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映画『ノルウェイの森』あらすじネタバレ結末と感想

映画『ノルウェイの森』の概要:1987年に刊行された村上春樹氏による同名小説の映画化作品。文庫本を合わせ1千万部以上売り上げる大ベストセラーの実写化に名乗りを上げたのはベトナム映画界の新鋭トラン・アン・ユン監督。大学生のワタナベを取り巻く、恋愛と青春の日々の物語です。

映画『ノルウェイの森』 作品情報

ノルウェイの森

  • 製作年:2010年
  • 上映時間:133分
  • ジャンル:青春、ラブストーリー
  • 監督:トラン・アン・ユン
  • キャスト:松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、高良健吾 etc

映画『ノルウェイの森』 評価

  • 点数:70点/100点
  • オススメ度:★★★☆☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★☆☆
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★☆☆

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映画『ノルウェイの森』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『ノルウェイの森』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『ノルウェイの森』 あらすじ【起・承】

安保反対を訴え加熱する学生運動のさなか、上京してきたワタナベは孤独な学生生活を送っていました。学生寮に住み、顔見知りや気に入った場所を見つけても、生来の内気な性格と、故郷での苦い体験から、毎日を鬱屈した気持ちのまま過ごしています。
ワタナベにはかつて親友と呼べる男がいました。故郷での同級生キズキ。彼の恋人直子と三人で青春を過ごしますが、キズキは高校三年生のある日突然、自殺してしまいます。その経験が、彼の中では尾を引いていたのでした。
そんな大学生活の中、偶然直子と再会します。彼女との再会を喜び、何度かデートを重ねますが、直子の心は徐々に不安定になっていきます。

そしてついに、ワタナベが直子と肉体関係を持った直後に、彼女は姿を消しました。しばらくして届いた手紙には、京都のとある療養所に入ったと書かれていました。
直子を失った傷心の日々を過ごすワタナベにも、いくつか新しい出会いがありました。同じ寮の先輩の、秀才で女遊びの激しい永沢とその恋人のハツミと、同じ科の少女・緑です。彼らとの日々にそれなりの充実を感じ始めていたころ、直子から再び手紙が届きます。
それは、ワタナベが待ち望んでいた、「会いに来てほしい」と書かれたものでした。

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映画『ノルウェイの森』 結末・ラスト(ネタバレ)

京都の山奥の療養所を訪れたワタナベは、数か月ぶりに直子に再会します。療養所での友人だというレイコも交え、しばし歓談する三人でしたが、直子はまたも不安定になります。死んでしまったキズキとの関係を上手く結べなかったことを深く後悔している彼女は、それでもワタナベに惹かれる心を無視できず、苦しんでいました。療養所近くの霧深い森の中で、彼女はその気持ちをワタナベに吐露し、絶叫します。そんな彼女を、ワタナベは抱きしめることしかできませんでした。
その夜、レイコは直子のリクエストでビートルズの「ノルウェイの森」を弾き語ります。
「わたし、この曲を聞くと、深い森の中を迷っているような気持になるの。」

東京に帰ったワタナベのもとに、緑から連絡が入りました。彼女の父親が病床で死に至ったのでした。
さらに半年後、ワタナベは再び直子とレイコのもとを訪れますが、直子の病状は悪化していくばかりでした。

そして夏のある日、直子は自殺します。それを伝えるため東京を訪れたレイコを招き、ふたりは彼女の死を悼みます。
ワタナベは直子を失った心を癒すためあてのない旅に出ます。一人で放浪する中で、彼は彼なりの答えを見つけようとします。

そしてある冬の日、彼は緑の元に戻ります。緑はそんな彼を優しく迎え入れ、抱きしめるのでした。

映画『ノルウェイの森』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ノルウェイの森』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

モノローグ

主人公ワタナベによるモノローグの多い今作は、映画ながら読み物のような作りが意識されています。モノローグがいわゆる描写の部分を担当するため、原作ファンにも親しみやすく、違和感も少なく楽しめます。またこのモノローグは、台詞も含め、原作の中と同じ表現が多用されており、これも原作ファンの心を掴む仕掛けとなっているのです。

キャスト

松山ケンイチ、菊地凛子など、演技派の若手俳優が多く起用されていますが、原作ファンの熱い支持はなかなか突破できないようです。また、登場人物の年齢設定が二十歳前後なのに対し、撮影当時のキャストの年齢が上回っているのも、敗因のひとつとして挙げられるように思います。
設定年齢とキャストの年齢が適合しないことはよくあることですが、特に今作では年齢が大きなファクターとなっています。監督には、追及してほしかった点です。

映像効果

トラン・アン・ユン監督といえば、デビュー作の「青いパパイヤの香り」から印象的な色と女性を映す監督として世界からも高い評価を受けていますが、今作でも、その作風は顕著に表れています。
序盤の、直子との出会いの公園でのシーンから、自然光で映し出される木々の緑と彼女の危うげな美しさが画面に映ります。また、全編にわたり青みがかったフィルターが用いられているため、人物の肌や髪から血色や艶が取り払われ、自然の緑は濃く、闇は深く映し出され、清潔で冷たい印象を受けます。また、こうすることで、直子の部屋でのキャンドルの灯りや、レイコの弾き語りシーンの焚火の光など、光がより印象的なシーンとして映ります。
キーとなるシーンを映像の効果により明確にすることで、一見緩急のない物語にメリハリをつけようとする監督の意図がうかがえます。

映画『ノルウェイの森』 まとめ

わたし自身原作の長年のファンなので、長く鑑賞を見送ってきました。今回鑑賞してみて、原作のイメージを壊さないように慎重に丁寧に、綱渡りをするように作られた映画だなと思いました。監督自身、この映画を撮影するにあたってさぞ大変なプレッシャーと戦われたのだろうと、想像に難くありません。そして、その真摯な姿勢から、現時点では最良の映像化となったのではないでしょうか。
レイコの弾き語る「ノルウェイの森」が印象的に響くラストシーンの美しさに思わず息を呑みました。

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