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映画『オーバー・フェンス』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『オーバー・フェンス』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『オーバー・フェンス』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『オーバー・フェンス』の結末までのストーリー
  • 『オーバー・フェンス』を見た感想・レビュー
  • 『オーバー・フェンス』を見た人におすすめの映画5選

映画『オーバー・フェンス』の作品情報

オーバー・フェンス

製作年:2016年
上映時間:112分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:山下敦弘
キャスト:オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、北村有起哉 etc

映画『オーバー・フェンス』の登場人物(キャスト)

白岩義男(オダギリジョー)
バツイチ子持ちで無職の中年男性。職業訓練校、建築科で勉強中。過去の自分がして来た事に自覚がなく、周囲に興味が無かった。
田村聡(蒼井優)
ホステス。急に踊り出したり、激情したりと忙しない女性。美人だが、変人扱いされている。
代島和之(松田翔太)
職業訓練校、建築科。夜の店を開店させようとしている。過去、営業の仕事をして来た為、口が上手い。
原浩一郎(北村有起哉)
職業訓練校、建築科。背中に鯉を背負っている。過去、やんちゃをしていたが、家族の為に頑張ろうとしている。
島田晃(松澤匠)
職業訓練校、建築科。一番年下の若者。若さを武器に中年を馬鹿にしている節がある。
尾形洋子(優香)
白岩の元妻。仕事で家庭を顧みない夫のせいで心を病み、自分の子供に手をかけようとした事があり、それがきっかけで離婚した。

映画『オーバー・フェンス』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『オーバー・フェンス』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『オーバー・フェンス』のあらすじ【起】

白岩義男は現在、函館職業訓練校の建築科で大工の勉強をしている。建築科のメンバーはほとんどが社会人で、年齢も性格も過去も様々。授業の中には体育もあり、クラス全員でソフトボールをやっていた。

ある日、白岩が学校帰りに夕食を購入して帰ろうとすると、若い女性と中年男性の痴話喧嘩に出くわす。様子を見ていると突然、女性がダチョウの愛情表現を全身で真似し始める。男性は呆れ果てさっさと食堂へ入って行き、残された女性は見ていた白岩を睨み付けて男性を追って行った。面白い女性もいたものだ。アパートは越して来たばかりだが、荷物はまだほとんど開けておらず、部屋には物がほとんどない。白岩は1人暮らし。食事をして、ビールを飲んで寝るだけだ。そうして、淡々と日々は過ぎる。

次の日は学校が休みで、大工は道具が命と言う教え通りに、白岩は道具の手入れをしていた。そこへ、妹の夫が訪問して来る。実家はそこそこ裕福な家で、白岩の父親はしきりに仕事を斡旋してくるが、白岩は断っている。家族で食事をしようという誘いも断った。

代島に誘われるまま、ホステスのいる店へ飲みに来た白岩。過去に営業をしていたと言う代島はどこか印象が軽い。その店で奇声を上げるホステスを見た白岩。田村聡はいつか見た痴話喧嘩の女性だった。何かと動物の真似をして表現する聡は、おかしな女性だった。素面だと言う聡の車に乗せられて、帰宅した白岩。彼女の誘いを上手く躱して部屋へ入った。

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映画『オーバー・フェンス』のあらすじ【承】

白岩はバツイチの子持ちだった。子供とは幼い頃に別れている。荷物の中から手紙を出して開く。元妻の父親からだ。手紙には白岩の無責任を責め、娘と子供とは連絡を取らないようにして欲しいと書いてあった。台所でそれを燃やし外へ出ると、赤い車が停車していた。聡だ。彼女とビールを買いに行く事にしたが、コンビニで気分を害して帰ってしまう。白岩には訳が分からなかった。

代島が言う話では、聡はヤリマンだからすぐに、やらせてくれるらしい。だから、白岩に会わせたと言う。だが、白岩は代島のやり方はあまり好きじゃない。学校が終わると、代島から聡が会いたがっていると聞く。彼女は昼間、函館公園の遊園地でアルバイトをしているらしい。

函館公園の遊園地には、アトラクションの他に様々な動物もいる。聡はここでアトラクションの操作をしていた。その夜、ビールを飲みながら動物達の求愛を教えてくれる聡。ハクトウワシの求愛を熱心に話し、真似をする彼女に白岩は見惚れてしまう。どこか自由で変わった女性だった。

聡の家へ招かれた白岩。ビールを飲んでいると、聡が急に立ち上がり台所へ向かう。薬を服用して全裸になり、体を洗い始める。彼女はこれをやらないと、体が腐るような気がすると言う。白岩は見てはいけないものを、見てしまったような気がした。その後、抱きついて来た彼女に流されて体を重ねてしまう。

深夜、白岩はなぜ未だに結婚指輪をしているのかと聡に問われる。お互いにお互いを、何も知らない。彼女は急に怒鳴り出し白岩を責める。彼は仕方なく、過去を語った。

映画『オーバー・フェンス』のあらすじ【転】

子供が生まれて半年経った頃、仕事で遅くなる日が続いていた。会社から帰った白岩が見たものは衝撃的な光景。妻が子供の顔に枕を押しつけていたのだ。白岩は自分が悪かったのだろうと淡々と語る。

そんな白岩を、悪いのはあんただとはっきり口にする聡。白岩の眼差しは人を見下している。例え彼がそのように見ていなくても、他人にはそう見えているのだ。だから、妻もおかしくなった。だが、白岩本人は無意識の為、その理由を知りもせず、また知ろうともしなかった。激昂した聡と口論になった白岩は、部屋から追い出された。

島田と原が若い女の子2人と飲んでいるからと、呼び出されて居酒屋へ来た白岩。中年2人と若者3人という妙な構図だ。どこか中年を馬鹿にしたような話をする若者達。白岩は忠告をする。雰囲気は最悪になった。原が空気を読んで、白岩を連れ出した。

翌朝、子供に起こされた白岩。あの後、原の家で飲んだのだった。原と妻と子供3人の生活を垣間見る。賑やかなお宅だ。子供が魚を見せると言い、原の服をひっぱると彼の背中には鯉が彫ってあった。彼にも色々あったらしいと察した白岩。何も聞かない事にした。
学校へ行く電車の中で、原が過去の経歴を簡単に説明してくれた。色々あって今の生活に落ち着いた。近々、ソフトボール大会がある。そこで活躍して、家族に良い所を見せたいと張り切る原は、とてもいい奴だった。

映画『オーバー・フェンス』の結末・ラスト(ネタバレ)

ある日の夜、白岩が部屋へ帰ると、自宅前で聡が待っていた。喧嘩別れした以来なので気まずい。謝る聡に元妻と会う事にしたと話す白岩。聡と店に同伴した白岩は、そこで代島に会う。聡を貶す代島。彼には聡の本質が見えていない。彼女の本質を知る白岩は、聡の誘いに乗って踊り出す。いつか話したハクトウワシの求愛ダンス。白岩は聡をソフトボール大会に誘った。

元妻の洋子と会った。朗らかに近況報告をし合う元夫婦。洋子は白岩が普通になったと話す。以前は、まるで要らないもののように自分達を見ていたと言う。洋子にはそう感じられていたのだ。帰りに指輪を返された白岩。思わず涙が出てきて、泣いてしまった。

白岩は聡へ会いに、函館公園の遊園地へ向かった。洋子と会った事を報告する為だった。すると、聡は見に行ったから知っていると言う。聡には白岩と洋子が、家族で繋がっているように見えたらしい。彼女は再び、怒り出して走り去った。白岩が聡を追って行くと、彼女は檻の中の動物達を次々と外へ解放していた。それはきっと、彼女自身にも共通する行動なのだ。白岩は逃げ出そうとする聡を捕まえ、お前はお前だと怒鳴るが、彼女は走り去ってしまう。

白岩は自宅で鑿を研ぐ。気持ちの整理をするかのように。
次の日、白岩は聡に電話で自分の気持ちを話した。聡は自分が壊れていると話したが、白岩は自分が壊す方だから、この後どうしたらいいのかよく分からないと話した。

白岩の元へ、義弟が再び訪問。白岩はソフトボール大会の後、父親と会う決心をした。
日曜日、ソフトボール大会。白岩は聡を待ち続ける。彼女の為にホームランを打つと約束していた。4回裏、聡はまだ来ない。原がヒットで2塁へ、島田が1塁へ。白岩が打てば点数が入る。1投目は空振り、2投目で聡の赤い車を見た。彼女が来たのだ。最後の投球は逃せない。白岩は気合を入れ直す。彼は宣言通り、ホームランを打った。

映画『オーバー・フェンス』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

オダギリジョーさんと蒼井優さん、どちらも好きな俳優のため興味を持った作品。ほの暗い空気を漂わせた、なんとも言えない人間臭さを感じさせる物語。誰が悪いとか誰が正義とか、分かりやすく描かれているわけではない。自分で余白を考えながら見る作品で、自分自身についても見つめ直すきっかけになった。白岩義男のような人物は珍しくなく、他人を大事にせず興味がないというのは、よくある話だと思う。原作の小説も、いつか読んでみたい。(女性 30代)


佐藤泰志の小説『黄金の服』に収められている同名短編作品を映画化。今作は佐藤泰志作品「函館3部作」の最終章と位置付けられている。
主人公のように周囲に興味がなく切り捨ててしまう人は確かにいるが、ヒロインのようなぶっ壊れた人は少ないように思う。身近に寄ると分からなくなるが、全体を見渡すとヒロインもまた今の自分から抜け出そうと足掻いていて、主人公と接していく上で脱却する糸口を見つけたのだろう。そう思えば、タイトルの意味も自ずと理解できる。主演のオダギリジョーは主人公のような人物の演技がとても上手い。対して、蒼井優演じるヒロイン役は難しい役だと思う。どちらも演技派で表情や雰囲気での演技が巧みであるため、素晴らしく絶妙な間のある作品になったのではないかと考える。奥の深い作品だ。(女性 40代)


物凄くリアルで良い意味で気持ち悪い作品でした。今作で描かれているのは「人との繋がり」です。似た者同士という言葉がありますが、この作品を見ると、良い意味でも悪い意味でも「似ていない」人とは繋がれないんだと感じました。
過去に自分がして来た事に対して自覚が無い主人公が、様々な人と出会うことによって過去の自分の行いを反省します。しかし、壊れてしまったものはもう戻らず、壊れてしまった人間は「似た者」としか繋がれないと気づくのです。
言葉にするのがとても難しい作品ですが、1度鑑賞するとこの「気持ち悪さ」の意味が分かると思います。(女性 30代)


普通の人間の、普通の人生の中での気怠さをひしひしと感じる作品。
オダギリジョーは自然な演技が上手い。常識的で人当たりも良いけれど冷めていて、心の中には不安や怒りを抱えている。こういう感じの人いるなあと思った。
聡のエキセントリックさは蒼井優だから見ていられるけど、実際にいたらしんどい。行動がぶっ飛びすぎていて理解できなかった。彼女がなぜこういう人間になったのかが描かれていたらまた違う見方ができたかもしれない。(女性 40代)


函館の町と共に描かれる“壊れかけた大人たち”の物語に心を打たれました。白石和彌監督らしい静かな怒りと、山下敦弘作品にも通じる脱力感が同居していて、現実の厳しさがやけにリアル。蒼井優演じる聡の叫びと羽ばたきの演技にはゾッとしつつも、涙が出ました。何も解決しないけど、それでいい。そう思える映画。(30代 男性)


何でもないような日常の中に、ふとした“ひずみ”や“違和感”が散りばめられていて、その静かな不穏さがたまらなかった。函館の景色と、渡辺謙の疲れた男の佇まいが見事に合っていた。蒼井優の演技は正直怖かったけど、強烈に記憶に残る。人生って、誰かと交わることでやっと歩けるのかもしれない。(40代 女性)


決して劇的な物語ではないのに、観終わった後に妙な余韻が残る不思議な映画。蒼井優のキャラが強烈すぎて、最初は違和感があったけど、次第に“壊れてる人間”同士の絆が見えてくる感じが良かった。再生とか癒しじゃなく、ただ隣にいることの大切さを教えてくれる作品。(20代 男性)


再就職支援施設という舞台がすごくリアルだった。働くって何だろう、自立って何だろう、そんなことを考えさせられる。渡辺謙が演じる男が抱える孤独と空虚感、それを無理に癒そうとしない演出に好感。蒼井優との関係も、恋愛というよりは“隣にいる人間”という距離感が絶妙だった。(50代 女性)


“フェンス”の向こうにある何かを見たくて、でも超えられない。そんなもどかしさが全編を通して漂っていて、それが函館の景色と重なって胸に残る。蒼井優の奇行には賛否あると思うけど、自分は彼女の存在こそがこの映画の核だったと思う。現実と向き合えない男が、一歩踏み出す瞬間に泣けた。(30代 男性)


静かだけど、とても力強い映画でした。女性の視点から見ると、聡の叫びには共感と恐怖が混在していて、何かに縋るしかなかった彼女の脆さが痛々しく映りました。でも、そんな彼女を否定しない映画の優しさにも救われました。感情に振り回されることも、時には必要だと思える作品でした。(20代 女性)

映画『オーバー・フェンス』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『オーバー・フェンス』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

そこのみにて光輝く

この映画を一言で表すと?

魂が擦り減るような現実のなかで、ほんのわずかな光を見つける物語。

どんな話?

函館を舞台に、希望を失った男が、複雑な家庭環境の中で生きる女性と出会い、少しずつ心を通わせていく物語。どこか壊れかけた人間たちの、静かで激しい感情のぶつかり合いが描かれる。

ここがおすすめ!

『オーバー・フェンス』と同じく、函館三部作のひとつ。登場人物の傷や欠落を繊細に描きながら、ただそばにいることの意味を問いかけてきます。綾野剛と池脇千鶴の演技は圧巻で、心をえぐられるような衝撃があります。

リンダ リンダ リンダ

この映画を一言で表すと?

音楽と友情が、不器用な日常にささやかな奇跡を起こす青春ドラマ。

どんな話?

文化祭を前にした高校の軽音部女子たちが、突然加入した韓国人留学生と共に、ブルーハーツの楽曲でバンドを組み、完成に向けてひたむきに努力する姿を描く青春群像劇。

ここがおすすめ!

『オーバー・フェンス』同様、何気ない日常のなかにある“感情の震え”を丁寧に拾った作品。登場人物が決して完璧でないところに共感が生まれ、観終わったあとにほんのりと希望が残る秀作です。

海炭市叙景

この映画を一言で表すと?

地方都市の“止まった時間”の中で、静かに生きる人々の物語。

どんな話?

閉塞感漂う架空の港町“海炭市”を舞台に、複数の登場人物たちの日常と葛藤を淡々と描くオムニバス形式の人間ドラマ。人生の袋小路にいるような人々が、それでも一歩を踏み出そうとする姿が印象的。

ここがおすすめ!

『オーバー・フェンス』と共通するのは、“地方都市で生きる孤独”をリアルに切り取った点。派手な展開はないものの、静かで詩のような映像と共に、人間の弱さと逞しさを感じさせてくれる一作です。

舟を編む

この映画を一言で表すと?

“言葉”を愛し、人生をかけて辞書を作る男たちの物語。

どんな話?

出版社に勤める地味な男・馬締が、辞書編纂という気の遠くなるような仕事に向き合いながら、自分の居場所と役割を見出していく。言葉の奥深さと人間の温かさが交差する感動作。

ここがおすすめ!

夢や再起とは無縁に見える題材ながら、まさに『オーバー・フェンス』と同じ“静かな情熱”が全編に流れています。自分の場所を探してもがく姿に、じんわりとした共感が広がる作品です。

ぐるりのこと。

この映画を一言で表すと?

夫婦の再生を、10年の時間の中で丁寧に描いた静かな愛の物語。

どんな話?

バブル崩壊後の日本で、弁護士助手の夫と専業主婦の妻が様々な出来事を乗り越えながら、“家族”を再構築していく様子を描いた長編ドラマ。日常の小さな変化と感情の揺れ動きが繊細に描写される。

ここがおすすめ!

壊れてしまったものは元には戻らない。けれど、寄り添い合うことはできる――。そんな温かくて苦いメッセージが、『オーバー・フェンス』の持つ人間味と響き合います。夫婦、パートナーとの関係を見つめ直したくなる一作です。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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