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映画『の・ようなもの』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『の・ようなもの』の概要:無名の若手落語家と彼を取り巻く人々を描いた青春群像劇。森田芳光監督の劇場用映画デビュー作。独特の雰囲気を持つ作品で、何がどうというわけでもないのだが、不思議な余韻が残る。俳優としては素人だった伊藤克信を主人公に抜擢するなど、枠にとらわれないキャスティングも面白い。

映画『の・ようなもの』の作品情報

の・ようなもの

製作年:1981年
上映時間:103分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、青春
監督:森田芳光
キャスト:伊藤克信、尾藤イサオ、秋吉久美子、麻生えりか etc

映画『の・ようなもの』の登場人物(キャスト)

志ん魚(伊藤克信)
全く無名の若手落語家。日光出身の飄々とした愛嬌のある男。まだまだ下手だが落語が大好きで、古典落語をやることにこだわっている。師匠や兄弟子からも可愛がられ、それなりに楽しい日々を送っている。
エリザベス(秋吉久美子)
ソープ嬢。誕生日祝いに兄弟子からソープを奢ってもらった志ん魚の相手をし、彼のことを気に入って、プライベートで付き合い始める。志ん魚とは、友達以上恋人未満といった感じの不思議な関係。
志ん米(尾藤イサオ)
志ん魚の一門の1番上の兄弟子。気さくな兄弟子で、弟弟子たちからも慕われている。ただし、売れっ子ではないので金の面では弟弟子の面倒を見てやれない。少々風変わりな妻がいる。
由美(麻生えりか)
落研に所属する女子高生。落研へコーチに来てくれた志ん魚と恋に落ち、付き合い始める。若いわりにしっかりしており、志ん魚の落語にダメ出しをする。

映画『の・ようなもの』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『の・ようなもの』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『の・ようなもの』のあらすじ【起】

若手落語家の志ん魚(しんとと)は、23歳の誕生日を迎える。志ん魚は出船亭扇橋師匠の弟子で、一門には5人の落語家と2人の見習いがいた。志ん魚の兄弟子は上から順に志ん米(しんこめ)、志ん水(しんすい)、志ん肉(しんにく)、弟弟子には志ん菜(しんさい)がいる。みんな売れない落語家だったが、弟子同士はとても仲が良く、志ん魚はそれなりに楽しい日々を送っていた。

兄弟子たちは、志ん魚がまだ童貞だという話を聞き、金を出し合ってソープランドを奢る。志ん魚の相手をしてくれたのは、エリザベスというかなり美人のソープ嬢で、なぜか志ん魚のことを気に入ってくれる。「金がないからもう来られない」という志ん魚に、エリザベスは自宅の電話番号を教え、プライベートで会う約束をする。

エリザベスの自宅を訪れた志ん魚は、彼女が英語の本を読んでいることに驚く。エリザベスは博識で、海外の映画俳優にも詳しかった。エリザベスが言うには、志ん魚はアル・パチーノに似ているらしい。志ん魚は高級レストランでフランス料理を奢ってもらい、初めてエスカルゴを口にする。エリザベスは食べることが大好きで、こういう店にも慣れていた。

エリザベスと志ん魚はそれからもデートを重ね、恋人同士のような付き合いをする。志ん魚は冗談で「自分もそのうち売れっ子になって、将来幸せにしますよ」とエリザベスに言ってみる。エリザベスは曖昧に笑っていた。

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映画『の・ようなもの』のあらすじ【承】

志ん魚の一門は、「末広亭」という劇場の深夜寄席に出演する。深夜寄席はそれなりに客が入っていたが、終演後から始発までの時間の過ごし方が難しかった。志ん米だけはタクシーで帰り、弟弟子たちへ小銭を渡す。これではどうにもならないと困っていると、ベテランの師匠が通りかかり、小遣いを弾んでくれる。志ん魚たちはその金で、宿に泊まることができた。

同じ頃、エリザベスが仕事から帰宅すると、妹が勝手に部屋へ入っていた。妹は何の仕事をしても長続きせず、今度の職場もやめてしまったらしい。面倒見のいいエリザベスは、妹に気前よく小遣いを渡す。

師匠の家に落研の女子高生たちが押しかけてきて、「文化祭で落語を披露するので、誰かにコーチをお願いしたい」と頼みにくる。暇な人でいいというので、おかみさんは志ん魚と志ん菜を行かせることにする。

若々しい女子高生との交流はなかなか刺激的で、志ん魚は由美という女子高生を気に入る。兄弟子たちも羨ましがり、女子高生と一門の5人で遊園地へ遊びに行く。志ん魚はエリザベスのことが気になっていたが、由美たちと過ごす時間が増えていく。志ん魚と遊べなくなり、エリザベスは退屈だった。

映画『の・ようなもの』のあらすじ【転】

志ん魚の一門はなかなか落語を発表する場に恵まれず、鳴かず飛ばずの状態が続いていた。由美たちは、団地のケーブルテレビに出演したことがあり、そこの女性プロデューサーに「落語を放送してくれないか」と相談してみる。しかし女性プロデューサーは、無名の落語家を起用することに難色を示す。

一門のメンバーはアイデアを出し合い、「お天気予想クイズ」という企画を考える。この企画は、団地の近所のスーパーで買い物をすると、お天気予想クイズに参加することができ、見事予想が的中すれば、スーパーの割引券がもらえるという仕組みになっていた。結果は、ケーブルテレビの天気予報で発表される。

競馬によく似たこの企画は、団地の主婦たちの好奇心を煽り、お天気予想クイズは大いに盛り上がる。ケーブルテレビの注目度も上がり、女性プロデューサーも喜んでくれる。そのおかげで、志ん魚たちは団地で青空寄席を開催することができた。青空寄席にはスポンサーもつき、大勢の観客が集まってくれる。

風邪を引いて寝込んでいたエリザベスは、志ん魚に来てもらう。志ん魚は相変わらず優しくて、彼女をおんぶして病院へ連れていく。

師匠は、なかなか上手くならない志ん魚に、新作落語をやってみたらどうかとアドバイスする。しかし志ん魚は、王道の古典落語をやりたかった。師匠はおおらかに志ん魚の話を聞き、「ゆっくり考えてみなさい」と言ってくれる。

志ん魚は由美と真剣に付き合うことに決め、エリザベスにそのことを打ち明ける。志ん魚は、今までのように2人で会うわけにはいかないと思っていたが、エリザベスは黙っていればいいと食い下がる。エリザベスに「騙すんじゃないの、黙っているの」と説得され、志ん魚もなんとなくエリザベスとの関係を続ける。

映画『の・ようなもの』の結末・ラスト(ネタバレ)

夏。志ん魚は初めて由美と2人きりでデートをする。帰り際、志ん魚は彼女を連れ込み旅館に誘ってみるが、「冗談でしょう」と言われ、おとなしく引き下がる。同じ頃、エリザベスはソープ嬢仲間から、関西方面へ引っ越さないかと誘われていた。

由美を郊外の自宅まで送っていた志ん魚は、途中で由美の父親と遭遇する。父親は娘のことを心配し、志ん魚を家に誘う。思いがけず由美の両親と会うことになり、志ん魚は緊張する。父親は志ん魚が落語家だと知ると、落語を聞いてみたいと言い出す。志ん魚はそれを快く了承し、古典落語の『二十四孝』をやり始める。しかし全くウケず、父親に「全然なってない、どうやって生活するつもりだ」と言われてしまう。由美もそれに同調し「志ん魚さん、下手よ」とダメ出しする。楽天家の志ん魚もさすがに参ってしまい、早々に由美の家を出る。

すでに終電はなくなっており、志ん魚は42キロの距離を歩いて帰ることにする。帰る道々、志ん魚は新作落語を考えながら黙々と歩く。由美は志ん魚が心配になり、スクーターで後を追う。

明け方、家の近所まで帰ってきた志ん魚を、由美が待っていた。由美は「へたくそ」と言って微笑む。志ん魚は、そんな彼女の気持ちが嬉かった。

久しぶりにエリザベスの家を訪ねると、彼女は引越しの準備をしていた。エリザベスが関西へ行くと聞き、志ん魚は寂しくなる。エリザベスはいつも通りサバサバしていた。

兄弟子の志ん米の真打昇進が決まり、ビアホールを貸し切って、お祝いの会が開かれる。志ん米は、苦節20年で真打に昇進した。志ん魚と志ん菜は、兄弟子の姿を見ながら、自分たちや落語界の将来について語り合う。なかなか芽は出そうにないが、2人は落語が大好きで、ずっとやっていきたいと思っていた。志ん魚は、少しだけ大人になったようだ。

映画『の・ようなもの』の感想・評価・レビュー

本作は、無名の若手落語家と彼の周囲の人々を描いた森田芳光監督のデビュー作となる青春コメディー群像劇。
主人公とソープ嬢の淡い恋物語も良かったけれど、終盤のパーティーで落語について熱く語り合うシーンは、やはり心底落語が好きなんだと思わせてくれ、一番好みのシーンだった。
主人公の恋の行方と彼が日の目を浴びる日が来るよう応援したくなった。
また昭和の雰囲気が楽しめる作品となっている。
特に落語好きの人におすすめしたい。(女性 20代)

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