映画『ロード・トゥ・パーディション』の概要:マフィア仲間に最愛の妻と息子を殺された殺し屋は、生き残った息子を守りながら、そのマフィアへの復讐を果たす。非情なマフィアの抗争と、その中で深まっていく親子の情愛が並行して描かれており、見応えのあるヒューマンドラマになっている。
映画『ロード・トゥ・パーディション』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:フィルムノワール、ヒューマンドラマ、アクション
監督:サム・メンデス
キャスト:トム・ハンクス、ポール・ニューマン、タイラー・ホークリン、ジュード・ロウ etc
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映画『ロード・トゥ・パーディション』の登場人物(キャスト)
- マイケル・サリヴァン(トム・ハンクス)
- マフィアのジョン・ルーニーの側近を務める凄腕の殺し屋。冷酷な殺し屋だが、妻と2人の息子を心から愛しており、息子には自分と同じ道を歩ませたくないと思っている。
- マイケル・サリヴァン・Jr(タイラー・ホークリン)
- 12歳になるサリヴァンの長男。父親は、自分よりも弟のピーターを愛しているのではないかと思っている。父の仕事の詳細は全く知らない。
- ジョン・ルーニー(ポール・ニューマン)
- 街を牛耳るアイルランド系マフィアのボス。孤児だったサリヴァンを息子同然に育ててくれた。サリヴァンを忠実な部下としても信頼している。息子のコナーには手を焼いている。
- コナー・ルーニー(ダニエル・クレイグ)
- ルーニーのバカ息子。父親の威光で特別扱いされているが、マフィアとしても人間としても低俗な厄介者。
- マグワイア(ジュード・ロウ)
- サリヴァン暗殺を依頼された殺し屋。フリーのカメラマンを装い、自分が殺した人間の死体写真を収集している異常性格者。
映画『ロード・トゥ・パーディション』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ロード・トゥ・パーディション』のあらすじ【起】
1931年の冬。12歳になるマイケルは、両親と弟のピーターと幸せに暮らしていた。母のアニーは平凡な専業主婦だったが、父の仕事はよく知らない。サリヴァンはどこか冷たい雰囲気があり、マイケルは父に愛されていないのではないかと不安を感じていた。
ある晩、サリヴァン一家は、ジョン・ルーニーの自宅で行われたダニーという男の通夜に出席する。ルーニーはこの街を牛耳るマフィアのボスだったが、マイケルとピーターにとっては、優しい祖父のような存在だった。ルーニーは、コナーというひとり息子と、広い屋敷で暮らしていた。
ダニーの兄のフィンは、弔辞でルーニーへの恨み言を言い始める。フィンはサリヴァンたちに囲まれ、会場から出される。マイケルは薄々、父には何か秘密があると感じていた。
翌日の夜。サリヴァンは急な仕事が入ったからと、音楽会の予定をキャンセルする。マイケルは密かに父の車の後部座席の下に隠れ、父がどこへ行くのかを確かめる。サリヴァンは途中でコナーを拾い、倉庫へ向かう。倉庫にはフィンがいて、“弟は帳簿をごまかしていない、俺は真実を知っている”とコナーに訴える。コナーはフィンの話を遮るように、彼をいきなり撃ち殺す。見張りをしていたサリヴァンも、仕方なくマシンガンをぶっ放す。
その一部始終を見てしまったマイケルは、逃げようとして父に見つかってしまう。マイケルがいたことはコナーにも知られてしまい、マイケルは父から“このことは誰にも言うな”と口止めされる。マイケルは、ルーニーや父の本性を知り、強いショックを受ける。
翌朝、自宅を訪れたルーニーに、マイケルは“秘密を漏らすなよ”とダメ出しされる。マイケルは、両親にもルーニーにも反抗的な態度を取ってしまう。
勝手にフィンを殺したコナーは、幹部会議でルーニーから厳しく叱られる。マイケルは学校で友達と掴み合いの大喧嘩をし、遅くまで罰を受ける。
映画『ロード・トゥ・パーディション』のあらすじ【承】
暗くなって帰宅したマイケルは、コナーが家から出てくるのを目撃する。母と弟は、2階の浴室で殺されていた。
サリヴァンは、ルーニーに借金のあるトニーという売春宿の経営者に、ルーニーからの伝言を渡すようコナーに頼まれる。トニーはサリヴァンを警戒し、本の下に銃を隠していた。伝言を読んだトニーは顔色を変え、銃に手を伸ばす。サリヴァンは直前にそれを察知し、銃を奪ってトニーとボディガードを撃ち殺す。コニーに渡された伝言には“サリヴァンを殺れ、貸しはチャラに”と書かれていた。これはコニーが仕組んだ罠だと察したサリヴァンは、急いで自宅へ帰る。
家に帰ると、暗いキッチンでマイケルが呆然としていた。サリヴァンはすぐに2階へ行き、悲痛な叫び声をあげる。
コナーがサリヴァンの家族を殺したと知ったルーニーは、怒りに震えていた。しかしルーニーは、泣きながら謝罪する息子を、罰することができない。
サリヴァンはマイケルを連れて家を出て、“もし30分で戻らなければリンチ牧師のところへ行け”と言って、マイケルに銃を渡す。そして自分は、ルーニーの屋敷へ忍び込む。
コナーの部屋にはルーニーの代理人がいて、“アイルランドへ逃げろ”というルーニーの伝言を伝え、サリヴァンに大金を渡そうとする。しかしサリヴァンはコナーの居場所を教えなかった代理人を射殺し、“復讐する”という無言のメッセージを残す。
サリヴァンはシカゴにいるニティという知り合いのボスを訪ねる。サリヴァンは“自分のすることに目をつぶってくれれば、ニティのために働く”と交渉する。しかしすでにルーニーの手が回っており、ニティはその話を断る。孤立無援となったサリヴァンは、自分の力だけでマイケルを守り、コナーに復讐するしかなくなる。
話を聞いたルーニーは、子供は決して殺してはならないと念を押し、サリヴァンの暗殺を許可する。ニティはすぐ、冷酷な殺し屋のマグワイアに、サリヴァン殺しを依頼する。しかしルーニーは、サリヴァンを殺したくはなかった。
映画『ロード・トゥ・パーディション』のあらすじ【転】
サリヴァンは、アニーの姉のサラを頼ることにして、アニーとピーターの葬儀が行われているはずの自宅へ電話する。サラは誰にも悟られないようサリヴァンと話し、すぐに電話を切る。しかし抜け目のないマグワイアは、電話交換手からサリヴァンの居場所を聞き出し、彼らの後を追う。
サラの自宅を目指していたサリヴァンは、途中のレストランで食事をとる。マイケルは食欲がないと言って、車内に残っていた。マグワイアはサリヴァンを発見し、店内に入る。店内では警察官が食事中で、マグワイアは彼が出て行くのを待つことにする。サリヴァンは、マグワイアが殺し屋であることを察知し、店内を脱出して急いで車を走らせる。サリヴァンを取り逃がしたマグワイアは、腹立ち紛れに警察官を射殺してしまう。
母と弟が殺されたのは自分のせいだと思い込んでいたマイケルに、サリヴァンは“お前のせいじゃない”と言ってやり、これからはマイケルの協力が必要だと説明する。
サリヴァンは、マフィアの大物カポネを利用し、コナーに復讐する計画を立てる。サリヴァンはマイケルに車の運転を教え、あちこちの銀行からカポネの金を強奪し、コナーの居場所を聞き出すことにする。マイケルの仕事は、銀行から出てきた父を素早く車に乗せて現場を離れることだった。
この作戦は成功し、サリヴァンはかなりの大金を手にする。ニティは、一刻も早くサリヴァンを見つけるよう、マグワイアを急かす。
サリヴァンは、ルーニーの帳簿係をしているランスを捜していた。マグワイアは、ランスが宿泊中のホテルを見張り、サリヴァンが現れるのを待つ。ランスのいるホテルを突き止めたサリヴァンは、ルームサービスを装って彼の部屋に侵入し、帳簿を出すよう脅す。サリヴァンの姿を確認したマグワイアは、銃を持ってホテルへ入っていく。
サリヴァンとマグワイアはホテルの部屋で壮絶な撃ち合いを繰り広げ、マグワイアは顔面を負傷する。ランスは流れ弾に当たって死んだ。サリヴァンは帳簿一式を奪い、マイケルの運転する車で逃走を図る。しかし車に乗る前に、マグワイアに腕を撃たれる。
映画『ロード・トゥ・パーディション』の結末・ラスト(ネタバレ)
サリヴァンの怪我は重傷で、マイケルは農場の夫婦に助けを求める。夫婦はとても親切な人で、2人を黙って置いてくれる。マイケルは献身的に父の看病を続ける。そのおかげで、サリヴァンは元気を取り戻す。
帳簿類を調べていたサリヴァンは、コナーが死んだフィンの口座を利用し、ルーニーの金を横領していた証拠をつかむ。フィンの言った通り、裏切り者はコナーだった。サリヴァンは、農場の夫婦に大金を残し、マイケルと出発する。
サリヴァンは、教会でルーニーと密かに接触し、2人きりで話す機会を持つ。コナーが裏切り者だと伝えても、ルーニーはやはり息子をかばう。ルーニーは、再びサリヴァンに外国へ逃げるよう忠告する。
サリヴァンは覚悟を決め、マイケルに手紙を残してホテルの部屋を出ていく。サリヴァンは、とある店にいたルーニーを待ち伏せし、複数のボディガードや運転手を皆殺しにして、ルーニーの前に立つ。ルーニーはサリヴァンに“お前でよかった”と告げる。サリヴァンは悲しみに満ちた表情で、ルーニーを撃ち殺す。
ルーニーが死に、コナーは後ろ盾を失う。カポネは“それで全て終わりにしろ”とニティに指示を出しており、ニティはサリヴァンにコナーの居場所を教える。サリヴァンはコナーが隠れていたホテルへ向かい、入浴中のコナーを射殺する。
ひとりぼっちで父の帰りを待っていたマイケルは、帰ってきたサリヴァンに抱きつく。そして親子は、海辺にあるサラの家へ向かう。
マイケルはサラの飼い犬と砂浜で遊び、サリヴァンはサラの家に入る。家の中にサラの姿はなく、室内は閑散としていた。サリヴァンは窓から、マイケルの無邪気な笑顔を見て微笑む。その時、静かな海辺に銃声が鳴り響き、サリヴァンが倒れる。サリヴァンの背後には、あのマグワイアがいた。マグワイアは、冷酷な笑みを浮かべて写真撮影の準備をする。
異変を察したマイケルは、撮影のため丸腰になっていたマグワイアに銃口を向ける。しかしどうしても引き金が引けない。サリヴァンは最後の力を振り絞り、マグワイアを撃ち殺す。サリヴァンは息子に何度も詫びながら、息を引き取る。
その後マイケルはあの農場の夫婦に引き取られ、そこで育つ。マイケルが銃に触れたのはあれが最後で、それは息子を決して自分と同じ道に進ませたくないというサリヴァンの願いでもあった。
映画『ロード・トゥ・パーディション』の感想・評価・レビュー
マフィアのボスのドラ息子に妻子を殺害されてしまうという、序盤から重すぎる展開です。原因はマフィアとしての父の仕事現場を長男が目撃したこと。非常にやるせない気持ちになります。その後、生き残った父子で逃亡の日々を過ごし、長男は父親の仕事をより目の当たりすることになります。父のすべてを見た後、長男の言った”サリヴァンは僕の父だ”は深い言葉になりましたね。ツッコミ所は残りましたが、3種の父子の姿を描いたヒューマンドラマとして心に残る作品になりました。(男性 20代)
シリアスで重い作品で、1度観ただけでは理解できませんでした。複数回観ることをおすすめします。
父親の本当の仕事を知った息子と厳格な父の交流がメインかと思いきや、他の親子の在り方も描かれています。
序盤から母と弟が殺されてしまうので重く切なく、ダニエル・クレイグの高く評価された演技になかなか目が行きません。
ポール・ニューマンは出番がそれほどないものの存在感が大きく、トム・ハンクスの生真面目な父親の演技も素晴らしく、ジュード・ロウは汚れ役でほとんどセリフが無くてもかっこいいです。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
疑問だらけのストーリー展開。①先ず銃を持った二人に親分のフィンが囲まれているのに子分たちが何もしなかった。②次に取立てに行ったマイクを紙切れ一枚で殺したらチャラにしてやると書いたルーニー。後に残る紙でなく電話でその旨指示すれば確実にマイクを殺せたはずだ。③ホテルで襲撃された時マイクは殺し屋を倒した。その時トドメを刺す余裕は十分あったのにどうして刺さなかったのか。まさか突然ヒューマニズムに駆られたなんて馬鹿なことは言わないだろうね。④フィンの殺害現場を見られたマイケルを殺すために家に押し入ったコナーが目的を果たさず立ち去った理由がわからない。私がコナーならマイケルが帰宅するまで待ち伏せをして仕留める。当然復讐を警戒してマイクも殺す。それをしなかったのは何故?⑤憎いのは妻子の仇のコナーだけのはずなのに、大恩あるルーニーまで殺したのは酷すぎる。ルーニーがマイクを殺そうと思えば何度でも殺せるチャンスがあった。教会の地下だってやろうと思えばやれたのに殺さなかった。それなのに最後になって護衛がたくさんいる中で危険をおかして殺した理由がわからない。⑥銃弾を食らって瀕死の男を何も聞かないで手術してくれた老夫婦の気持ちがわからない。普通警察に通報するでしょう。まさかこの老夫婦も裏街道を行くマフィア崩れだとでも?⑦ジュードロウが死に行くマイクの姿を撮影する場面では銃をテーブルの上に置いて丸腰だった。マイクが銃を隠し持っていたのならその時にゆっくりと撃ち殺せたはずだ。どうしてマイケルが銃を構えて入ってくるまで待つ必要があったのか。
とまあ、いくらでもツッコミどころのある杜撰な脚本だったが、トムハンクスといいポールニューマンといい、出演者が魅力的で魅せてくれた。これだけの役者を揃えられるならどんな下手な監督でも面白くなるだろうと思わせる映画だった。できれば別の監督に同じものを撮ってもらいたい。きっとものすごく面白い作品ができるだろう。
マフィアものを楽しむコツは、人物をどう描いているのかにあると思う。今回は2人の悪役に注目してみたい。まずは、ボスの息子コナーを演じたダニエル・クレイグ。葬式のシーンでヘラヘラしていたかと思うと、次の話し合いのシーンではすぐ切れて相手を殺してしまう。
ボスである、父親ジョン・ルーニーの庇護がなければ生きてゆけないのに!ダニエル・クレイグが、そんなバカ息子を繊細に演じています。ボスである父親に怒られるシーンもいい。サム・メンデス監督は家族について描くのが好きだ。マフィアであれ、普通の家族であれ感情や行動は変わらない。
その振り幅に暴力が加わっただけだ。息子と父親の関係がシーソーのように揺れています。もしかしたらボスも自分の息子をマフィアにしたくなかったのかもしれない。息子コナーの姿には、自らの存在を笑うようなアイロニーがあります。
ジュード・ロウは一見、人が良さそうに見せながら、奥底にある欲望がある日湧き上がってくる様子を表現するのが上手い。殺し屋はそうやって日常に潜んでいるのだ。執拗にマイクとマイケル親子を追う姿はまるでターミネーター2のように恐ろしい。
死体の写真を撮るといっても、徐々に殺しながらその様子を記録してゆく。こんなに詳細な記録があるのに逮捕されないなんておかしいのだが。旅の途中のダイナーで夕食を食べるマイクと出会うシーン。観ている人は殺し屋だと分かっているからハラハラするのだが、マイクの逃げ方が見事だった。
史上最強のマフィアと殺し屋の対決が観られると思う。2人の悪役なしでは本作はつまらない!
マフィア物とはいえ、展開が変な映画です。悪役を演じる2人の存在感や演技は面白いのですが、主役を演じるトム・ハンクスがどうしても悪い人に見えない。逃亡中、息子に車の運転を教えるシーンや銀行強盗を繰り返すくだりでは何故捕まらないのか不思議です。
ただ、この映画での演技が評価されて、「007」シリーズのボンド役へと躍進を遂げたダニエル・クレイグを観るだけでも価値があります。表情が豊かでマフィアらしい怖さも醸し出しています。加えて、ボス役を演じるポール・ニューマンの存在感が作品全体を引き締めているのです!
偉大な父と出来の悪い息子、という構図が共感とアイロニーを感じさせ、ひたすらに地獄への道を走っているのだと思うと切なくなります。