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映画『堕ちた希望』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『堕ちた希望』の概要:ナポリ郊外の荒廃した港町に暮らすマリアは、妊娠した娼婦達を人身売買組織へ引き渡すことで生計を立てていた。そんな中、マリアは自身の妊娠をきっかけにどん底の人生に僅かな希望を見出した。第31回東京国際映画祭、最優秀監督賞と主演女優賞を受賞した作品。

映画『堕ちた希望』の作品情報

堕ちた希望

製作年:2018年
上映時間:97分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:エドアルド・デ・アンジェリス
キャスト:ピーナ・トゥルコ、マッシミリアーノ・ロッシ、マリーナ・コンファローネ etc

映画『堕ちた希望』の登場人物(キャスト)

マリア(ピーナ・トゥルコ)
人身売買を行う組織へ、妊娠した娼婦を引き渡して生活している女性。強姦された過去があり、子宮は「欠けてつなぎ合わせた壺」と言われる程激しい損傷を負った。妊娠できない体と診断されていたが、秘かに妊娠し出産することを決心する。
おばさん(マリーナ・コンファローネ)
マリアに仕事を教え面倒を見ている女性。彼女を我が子のように気に掛けているが、裏社会の仁義を通す冷血な一面も持ち合わせている。
カルロ・ペングエ(マッシミリアーノ・ロッシ)
ブレッシングが営む娼館の隣に住んでいるおじさん。犯されて川へ捨てられた幼いマリアを見つけ、ヴォルトゥルノ・ヨットクラブへ連れて行った漁師。第一発見者であることから疑いをかけられ、長年孤独に暮らしていた。

映画『堕ちた希望』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『堕ちた希望』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『堕ちた希望』のあらすじ【起】

白いドレスを着た血だらけの少女が川へ投げ捨てられた。少女を見つけた漁師は彼女をボートに乗せ、ヴォルトゥルノ・ヨットクラブへ届けた。

愛犬のカーネを連れたマリアは、出産間近の娼婦・ホープとナタリーの元を訪れた。マリアは、同じく妊娠している娼婦・ファティマの所在を尋ねたが、ホープは、彼女は子供を手放すのが嫌で逃げたのではないかと言った。

次にマリアは、ボートクラブの側にある赤い壁のアパートを訪れた。彼女はそこに暮らすおばさんから現金を受け取り、ファティマがいなくなったことを告げた。おばさんは、ひとまず今夜中にホープとナタリーをボートに乗せるよう指示し、「面倒なことになる前にファティマを見つけて」と言った。

その夜、マリアは臨月を迎えたホープとナタリーをボートに乗せ、牧場へと連れて行った。そこは人身売買を行う組織が身を隠しているアジトだった。牧場にある一室ではスキンヘッドの女性が待っており、彼女は「明日までに三人目を連れて来い」とマリアに指示した。

翌日、マリアはファティマを探して街を歩いたが見つからず、その足でおばさんの元を訪れた。おばさんは、マリアの面倒を見て仕事の全てを教えた人物だった。そんなおばさんは、最近ミスの多いマリアへ「相談に乗る」と声を掛けた。マリアはおもむろにトップスをたくし上げ、おばさんにお腹を触らせた。彼女は妊娠していたのだ。

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映画『堕ちた希望』のあらすじ【承】

おばさんは、マリアをコルヴィーノ医師の元へ連れて行った。医師は、現状では母子共に順調だが、無理をすると危険だと言った。マリアは過去にレイプされたことがあり、その際子宮に大きな傷を負っていたのだ。本来なら妊娠できない体だった彼女に、医師は「中絶するなら今しかない」と告げた。おばさんは手術費用を出すと言うが、妊娠11週を迎えたマリアは悩んでいた。

翌日、マリアは友人・ティーナの結婚式へ向かった。ティーナはマリアを通じて過去に4人の子供を組織へ提供しており、会うことが叶わない彼らの心配をしていた。マリアは「今頃元気に走り回っている」とだけ答えた。その帰り道、マリアは廃屋に隠れていたファティマを見つけ自宅へ連れ帰った。帰宅したマリアは、母へ自身の妊娠を打ち明けた。

ファティマをボートに乗せたマリアだったが、彼女は牧場へは向かわず教会の近くにファティマを降ろした。子供を手放したくないと願うファティマを逃がしたマリアは、組織からの追及を逃れるため昔馴染みのブレッシングの家へ向かった。

娼館を切り盛りしているブレッシングには、足の悪いヴァージンという娘がいた。ブレッシングはマリアの妊娠を喜び僅かの間彼女を匿うことを決め、ヴァージンは母になろうとするマリアに懐いた。

映画『堕ちた希望』のあらすじ【転】

翌日、川で魚を釣っていたマリアとヴァージンは、隣家に住むカルロ・ペングエに声を掛けられ彼の家へ上がった。昼食を御馳走になった二人は、ペングエの思い出話を聞く。

ペングエは昔、遊園地にある回転遊具の管理人をしていた。彼は遊具に乗って怖がる子供達の表情を写真に収め販売したが、金をケチって思い出を放棄する親は多かった。彼は売れ残った写真を捨てることができず、今でも手元に保管していたのだ。マリアが子供達の写真を覗くと、その中に幼い頃の自分の姿があった。

白いドレスを着たかつてのマリアを見たペングエは、彼女が唯一遊具を怖がっていなかった子供だと思い出した。さらに、その日は初聖体拝領の日で、マリアは母親と男性に連れて来られていたことと、その後行方不明になったと聞かされた記憶が蘇った。ペングエはマリアとヴァージンを廃遊園地へ連れ出し、当時のように回転遊具で遊ばせた。

妊娠13週目を迎えたマリアは、ブレッシングから「住むなら客を取って働いてもらう」と言われ支度をした。しかし、そこへマリアを追って来たスキンヘッドの女が現れ、マリアはカーネと共に逃げ出した。

湿原を進むマリアとカーネだったが、彼女は道中毒蛇に噛まれたカーネを失った。街に出たものの行く当てもないマリアはフラフラと彷徨い歩き、最終的に再びヨットクラブへ戻った。

映画『堕ちた希望』の結末・ラスト(ネタバレ)

妊娠28週目を迎えたマリアは、母に伴われ検診を受けた。コルヴィーノ医師の元にはおばさんがおり、マリアの母とおばさんは、母子共に順調との結果を聞き安堵した。マリアの母はおばさんへ出産費用の無心をしたが、おばさんは、マリアの子供を売って利益が出るから費用はかからないと言った。彼女は、ファティマとの取引で得られなかった利益をマリアで回収しようとしていたのだ。病院を後にしたマリアは、海を眺めて号泣した。

夜を迎え牧場へ連れて来られたマリアは、お腹の子供に語りかけ、暖炉にあたり「これは“暑い”」、外の風を浴び「これは“寒い”よ」など、今の内に伝えられることを伝えた。

翌朝、マリアは牧場の馬を逃がすと、海岸から水平線を眺めた。そこへやって来たおばさんは、「この街で唯一の真人間」であるペングエの元へ行こうとするマリアを引き止めなかった。

ペングエの元にやって来たマリアは、彼のボートにヴァージンを乗せると、三人で遠く離れた海岸へ向かった。海岸には半壊したペングエの隠れ家があり、そこで夜を迎えたマリアは陣痛に耐えた。出産に臨むマリアを前に、ペングエは必死で祈りを捧げ「彼女が生きるなら俺が死のう。彼女に別の人生を与えたまえ」と絶叫した。

無事に出産を終えたマリアは、胸で眠る赤ん坊に朝陽が昇る海を見せ、「これが“誕生”よ」と囁いた。

映画『堕ちた希望』の感想・評価・レビュー

昨年出産を経験したばかりの自分には、かなりハードな内容だった。

仕事にも慣れ、軌道に乗り、昇進した矢先に油断して妊娠したわたしが、本作の娼婦達のように子供を手放さなかったのは何故だったか思い出した。マリアと同じように、子供を産んだら自分の人生が変わるような気がして希望を持ったからだ。あくまでも子供が人生を“変えてくれる”のではなく、命を繋ぐ選択をすることによって自分の価値観が変わると期待した。結果、その通りになった。

妊娠・出産で体も環境も変えなければいけないのは女だ。マリアはこれをチャンスと捉え、置かれている状況に立ち向かった。出産を決意する彼女の眼差しを見て、当時の自分はどうだったろうかと思い返す良い機会になった。(MIHOシネマ編集部)


過去にどんな生き方をしていても、自分のお腹に宿った子供は、親の人生を変えてくれる存在なのだと気付かされました。マリアの生き方は仕方のなかったことだと思うし、絶対に悪いとは言えませんが褒められるような生活では無いでしょう。
しかし、それでも彼女のことを助けたいと思ってくれる人がいて、手を差し伸べてくれたから新たな命を手にすることが出来たのだと思います。困難な状況を生きてきた彼女に明るい道が少し開けたような気がして、ラストは心が晴れた気分になりました。(女性 30代)

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