映画『ポカホンタス』の概要:1607年、新大陸。先住民ネイティブアメリカンが住まう土地にイギリス人が渡来。先住民のポカホンタスは、新しい文明を受け入れようとするも、部族と白人とで土地を巡り争いが勃発してしまう。彼女は船乗りでもあるジョンと共に、戦いを避けるべく奔走する。
映画『ポカホンタス』の作品情報
上映時間:81分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、アニメ、ミュージカル
監督:マイク・ガブリエル、エリック・ゴールドバーグ
キャスト:メル・ギブソン、アイリーン・ベダード、デヴィッド・オグデン・スタイアーズ、ラッセル・ミーンズ etc
映画『ポカホンタス』の登場人物(キャスト)
- ポカホンタス(アイリーン・ベダード)
- パウアタン部族、首長の娘。自然を深く愛し愛されている。シャーマンの素質を持ち、精霊の声を聞くことができる。好奇心旺盛で自由。ジョンと出会い彼に惹かれる。浅黒い肌を持ち、美しい黒髪の女性。
- ジョン・スミス(メル・ギブソン)
- 怖いもの知らずと名を馳せるイギリス人男性。元軍人で現在は船乗り。自らが理想とする新天地を求め、旅を続けている。ポカホンタスの住む新大陸を理想の地と定め、彼女と出会い自然との共生に希望を見出す。
- 柳の木のおばあさん(リンダ・ハント)
- パウアタン部族の集落より更に奥地にある古木。聖霊を宿し、あらゆる生物と自然を見守ってきた。ポカホンタスの相談役であり導き手。
- チーフ・パウアタン(ラッセル・ミーンズ)
- パウアタン部族の首長でポカホンタスの父親。勇ましく部族の戦士でもある。早くに亡くした妻と生き写しの娘を深く愛している。
- ココアム(ジェームス・アパウマット・ホール)
- パウアタン部族一の戦士で首長の娘ポカホンタスの婚約者。無口で真面目。将来安泰の優良物件だが、そんなところがポカホンタスの意に沿わない。ポカホンタスとの結婚を半ば諦めかけている様子。
- ジョン・ラトクリフ(デヴィッド・オグデン・スティアーズ)
- イギリス貴族で総督。イギリスでの権威回復を狙い、新天地へ黄金を求めてやって来る。何が何でも富を得ようと先住民の駆逐に乗り出す。
映画『ポカホンタス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ポカホンタス』のあらすじ【起】
1607年、ヴァージニア。新大陸に眠るという黄金を目指し、総督に貴族ラトクリフを迎えた船が意気揚々と出航。その船には船乗りの間で恐れ知らずと、名を馳せるジョン・スミスも乗船していた。船はジョンの機転により大嵐を無事にやり過ごして先を進む。
新大陸、後にアメリカと呼ばれる土地には、先住民のネイティブアメリカンが自然と共に暮らしていた。インディアン部族パウハタン首長の娘ポカホンタスは、自然を深く愛し愛された美しい娘だった。好奇心旺盛で自由気ままな彼女にはシャーマンにも通じる、精霊と会話ができる不思議な能力があった。
そんなある日、ポカホンタスは部族一の戦士であるココアムから求婚される。父の首長もそれは喜び結婚を勧めるが、ポカホンタスはココアムとの結婚は夢で見た未来とは違うものだと父に主張。だが、父親のチーフ・パウアタンは娘の話を信じようとしなかった。女は夫を迎え子供を産んで育てることが幸せなことだと信じられていたからだった。
ポカホンタスはココアムとの結婚に思い悩み、森の奥にある古い柳の木のおばあさんに相談した。柳の木のおばあさんは森の精霊の声に耳を傾け、導きに従うよう促した。そうして、風に誘われたポカホンタスは、木の上から見たこともない大きな船が、大陸にやって来るのを目撃するのである。
ジョン・スミスを乗せたヴァージニアの船が今にも上陸しようとしていた。総督ラトクリフは新大陸を植民地化し黄金を手にして、自国イギリスでの権威回復を狙っていた。
映画『ポカホンタス』のあらすじ【承】
その頃、部族のシャーマンの占いにより、パウハタン族は新たに上陸して来た白人達を警戒。チーフ・パウアタンは戦士ココアムを筆頭に敵の偵察へと向かわせる。
着岸し下船した総督は、ジョンに周辺の状況を探るよう命令。そして、他の者達には早速、土地の開拓と黄金発掘を開始させた。
探索に出たジョンを探るため、尾行していたポカホンタス。滝壺までやって来てとうとうジョンと対面する。ポカホンタスは逃げ出そうとするも精霊の声が彼を示したため、思い直してジョンとの接触を果たした。
白人の偵察にやって来たパウアタン部族の戦士達。森を切り拓いていく様を目にして、白人達と一戦を交えてしまう。ココアムは奴らの脅威を知り、負傷した戦士を連れて一旦退却した。このことによりチーフ・パウアタンは、白人は危険だと認識を改め、他の部族を集めて抵抗する準備を始める。
同じ頃、ジョンとポカホンタスは互いに言葉を習い合い、会話することに成功していた。見たことも聞いたこともない異国の文化を知り合う2人。ジョンは部族を未開人と呼び文明を広めればいいと話すが、対してポカホンタスは自然の中で暮らす大切さを彼に教える。
ジョンは世界中を旅し理想の未開地を目指していたが、ポカホンタスと出会い自然と共存する素晴らしさを知り、彼女へと急速に惹かれていく。
映画『ポカホンタス』のあらすじ【転】
先住民からの抵抗を危惧した白人達は開拓地に塀を立て、黄金の探索を続けていた。だが、何日経っても見つけ出すことができない。ラトクリフは部下達に武装させ、更に奥地へと立ち入るよう命令する。
白人と先住民の間で一触即発という状況の中、ポカホンタスに会うため、パウアタン部族の集落にジョンが潜んで来る。彼女はジョンを連れて柳の木のおばあさんの元へと向かった。そこで、彼らの目的が黄金の発掘だと知るポカホンタスだったが、この土地には黄金などない。2人は互いに惹かれ合い、夜にまた同じ場所で会おうと約束して別れた。
夕方、パウアタン部族の声かけにより、仲間の部族が集落へとやって来る。侵略者を撃退するためだ。ポカホンタスは父親に話を聞いてくれるよう必死に訴えるも、チーフ・パウアタンはそれどころではなく、娘の話を聞いてはくれない。
同じ頃、植民地でも戦いの準備が行われていた。ジョンは総督に戦ってはいけないと訴える。しかし、ラトクリフはジョンの話を信用せず、先住民の駆逐を言い渡してしまう。
その日の夜。ポカホンタスは友人の制止も聞かずにジョンとの逢瀬へ向かった。同じくジョンも植民地を抜け出すも、総督にその姿を目撃されてしまう。ラトクリフは部下にジョンを尾行するよう言いつけるのだった。
約束通り、柳の木のおばあさんの元で会うことができたジョンとポカホンタス。互いに戦いを止めようとしたが、最早戦いは避けられない段階にまできている。どうすればよいかと頭を悩ませているところへ、柳の木のおばあさんがアドバイスをくれた。ジョンは1人でチーフ・パウアタンの元へ向かい、対話を持とうと決意する。
しかし、その2人の逢瀬をココアムが目撃してしまい、嫉妬からジョンへと襲い掛かる。ポカホンタスは必死に争いを止めようとするも、激情に駆られたココアムを止めることができない。そこへ、ジョンの部下が彼を助けようと銃を構える。銃弾は戦士ココアムを貫き、彼の命を奪った。
映画『ポカホンタス』の結末・ラスト(ネタバレ)
部下を逃がしたジョンは部族に捕縛され、ココアム殺害の罪にて処刑を言い渡される。
処刑は日の出と共に行われることになった。ポカホンタスは酷く自分を責め、その姿を目にした友人がジョンと会わせてくれる。
2人は永遠の愛を誓い合い最後の逢瀬を終えた。
一方、逃げ帰った部下はジョンが人質として捕まったと仲間達へ報告。仲間達はジョンを半ば信奉しているため、助けに行こうと決起。ラトクリフは彼らを更に扇動し、先住民の駆逐へと乗り出すのだった。
自分がしてきたことを悔いるポカホンタス。彼女は柳の木のおばあさんの元でどうしたらいいのかと嘆いていた。彼女はジョンがくれたコンパスを目にし、回る矢印に注目。夢に出てきた回る矢を思い出し、矢印がジョンを示しているのだと知る。精霊の声に導かれ、心の声に従った行動は間違っていなかったと確信。
そうして、日の出と共に白人、先住民、ポカホンタスは行動を開始した。
戦いを食い止め、ジョンを助けなければ悲惨な戦争が始まってしまう。白人と先住民が対峙する中、今まさにジョンの処刑が行われようとした寸前。ポカホンタスはその場へ飛び込み、彼を庇いつつ殺すなら先に自分を殺せと言い放った。
ポカホンタスはジョンへの愛を告げ、チーフ・パウアタンに部族の道を考え直すよう身を挺して説得。そんな勇気ある行動を示した娘に、父親はかつて愛した妻の影を垣間見る。彼は武器を治め、戦うことをやめると宣言した。
しかし、その宣言に異を唱えたのが、ラトクリフである。彼は部下の制止を振り切って、チーフ・パウアタンへ銃を発砲。ジョンは逸早くそれに気付き、首長を庇って銃弾に倒れた。
ラトクリフは部下達に取り押さえられ拘束される。ジョンは辛うじて命を取り留めたが、傷を回復させるため、帰国することになった。ポカホンタスとパウアタン部族は、命の恩人でもあるジョンに旅の食料を与え、別れを惜しむ。
ポカホンタスはジョンに一緒に来て欲しいと誘われるも、長年住む土地に残ることにした。
再び愛を確かめ合ったポカホンタスは、名残惜しくも愛する人の出航を見送るのだった。
映画『ポカホンタス』の感想・評価・レビュー
ディズニー映画としては珍しい、人種や部族を取り上げた作品である。もちろん、大筋は、ディズニーらしい恋愛ストーリーなのだが、そこにはインディアンとしての生き方や、白人の考える私利私欲といった内容も含まれており、ラストシーンも、めでたしめでたしといったものではなく、心の繋がりを強く描いたものである為、最初から最後までストリー組みとしては、ディズニー映画の中でも頭一つ抜けているような印象である。こういう作品は、自分が歳を重ねるにつれて、捉え方が変わるのかもしれない。(男性 30代)
ディズニー映画であるが、実在した人物を扱った、愛と勇気の物語だ。敵対するインディアンの部族の娘と、イギリス人の青年が恋に落ちた。敵対心は一層強くなるばかりで、戦いも激しくなっていく。彼らが愛の力で体を張って相手を守ったことによって、平和が訪れたかのように思えたが、問題はまだ深く残っていることが伺える。難しい選択を迫られるポカホンタスは、生まれ育った土地を選んだ。最愛の人との別れをどのように受け取ったのだろうか。様々な思いがよぎる。(女性 30代)
ディズニー映画にしては珍しい民族をテーマにした作品。アニメーションのまろやかで流れるような柔らかい線がディズニーらしいが、今作は純愛の他に白人による侵略を描いている。友好的なインディアンは白人にとっては良い隣人だっただろうし、白人側としても無為な戦いをしてわざわざ損をする必要もない。船長のようにありもしない黄金を奪取しようとする者がいることに問題があるのであって、白人青年のように現地人のことをきちんと理解し友好的な関係を築けていたら、戦争など起きないのだ。今作では恋人になった2人が別れることになりつつもハッピーエンド的な終わり方をしており、切ない中にも希望はあるといった感じの雰囲気を保っている。作品としての出来栄えは素晴らしいと思うし、ポカホンタスは大好きなので何度観返しても飽きない。(女性 40代)
インディアンの美しき女性ポカホンタスとイギリス人のスミス、惹かれ合う二人、対立する人種。ディズニー映画には珍しい”人種差別”がちらつく作品で、ディズニー映画であるからこそ綺麗に終わらせることが出来た作品である。大人の事情で揉めてしまったらしいが、大人がどうこう言うのはお門違いな気がする。子供達には余計なことを知る前に必ず見てもらいたい。愛に人種は関係ないんだと、そういった価値観が見に付く物語。(男性 20代)
作品としては面白いのだが、もともとの話を勉強し大人になって様々な情報を知り素直に楽しめなくなってしまった。インディアンへの略奪行為を結果として美談として片付けようとするのが、どうにも腑に落ちない。
それに加えて、続編の存在。ポカホンタスが運命の恋と信じたジョン・スミスをあっけなく振る展開を知ってしまってからは、この作品が茶番しか見えなくなってしまった。どちらも、今作品の内容ゆえの評価ではないのだが。今の時代ディズニーは実写化ブームだが、この作品は実写化したら色々問題になりそうだ。(男性 30代)
みんなの感想・レビュー
何と言ってもテーマ曲が素敵だ。日本題にすれば風の彩りとでも言うかメロディーラインの美しさに何度聴いても飽きない。特にパンフルートやサックスで演奏すると素敵だ。物語のテーマもいい。全世界が注目すべきテーマだ。
①史実を捻じ曲げた白人による「ポカホンタス伝説」
この映画だけ見れば、先住民族の娘と白人の心優しい青年が手を取り合って平和をもたらした美談に思える。
しかし、そんなものは白人の都合のいい解釈にすぎない。ポカホンタスという女性(本名はマトアカ)が開拓使の男と恋に落ちたなんていう史実はない。たしかに彼女は開拓使の男の命を救ったが、それはほんの10歳ごろの話だったらしい。そして彼女はイギリスに渡ってイギリス人男性と結婚したが、それは誘拐された結果、捕虜となった彼女が解放される条件だったからだ。
こういった事実から、ディズニーでの映画制作を受けてインディアンからかなり抗議されたらしい。
普通に考えれば金目当ての白人たちが新大陸に上陸して先住民を迫害し、土地を奪った上で成り立ったのがアメリカである。その事実は変えようもないが、こうして先住民といい白人が手を取り合って平和的に解決した「美談」として持ち上げてしまったのは白人のエゴというよりほかない。そもそもジョン・スミスは正義感の強いいい青年などではなく、実際は野心家で、彼に後々再会したマトアカは激怒したという話もある。スミスの話は自分の名声のための作り話だったという説もある。
②映画としては傑作
子供には分かりにくいテーマだし、人種差別的要素も含み史実を捻じ曲げた問題もあるけれど、物語としては傑作だと思う。ミュージカルとしてもすぐれているし、白人主人公ばかりだったディズニーの数少ない有色人種の主人公の物語だというのも興味深い。
フィクションとしては本当に感動的な純愛ストーリーで、これが史実だったらどれだけいいかと思うが、現実はそんなにきれいではない。
ポカホンタスはアメリカ人にとってはいいインディアンとして伝説的な女性になっているわけで、この映画の内容を信じている人もいるのかと思うと何とも言えない。アメリカらしいというかなんというか、白人にとって自分たちの邪魔をしないインディアンはそりゃあ「いいインディアン」だっただろうが、一方的な視点だけで語っていいものなのか疑問である。