映画『パーソナル・ソング』の概要:認知症やアルツハイマー患者が「失われた記憶を取り戻す」瞬間を追い、音楽療法がもたらす効果を取り上げたドキュメンタリー。2014年サンダンス国際映画祭ドキュメンタリー部門で観客賞を受賞した一作。
映画『パーソナル・ソング』の作品情報
上映時間:78分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー
監督:マイケル・ロサト=ベネット
キャスト:ダン・コーエン etc
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映画『パーソナル・ソング』の登場人物(キャスト)
- ダン・コーエン
- アメリカのソーシャルワーカー。音楽療法を推奨し、たくさんの介護施設を回って痴呆症やアルツハイマーの患者と向かい合う。
映画『パーソナル・ソング』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『パーソナル・ソング』のあらすじ【起】
インタビュアーは90歳の女性に問う、「子供のころはどんな風だった?」と。しかし、彼女は全く思い返せないという。ここから実験は始まった。音楽を通じて過去に戻り、思い出を引き出すというもの。早速結果は見えた。被験者となった90歳の女性は、学生の頃に聞いた「聖者の行進」を耳にしながら軽快に話し出したのだ。母親に内緒でコンサートに行ったことや思い出の写真について。実験を先導するのはダン・コーエン。音楽により加齢に伴い失った人格を取り戻せることを実証し続けている。
3年という月日をかけて追ったダンの実証の中で、最初に見た被験者は認知症で言葉も失いかけていたヘンリーである。10年近く介護施設に入り、娘のことも忘れ始めていた状況であった。とても愉快で音楽好きな父親だったというヘンリーは、音楽を聴き始めてすぐに「歌っていいのか?」と療法士に尋ね、目を見開いて歌い踊り出した。まさに「覚醒」したのである。俯きがちだったヘンリーは軽快に過去聞いてきた音楽について語り、歌い出した。変化は言葉数だけではない。人格を取り戻したかのように、楽しかった時期について話し、伝えようとする意志が全面に出るようになったのだ。
映画『パーソナル・ソング』のあらすじ【承】
ダンは無気力になってしまった認知症患者達の「人間性」を取り戻す手助けをしたいと考えている。「音楽の魔法」について社会全体で取り組むべきだと信じ、活動を続けているのだ。この理論は脳科学とも繋がっている。音楽は、脳の中でも運動と感情を司る大きな部分を動かすことが実証されているからだ。施設には終始無反応な女性がいた。2年間、マッサージや会話を続けても全く反応がなかった彼女が、音楽を聞かせたところ突如足を揺らし動き出したという例もある。
こうも実績のある療法がなぜ普及しないのか。施設の中にいる患者たちは、管理され選択肢を失っていく。しかし、自発性を取り戻すきっかけになる「音楽を聞かせる」という行為は医療行為ではない。薬で操作することのみが医療行為であるというシステムが確定している現状では、医師は心のケアを重視されることがないから普及しないのであろう。自由を求め不満を爆発させた患者は、音楽を聞くことで朗らかに笑い、歩行器を手放せなかった女性は、自力で立ち上がり踊り出した実例もあるというのに。
映画『パーソナル・ソング』のあらすじ【転】
とある研究では母親の口調が胎児に影響するという説もある。つまり、人間は生まれながらにして「歌う」才能を持っているのだ。音楽は世界を繋ぐ存在であると多くの音楽家が確信している。音楽が生むビートに反応するのは、人間である証拠である。
病院が「終の棲家」となった現代。アメリカにはたくさんの介護施設と優秀なスタッフが揃っている。しかし、入居者が自由を奪われるのと同様に、スタッフも長時間閉鎖された空間で「患者」と向かい合う。入居者の人間性よりも治療を優先してしまうという。入居者の一人でジョンという男性がいる。彼は戦争中、軍で投与された放射線障害用の薬により髪の毛が抜けきってしまった。そして、自由も奪われた身体ではダンサーの夢も諦めざるを得なかった。そんなジョンに音楽療法を試してみると、抜け殻のようだったジョンの目に光がともり感情が舞い戻ったのである。人前で笑い、歌う。当たり前のように聞こえることを取り戻す、これが音楽療法である。
映画『パーソナル・ソング』の結末・ラスト(ネタバレ)
ダンは音楽療法の拡散のため、たくさんの団体や権力者をあたり支援を求めてきた。しかし、現実はそう簡単にいかない。そんなダンを励ますのは動物療法を推進する学者である。彼もまた、介護施設の“霧”を取り払えないという現実に苦悩してきた。彼の他にもダンに賛同する人達が集い、セミナーを開催した。その中で、「悪い知らせ」をする。それは、2050年には人口のバランスは崩れる可能性があるということ。65歳以上の人口が圧倒的に増える時代には、介護施設の不足は免れない。
そんな未来を示唆する中で、施設を頼らずにアルツハイマーと闘う2組の夫婦を比較する。一組は音楽療法を初めて試す夫婦。病気のことばかり考えていた妻だったが、音楽を聞いてから表情が格段と明るくなり、身体でリズムを感じ始めた。自分のその先を考え、鬱々としていたのが嘘のように笑顔を見せた矢先、突如不安に襲われてしまう。音楽療法の効果は、徐々に長くなって行くため繰り返すことが必要なのだ。もう一組はアルツハイマーの妻を音楽療法で支える夫婦。病気とは思えないほどはつらつと話す妻は10年間一度も薬や施設に頼っていないという。
ダンの元に朗報が飛び込んだ。35施設に助成金が入るというのだ。3年間で56の施設に音楽を届けてきたダンたちの活動だが、まだまだ足りないという。ダンは決して諦めない。支援者を見つけ、活動の波は広がっていくべきだと。「あなたの好きな歌は?」たったその一言が未来を切り開くと。
映画『パーソナル・ソング』の感想・評価・レビュー
音楽は人の心に潤いを与える。娯楽は「衣食住」には含まれないが、日常に光を与える。今作は介護施設にフューチャーし、高齢者への効果を実証しているが、諦めることになれてしまった人はどの年代にも必ずいる。作中よく使われた「人間性」という言葉。楽しむことだけではなく、悲しむことや怒り、呆れも人間が持っておくべき感情であり、感覚の違いが人間性を生む。こういった未来を見据えた行動ができる人がいるというのは素晴らしいことだ。賛同し、協力する自分に何かできることはないか、考えるきっかけになる一作であった。(MIHOシネマ編集部)
本作は、アルツハイマーや認知症の患者が記憶を取り戻す瞬間と音楽療法の効能を突き詰めたドキュメンタリー作品。
患者さんたちの好きだった歌を聞かせるというこの音楽療法なのだが、それぞれの反応の仕方に感動し、これは立派な医療行為だと確信した。
人間だけに備わった記憶感覚、本能というのも凄く不思議で、深刻化する高齢化社会の今、一刻も早く多くの医療現場で導入されて沢山の人々が幸せに導ければいいなと思った。
音楽の持つ底知れない力、素晴らしさを知れる作品。(女性 20代)
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