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映画『落下の王国』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『落下の王国』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『落下の王国』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『落下の王国』の結末までのストーリー
  • 『落下の王国』を見た感想・レビュー
  • 『落下の王国』を見た人におすすめの映画5選

映画『落下の王国』の作品情報

落下の王国

製作年:2006年
上映時間:118分
ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ
監督:ターセム
キャスト:リー・ペイス、カティンカ・ウンタルー、ジャスティン・ワデル、ダニエル・カルタジローン etc

映画『落下の王国』の登場人物(キャスト)

ロイ・ウォーカー / 黒山賊 / 青山賊(リー・ペイス)
スタントマンをしていたが撮影中の事故により怪我を負い、半身不随になってしまう。恋人も取られてしまい人生に自棄になり自殺を考えるように。そんな時、偶然病室で出会うことになった少女・アレクサンドリアに動けない自分に代わって自殺用の薬を運ばせようと考えつく。そこで彼女と仲良くなるために作り話の物語を聞かせ、続きが気になるならまた病室に来るようにとそそのかす。

ロイの作る物語の中では、主人公でもある仮面の男・黒山賊として登場する。双子の弟、青山賊と共に悪の総督・オウディアスに処刑にされかけていたところ逃亡を図る。別々に行動をしたが、双子の弟は再び捕らえられてしまった。いつしか、自身の情緒と物語の流れが交錯するようになってゆく。

アレクサンドリア / 山賊の娘(カティンカ・アンタルー)
オレンジの収穫中に足を滑らせてしまい、腕を骨折した少女。ルーマニア人。純粋無垢な性格で、想像力豊か。ロイの他愛のない作り話も、彼女の目を通じ美しくも壮大な物語として再現される。彼女の思い描く物語の人物たちの姿は皆、実際に病院に訪れる人々に置き換えられている。

物語の中では、主人公である黒山賊の娘として登場し、重要な役割を果たす。

シンクレア / 総督オウディアス(ダニエル・カルタジローン)
ロイから恋人を奪い、更には映画の主役まで務めることになった俳優。

物語の中では悪役・オウディアスとして登場する。悪辣非道な総督で、彼を倒しに行くために立ち上がった6人の勇者たちの叙事詩がロイの口から語られる。

片足の俳優 / ルイジ(ロビン・スミス)
事故で片脚をなくした、ロイの俳優仲間。悲観に暮れる彼を励ます。

物語の中では爆弾の専門家、ルイジとして登場する。彼の作る爆弾に恐れを抱いたオウディアスは、街の者に彼と話すだけで処刑にすると脅し彼を孤独にさせた。

氷配達人 / オッタ・ベンガ(マーカス・ウェズリー)
氷を配達している黒人男性。気さくで、氷を舐めるアレクサンドリアにも笑って対応する。

物語の中ではオッタ・ベンガという名で登場。奴隷として総督オウディアスに労働を強いられていたが、そのせいで弟を亡くす。弓を武器に扱う屈強な戦士。

オレンジ農園の使用人 / インド人(ジートゥー・ヴァーマ)
アレクサンドリアの果樹園に働いている男性。

物語中は、インド人という設定(ちなみにこれが名前でもある)のキャラクター。緊張すると眉に触る癖がある。美しい妻がいたが、オウディアスによって攫われた末、迷宮に幽閉される。迷宮から抜け出すために彼女は自殺してしまい、オウディアスへ復讐を誓った。

病院職員 / チャールズ・ダーウィン(レオ・ビル)
その名の通り病院内にいる職員だが、こちらの世界ではあまり大きく出てこない。

ロイの物語の中ではかなり目立つキャラクターに。動物も植物も愛する生物学者。相棒の猿、ウォレスと共に珍しい蝶を探していたが、オウディアスから蝶の死骸を送りつけられて嘆き悲しむ。

オレンジ摘みの老人 / 霊者(ミスティック)(ジュリアン・ブリーチ)
ロイと同じ病室で入院している老人。入れ歯をしている。穏やかで陽気な性格。

物語の中では、木の中から現れた異国の言葉を話す聖なる部族。住んでいた島をオウディアスに焼き払われたことから、黒山賊たちに力を貸すことを誓う。

エヴリン / 姫(ジャスティン・ワデル)
アレクサンドリアと仲のいい、心優しき看護師。

物語の中での立ち位置は異国情緒漂う美しい姫。黒山賊と恋仲になる。

映画『落下の王国』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『落下の王国』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『落下の王国』のあらすじ【起】

スタントシーンで落馬して怪我をし、半身不随となり動けなくなってしまったスタントマンの青年ロイ。恋人を奪われ、彼は人生に絶望していた。そんな中、偶然彼の病室に落ちてきた手紙をきっかけにして、アレクサンドリアという少女と出会う。オレンジの収穫中に落下し腕を骨折してしまったのだという。奇しくも、同じ落下が原因で入院をした二人。やがて、家族の写真が入った宝箱を見せてくるアレクサンドリア。

「これは私の馬。そしてこれは私のお父さん」
「本当だ。お父さんも前歯に隙間があるね、遺伝かな」
「うん。それでこれがあたしの家……だった。なくなっちゃったけど」
「どうして?」
「怒った人たちに焼かれたの」

他愛もない会話を重ねるうちに、アレクサンドリアの名前の由来がアレクサンダー王からだと知ったロイはアレクサンダー王に関する逸話を話す。聞き入るアレクサンドリア。話し終えてからロイは「明日はまた別の話をしてあげる。愛と復讐の物語で、叙事詩だ」と言うとアレクサンドリアは嬉しそうに微笑む。翌日、氷配達人の氷を舐めて叱られながらも約束通りロイの元へと向かうアレクサンドリア。彼の元には、片脚の俳優仲間が訪れており彼を励ましている。「シンクレアは今主役を務めているぞ。お前も自棄になるな、片脚でも演じられる役なんてある。俺は片脚になったお陰で無法者に足をぶった切られる役や、脚を轢かれる役、却って仕事が増えたくらいさ」――シンクレアとはロイの俳優時代の仲間で、今やロイに代わり売れっ子の俳優になっている。ちなみに、彼がロイの恋人を奪ったのだ。片脚の俳優が去った後で、再びロイの部屋にやってくるアレクサンドリア。彼が何故片方しか脚がないのか尋ねる彼女に、映画の事故が原因だと話すロイ。しかし彼女は映画を観たことがなく、存在そのものさえ知らなかった。半ば自棄気味のロイは「見なくてもいい」とかつては自分がいたその世界を否定する。それからアレクサンドリアは、昨日約束したように愛と復讐の叙事詩を聞かせてとせがむ。目を閉じるように、と言うロイ。言われた通りに彼女は目を閉じて、その物語への空想を膨らまし始める。

「目をこすってごらん。星が見えないか?」

ロイの物語が語り始められる。――とある島、星の綺麗な夜。4人の男が小さな島で待ち続けていた。波の穏やかな静かな海だが、その穏やかさは見せかけだ。1人のインド人が島に向かって、海の中を泳いでいる。インド人は、島で待っていた男のうちの1人・ルイジに向かって報告する。ルイジはその報告に驚きつつ、背を向けて座ったままでいる男に言った――「総督オウディアスが、明日の朝お前の双子の弟を処刑するつもりだ」。ここに集まった5人の男たちは皆、諸悪の根源である総督オウディアスに恨みを持つ者ばかりだった。元奴隷のオッタ・ベンガ、妻を殺されたインド人、爆発物の専門家ルイジ、生物学者のダーウィン、仮面の男・黒山賊。オウディアスは5人の男らを孤島へ追いやり、殺し合わせようとしたが彼らは島からの脱出を試みる。ダーウィンの案で、像に乗って海を渡ることにした5人。無事、島を抜け出すことに成功したがその先には不思議な大木があった。突如爆発した木の中から姿を現したのは、聖なる部族の1人だという怪しげな霊者の男。全身真っ黒な肌をした男は、聞き慣れない言語を話し、ダーウィンが通訳する。彼もまた、オウディアスにより森を焼き払われたことで恨みを持つ者なのだという。旅に加わろうとする霊者の受け入れを断り、一同は青山賊を救いにオウディアスの砦へと向かう。オウディアスの手下たちとの決戦を潜り抜けた先では、先ほど同行を断られた霊者がその力を使い手下たちを大量に倒していた。非礼を詫び、彼を戦士だと認め仲間に加える黒山賊。6人の勇者が揃ったところでロイは話を中断する。

「ちょっと待って。少しここでテストをしよう」
「駄目、話を続けて」
「簡単なゲームだよ。僕の爪先に触ってみて。どの指に触っているか僕が当てるから」

中指に触るアレクサンドリアに、親指を触っているか尋ねるロイ。答えは違っていたが、話の続きが気になるあまり親指に触り「合っている」と微笑むアレクサンドリア。疑いつつ話しの続きを始めるロイ。物語の続きでは、黒山賊たちが到着した頃には時はもう既に遅く、そこにオウディアスの姿はなく代わりに双子の弟とその仲間は拷問の末に殺害されていた。

そこへ怒鳴りながら入ってくる同室の患者。ここは遊び場じゃないんだぞ、と叱り飛ばしアレクサンドリアは追い出されてしまう。

映画『落下の王国』のあらすじ【承】

再びロイの元にやってくるアレクサンドリア。2人は他愛もない会話をしながら、互いに心の距離を近づけていく。話の続きを求めるアレクサンドリアに「本館に薬のある部屋があるのを知っているか?」と尋ねるロイ。頷くアレクサンドリア。それを確認した後、ロイは再び物語を始める。

弟を殺され、復讐を誓う黒山賊。オウディアスをこの世から必ず消し去ると。改めてオウディアスを探し旅立つ一同だが、ダーウィンの地図が虫に食べられてしまい道に迷う。すると霊者が自分たちの仲間がいる元へと来いと言い、それに従う黒海賊たち。霊者の仲間たちは彼らが来るなり呪文のようなものを唱え始め、すると霊者の身体に地図が浮かび上がる。書き留めた地図を頼りに旅を再開する一同だったが、道中でオウディアスの奴隷たちの群れと出会う。彼らを助けようと馬を走らせる黒海賊たち……と、ここで再び話が中断する。アレクサンドリアに英語が読めるか問いかけるロイ。話を止められて不機嫌そうなアレクサンドリアだが、差し出された紙に書かれたアルファベットを何とか読み上げる。そこに書かれていたのは、『モルヒネ』の文字であった。寝不足で話が思い出せないから、その文字が書かれた瓶を本館から持ってきてほしいと頼むロイ。その薬が何かを知らないアレクサンドリアは、話の続きが気になるあまり仕方なくそれを受ける。看護師エヴリンの目を盗み、調剤室に侵入するアレクサンドリア。瓶を持ってきたはいいが、ちょっとした勘違いから致死量に満たないたった3粒しかそこには入っていない。愕然としながらも、話の続きを始めるロイ。

6人の勇者たちは奴隷を助けるために奮闘し、奴隷たちの引いていた人車を囲む。武器を向けながら中にいるのであろうオウディアスに向かって叫びかけるが、姿を見せたのはダーウィン曰く「まるで蝶のような」美しい姫君だった。姫に一目ぼれした黒山賊は彼女を自分の女にすると言うなり攫ってしまう。一旦、隠れ家に戻ることとなり、黒山賊と姫は仲を深めていく。

一方、アレクサンドリアはもうすぐでギプスが外れ退院できそうなのだという。黒海賊の絵をロイにプレゼントしながら、「怪我、治らなければいいな。そしたらロイとずっと一緒にいられるのに」と呟くアレクサンドリア。ロイはそんな彼女に、もう一度薬を持ってくるよう頼む。薬は同室の患者の棚の中にあるらしい。退院したら話の続きが聞けなくなると、素直にそれに従い薬を持ってくるアレクサンドリア。ロイは大量の睡眠薬が入った瓶を受け取り、その中身を飲みながら話を続けた。僕が眠ったら帰るんだぞ、明日はもう来ちゃいけないと言い聞かせながら。

映画『落下の王国』のあらすじ【転】

物語の中では、黒山賊と姫が恋に落ち結婚することとなる。しかし、式を取り仕切っていた司祭の裏切りによりオウディアスの部下に捕らえられる一同。砂漠の真ん中で拘束され、処刑されそうになる黒海賊たち。アレクサンドリアが「彼らは助かるの?」と問いかけると、ロイは「いや。救える者は誰もいなかった」と答える。薬を飲んで死を迎える筈だったロイの物語だが、事態は急転する。荷物の袋から1人の少女が飛び出してきて、仲間達の手を縛っていたロープを解いて仲間達を救う。それはアレクサンドリアと同じ姿をした少女だった。彼女は黒山賊の娘――「あたしよパパ。まだ眠っちゃ駄目!」。現実のアレクサンドリアが結末を変えたのだった。そこで、先に飲んだ睡眠薬が効いてきたのか意識を失うロイ。

しかし、彼が飲んだのは睡眠薬ではなく単なる砂糖だった。まだ生きている自分に、やり場のない怒りの声を上げ暴れるロイ。そんな彼を見て、元気づけようとして、皆が寝静まった頃に調剤室へ忍び込むアレクサンドリア。モルヒネの瓶を掴もうと手を伸ばすが、転倒し床に落下してしまう。

「パパ、怒った人たちがおうちを焼いている。うちの馬が盗まれる。パパ、行っちゃ駄目。怒った人たちに殺される」

馬を取り返そうとして盗賊を追いかけるアレクサンドリアの父の姿と、馬から落ち怪我をするロイの姿が交差する。ベッドの上で目を覚ますアレクサンドリア、「また落ちちゃった」と笑う彼女の傍で弱々しく笑うロイ。続きを話して、と頼むアレクサンドリアに泣きながら「別の人に頼め。僕の話はハッピーエンドじゃない」と自らの行為を謝り後悔する。それでも話が聞きたいと言うアレクサンドリアに、ロイはいよいよ結末を語り始めることにする。

映画『落下の王国』の結末・ラスト(ネタバレ)

愛する姫にも遂に裏切られた黒海賊。彼女はオウディアスの婚約者で、金も地位もある彼の元へと戻っていったのだ。そんな彼女に見切りをつけ、いよいよオウディアスとの最後の対決へ向かう一同。オウディアスの砦に着いた矢先に、ダーウィンの相棒の猿・ウォレスが突如、蝶を見つけて追いかけ始める。呼び戻そうとするダーウィンだったが、ウォレスは蝶を捕まえた矢先にオウディアスの配下に狙撃され命を落とす。ウォレスの手には、ダーウィンが探し求めていた珍しい蝶が握られていた。ウォレスの遺体を手に泣き叫ぶダーウィン。集まってきた配下達の前に立ち塞がりながら、「ウォレスを失ったら俺はもうお終いだ。さあ、俺を撃つがいい」と絶望し自ら死を選ぶ。それでもオウディアスの元へと向かう仲間たちだが、次はルイジが足を撃たれ皆に先に行くように目線で合図する。片脚を引きずりながら、オウディアスの配下たちをおびき寄せ自ら囮になるルイジ。武器である爆薬を使い、彼は自爆してしまう。次々失われていく仲間達に、アレクサンドリアは「こんなの嫌。私、こんな話嫌い」とロイに訴える。ロイは泣きながら答える。「ダーウィンもウォレスも幸せな死に方だ。ルイジは現実にもう耐えられなかったのさ、悔しいよな」。次に物語の中で犠牲になったのは霊者だった。配下に捕まり蹴り飛ばされ、屈辱的な目に合わされ続ける霊者。彼を助けるために、アレクサンドリアもとい黒海賊の娘は飛び出していく。そんな彼女を庇い、弓矢に撃たれ犠牲になるオッタ・ベンガ。ごめんなさい、と謝り続ける黒海賊の娘に「いいんだよ」と微笑みかけ息を引き取るオッタ・ベンガ。残された黒海賊とその娘、そしてインド人はロープを使い砦へと上がっていく。追いついてきた配下たちを二人から遠ざけるため、昇っていたロープごと切断しインド人もまた自らの命と引き換えに仲間を守ったのであった。現実世界のアレクサンドリアが訴える、「何でみんな死んじゃうの?何でみんなを殺しちゃうの?」。ロイは自棄になったよう「これが僕の話なんだ」と答えるが、アレクサンドリアはそれを否定する、「いいえ。2人の話よ」。……ロイの話は、続けられていく。いよいよオウディアスの元へと辿り着いた黒山賊だが、オウディアスに不意打ちを食らわされ池の底へと無情にも沈んでいく――「彼は泳ごうともしない。水の中で死にかけているだけさ」。黒山賊はオウディアスに殴られ、何て情けない野郎だと罵られる。戦いではなく一方的な嬲り殺しのような状態でしかなかった。黒山賊の娘がそれを見つめながら叫ぶ、「立って!お願い戦って!」。娘の声を聞きながらも立ち上がろうともしない黒山賊。オウディアスはそんな彼を執拗に殴り続け、「このザマを見ろ。ろくでなしの薬物中毒者だ!」と罵り続けた。現実のロイは、自らの実情と物語を重ねアレクサンドリアの前で泣き崩れる。

「彼は勝てないんだ。仮面の黒山賊は、臆病者なんだ」
「違う。お願い、生きさせて。ロイに死んでほしくない!」

アレクサンドリアの願いはやがて、「物語の中の黒山賊」ではなく現実のロイに生きて欲しいと形を変える。「もう乱暴はいいの。娘の所へ行ってあげるだけでいい、安心させてあげて……」――アレクサンドリアの一縷の思いが、何もかもを諦めかけていたロイにほんの少しだけ希望をもたらしたのか。物語の中では、水の中で何もせず溺れかけていた筈の黒山賊。しかし、その脚で起き上がり、オウディアスを突き飛ばした。そして、自らの意志で、それからその足で、娘の元へと向かった。彼女を抱き上げ、頬にキスする黒山賊。少女の祈りが、絶望的だった筈の物語をほんの少しだけ幸福な結末をもたらした。

語り終えたことで、自分自身が救われたことを知ったロイ。病院内では、彼がスタントした作品の映画の試写会が行われている。コメディ映画なのか、微笑みが時々響き渡る。アレクサンドリアは勿論のこと、ロイもまたその作品を見て微笑んでいた。

その後、退院して母や妹たちと果樹園へと戻り作業を手伝うアレクサンドリア。それまで映画というものを知らなかったという彼女は語る。

「私は映画が大好きになった。だって、その後見たすべての映画にロイがいた。落っこちたりぶつかったり登ったり、ハシゴに登ったり落ちたり……」

きっともうロイは、いくら「落ちても」大丈夫な強さを身につけたのだ。ロイの復帰を喜ぶアレクサンドリアは嬉しそうに言う。

「ありがとう、ありがとう、ありがとう!」

映画『落下の王国』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

この映画から感じるのは救済、復活、再生といった言葉たち。アレクサンドリアは決して美少女とは言えない容姿だけど、とても愛くるしくて彼女の無垢さに説得力が出て正解だと思う。ターセム監督の映像美も鮮やかでおとぎ話の世界を綺麗に映し出しているし、豪華絢爛な衣装も独特で目を惹く。私自身、色々とあり落ち込んでいた時に見てロイと共に救済された作品。最後の台詞のように「ありがとう、ありがとう、ありがとう」と言いたくなる。(MIHOシネマ編集部)


幻想的な映像に魅了されつつも、物語の重さに胸が締めつけられた。特にロイがアレクサンドリアを利用しようとする場面は痛々しいが、それが彼の絶望の深さを物語っている。やがて少女の優しさがロイの心を溶かし、物語と現実が溶け合うように希望が見えてくる。ファンタジーの中に人間の弱さと再生を描いた稀有な作品。タルセム・シン監督の映像詩に酔いしれた。(30代 女性)


映像作品としての完成度が圧倒的。世界各地の壮麗なロケーションを使ったシーンはまさにアートそのものだった。しかし、単なる美しい幻想では終わらない。ロイの「死にたい」という願いと、少女の「生きてほしい」という祈りが交錯し、視覚と感情が一体化していく。エンディングで少女がロイを「ヒーロー」として見つめる瞬間、涙が溢れた。(40代 男性)


少女アレクサンドリアの視点で描かれる物語がとにかく切ない。彼女にとってロイの作る物語は世界そのものだった。その世界が崩れ始めるときの絶望感は、自分の子供時代の「信じていたものが壊れる瞬間」を思い出させた。現実と空想の融合が見事で、観る者の心を揺さぶる。まるで絵本のようでいて、残酷な現実を突きつける大人の寓話だった。(20代 女性)


映画史に残る映像美といって過言ではない。青、赤、金といった色彩の使い方が象徴的で、観るたびに新たな発見がある。物語の核心は「絶望の中で見つける希望」。ロイが自分の物語を壊しながらも、最後に少女のために生きる選択をする姿に救われる。映像詩としてもヒューマンドラマとしても完成度が高い。(50代 男性)


幻想的な冒険譚が徐々に現実の苦しみと重なっていく展開に圧倒された。アレクサンドリアの想像力が、ロイの心を映す鏡になっている構造が美しい。少女の純粋な愛情がロイの「生きる理由」へと変わる瞬間は胸を打った。悲しみの中に光を見つける物語として、何度でも観たくなる。(30代 女性)


ロイとアレクサンドリアの関係が父娘のようであり、時に恋人のようにも見える。その曖昧な距離感が物語に深みを与えていた。ロイの語るファンタジーは彼の心の断片であり、少女の涙によって再構築される現実が感動的。タルセム監督の感性が存分に発揮された傑作だと感じた。(40代 女性)


「生きる意味」を問う作品。ロイがアレクサンドリアに物語を語る行為そのものが、彼の生への執着を取り戻す過程だったと感じる。彼の作り話が破綻していくほど、現実の彼が癒やされていくという逆説が美しい。映像の美しさに頼らず、感情のリアリティで勝負している点が素晴らしい。(30代 男性)


初めて観たときは映像美に圧倒され、二度目でようやく物語の深さに気づいた。ロイの絶望とアレクサンドリアの希望という対比が鮮やかで、どちらも観客の心を掴んで離さない。最後にロイが彼女に「生きて」と願う姿が、静かな救済として心に残る。芸術作品としての完成度が高い。(50代 女性)


「落下」とは絶望ではなく、再生への始まりだと気づかせてくれる映画。ロイが語る壮大な物語の中で、アレクサンドリアが「彼を救う存在」になる瞬間が尊い。幻想と現実が溶け合い、観る者の感情も共に落下していく。最後に映るロイの微笑みがすべてを物語っていた。人生の一部になるような映画だった。(20代 男性)

映画『落下の王国』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『落下の王国』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

パンズ・ラビリンス

この映画を一言で表すと?

美しさと残酷さが同居する、少女の幻想と現実が交錯するダーク・ファンタジー。

どんな話?

1944年のスペイン内戦下、暴力的な義父のもとで暮らす少女オフェリアは、不思議な迷宮に導かれ、神秘的な生き物たちと出会う。現実世界の残酷さと、幻想世界の美しさが交錯する中で、少女は自分の運命を選び取ろうとする。幻想が現実を救う物語。

ここがおすすめ!

ギレルモ・デル・トロ監督による圧倒的な美術と象徴表現が魅力。『落下の王国』同様、少女の視点で描かれる現実と空想の融合が心を打つ。幻想の中に潜む痛みと希望のコントラストが見事で、大人が観ても深い余韻を残す名作。

ミラーズ・クロッシング

この映画を一言で表すと?

美しい映像と人間の裏切りが交錯する、冷徹で詩的なギャング映画。

どんな話?

禁酒法時代のアメリカを舞台に、2つのギャング組織の間で揺れる男・トムの運命を描く。彼の冷静な頭脳と孤独な信念が、暴力と裏切りに満ちた世界の中で試されていく。見た目の華麗さとは裏腹に、人間の欲と哀しみが静かに滲み出る。

ここがおすすめ!

コーエン兄弟ならではの美学が光る。『落下の王国』のように、映像美と人間ドラマが一体化しており、一枚の絵画のような美しさを持つ。冷たくも詩的な映像表現の中に、人間の矛盾と孤独が深く刻まれている。

ヒーロー(HERO)

この映画を一言で表すと?

美しすぎる映像の中で繰り広げられる、愛と信念の中国歴史アクション。

どんな話?

紀元前の中国。暗殺者「無名」は、秦の始皇帝の命を狙うために宮殿へ向かうが、彼の語る過去の真実には大きな秘密が隠されていた。鮮烈な色彩と詩のような映像で、愛と忠義、戦いと平和の意味を問う壮大な物語が展開する。

ここがおすすめ!

チャン・イーモウ監督の色彩感覚が圧巻。赤・青・白などの色が象徴的に使われ、まるで『落下の王国』のように一場面ごとが絵画のよう。美しさの中に宿る悲劇と愛の表現が胸を打つ。映像芸術としても、人間ドラマとしても一級品。

ツリー・オブ・ライフ

この映画を一言で表すと?

宇宙と人生をつなぐ、映像による祈りのような叙事詩。

どんな話?

1950年代のアメリカ。父母と三人の兄弟が暮らす一家の長男ジャックは、成長する中で「生の意味」と「神の存在」に葛藤する。映画は彼の記憶と宇宙の誕生を交錯させながら、人間の魂の軌跡を詩的に描く。

ここがおすすめ!

テレンス・マリック監督の哲学的世界観が存分に堪能できる。『落下の王国』と同様、言葉ではなく“映像そのもの”で感情を語る映画。圧倒的な映像と音楽が観る者の心に静かな衝撃を残す。観るたびに人生の意味が変わる体験ができる。

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

この映画を一言で表すと?

現実と幻想のはざまで、生きる意味を問うサバイバル・ファンタジー。

どんな話?

海難事故に遭った少年パイは、ベンガルトラのリチャード・パーカーと共に救命ボートで漂流する。過酷な状況の中で、彼は生きるために、そして信じるために幻想と現実を行き来する。真実とは何か、生きるとは何かを問う物語。

ここがおすすめ!

アン・リー監督の巧みな演出が光る。『落下の王国』のように、現実と幻想の境界を行き来する映像表現が魅力。CGを駆使した海と空の描写は美しく、精神的な旅を体験しているような没入感を味わえる。信仰と希望の物語としても深く心に響く。

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この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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