映画『ローサは密告された』の概要:フィリピン、マニラのスラム街を舞台に、ある一家が被る悲劇をドキュメンタリータッチで描いている。ある夜、覚せい剤の密売にて両親が警察に逮捕されてしまう。法外な保釈金を払うため、子供達はそれぞれに金策へと奔走する。
映画『ローサは密告された』の作品情報
上映時間:110分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ブリランテ・メンドーサ
キャスト:ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス、アンディ・エイジェンマン、フェリックス・ローコー etc
映画『ローサは密告された』の登場人物(キャスト)
- ローサ(ジャクリン・ホセ)
- 一家の家計を支える肝っ玉母さん。スラムで生きるために強くならざるを得なかった様子。常に強気な態度ではあるものの、夫ネストールと子供達をとても大切にしている。
- ネストール(フリオ・ディア)
- ローサの夫。店番をさぼって、こっそり覚せい剤に手を出してしまう少々、頼りない父親。それでも、ローサや子供達の支えにはなっている。
- ジャクソン(フェリックス・ローコー)
- ローサの長男。全身にタトゥーが入っており、外見はアウトロー。家族思いの青年であり、両親を保釈するために金策に奔走する。
- カーウィン(ジョマリ・アンヘレス)
- ローサの息子で次男。どうやらゲイらしく、男性に体を売って稼いでいる。18歳の少年。母親の手伝いを良くしている。
- ラケル(アンディ・アイゲンマン)
- ローサの娘で長女。学校へ通う女学生で、友人を自宅に招いたりしている。金策のために親戚や知人を頼る。
- リンダ(メルセデス・カブラル)
- 売人の妻。夫をとても愛しており、大金をすぐに用意できるツテがある。警察へも強気に抗議している。
映画『ローサは密告された』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ローサは密告された』のあらすじ【起】
マニラのスラム街に住むローサは、夫のネストールと小さな商店を営んでいる。その店ではアイスという隠語で呼ばれる覚せい剤を密売していた。界隈でローサのところのアイスと言えば、覚せい剤を意味する。夫婦は薬を売った金を家計の足しにし、4人の子供達を育てていた。
ところがある夜、店に警察が突入。ネストールとローサは警官に銃で脅され、隠してあった顧客リスト、売人リストと覚せい剤を押収され逮捕されてしまう。
2人は警察署へ連行されてもしらばっくれていたが、押収された現物は紛れもなく夫婦の店にあったものだ。
警官は刑務所に入れられたくなければ、協力しろと言う。更に金目の物を出せば見逃すと言い、夫婦が貧乏だと知ると20万ペソという法外な金額を提示し自白を促してくる。そこで、夫婦は仕方なく売人の名前を上げた。
映画『ローサは密告された』のあらすじ【承】
刑事は更に携帯から売人へ電話し、薬を仕入れろと言う。しかし、ローサの携帯はプリペイドで、通話料金がもう残っていなかった。刑事は使い走りの少年に夫婦の金を渡し、携帯のチャージをして来いと言う。それから余った金でピーナッツを購入。
携帯が使えるようになったところで、ローサは売人へ電話をかけ覚せい剤の追加を頼んだ。待ち合わせ場所はローサの店の近くである。刑事は売人を検挙するべく、ローサだけを連れて出動した。
待ち合わせ場所に到着し車内で待つこと数分、バイクに乗った売人が登場。2人の刑事が彼を追いかけて行った。売人が逮捕された後は再び警察署へ。
夫婦は奥の部屋で待機となり、売人が連行されて来る。ここで、顔を合わすのは非常にまずい。
売人の鞄から大量の覚せい剤と大金が発見され、刑事たちは大喜び。しかも彼らは押収した大金と覚せい剤をピンハネし、署長へ横流ししている。
映画『ローサは密告された』のあらすじ【転】
そうして、戻って来た刑事は次なるターゲットを売人へ。刑務所に入りたくなければ、20万ペソ用意しろと言う。ローサの時と同じ手口だ。当然、20万ペソなどスラムに住む者が払えるはずもなく断る。すると、刑事は10万に負けてやると言う。金額が半額になったことで、それなら払えそうだと思うわけだ。
売人は自分の携帯で方々へ連絡を入れ、金策をする。ところが、売人の上役は上級警部。彼はメールで状況報告し、折り返しの着信を待った。すると、画面に上級警部の名前が出て、着信が入る。刑事は自分よりも上の立場の刑事が出てきたことで逆上。売人は酷く殴られ、命を脅かされてしまう。
このことで奥の部屋にいたローサ達も脅される羽目に。刑事は売人の携帯から彼の妻リンダを呼び出し、保釈するには10万ペソを払えと告げる。リンダは酷く殴られ意識を失った夫を心配し、5万ペソならすぐに払えると言うのだった。
そこで、ローサは売人の情報を売ったのだから、帰して欲しいと訴えるも、刑事たちはあと5万ペソ足りないと言い張る。帰りたいなら更なる大物の情報を出せと言われてしまうのだった。
同じ頃、両親を心配した子供達4人のうち、上の3人が警察へ駆け付ける。だが、逮捕リストに両親の名前は記載されておらず。どうやら正規の逮捕ではないようだ。ローサとネストールは、ようやく会えた子供達と金策の相談。幾らでもいいから、親戚筋を当たって借金の申し出をするよう頼んだ。
映画『ローサは密告された』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌日、長男ジャクソンは家にある金目の物を売りに向かい、妹ラケルは親戚や知人に助けを求める。次男のカーウィンは男色家の金持ちに体を売った。それでも手に入る金額は微々たるもので到底、5万に満たない。
テレビを売ろうとしていた長男。スラム街を歩いていて、知人に呼び止められる。ローサを密告した者が誰かを教えてくれると言う。密告したのは近所の少年で、逮捕された兄を釈放するためだったらしい。すべては汚職で腐った警察の仕業である。
3人の兄妹はそれぞれに辛い目に遭いながらも、両親のために金を集めた。そうして、その日の夜に警察へ。集まった金は4万6千ペソ。あと4千ペソ足りない。どうにかそれで、見逃してくれないか頼んだが、許してくれそうにない。そこで、ローサは家族を置いて、1人で足りない分の調達へ向かった。
娘のスマホを4千で質に出した。返済に色を付けるからと頼み込んだ結果である。その他に足代として小銭をせびり、ひとまずは腹ごしらえ。どうしてこんなことになったのか。ローサは一時、弱さを垣間見せ涙を零した。
映画『ローサは密告された』の感想・評価・レビュー
フィリピンを代表するブリランテ・メンドーサ監督による作品。物語の基は実話らしく、それを監督が4年の歳月に渡って脚本に仕立てた。マニラのスラム街が舞台で、街の住人は助け合いながら暮らしてはいるが、互いを信用していない。だから、すぐに情報を売り払う。そうしなければ、生きられないからだ。
どうも警察は彼らを正規に逮捕したわけではなく、とにかくまとまった金額を手に入れようと画策し貧乏人から搾取している。監督が目指したのは、徹底したリアリティでそこにある現実を切り取って作品にしている。故に、作品はドキュメンタリータッチで描かれた。映画はフィクションだが、ストーリーは実話に近い。これがフィリピンで行われている現実かと思うと、救われない気がする。(MIHOシネマ編集部)
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