映画『信長協奏曲』の概要:戦国時代へタイムスリップし、織田信長として生きることになった高校生のサブローは、戦さのない世の中にするため、天下統一を目指す。原作は石井あゆみのコミック「ゲッサン」。2014年に放映されたテレビドラマが好評で、その続編的な作品として、この映画が制作された。
映画『信長協奏曲』の作品情報
上映時間:125分
ジャンル:時代劇、ファンタジー、ラブストーリー
監督:松山博昭
キャスト:小栗旬、柴咲コウ、向井理、藤ヶ谷太輔 etc
映画『信長協奏曲』の登場人物(キャスト)
- サブロー / 織田信長(小栗旬)
- やんちゃ気味の平凡な高校生だったが、戦国時代にタイムプリップしてしまい、織田信長と出会う。サブローと信長は瓜二つで、信長本人から自分の代わりに信長として生きてほしいと頼まれる。サブローは戦さのない平和な世界を作るため、信長となって天下統一を目指す。歴史が苦手。
- 織田信長 / 明智光秀(小栗旬)
- 幼少期から体が弱く、強いコンプレックスを抱いてきた。父親から頭首の器ではないと言われ、サブローに信長としての人生を託す。その後明智光秀となり、信長になったサブローの家臣になる。顔を見られないよう、黒い頭巾をかぶっている。
- 帰蝶(柴咲コウ)
- 信長の妻。かなり気の強い女性で、信長になったサブローのことを“うつけ”と呼んでいる。サブローとは喧嘩もよくするが馬が合い、本気で愛し合う。
- 羽柴秀吉(山田孝之)
- 織田家家臣。幼少期に故郷の村を信長に焼き払われ、全てを失った。自身も左腕にひどい火傷の跡がある。その時から信長への復讐を誓い、武将としてのし上がってきた。サブローが偽物の信長で、明智光秀が本物の信長であることを知っている。
- 池田恒興(向井理)
- 織田家家臣。サブローの側近。サブローからは“恒ちゃん”と呼ばれている。
- 松永弾正久秀(古田新太)
- サブローと同じく、現代から戦国時代にタイムスリップしてきた。日本史の教科書を持っており、サブローが近々殺される運命であることを告げる。現代ではヤクザだった。
映画『信長協奏曲』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『信長協奏曲』のあらすじ【起】
現代から戦国時代へタイムスリップし、本物の織田信長から全てを託された高校生のサブローは、信長になって天下統一を目指していた。平和な時代から来たサブローは、戦さのない世界を作ろうとしていた。
サブローは飾り気のない明るい男で、信長の家臣や正室の帰蝶からも慕われる。明智光秀となってサブローに仕えていた本物の信長は、そんなサブローに嫉妬を感じる。
安土桃山城も完成し、サブローは着々と勢力を伸ばしていた。しかし、同じく現代からタイムスリップしてきた松永に“信長はもうすぐ死ぬ”と聞かされる。歴史が苦手なサブローは、信長の生涯について何も知らなかった。松永の持っていた日本史の教科書はボロボロで、何が原因で死ぬのかはわからなかったが、自分の死期が近いことは確認できた。
サブローは何も知らずに動いてきたが、歴史は教科書通りに進んでいた。運命は変えられないのだと知り、サブローはショックを受ける。
幼い頃、信長に故郷の村を焼かれた秀吉は、憎しみを隠して信長に仕えてきた。全ては復讐のためであり、虎視眈々とその機会を狙っていた。
映画『信長協奏曲』のあらすじ【承】
織田の敵である石山本願寺と上杉が手を組んだという情報が入り、石山本願寺を攻めることになる。秀吉はサブローが偽物であることを知っており、本物の信長にこの機に乗じてサブローを殺すよう持ちかける。サブローを妬んでいた信長は、秀吉の口車に乗せられる。
サブローは安土城に残り、明智勢と羽柴勢が石山本願寺へ向かう。信長は、一度出撃したかに見せかけて安土城に戻り、サブローを殺すつもりだった。
サブローは帰蝶に三河へ避難するよう命じる。しかし帰蝶は言うことを聞かず、サブローは自分がもうすぐ死ぬことや、未来からタイムスリップしてきたことを打ち明ける。帰蝶はその話を信じず、サブローの側から離れようとしなかった。
松永が裏で暗躍し、明智勢はピンチに追い込まれる。それを知ったサブローは、自ら先陣を切って明智勢を救いにいく。家臣たちもサブローに従い、河原で激しい戦さが始まる。サブローが危険も顧みず自分を救いにきたと知り、信長の心は揺れ動く。
家臣たちの助けで勝利を収めたサブローは、生きることをあきらめないと決意する。そして帰蝶に改めてプロポーズし、結婚式を挙げることにする。
松永が自分の邪魔をしていることを知った秀吉は、自ら手を下して松永を殺す。信長はサブロー殺しをやめると秀吉に告げ、その時に“昔、意味もなく村に火を放った”と失言する。その言葉を聞いた秀吉は、さらに憎しみを募らせる。
映画『信長協奏曲』のあらすじ【転】
サブローは京都の本能寺で結婚式を挙げることにする。サブローは留守を守る池田にある頼みことをして、結婚式の準備をするため先に出発する。
帰蝶は京都へ入る前に大阪へ寄る。大阪には、サブローと同じくタイムスリップしてきたというウィリアムという外人がおり、帰蝶はサブローの話が本当だったことを知る。日本通のウィリアムは、織田信長が本能寺で殺されると教えてくれる。
秀吉は、本能寺でサブローを殺さなければ、帰蝶を殺すと信長を脅す。秀吉は自分の過去を明かし、火傷の跡を見せる。信長は自分に選択肢がないことを悟り、秀吉に従う。
信長は顔を隠していた黒頭巾を脱ぎ、自分が本物の信長で、本能寺にいるのは偽物だと家来たちに明かす。そして軍勢を率いて本能寺に攻め込む。寝込みを襲われたサブローは、奥の部屋へ逃げ込む。
サブローと2人きりになった信長は、この謀反は帰蝶を守るためだと打ち明け、逃げ延びて信長としての天命を果たすようサブローに告げる。サブローは信長に感謝の言葉を述べて、密かに逃げる。
信長は“この命を持って全てを終わらせてくれ”と秀吉に懇願する。しかし秀吉の憎しみは深く、信長を惨殺してもおさまらない。秀吉は信長の一族を皆殺しにし、サブローも殺すつもりだった。
秀吉の軍勢に追われていた帰蝶は、逃亡してきたサブローと再会する。帰蝶は2人で逃げようとサブローを説得するが、サブローの腹は決まっていた。サブローは、自分の死が未来に繋がるのだと信じ、翌朝、明智勢の残党とともに戦場へ向かう。帰蝶も覚悟を決め、サブローを見送る。
映画『信長協奏曲』の結末・ラスト(ネタバレ)
サブローの急を知った池田が、寺に隠れていた帰蝶のもとへ来る。池田はサブローから託されていた結婚指輪を帰蝶に渡し、2人はずっと一緒なのだと帰蝶を励ます。気丈な帰蝶もサブローを想い、涙を流す。
サブローは勇ましく戦うが、ついに秀吉に捕らえられる。サブローは、自分の代わりにみんなで平和な世界を作って欲しいと言い残し、秀吉に斬られる。
サブローは、最初にタイムスリップした木の下で目を覚ます。戦国時代で死んだはずのサブローは、甲冑姿のまま現代へ戻っていた。
それから数年後。現代を生きていたサブローに、一通の手紙が届く。それは同じく現代へ戻ったウィリアムからだった。ウィリアムの手紙には、帰蝶に助けられたことや、首を斬られたサブローの遺体が消えてしまったことなどが書かれていた。手紙には帰蝶から託されたというUSBメモリーが同封されていた。
パソコンにメモリーを差し込むと、帰蝶のメッセージ動画が再生される。帰蝶は、あれからいろいろあったが、サブローの志は受け継がれ、戦さのない世の中が訪れたことを報告し、結婚指輪を見せる。生きる時代が違っても、2人は固い絆で結ばれていた。サブローは帰蝶を想い、何度も動画を再生する。
映画『信長協奏曲』の感想・評価・レビュー
小栗旬が演じたサブローと信長の一人二役の完成度がかなり高く、また柴咲コウが演じた帰蝶の、強気で可愛らしい演技力が見所である。また山田孝之、向井理など、豪華キャストが送る作品は最高だった。サブローならではの戦いの仕方や、家来たちを思う姿が心にぐっときた。また、信長の男らしく、帰蝶を想い自分が身代わりになる強い気持ちも、心に響いた。最後の、ビデオテープを何回も繰り返して見るシーンが印象的で、さらに心が暖まる瞬間だった。(女性 20代)
本作に限ったことではないですが、TV版から映画になったものは、映画だけを見ると説明不足な物が多いです。この映画はTV版のほうを観ていないので、最初から「???」でしたが、本物の信長が明智光秀だったり、今までにないキャラクター設定と内容は面白く観ることができました。
タイムスリップした2人は松永弾正や織田信長としてその時代を生きているのに、劇中ではウィリアムだけ「カッパ」と牢に入れられていたのが少し気の毒でした。(女性 40代)
本作は、戦国時代にタイムスリップした高校生のサブローの成長を描いた、石井あゆみの同名コミックを映画化した戦国ファンタジー作品。
歴史に何の興味もなかったサブローが織田信長と同じ人生を辿っていく様子、どんどん成長し覚悟を決めていく姿は逞しく、特に信長と明智光秀の回想シーンが印象的だった。
そして、帰蝶との最後のお別れのシーンは切なく、涙なしには観れなかった。
メッセージ性、テーマ性共に高い作品となっている。(女性 20代)
織田信長の最期はもちろん知っているので、本当に歴史を変えることはできないのか、ドキドキハラハラしながら見ていた。様々な登場人物の思惑もあり、物語がどう動いていくのか読めない展開になっていたのも良かった。純粋におもしろいストーリーだったと思う。
始めはぶつかり合っていたサブローと帰蝶が、次第に思いを寄せ合うようになるのが素敵だった。だからこそ、ラストは切なくてたまらなかった。サブローが生きていたことは良かったと思うが、もう二度と会いに行けないというのが悲しい。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
ただ単に感動するというだけでなく、意外にも平和というメッセージ性の強い作品だった。サブローと信長の二役を演じた小栗旬は、まるで正反対の性格を演じ分けていた。観ていて全く違和感がなく、現代のトップレベルの役者であるとつくづく感じた。
また柴咲コウ演じる帰蝶の健気にサブローを想う姿にも胸が熱くなった。帰蝶は気が強い女性であるが、柴咲コウはその中でも可愛らしさや一途さをうまく表現していた。
今作はテレビシリーズを見ていたほうが理解が早いのでおすすめ。
過去にタイムスリップした少年が、織田信長にそっくりな事から本物に信長に身代わりを引き受けられて、信長として過ごす事になるお話しです。全く正反対の性格を持つ2人で家来が最初は戸惑っていましたが、絆を作っていくところは素敵だなと思いました。
最後は意外な展開で、元の世界に戻った主人公が、信長の正室からビデオレターをもらう所は現代と過去が入り混じっていて面白かったです。
何よりもキャストが豪華である。主演は小栗旬、ヒロインは柴崎コウ。サブローを支える家臣たちは、向井理、山田孝之、水原希子といった若手が並ぶ。時代劇にありがちな「似合わない」というがっかり感もなく、どのキャラクターもよく似合っていた。
山田孝之が演技派であることは有名だが、羽柴秀吉もすごかった。ただひたすら真顔で、恨みを晴らすことだけを冷徹にもくろむ男を演じていたが、怖いのなんの。その怖さの裏には、村を焼き討ちにされたことや母親の死など同情に値する出来事があったとわかっても、怖いものは怖い。鬼気迫る、とはこのことかと言わんばかりの演技だった。
特に頭を下げている信長を何度も何度も刺すシーンや、最後の斬首の際のシーン。必見である。「復讐は何も生まない」なんてことはわかってて、でもどうしようもないという、人間のある意味弱くて仕方のない部分を覆い隠すような、鬼の演技だった。
ああ良い映画だった、と思わず観た後につぶやいてしまう、そんな映画だった。こういう映画は、フィクションだからこそ荒唐無稽だからこそ、伝えたいことをはっきり前面に押し出して人に伝えることができる。そんな映画の力を存分に使った作品だった。
キャストのファン、という理由でもいいから気負わず観てほしい。子どもからお年寄りまで、観る人を選ばず、娯楽映画でいながら深いテーマ性のある良作と言える。
ちなみに私は原作を知らないのだが、じゅうぶんに楽しむことができた。
サブローの平和への一途な思い、といのがメインテーマであり、最初から最後までブレない。確かに戦のシーンのかっこよさ重視の演出や、現代に戻ってきた理由など突っ込もうと思えばいくらでも突っ込みどころはある。が、そんなことがどうでもよくなるくらい、サブローのキャラクターとその思いが強く強く観る人の心を打つ。
デフォルメはされていても、本物の信長の嫉妬、自分の死が歴史上決まっていることを知ったサブローの怯え、秀吉の感情の爆発、帰蝶のわがまま、とにかくキャラクターが人間らしい。デフォルメされてはいるが、人間の悲しくも愚かしい、そして愛しい部分がきちんと描かれている。
信長がサブローを逃がすシーンや、帰蝶との別れのシーン、帰蝶のメッセージ動画は涙なしには観ることができないので、ラストはただひたすら号泣しながら観る羽目になった。