎないところが良かった。(女性 20代)


この映画を観賞した当時は、私自身心を病んでいて、この映画が私の将来に対して何か正解というか、心のもやもやを解消してくれるような作品だと期待して観ていた記憶があります。だからこそ、意外なラストにかなり落ち込みましたが、今となっては、まぁ現実はそんなもんだろうと感じることができています。逃避行しても仕方がないし、今は今の現実を受け止めて、生きていきたいと思います。(女性 20代)


転居や転職は、現実の世界ではそうやすやすとできるものではないので、見ているだけで経験豊富になれそうです。また、それぞれの会話に絶妙な間があり落ち着きます。海の家で働く蒼井優の透明感には、甚く感動しました。桃狩りのバイトの際、集会でのシーンは田舎で暮らす人たちの苦悩が垣間見えます。鈴子を愛する男性達の不器用さが、人を愛することの難しさを教えてくれているのだと感じました。出会いと別れが淡々と繰り返される展開が、非常に心地良い良作です。(女性 30代)


コツコツ努力して自立して生きようとする主人公の強さと、蒼井優さんのもつ柔らかい雰囲気が良いギャップだなと感じました。人付き合いは面倒もトラブルも多くて嫌になることが何度もあるが、この映画の鈴子と亮平のような素敵な出会いもあると気づいてしまうから、私たちはいつまでも他人に希望や期待をもって生きてしまうのだろう。
二人の近づき方、交わす言葉、全部が甘酸っぱく、二人が出会ってからはニヤニヤしながら観てしまいました。ストーリー、雰囲気、音楽、全て素敵で非常に好きな作品です。(女性 20代)


映画の楽しみの一つが非日常を感じることにあるとする。旅にも共通した楽しみがあるとする。となればロードムービーというのは強力なジャンルではないかと思う。そしてこの作品は非日常的なロードムービーでありながら、主人公が滞在する各地での生活感まで感じられるという実はすごい1本なんじゃないかと思う。彷徨う主人公と随所に差し込まれる弟のエピソードの対比も映画全体の味を引き締めていて良い。自分がああいう旅人生を送ることはもう無理だが、こうした作品の中で旅ができるから映画は楽しい。(男性 40代)


蒼井優の世界観がとても好きな作品だった。100万円貯めるたびに人生をリセットする生活に憧れと、寂しさを感じた。鈴子の「自分探しなんてしてない。自分はここにいるから」というセリフが胸にすとんと入ってきて、印象に残った。結末は切なさの残るものだったけど、別れは出会いのためにあると言う言葉の通り、これも彼女の経験するたくさんの出会いと別れの一つなのだと思う。(女性 20代)


ドーナツをくわえたまま歩く蒼井優は外国女優のように素敵で、見惚れてしまいました。
一見おとなしい美少女に見えるのに、中身は冷めたオッサンみたいな鈴子のキャラが好きです。本気の恋をしてしまって、自分は弱い人間だったのだと気づくところは誰しもが経験している感情だと思います。

この映画は以前にも観たことがありラストを知っているので、もう一度観たときは、亮平と鈴子の素敵な告白シーンに切なくなりました。すれ違うのは残念だけど「器用な人より不器用な人のほうが好きだ」と改めて感じる作品です。(女性 40代)

みんなの感想・レビュー

  1. 匿名 より:

    100万円貯めたら次の町へ行くというユニークな設定で旅する生活を続ける主人公鈴子。若いのに前科者というレッテルに苦しみながら、自分を探すわけでもなく、ただ自分の足で生きていくために場所を変えて生活していく。人付き合いも苦手で深く人とかかわらない。そのくせ行動は大胆な主人公を蒼井優が好演している。

    「100万貯めるまでの期間限定生活=人と深くかかわれない」だと思う。彼女のしている生活は人と真正面から向き合うことから逃げているようにも思える。それは一方で鈴子自身も自分を知られたくないという思いの表れだろう。主人公のような繊細さや臆病さが21歳くらいの女性にはきっとあると思う。

    桃農家の長男役のピエール滝の演技がいい。鈴子が風呂に入っているところ、脱衣所にやってきて「何かあったら言ってください」といってみたり、朝寝てる鈴子の顔を覗き込んでみたり。この男と関わることで、鈴子の干渉されたくない複雑な心境がよく表されていると感じた。田舎の独特な雰囲気も丁寧に描かれている。

  2. 匿名 より:

    中島役の森山未來と鈴子が恋人となってからのシーンがいい。不器用な二人が手をつなぐシーンでは、中島は自転車を右に寄せて左手を空けて立ち、鈴子は買い物袋を左手にもって右手を空けて立つ。指先が触れ合って、手をつなぐ。その不器用さがドキドキしてしまう。

    中島の家で初めて笑う鈴子。その笑顔を見て嬉しくなる中島が鈴子にキスする。この流れも自然で、初々しい二人を見ているドキドキする。繊細な感情がうまく表現されている。

  3. 匿名 より:

    鈴子は口数が少ない。そのため感情は彼女の表情や出会う人々への反応から読み取らなければならない。むつかしい所業だがそれがこの映画の醍醐味だと感じている。蒼井優の自然体の演技が素晴らしく、鈴子の感情は表情や演技で十分感じられるからだ。

    ところが感情を鈴子から弟拓也への手紙であまりにもわかりやすく表現してしまっている。鈴子の心中を手紙の文章のナレーションで簡単に理解できてしまうのが要らないのではないかと感じる。わざわざ作中で繊細な演技を見せる鈴子を作り出しているのに、手紙で彼女の感情を語ってしまうのは勿体ないと思った。

  4. 匿名 より:

    不器用な若い女性の心境を繊細に描いた映画である。「100万円貯めたら次の町へ行く」というロードムービー風のこの設定がユニークだなと感じた。こんな生き方をしている人は現実にもいそうだ。苦虫女とは=苦虫を噛み潰したような顔をしている女、つまり渋い顔、面白くなさそうな顔をしている女といった意味だが、自分もこの主人公に共感する部分が大いにある。嫌な飲み会の誘いを断れないときとか、上司の屁理屈に共感しないといけないときとか、きっとそんな顔をしているだろう。正しいことや自分の立ち位置に揺れているとき、判断がつかない弱さを捨てきれないとき、きっとどっちつかずの反応を示してしまう。苦虫女はまだまだ未熟な女なんだと思えた。この映画の企画者は若い女性のことをよく見ているなと思った。