映画『最愛の子』の概要:2014年製作、2016年日本公開の中国・香港合作映画。本当にあった出来事を元に、突然最愛の子供が行方不明となり3年間必死で探す両親と子供を描いたヒューマンストーリー。幼い息子の3年間はあまりにも大きく、心の溝が埋められない両親と子供の苦悩を描いている。
映画『最愛の子』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ピーター・チャン
キャスト:ヴィッキー・チャオ、ホアン・ボー、トン・ダーウェイ、ハオ・レイ etc
映画『最愛の子』の登場人物(キャスト)
- ティエン(ホアン・ポー)
- 下町で細々とネットカフェを営んでいる男。妻とは離婚し、3歳になるポンポンの養育権を持ち育てている。真面目な男で、子供を大事にしている優しい性格。
- ジュアン(ハオ・レイ)
- ティエンの元妻。週に1回だけポンポンと面会を許されている。結婚中に男性と関係を持ち、現在はその男性と再婚している。
- ポンポン(不明)
- 3歳で何者かに連れさられ、行方不明となる。穏やかでのんびりした可愛い男の子。
- ホンチン(ヴィッキー・チャオ)
- ポンポンを連れてきた男の妻。誘拐したことを知らずに実の息子のように可愛がってきた。もう一人夫が拾ってきた女の子を育てている。田舎暮らしで都会に圧倒されながら、持ち前の強気な性格で子供を取り返そうと奮闘する。
- ハン(チャン・イー)
- 行方不明児を探す会のリーダー。自身の子供も行方不明であり、被害者の親を定期的に集め励ましの会をしている。仲間のためなら努力をいとわない熱い男。
- カオ(トン・ダーウェイ)
- 偶然であった田舎者のホンチンの弁護を担当する。最初は面倒で断るが。何も知らずに子供を育て突然奪われたホンチンに同情する。
映画『最愛の子』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『最愛の子』のあらすじ【起】
2009年7月18日にその悲劇は起こった。
深圳の路地でひっそりとネットカフェを営んでいるティエンは、息子のポンポンの帰りを待っていた。
妻とは別れ、息子のポンポンの養育権はティエンにある。
そのため、妻と息子とは週に1回面会があったのだ。
妻に連れられ帰って来たポンポンだったが、その時店に来た若者が店内で揉め始めてしまいティエンはそちらに気が取られた。
その隙に近所の子がポンポンを誘い、ローラースケートを見に行ってしまう。
皆とスケートを見ている時、ちょうど母親の車が横を通りかかったため、ポンポンは車を追いかけ始めた。
しかし母は気がつかず、停まらなかった。
母の車が行ってしまった後、ポンポンは何者かに誘拐されてしまう。
夕刻になっても戻らない息子を心配し、元妻のジュアンと共に捜索を始める。
しかし警察は、失踪後24時間経たないと事件として取り合えないと言う。
ティエンはその日からインターネットやメディアで自分に電話番号を露出し、情報提供を呼びかけた。
だが、ティエン達の努力も空しく、寄せられる情報は偽のものや、報酬金を目当てにした詐欺のような犯罪まであった。
映画『最愛の子』のあらすじ【承】
2年が経ち、現在の夫に子供をせがまれたジュアンだったが気乗りしない。
そんなある時、ティエンはジュアンをある所に誘い出す。
そこは行方不明児の親が集まる被害者の会であり、全員がお互いを励ましながら頑張っていた。
ティエンとジュアンもそこに顔を出すようになっていく。
特にリーダーのハンは一生懸命で、全ての行方不明の子供の手がかりを探していた。
彼らに協力してくれる刑事から情報をもらえば、どんなに遠くてもバスを貸し切り、親たちと誘拐犯の牢獄まで面接に行った。
少しでも手がかりがあればと、藁をもすがる思いだったのだ。
映画『最愛の子』のあらすじ【転】
ある日、ティエンの携帯にポンポンの情報が寄せられた。
行方不明になってか3年も経っている。
ハンとジュアンとティアンで、深圳から少し離れた田舎まで出かけてみる。
情報提供者と会ったティアンだったが、今までの提供者とは違い金をせびらなかった。
もしかしたらと期待し、言われた場所まで行ってみる。
そこは小さな農村だった。
裏庭から覗いてみると、確かにポンポンにそっくりの男の子がいる。
思わず抱きかかえ走り出すティエン達。
それに気がついた男の子の母親は、必死でティエン達の後を追った。
結局ハンが連絡し、警察が到着。
事情を聞くために男の子の母親・ホンチンを事情聴取した。
するとその男の子はやはり実子ではなく、亡き夫が連れてきた養子だったのだ。
しかもホンチンは知らなかったが、夫は防犯カメラの証拠も残る立派な誘拐の容疑者である。
夫から不妊症だと言われていたホンチンに、夫が子供を連れてきたというのだ。
彼女には娘もいたが、こちらも夫が作業現場で拾った子供だと言う。
ホンチンに嘘は無さそうだった。
ティエンとジュアンはポンポンを連れ帰る。
しかし3歳だった彼には両親の記憶が全く無い。
未だにホンチンを母親だと思っていた。
映画『最愛の子』の結末・ラスト(ネタバレ)
結局誘拐の証拠も無く、公務執行妨害で逮捕されていたホンチンは半年で出所した。
その間、子供達を忘れることは無かった。
ポンポンにおいてはもうどうしようも無かったが、施設に預けられた娘だけは引き取りたいと施設側を相手に裁判を起こそうとする。
そこで彼女は深圳に上京し、弁護士事務所で断られながらも何とか田舎者のホンチンを相手にしてくれたカオ弁護士と出会う。
カオは段々と同情し、ホンチンの娘が本当に捨て子であったことを証明しようと努力する。
だがホンチンの亡くなった夫の同僚は「面倒に巻き込まれたく無い」と、娘を拾ったのを見ているのに証言しないと言い張る。
ホンチンはその男と寝てまで、証言台に立たせようとした。
しかし、一方でジュアンは妹を心配するポンポンを思い、施設から引き取ろうとしていた。
だが問題がある。
ジュアンは今回の一件で再婚相手から、離婚しようと言われているのだ。
裁判所での養育権の勝ち取りは、夫婦でいること。
つまりジュアンは該当しなくなってしまったのだ。
裁判当日、ジュアンの離婚を初めて知ったジュアン側の弁護士は寝耳に水。
一度裁判は見送られることになってしまった。
そしてカオは裁判長に「依頼人を選べ」と捨て台詞を言われる。
つまり最初から裁判所はホンチンの要求など飲む気など無かったのだ。
絶望するホンチンに、カオは自分の認知症の母親の世話を仕事としてしながら、次の裁判を待とうと提案。
職業前健康診断を受けるため行った病院で、ホンチンは妊娠を告げられるのだった。
そう、夫の同僚の子である。
不妊症では無かったのだった。
映画『最愛の子』の感想・評価・レビュー
中国で実際にあった誘拐事件を基に名匠ピーター・チャンが中国の闇を描いたヒューマンドラマ。亡き夫が拾って来た子供を育てる母親役のヴィッキー・チャオは、今作の役を何度も断り続けていたらしいが、監督立っての願いにより引き受けたという逸話があり、受けたからには徹底し、全編ノーメイクで挑んで素晴らしい演技を見せている。今作にてヴィッキー・チャオは香港のアカデミー賞と呼ばれる金像奨で最優秀主演女優賞を授賞した他、数々の主演女優賞に輝いた。賞を受賞するだけあって、子供を取り戻そうとする母親の必死さが凄まじい。子供を誘拐された親の悲痛な叫びも同時に描かれ、双方共に救いがない。心にずしりとくる考えさせられる作品。(女性 40代)
ラストがあまりにも衝撃的で思わず「えっ…」と声が出てしまいました。息子を誘拐された元夫婦。3年もの間見つからなかった息子がついに見つかったと思い喜びますが、実際はそれが苦しみの始まりでした。
実の子ではないものの、本当の自分の子のように愛情深く育ててきたホンチンがとにかく可哀想で苦しくなります。いけないことをしているのですが、どうにかしてホンチンのもとへ娘を戻してあげたいと願うばかりでした。(女性 30代)
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