この記事では、映画『プリティ・ベビー』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『プリティ・ベビー』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『プリティ・ベビー』 作品情報
- 製作年:1978年
- 上映時間:109分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:ルイ・マル
- キャスト:ブルック・シールズ、キース・キャラダイン、スーザン・サランドン、フランセス・フェイ etc
映画『プリティ・ベビー』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『プリティ・ベビー』 あらすじネタバレ(起承転結)
映画『プリティ・ベビー』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『プリティ・ベビー』 あらすじ【起・承】
1917年のニューオリンズは娼婦として暮らす母を持つ娘も珍しく無かった。
そういう娘は小さい頃から、自分も娼婦になるのだと信じて疑わずに育っている。
バイオレットもその1人である。
12歳になる彼女はハティという娼婦の母を持ち、マダム・ネルという高級売春宿に身を寄せている。
夜になると身なりのきちんとした男性が宿を訪れ、黒人のピアニストが店のピアノを演奏する。
バイオレットはいつも開店の時、このピアノの近くに立って様子を見ているのだった。
ある日、売春宿のダイニングで食事をとっていると男が訪ねて来た。
彼の名はベロックと言い、気さくで雰囲気のある彼はマダムに娼婦をモデルに写真を撮影させてくれないかと頼んだ。
報酬を受け取ったマダムは、食事をとっていたハティを使うと良いと言う。
ハティにはバイオレットの他にも1人子供がいて、その場で乳をあげていた。
美しく溌剌としたハティはモデルとして中々だった。
映画『プリティ・ベビー』 結末・ラスト(ネタバレ)
仕事もあり売春宿に何度も足を運ぶが、彼は店の女には手を出そうとはしない、
バイオレットはそんな彼のことを気になり始めていた。
この日がやってきた。
バイオレットの水揚げの日だ。
着飾った生娘の彼女は美しく、400ドル物の高値で競り落とされた。
そしてついに初めて売春婦として仕事をこなした。
そんな矢先、ハティが客の常連と結婚すると言い出した。
しかもバイオレットを宿にそのまま放置し、自分だけ男の自宅に移り住んだ。
元々母親というものにそんなに執着も無く、売春婦達と集団で暮らしているバイオレットにはそんなに大したことでは無かった。
だがある日、マダムに叱られることをしたバイオレットはベロックの元に身を寄せるようになる。
彼もまた美しい12歳の娘に惹かれていたため、同棲するように。
しかし、ベロックに子供扱いされたことに怒った彼女は、再び宿に帰ることにした。
一体の売春宿の撤退のため、ついにマダムの店も閉店することになった。
行く当てもなく、母親もいない彼女を思ったベロックが最後の日、迎えに来る。
そして彼女と結婚することにする。
仲間を招待してささやかながら2人は教会で式を挙げた。
こうして夫婦になった2人は大人と12歳の慎ましい新婚生活を開始する。
そこへ突然ハティがやってきた。
身なりもきちんとし、いかにも上品な奥様といった感じである。
隣には紳士風の男と、宿で育てていた赤ん坊もいる。
再婚し、バイオレットのことを気にしていたハティは夫に打ち明けた。
すると夫は学校にいかせてやるから引き取れといってくれたと言う。
母親に会えて幸せそうなバイオレットはやはり12歳の少女だった。
妻だからと制止しているベロックに「一緒に行こう」と言う。
自分よりも母親を欲している彼女に呆然とするベロック。
バイオレットは母と手を繋ぎ行ってしまった。
映画『プリティ・ベビー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『プリティ・ベビー』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
この映画に悲哀は無い
本作品は売春宿を舞台にした物語である。
母親と同じ道を歩むことを当たり前だと感じている少女達の姿をも描いているが、びっくりするほど悲哀が無い。
悔しさや劣等感など一切持ち合わせていないのだ。
それもそのはず、産まれた時からこのような暮らしをしているわけだし、日本の昔によくある女郎小屋での虐めなどもあるわけでもない。
ただ事実として売春を職業として受け入れているのだ。
そういう意味では少女が売春と聞いて一瞬ためらった人でも、見やすい作りとなっているから安心して欲しい。
ルイ・マル監督の手法は見事でどこにも嫌らしさも感じさせないのだ。
今の日本で児童売春を扱った作品など問題になるのが目に見えているが、さすがアメリカ。
作品として芸術性の高いものにしてしまうから見事である。
ラストシーンでの母親を求める少女の姿
本作品で母を執拗に求めるバイオレットの姿は描かれていない。
それどころか淡泊で、家族という物を自分の中で捉えられていないようにさえ感じるほどだ。
それが結婚したにも関わらず、久しぶりに姿を現した母親に思わず嬉しさを隠せず走って近づく。
そして一緒に暮らそうと言った母に疑問を持たず、素直に娘として受け入れるのだ。
このことにベロックは呆然とする。
夫よりも自分を棄てた母親を選ぶとは思っていなかったからだ
結局12歳の少女はどんなに大人に成長させられても子供でアリ、親が必要なのだということを思い知らされる結果になった。
10代のブルック・シールズが演じるヒロイン、ヴァイオレットの存在感に圧倒されました。物語の舞台が娼館という衝撃的な設定で始まり、彼女が「大人の世界」に巻き込まれていく様子が痛々しくも美しく描かれていました。カメラマンのベルとの関係も、愛と依存、逃避の入り混じった複雑な感情がリアルで、単純な恋愛とは違う重みを感じました。美しい映像と残酷な現実が交差する、異色の青春映画だと思います。(30代 男性)
映像がとにかく美しい。ロイ・アンダーソンの撮影によって、1910年代のニューオーリンズの空気が肌で感じられるようでした。一方で、内容は非常に衝撃的。ヴァイオレットが売られる瞬間、彼女自身がそれを理解しきれていない描写がとても切なかったです。ブルック・シールズの無垢な表情が、物語の痛ましさをより際立たせていました。少女の喪失と目覚めを描いた作品として、非常に考えさせられました。(40代 女性)
「美しい」と「不穏」が紙一重の映画。ヴァイオレットという少女が、純粋さと性的な対象の狭間に置かれ、無自覚に周囲を翻弄していく姿が忘れられません。ベルとの関係が“恋”として成立してしまう点には嫌悪感も抱きましたが、それを否定しきれない演出が恐ろしくも巧み。倫理観が試される作品であり、見終えた後に心がざわつきました。(20代 女性)
ストーリーよりも雰囲気と映像美が際立った作品でした。娼館という舞台でありながらも、どこか夢の中のような演出が印象的で、ヴァイオレットの視点で世界が描かれているからこその不思議な距離感がありました。彼女が“子供”でありながら“大人として扱われる”瞬間の不条理さに、胸が締め付けられました。ブルック・シールズの演技は本当にすごい。(30代 男性)
私自身が母親なので、この作品は観ていてかなり辛かったです。特に母親がヴァイオレットを置いて出て行く場面は、親としてどうなんだと強く感じました。でも同時に、当時の女性たちが生きていく厳しさも垣間見えて、単純な非難では片付けられない。少女が大人に“されてしまう”環境の中で、何が守られるべきだったのか。深く考えさせられた作品です。(50代 女性)
まるでアート映画を観ているような気分でした。全体的にストーリーは淡々としているのに、目が離せない。少女が大人になる瞬間をこんなにも生々しく、でも詩的に描けるものかと驚きました。ベルとヴァイオレットの関係には賛否あると思いますが、当時の社会構造と価値観を理解することで、より深く作品に没入できると思います。(40代 男性)
アメリカ映画なのにどこかヨーロッパ映画のようなムードが漂っていて、とても引き込まれました。娼館の中にある奇妙な“日常”と、子どもが自然にその一部になっている異様さにゾッとしました。ブルック・シールズがただ可愛いだけでなく、無垢でありながらどこか達観したような演技をしていて、本当に見事。ラストは胸が締め付けられるようでした。(20代 男性)
とても物議を醸す内容だと思いますが、それこそがこの映画の価値だと思います。少女の性的搾取というテーマを、センセーショナルにではなく詩的な映像で描いている点がとても印象的でした。娼館のセットや衣装もリアルで、歴史映画としての側面もあるように感じます。観る人の価値観によって大きく受け取り方が変わる映画です。(30代 女性)
10代の頃に一度観て、その時はただ不思議な映画だとしか思わなかったのですが、大人になって改めて観ると、恐ろしいほどに鋭いテーマを孕んでいたことに気づかされました。少女の自由と喪失、そして恋と支配の境界。ベルとの関係は一見美しく見えるけれど、それが決して正当化されてはいけないことを、静かに突きつけてくる映画です。(40代 女性)
エログロや露悪に頼らず、ここまでセンシティブなテーマを描ききったことに驚きました。少女が少女でいられない環境、そして“愛”が何をもたらすのか。ベルとの関係に希望を見出すヴァイオレットが痛々しくて、何度も目を背けたくなりましたが、それでも最後まで観てよかった。観る覚悟が求められる映画ですが、観るべき映画だと思います。(50代 男性)
映画『プリティ・ベビー』を見た人におすすめの映画5選
ローリー・ローズ(Lilya 4-ever)
この映画を一言で表すと?
少女の希望が絶望に変わる、衝撃の北欧社会派ドラマ。
どんな話?
母に捨てられ、貧困の中で生きる14歳の少女リリヤが、恋と希望を抱いて新天地へと向かうが、待っていたのは人身売買という残酷な現実だった――。社会の闇に巻き込まれていく少女の運命を描いた切ない物語。
ここがおすすめ!
子どもが大人の都合に振り回される悲劇を正面から描いた傑作。『プリティ・ベビー』と同様、少女の目線で世界の過酷さを見せつけられます。リリヤの無垢さが、観る者の心を強く揺さぶる一作です。
ブルーバレンタイン(Blue Valentine)
この映画を一言で表すと?
愛の始まりと終わりを切り取った、痛くて美しい恋愛の記録。
どんな話?
若いカップルが出会い、惹かれ合い、そして愛がすり減っていく様子を、過去と現在を交互に描くことで浮かび上がらせる。ロマンチックな思い出と、冷め切った現実のギャップが残酷なほどリアルな作品。
ここがおすすめ!
大人の視点から“愛の変質”を描いた作品ながら、若さゆえの脆さや期待の危うさも丁寧に表現。『プリティ・ベビー』のような“成熟と無垢の狭間”にある登場人物の心情に共鳴した人におすすめの一作です。
白いリボン(Das weiße Band)
この映画を一言で表すと?
美しい村の中で蠢く、純粋さと残酷さの境界線。
どんな話?
第一次大戦前夜のドイツの村で、不気味な事件が次々と起こる。敬虔な教育を受けた子どもたちの心に潜む暴力性と無言の支配が、やがて社会の歪みを浮かび上がらせていくモノクロ映像のミステリードラマ。
ここがおすすめ!
美しい映像と冷たい空気感の中で進むストーリーは、観る者に不安と問いを残します。『プリティ・ベビー』が描いた“純粋さの搾取”と同様、子どもたちが社会の構造に押しつぶされていく怖さを体感できます。
イノセント(Innocence)
この映画を一言で表すと?
少女たちの閉ざされた楽園に漂う、美と不安の静謐なハーモニー。
どんな話?
森の奥の寄宿学校に集められた少女たちが、外の世界を知らずに過ごす日々。その静けさの中に少しずつ忍び寄る違和感。無垢な存在が“女性”へと変わっていく儀式のような日常を、詩的に描いたフランス映画。
ここがおすすめ!
象徴的な演出と音楽、美しい映像美が際立つ作品。『プリティ・ベビー』に通じる“少女の目覚め”というテーマを、より抽象的かつ神秘的に描いており、芸術性の高い作品を求める人にぴったりです。
レオン(Léon: The Professional)
この映画を一言で表すと?
孤独な少女と殺し屋が紡ぐ、純粋すぎる“疑似家族”の物語。
どんな話?
家族を皆殺しにされた12歳の少女マチルダが、寡黙な殺し屋レオンと共に暮らすようになり、復讐と愛の中で揺れ動いていく。大人と子どもの危うい関係性と、守られるべき純粋さが物語の核心に。
ここがおすすめ!
ナタリー・ポートマンのデビュー作としても有名。『プリティ・ベビー』のように、少女の無垢さが大人の世界に踏み込んでいく様が切なくも魅力的。愛と倫理の境界を問う名作として、ぜひ一度観てほしい作品です。
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