映画『女の一生(2016)』の概要:男爵家の一人娘にフォーカスを絞り、結婚から孫娘を抱くまでを描いている。度重なる夫の浮気にて悲劇に遭い、一人息子はロンドンに行ったきり金の無心をする手紙ばかりを送りつけてくる。男爵家はとうとう没落し、ヒロインは心を病んでしまう。
映画『女の一生』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ステファヌ・ブリゼ
キャスト:ジュディット・シュムラ、ジャン=ピエール・ダルッサン、ヨランド・モロー、スワン・アルロー etc
映画『女の一生』の登場人物(キャスト)
- ジャンヌ(ジュディット・シュムラ)
- 男爵家の一人娘。一途で清楚な女性。父の菜園を手伝うため、率先して土いじりをする。驕った面はないものの、男爵家の娘としてのプライドはある。息子ポールを深く愛し、信じて疑わない。
- ジャンヌの父(ジャン=ピエール・ダルッサン)
- 男爵家当主。菜園いじりが趣味で、貴族間のいざこざから一線を退いている。英断を下すことのできる人物で、娘を深く愛し意思を尊重している。
- ジャンヌの母(ヨランド・モロー)
- 貴族社会に詳しく事情通だが、病に侵され心静かに暮らしている。夫ともども娘を深く愛し、初孫の誕生にも大喜びしていた。
- ジュリアン(スワン・アルロー)
- 没落貴族の息子。身寄りがなく借金返済のために邸を売ったところをジャンヌの父によって、救済される。妻となったジャンヌを愛しているといいながら、浮気を繰り返す最低な人物。世間体を酷く気にしては、妻を冷遇する。
- ロザリ(ニナ・ミュリス)
- 男爵家の使用人でジャンヌの乳姉妹。ジャンヌの身の回りの世話や家事を行っている。ジュリアンに関係を強要され妊娠、出産するが、邸を追われた後は別の男性と結婚する。
- ポール(フィネガン・オールドフィールド)
- ジャンヌとジュリアンの子供。父親に似て、無責任な行動ばかりをする。ロンドンに向かい事業を興すが、母親には金の無心をして実家を没落させてしまう。
映画『女の一生』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『女の一生』のあらすじ【起】
男爵家の一人娘であるジャンヌは、父から畑仕事を教わり両親とゲームを楽しむなどして、穏やかに暮らしていた。そうして、美しく成長した彼女もそろそろ結婚相手を決める年頃に。
そこで、両親は身寄りがいないジュリアンを、娘に引き合わせる。両親は彼をとても気に入ったと話すが、一番大切なのはジャンヌの心である。思い悩んだ結果、ジャンヌはジュリアンと結婚することに決めるのだった。
ジュリアンに純潔を捧げ、添い遂げようと決心したジャンヌ。新婚夫婦は愛し合ったが、夫は節制に厳しく浪費を好まない。時には裕福に暮らしてきた妻を厳しく叱責することもあった。彼女は夫が自分を放置していることを寂しく思い、その寂しさを浪費することで癒していたのだ。追い詰められて、泣き出してしまったジャンヌに夫は優しくしてくれるが、寂しさを癒すことにはならないのだった。
そんなある日、邸の使用人ロザリが妊娠。ジャンヌは相手の男性と結婚させ家で雇うと言ったが、彼女は泣きながらも父親を明かそうとはしないのだった。
このことで、ジュリアンとジャンヌは言い争いを展開。夫はロザリを解雇すると言うが、妻は乳姉妹であるロザリの解雇には断固反対。出産するにしても費用がかかるし、出産後は子供を育てなければならないし、里子に出すにしてもやはり費用がかかる。
そこで、ジャンヌはロザリの子供は自分が育てると言い出す。だが、ジュリアンは世間体を気にして自分を貶める気なのかと咎めてくる。ジャンヌの両親は心が広く、世間体を気にしなかった。本人の心を一番、大切にしてジャンヌの意思を優先してくれたが、ジュリアンはどうやら違うらしい。
映画『女の一生』のあらすじ【承】
そうして、ロザリが無事に出産。ジャンヌは自分の意思を貫き、子供を引き取って育てることにした。
だが、そんなある深夜。寒くて咳が止まらず、部屋を暖めようとロザリの部屋を訪ねたジャンヌ。しかし、乳姉妹は不在。ジャンヌはふらりと夫の部屋を訪ね、そこで驚愕の光景を目にする。彼女は即座にその場から逃げ出し、実家へと身を寄せた。
ジャンヌは重い気管支炎を患った挙句、傷心して寝込む羽目に。事の次第を明らかにするため、司祭が仲裁に入りロザリから真実を聞き出した。ジュリアンはジャンヌと結婚する前、ロザリに目をつけ、彼女に手を出していたのだ。そうして、結婚後も度々、ロザリに関係を強要していたジュリアン。実は赤子の父親も彼だった。
その後、医師に診察してもらったジャンヌは、体調悪化は気管支炎のせいだけではなく、妊娠していたためだと判明。ロザリは邸を追い出されることになり、ジャンヌは両親の元へ戻ることになった。ジュリアンは自分の罪を認め妻に謝罪。涙ながらにやり直したいと言い募る。周囲からの説得もあり、ジャンヌは夫を許すことにするのだった。
そうして、彼女は充分な休養を得て一人息子のポールを出産。しばらくは穏やかで平安な時を過ごした。ところが、ジュリアンの悪い虫がまたも騒ぎ出し、今度は友人である伯爵夫人と関係を持ってしまう。その姿を密かに目撃してしまったジャンヌだったが、事を荒立てないため、胸を痛めながらも罪を咎めることはしないのだった。そうしているうちに、ジャンヌの母が病にて亡くなってしまう。
ジャンヌは母の遺品である手紙に目を通し、母には夫の他に恋人がいたことを知る。それはもう熱烈な恋文であったため、ショックを受けたジャンヌ。彼女は母の手紙を全て焼いてしまった。
映画『女の一生』のあらすじ【転】
ジャンヌは疲れ果て、新たに赴任して来た司祭に皆嘘つきだと零した。すると、司祭は真実を明かすべきだと進言。自分に正直になることによって、自由を得ろとアドバイスをもらう。
彼女は手紙に真実をしたためたが、送ることを躊躇っていた。伯爵は夫人をとても愛しているため、その幸せを壊すことなどできないと罪悪感が襲う。
だが、司祭は教えに忠実で、ジャンヌに真実を明かせと強く言い募る。思い悩んだジャンヌは、司祭の強い言葉に負けて伯爵へ手紙を送ってしまう。そうして、妻とジュリアンの逢瀬を目にした伯爵は、憤怒に駆られ2人を銃殺。自らも命を絶つという悲劇が起こるのだった。
数年後、寄宿学校へ入学している息子ポールの面会に向かったジャンヌ。だが、幼い頃より母親と離されて学校に入った息子は、勉強を拒み教師の言うことを聞かない問題児となっていた。ジャンヌの父は孫のためを思い寄宿学校へ入学させたが、母親のジャンヌの言い分では、寄宿学校はポールに合わないと言う。父と娘は口論の末、ポールを家に戻すことにした。
それから更に数年後、ポールは20歳の立派な青年へと成長していたが、恋人に貢ぐため、多額の借金を抱えてしまう。ジャンヌの父は借金を返済するために農園を売却し、好き勝手する孫のせいで、病気になりそうだった。
そんなある日、ポールが突然、恋人と共にイギリスのロンドンへ渡ってしまう。彼はロンドンにて事業を興し、大金持ちになって戻ると大仰なことを手紙に書いている。そうして、邸には年老いた父とジャンヌだけが残った。
ところが、数カ月後にロンドンで貧窮しているという手紙がポールから届く。彼は父ジュリアンが残した遺産が欲しいと金を無心。すると、しばらく後にまた手紙が届く。事業に失敗し借金が膨れ上がったという話だった。
映画『女の一生』の結末・ラスト(ネタバレ)
ポールのせいで男爵家は没落寸前となってしまい、年老いた父が心労で亡くなった。邸の雨漏りも治せない。そんなある時、ジュリアンとの不義で邸を追い出された乳姉妹のロザリから手紙が届く。彼女は邸を追い出された際、ジャンヌの父から農園を1カ所、譲り受け無事に結婚し息子を育て上げていた。夫が亡くなったため、ジャンヌの暮らしぶりを心配して世話をしたいと申し出てくれる。
ロザリのお陰でそれなりの食事を摂ることができるようになるが、ポールの負債を被ったせいで所持していた農園も3分の1に減り、邸も抵当に入ってしまう。ジャンヌは慎ましい生活を送っていたが、年に払う借金が多額な上に邸の維持費で現在、保有している農園の収入だけでは賄えないことが判明。しかも、財産の全てが抵当に入っているため、借金もできず。会計士は邸を売るしかないと言う。だが、ジャンヌは邸の売却を渋る。
更にポールからは会社が全焼したため、以前よりも高額な金額を要求する手紙が届く。ジャンヌはとうとう全てを諦め、邸を売却することにした。無一文になってしまった彼女は、せめて息子だけでも戻って欲しいと手紙を送るが、返事はなく。ロザリの家に身を寄せたが、ジャンヌは毎日、ポールの帰りを道の脇に座り込んで待ち続けた。
そんなある日、彼女の元にまたもポールから無心の手紙が届く。ジャンヌは息子へ送金しようとロザリにせびるが、乳姉妹はポールの汚いやり方に異議を唱える。ポールの手紙は金の無心だけで、会いに来ると書きつつも絶対に戻って来ない。ロザリはジャンヌに事実を叩きつけるも、ジャンヌは自分の金があるはずだと言い張って家中を探し回るのだった。
ロザリはジャンヌに罵られながらも、彼女の面倒を諦めずに見続ける。ジャンヌが塞ぎ込んで食事も摂らなくなってしまったため、ロザリは自らがロンドンへ向かいポールの様子を見て来ることにした。すると、ポールの手紙の内容が事実であったことが判明。ロザリはポールとその子供を連れて、ジャンヌの元へ戻って来る。ジャンヌは孫娘を腕に抱き、ようやく幸せそうな笑みを見せるのであった。
映画『女の一生』の感想・評価・レビュー
男爵家の一人娘にフォーカスを絞り、半生を淡々と映し出している。多くを語らず、映像のみで状況を表現している場面が多く、前後の状況や会話で結果を知る。その間、ヒロインの複雑な心理を女優のジュディット・シュムラが表情や仕草で演じている。
ヒロインの結婚により男爵家が没落していく悲劇を描き、終盤は息子との繋がりを断ちたくないあまり、心を病んでしまう。悲劇の他に幸福な時も描かれてはいるが、比率としては悲しいことの方が多い。タイトル通りの見方をするならば、まさに人生そのものを凝縮して描いているように思う。(MIHOシネマ編集部)
温かく幸せな男爵家で育った女性が、結婚した相手を「少し」間違ってしまったせいで、その後の人生が大きく変わってしまうストーリー。
主人公のジャンヌが結婚したのは没落貴族の息子。この相手が本当に最低でした。ある意味ジャンヌに「結婚してもらった」立場でありながら、浮気を繰り返しジャンヌを傷つけます。そして息子のポールも父親そっくりの「クズ」男になってしまいます。
家族のために一生懸命に生きてきたジャンヌがとても可哀想だと思いましたが、彼女は自分の「不幸」を理解していながら、孫を抱くことに希望を持ち、耐えていたのかなと感じました。(女性 30代)
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