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映画『ノスタルジア』あらすじネタバレ結末と感想

映画『ノスタルジア』の概要:「惑星ソラリス」のアンドレイ・タルコフスキー監督が描く、魂の抒情詩。ある詩人が自殺した音楽家の生涯をたどる旅に出ます。出演はオレーグ・ヤンコフスキー。1983年製作イタリア・ソ連映画。

映画『ノスタルジア』 作品情報

ノスタルジア

  • 製作年:1983年
  • 上映時間:126分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:アンドレイ・タルコフスキー
  • キャスト:オレグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨセフソン、デリア・ボッカルド、ドミツィアーナ・ジョルダーノ etc

映画『ノスタルジア』 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『ノスタルジア』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『ノスタルジア』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『ノスタルジア』 あらすじ【起・承】

イタリア。霧の中の村。車から男女が降りてくるが、女性だけが教会に向かうようだ。
“モスクワをよく思い出すわ・・先に行っているわね。”と。

ロシア出身の作家であり詩人のアンドレイ・ゴルチャコフ(オレーグ・ヤンコフスキー)は、ロシア出身の音楽家サスノフスキーの伝記を書くため、イタリアのトスカーナ地方に来ていた。共に旅をするのは、通訳のエウジュニア(ドミツィア・テレーノ)。

エウジュニアのみ、教会を訪れるが、そこで、聖母マリアの儀式を見学した。
神父に“女だけがこれほど、神にすがるのはなぜ?”と問うが、女の役目があるからだろうと神父はそっけなく答えるのだった。

一方、アンドレイは、アルセニー・タルコフスキーの詩集を読んでいた。彼は、教会には興味がないようだ。2人は夜遅く、ホテルにたどり着いた。

ホテルの一室。白い壁と無機質でモダンな造りだった。エウジュニアに、音楽家サスノフスキーがなぜ危険を冒してまで、ロシアに戻ったのか聞かれた。
彼は、“ボローニャに宛てた手紙を読めば分かるよ。”と答えるのだった。

アンドレイは疲れた体をベッドに横たえると、すぐに眠気に襲われた。
すると犬が1匹、いつの間にか部屋に入ってきて、彼のそばに座るのだった。
少し時間が経って、雨が降り出していたことに気が付いた。

幻の中で、アンドレイは自分の妻(パトリツィア・テレーノ)が、身重の体でベットに眠っているのを見た。“アンドレイ・・”と呼ぶ声がした。

翌朝。アンドレイと呼ぶのは、通訳のエウジュニアだった。エウジュニアに起こされて、近くにあるヴィニョーニ温泉へ行った。

そこで、信仰心に厚く、世界を救おうと考える変わり者のドメニコ(ユルラルド・ヨセフリン)と出会う。彼は、ロウソクを手に温泉に入り祈るという。また、家族を7年もの間、閉じ込めていたらしい。

アンドレイは、そんなドメニコに興味を持ち、エウジュニアと共に彼の家を訪れた。
しかし、ドミニコは2人に心を開こうとはしない。

エウジュニアに通訳を断られたアンドレイは、なんとかイタリア語でドメニコと話した。
心を開いた彼は、アンドレイにパンとワインを施した。

その後、彼の信仰心に触れたアンドレイは、彼の苦行(ロウソクを手に温泉に入り祈ること)を代わりに行うことを約束した。

彼のそばには、常にゾーイという名の犬が寄り添い、雨漏りの激しい部屋に暮らしているのだった。

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映画『ノスタルジア』 結末・ラスト(ネタバレ)

ホテルに戻ると、なぜか通訳のエウジュニアがアンドレイの部屋にいた。自室のシャワーが使えなかったので、アンドレイの部屋のシャワーを借りたという。

“自由が怖いの?あれほど望んでいたのに・・。”とエウジュニア。そして、彼女は豊満な胸を見せながら、アンドレイを誘惑した。

しかし、アンドレイは彼女に欲情できなかった。そんなアンドレイの様子を見て、“私は男運が悪い!バカな男ばかり好きになるの。”となじるのだった。

アンドレイは、また幻を見た。ロシアの大地。霧の中で、犬と少年、そこへ姉もやってきた。何かを待っているようだが、分からない。

ある日、アンドレイは、病気になった子供の頃を思い出した。そして、美しい泉に入り、“父に会おう!”と思い立つ。

ロウソクを持って、泉に進むと、入り口で少女アンジェラに会った。
アンドレイは、アンジェラにイタリア製の靴をたくさん持っていることを自慢した。
心臓に持病を持っていたアンドレイは、安らかな死が迎えられることを願っていた。

その後、イタリアの中心部へアンドレイは1人で戻っていった。
電話で、通訳のエウジュニアは、“ドメニコが来ているわ・・世界を救うつもりかしら”と伝えてきた。エウジュニア自身は、これからインドに恋人と共にゆくらしい。

それを聞いたアンドレイは、旅行の予定を変更して、“ヴィニョーニ温泉”へ戻ることに決めた。

一方、ドメニコは、イタリアの階段状の広場で演説を行っていた。
“我々の心は、影に囚われている・・願いを持続しなければ・・”と広場にいる人々に語り掛けるのだった。

その後、ドメニコは焼身自殺を図った。エウジュニアが駆けつけた時にはもう、炎の中に彼は包まれ、亡くなった。
ヴィニョーニ温泉へ戻ったアンドレイは、ロウソクを手にして温泉を進んだ。
しかし、途中でロウソクの炎が消えてしまい、なかなか進むことができない。

何度目かにしてようやく、ロウソクの炎を絶やすことなく進んだアンドレイは、自身の中に様々な感情が湧き上がってゆくのを感じていた。

再び、幻を見た。温泉の中心部にしか泉は残っていなかった。犬と一緒に歩いているのだ。
いつしか、静かに雨が降り始め、世界を洗っているようだった。

映画『ノスタルジア』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ノスタルジア』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

アンドレイ・タルコフスキー監督の静謐な魂の世界

「ノスタルジア」は、遺作となった「サクリファイス」と共に宗教性やタルコフスキー監督自身の人生が深く投影されています。
映像の美しさに加えて、主人公が泊まる無機質な部屋など空虚感も漂っています。

作品と共に、タルコフスキー監督の人生を重ねてみると、幼い時に受けた心の傷“父の不在”が痛々しいほど、表現されていることに気が付きます。それは、実際に詩人だった父親の影響を受けていて、“アルセニー・タルコフスキーの詩集を読む”という場面に現れています。

タルコフスキー監督の人生は、ソ連の社会主義に対抗し、1984年にイタリア・ミラノで亡命を宣言するという激動の歴史でした。その後、54歳で亡くなるまで、ロシアの地に帰ることはありませんでした。

この作品が完成した後に亡命したのですが、作品で描かれる音楽家もまたロシアに戻り、自殺したという結末を迎えます。まるで、タルコフスキー監督が自身の死を予知していたかのように思えてなりません。

ロウソクを抱えて、最後に祈るのは、“父のため”?それとも、“故郷への想い”でしょうか?

また、象徴的に描かれる、“水”のイメージにも注目したい。泉や温泉など、まるで聖地を旅しているかのようです。芸術家の精神世界に迷い込んだような、不思議な気持ちになりますね。

タルコフスキー監督は敬虔なクリスチャンでした。機会があれば、カトリックを信仰する人にこの作品についてどのような感想を持つのか聞いてみたい。

見逃せない!アンドレイ・タルコフスキーの映画3選

アンドレイ・タルコフスキー作品をこれから観たい人におすすめの映画3作を紹介します。
まず、1作目は、スタニスラフ・レム原作のSF小説「ソラリスの陽のもとに」を映画化した「惑星ソラリス」(72)。

未知との遭遇を描いた作品ですが、惑星ソラリスが1個の生命体としての“知性”を持ち、人類に挑むという不思議な世界を描いています。

2作目は、「鏡」(75)。家族に対する、愛と不在を描いた人間ドラマ。鏡の内側と外側のように、人間の2面性に深く迫った作品です!

3作目は、「ストーカー」(79)。3人の男の心理を描いたスリリングなファンタジー。
芸術、科学、宗教の3つの視点から、世界を問い直す問題作だと思う。

この3作のような、難解でカルト的な魅力を持つタルコフスキー作品をぜひ、観て感じてほしい。

ロシアは昔から、優れた文学者や音楽家を輩出してきた。その1人にタルコフスキー監督の映画も忘れてはならない。

映画『ノスタルジア』 まとめ

アンドレイ・タルコフスキー監督が描く作品には、いつも“水”や“祈り”が満ちています。監督自身の人生が、作品に投影され、満たされない想いが芸術や信仰へ駆り立てるのでしょう。

ソ連が崩壊し、ロシアに変わっても、今日まで社会主義体制であることにどんな意味があるのでしょうか。アンドレイ・タルコフスキー監督の自由を望む精神は、ロシア国内では叶えられないのだ。

遺作となった、「サクリファイス」と共に、自由や宗教性について生涯、考えてみたいと思わせる作品です!

ロシア映画を観るなら、アンドレイ・タルコフスキーの作品をぜひ、ご覧下さい。

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