映画『王と道化師たち』の概要:甥を殺害し王位を簒奪したという悪評により、民心を掴めずにいる世祖。王から悪評を消せと命令された領議政は巷で有名な道化師団を脅し、民心を集める噂を流すよう命令する。道化師団は様々な奇策を実行して噂を一掃するが、このことで更なる陰謀へ巻き込まれる。
映画『王と道化師たち』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:コメディ、歴史
監督:キム・ジュホ
キャスト:チョ・ジヌン、ソン・ヒョンジュ、パク・ヒスン、コ・チャンソク etc
映画『王と道化師たち』の登場人物(キャスト)
- マ・ドッコ(チョ・ジヌン)
- 道化師の頭。元市場の漫談師で非常に巧みに言葉を操る。とても賢く頭の回転が速い。仕事にプライドを持っており、常に命がけ。演出や策を考案する。
- ハン・ミョンフェ(ソン・ヒョンジュ)
- 領議政。王の悪評を打ち消すため、ドッコたちを脅して仕事をさせる。密かに官吏が政を牛耳る国を作りたいと画策している。かなりの腹黒。
- 世祖(パク・ヒスン)
- 甥を殺害し、王位を簒奪した王。神経質でかなり難解な性格。兄嫁の夢を見て以来、皮膚病を患っている。ドッコ達の行動により、自身の行いを振り返るきっかけを得る。
- チョン・ホンチル(コ・チャンソク)
- 道化師の1人。見えない糸を使って操り人形のように人を浮かせる技を持っている。髭面の男性だが、気が弱い面がありすぐ失禁する。
- クンドク(キム・スルギ)
- 道化師の1人。万寿山の巫女だが、霊力が薄れたため、占いで稼いでいる。楽器を巧みに演奏し音を操る。
- チンサン(ユン・バク)
- 道化師の1人。元宮廷絵師で王宮の水が合わないと辞めた経緯を持つ。実物と見紛うほどの絵を描く。
- パルプン(キム・ミンソク)
- 道化師の1人。身のこなしが柔軟で素早く神出鬼没と言われている。八方から吹く風とも例えられる若い青年。
映画『王と道化師たち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『王と道化師たち』のあらすじ【起】
朝鮮王朝時代。10年前、甥を殺して王位に就いた第7代王世祖は、謀反によって王位を得た王と呼ばれ民心を掴むことができずにいた。その行いが『六臣の忠』という書によって民の間に広められていたせいだ。そこで王は病に侵される自身よりも次代を継ぐ世子のため、『六臣の忠』の原本を持つ道化師3人を捕縛し、処刑。悪い噂を一掃するよう領議政ハン・ミョンフェに命じるのだった。
ミョンフェは方々から情報を募り、5人で結成された道化師団を発見。元漫談師マ・ドッコ率いる道化師団を捕縛し、噂を広めるよう命じた。ドッコ達は仕方なく依頼を受けることに。
まずはお手並み拝見として3日後に王がお祈りで訪れるというソンニ山の法住寺へ。ドッコはソンニ山の道中にある寒村にて、一芝居打つことに。メンバーのチョン・ホンチル、クンドク、チンサン、パルプンは即興で舞台を作り上げた。道の傍に立つ松の木を利用した策だった。
道を阻む松の木が王の行列を前に道を開けるという演出に、農民や臣下は驚愕。多少のトラブルは発生したものの、行列は無事に通過した。目撃した農民は奇跡だと周囲に言いふらす。村は大騒ぎとなり噂は5日以内に全国へ広まる。それは最終的に都ハニャンにいるミョンフェへも届き、天意は王にありという結果へと繋がるのだ。
ドッコの言う通りになったことで、ミョンフェは彼らを認め罪の免除を言い渡し、今後も噂を広めるよう命令。そこでドッコは報酬を要求したが、命が助かっただけありがたいと思えという返答。今後も続けるということは、無報酬で仕事をしろということである。ドッコの気概を受けたミョンフェは言葉を変え、彼らの望みである奴婢からの解放と住居の提供を叶えることにした。
映画『王と道化師たち』のあらすじ【承】
奴婢から解放され、晴れて良民となったドッコ達は、ミョンフェの命に従い都のハニャンへ。彼らは、そこでドッコの師匠である話術師と遭遇。彼は、巷で噂される松の木の奇跡をドッコの仕業だと見抜いていた。だが、師匠は『六臣の忠』の内容を知っており10年経っても尚、王を逆賊と呼ぶ。しかし、ドッコは自分が実際、目にしていないので本当に謀反だったのかどうかは甚だ怪しいと言うのだった。
立派な邸を本拠地とした道化師団。到着早々、次の仕事へ取り掛かる。仕掛けも大まかで下準備には時間を要したが、ミョンフェからも許可が下りた。それは、菩薩が降臨するという演出である。このことにより、王は菩薩が降臨したことを祝い民たちに祝い米を振る舞うという結果に至った。民からの信奉もうなぎ上りである。
この結果に大喜びの大監(テガム)のセクハラ騒動を治めたドッコ。そこへミョンフェがやって来る。今回のドッコ達の活躍にはミョンフェも満足した様子だったが、新たに頼み事をしたいと言う。それは、王の顔にできた原因不明の膿疱が身体へも広がり、治療の術がないため、天の助けにより病が完治したという噂を広めて欲しいというものだった。ドッコは依頼を受けたが、その報酬として官職を賜りたいと述べる。
王の病が治ったという噂を広めるため、ドッコはミョンフェに頼み王と直接面会させてもらうことに。世祖の話では、夢の中に兄嫁が出て来て呪いの言葉を吐いて以来、調子が悪いらしい。そこでドッコは王をも巻き込んだ策を実行した。上院寺の文殊菩薩像が病を癒したという演出である。
ドッコの演出は見事に功を奏し、民間ではその噂で持ち切りになった。この功績を称え、道化師団はとうとうミョンフェの屋敷へと招待される。そこで従九品の位を得たドッコ。最下位ではあるが、官職には違いない。更に『六臣の逆』という書物を見せられる。その本には救国の決断を邪魔した6人の奸臣の記録が記されていた。『六臣の忠』が出回ったせいで臣下も誹謗中傷に晒されているため、その噂を覆したいと言う。亡くなった蘆山君と6人の臣下の霊に登場してもらい真実を明かしてもらえと言うのだ。
ところが、そこで抗議したのはなんとチンサンであった。ドッコは機転を生かしミョンフェの許しを得てどうにか乗り切った。
ドッコはチンサンが全員の命を危険に晒したとして責めたが、チンサンは父親も同然の人を極刑に課したミョンフェを許すことができないと言う。チンサンの主は六臣の忠であるソン・サムムンであった。今回の仕事は彼らに霊として登場してもらい、事実とは逆のことを明かさせるという内容だったため、納得できなかったのである。チンサンは官職を捨てて、道化師団から抜ける決断をしてしまった。
映画『王と道化師たち』のあらすじ【転】
ドッコ達の活躍により、今や世祖を逆賊と呼ぶ民はいない。当然、師匠の芸にも賛同する民はおらず話術師としての仕事も客が寄り付かなくなっていた。ドッコはチンサンと今回の依頼に悩み師匠の元を訪れることに。すると、師弟はこれまでの結果で口論となる。ドッコは師匠と決別することにした。
その帰り、天から花びらが散った村に寺を増築するとのことで、村が焼き払われてしまう。この所業は噂を利用したミョンフェと大監達によるものだった。
朝廷では噂が一掃され民心を得たことで世祖がやる気を取り戻している。だが、そこで気を大きくした大監が王へと譲位を進言。これには激怒した王だったが、ミョンフェによって宥められる。
その頃、焼き出された良民が山へ追いやられ貧しい暮らしを送っている様子を目にしたドッコは、ミョンフェへと抗議に向かったが、『六臣の忠』が真実であったことと、王とその臣下の間に裏切りを許さない血の会盟という契約があることを聞かされる。ミョンフェは10年前、思い描いていた未来が世祖によって壊されて行く様を見続けて来た。故に、ドッコと共に大業を成し遂げて欲しいと頼む。王を追い出し功臣の世を作り上げるというのが、ミョンフェの野望だった。
ドッコからすれば、ミョンフェの野望は立派な謀反である。成功すれば功臣になれるが、失敗すれば死あるのみ。ドッコは仲間達に生き延びることを目標とすることを告げ、策を弄した。彼はまず子供が手遊びで描いたような計画図をミョンフェに見せ口頭で説明した。
上院寺を舞台に世子が刺客を放ったという嘘を仕立て上げ、ミョンフェに功績を立てさせるのだ。これにミョンフェは大喜び。そこで、ドッコは密かに世祖と会いミョンフェと臣下一同が世子を黒幕に仕立て上げようとしていると密告。王は世子と共にその計画を聞き、ドッコの策に乗ることにした。
画して計画は決行され、ミョンフェと大監たちが王によって処罰されるはずだった。しかし、刺客として登場するはずだったドッコは、大監の手の者によって捕縛されてしまいパルプンが刺客として連れて行かれてしまう。これに動揺したのは世祖と世子である。ミョンフェによって詰め寄られたパルプンは、世子が黒幕だと明かしてしまった。結果として王はミョンフェに跪く羽目になり、ドッコとパルプンは罪人として吊るされることになった。
映画『王と道化師たち』の結末・ラスト(ネタバレ)
吊るされたドッコとパルプンは集まった民の前で互いに罵り合いを始めたが、ドッコはミョンフェに対し、お前が一番嘘つきで道化師だと叫んだ。ところが、首吊りの刑が処されるその時、『六臣の忠』を隠し持っていたとして師匠が連行されて来る。師匠は原本を持っていると明かし、刑の中止を望んだ。
このことにより、刑は一旦中止となり師匠共々牢屋へ戻ったドッコ達。師匠の行動が分からないドッコだったが、師匠は時間稼ぎをしていると言うばかり。
一方、原本を手にした大監たちは邸で大宴会中。牢屋内で始まった茶番劇など露とも知らなかった。
師匠と共に王と領議政の寸劇を始めたドッコ。隣の牢の罪人たちが観客となり大騒ぎである。しばらく後、見回りに来た牢番は牢屋の通路に倒れる番人たちを目にし、罪人が逃げたと騒ぎ始める。ところが、倒れていた番人たちは戻って来たチンソンとクンドクにホンソンだった。チンソンは標的がミョンフェ達なら協力すると言ってくれる。罪人の捜査が始まる中、兵に身をやつしたドッコ達は馬に乗ってまんまと逃走。
追手からの攻撃を避けつつ、走り続ける。ところが、師匠がドッコを庇って矢を受けてしまう。師匠はドッコ達の才能を認め、誇りを持ち真心を込めて道化師を続けろと言い息を引き取った。
師匠を手厚く葬ったドッコは別名、恐喝団呼ばれる道化師団を解散しようとしたが、仲間達は真心団と改名して奴らに復讐すればいいと言う。ドッコは仕方なく彼らの案に乗ることにした。ドッコは新たに策を弄し、追い出された良民や『六臣の忠』を利用。
その頃、王宮では新たに血の会盟が結ばれようとしていた。ドッコはその機会を狙って計画を実行。ソン・サムムンの霊が復活させる他、様々な演出に王は血盟など無意味だと断言し、奸臣を次々と始末。ところが、ミョンフェは王へと逆らい『六臣の忠』に記された事実を隠蔽し、功臣の世を作ると宣言した。
しかし、火にくべた『六臣の忠』が本物ではないと気付いたミョンフェ。そこへ、本物の書を手にしたドッコが登場する。彼は宙に浮いて殺された道化師たちの無念を晴らすと怒鳴った。ドッコが姿を消した後、彼の話で自分が愚王だったのだと気付いた世祖は、『六臣の忠』の事実を認めると宣言。この出来事はたちまち民の間に広まり、現在の功臣が実は逆賊だったと悪評が出回った。
ドッコはクンドクの出身地である万寿山へ向かい、『六臣の忠』を後世まで残して欲しいと頼む。そうして、一行は当初の予定通りに明へ渡り、道化師業を続けるのだった。
巷を騒がせた死六臣の忠臣は『六臣伝』として現在も残され、道を開けた松の木や文殊菩薩などが現代でも残されている。
映画『王と道化師たち』の感想・評価・レビュー
王の悪評を消すため、道化師団が様々な策を弄していくという内容。その方法がかなり奇策で大作であるため、道化師の活躍だけ見ていても面白い。後半は腹黒い官吏が陰謀を巡らせるため、かなりの混戦状態となるが、最終的に倒してしまうので爽快感が凄い。加えて同師団のメンバーが個性的。ドッコの師匠が弟子を認め、息を引き取るシーンは、胸に迫って印象深かった。(MIHOシネマ編集部)
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