映画『父 パードレ・パドローネ』の概要:イタリアの言語学者ガヴィーノ・レッダの自伝が原作である今作は1977年の第30回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞しました。パードレ・パドローネは父の名前ではなく、イタリア語で「父であり主人である」という意味を表します。
映画『父 パードレ・パドローネ』 作品情報
- 製作年:1977年
- 上映時間:113分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
- キャスト:オメロ・アントヌッティ、サヴェリオ・マルコーネ、ナンニ・モレッティ etc
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映画『父 パードレ・パドローネ』 評価
- 点数:65点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★☆☆☆
[miho21]
映画『父 パードレ・パドローネ』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『父 パードレ・パドローネ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『父 パードレ・パドローネ』 あらすじ【起・承】
イタリアの貧しい島サルディーニャの羊飼いの一家に生まれ育った主人公ガビーノは、小学校に上がったばかりのある日、父親によって学校から連れ出されます。
「教育より貧乏のほうがよっぽど切実だ。」
そう主張する父親のもと、10歳にも満たないガビーノは夜な夜なひとりきりで山小屋で羊の番をさせられます。話し相手もいない、電気もガスも勿論ない、野生動物たちの脅威に晒されるその暮らしから、ガビーノは何度も逃げ出そうと試みますが、父親の厳しい監視によって連れ戻されてしまいます。一家にとって唯一の財産である羊を守るため、家族を養う糧を守るために、父親も必死だったのです。
しかし、そんな孤独な生活はガビーノから読み書きを奪います。二十歳になったガビーノは、ろくに喋ることもできない青年に成長していました。
そんなある日、ガビーノは山で旅芸人の親子に出会います。彼らに頼み、羊とアコーディオンを交換したガビーノは、独学で演奏を覚え、より一層外の世界への思慕を募らせてゆきます。
映画『父 パードレ・パドローネ』 結末・ラスト(ネタバレ)
そんな折、親類に不幸があり、一家はオリーブ畑を手に入れます。地主になり喜んだのも束の間、欧州経済共同体(EU連合の前身)の発足と大寒波が一家を襲います。
またも貧乏生活に逆戻りした父親は、なけなしの土地を売り、金貸しの事業を起すことを提案します。そしてガビーノには、一家の尊敬を守るため、軍へ入隊することを命じるのでした。
入隊したガビーノを待っていたのは、読み書きができないという事実でした。サルディーニャ語しかろくに離せないガビーノに、標準語以外は禁止の軍隊での生活は孤独でした。
家に帰りたいと嘆くガビーノでしたが、同郷の友人は熱心に読み書きを教えてくれるようになります。これをきっかけに、ガビーノは学問への情熱を開花させていきます。
軍隊で高校卒業資格を取得したガビーノは、サルディーニャの大学に戻り言語学を学ぶことを希望します。父は反対しましたが、ガビーノは単身故郷へ戻ります。
父に認められたい一心で学問を披露するガビーノに、執拗に労働を課す父は、農民以外の生き方を認めようとしません。
ガビーノはついに、父親を見限り再度家を出るのでした。
言語学者として大成したガビーノは、再び故郷に訪れ、この自伝を書き上げました。これは紛れもなく彼の人生ですが、島の多くの羊飼いの人生そのものでもあります。
父は主人ではなく、越えなくてはならない壁だと、ガビーノは振り返るのでした。
映画『父 パードレ・パドローネ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『父 パードレ・パドローネ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
どこまでも暗いサルディーニャの景色
わたしたち日本人にとって、サルディーニャをはじめとするイタリアの島々といえば、バカンスの地としても有名であり、人々も明るいイメージ。
しかしどうしたことか、イタリア映画って軒並み暗いテイストのものが多いのです。たとえば「ニュー・シネマ・パラダイス」、たとえば「ゴッド・ファーザー」。
今作もその例に漏れませんが、これはどうしたことか。
この理由は、歴史を紐解くと簡単に説明がつきます。イタリアは、敗戦国なのです。
ドイツや日本と同じく、第二次世界大戦の敗戦国であり、ファシズムに傾倒せざるを得ないほど貧しい時代を経験した国なのです。そんな歴史の中で、人々の大半は、息子や娘を犠牲にしなければならないほどの貧しさを経験している。だからこそ、この映画の中のサルディーニャの景色は、どこまでも暗く、沈んだ雰囲気なのです。
とはいうものの、そういう気分でないときに鑑賞するには、気分が重くなってしまうほど暗い今作。元気の無い時の鑑賞は避けたほうが無難です。
詩的な語り
これもイタリア映画の大きな特徴のひとつなのですが、モノローグがやたらと詩的。これね、深読みはしなくて大丈夫です。演歌だとこぶしが回るし、ロックンロールだとシャウトするな、くらいの、特徴のひとつとしての認識で片付けてください。深読みすると物語が先に進みません。
荒い色調の映像
勿論、古い作品だということもありますが、今作では自叙伝というテーマ上、わざと8ミリ風の荒い映像でまとめられています。観辛さはあるものの、この映像効果によって、主人公ガビーノの、飢えた獣のような目力が引き立ちます。
ガビーノは口数の少ない男ですから、とにかくこの目での演技が物語の肝。イタリア人らしい、淡い色の目力に注目してみてください。
タイトルの『父 パードレ・パドローネ』の父であり、主人であるという意味に込められていたのはそういう事か…となんとも言えない気持ちで鑑賞していた今作。
教育なんて受けている場合じゃない、そんな余裕がどこに!?という時代だったのは分かりますが、家族である父親がこんなにも厳しくて従うしかない環境で生きていくというのは悲しいし辛すぎると感じました。
父の行動は息子を思う愛が故なのかもしれませんが、私には理解できません。100%の支配的な関係ではないのが微妙なところで、そこに尊敬や愛が感じられるので誰を責めることもできず、とてももどかしかったです。(女性 30代)
映画『父 パードレ・パドローネ』 まとめ
今作で語られる、息子と父親の姿。これは、現代からしてみると異様なほど厳格ですが、時代背景を見てみるとこれも致し方ないのかな、という確かな説得力があります。また、ガビーノが後半になり語る、父親は越えなくてはならない壁だという発言も、重く響きます。
しかし時代の変わり目に、学の無さが足を引っ張るシーンなどで、子どもにはとにかく高い教育をさせることこそ得策だと見えてきます。
学ぶことで開ける世界の広さを、こんな映画からも感じ取ることができます。映画ですが、本を読みたくなるような、啓蒙に満ちた作品です。
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