映画『叫びとささやき』の概要:19世紀末、スウェーデンの大邸宅で病床につく次女が、召使に見守られながら暮らしていた。そこへ長女と次女が見舞いに訪れ、次女の最期を見守る。姉妹それぞれの心情や愛、孤独を鮮烈な演出で描いた巨匠イングマール・ベイルマン監督の作品。
映画『叫びとささやき』の作品情報
上映時間:91分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:イングマール・ベルイマン
キャスト:イングリッド・チューリン、ハリエット・アンデルセン、リヴ・ウルマン、カリ・シルヴァン etc
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映画『叫びとささやき』の登場人物(キャスト)
- カーリン(イングリッド・チューリン)
- 長女。外交官のフレドリックと結婚し5人の子供を儲けるも、誰にも愛情を抱けずにいる。謹厳実直で凛とした佇まいだが、夫を軽蔑している。
- アグネス(ハリエット・アンデルセン)
- 次女。子宮がんを患っており、強い痛みを堪えながら生活を送っている。姉妹の緩衝材のような役割を担っており、純粋でありながら深い孤独を抱えている。
- マリア(リヴ・ウルマン)
- 三女。商人のヨアキムと結婚し1人息子を儲けるも、アグネスの主治医と関係を持つなど自由奔放な面がある。豊かな赤毛で美しい容貌をしている。
- アンナ(カリ・シルヴァン)
- アグネスの召使。一人娘がいたが、数年前に亡くしており主人のアグネスの世話をすることで、喪失感を紛らわせている。唯一、アグネスの孤独を理解し、無償の愛を与える。
- フレドリック(ヨールイ・オーリン)
- カーリンの夫で外交官。選民意識が強く強欲な面がある。妻への愛情はほとんどなく、強権的。
- ヨアキム(ヘニング・モリッツェン)
- マリアの夫で商人。美しい妻には無関心を装いその実、意識を向けてもらいたくて自ら腹部を刺して気を引くなど、姑息な手を使う。
映画『叫びとささやき』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『叫びとささやき』のあらすじ【起】
19世紀末、スウェーデン貴族の大邸宅に住まうアグネスは、子宮がんを患い常に痛みを堪え毎日を送っている。彼女は三姉妹の次女。病床につくアグネスを心配し、姉カーリンと妹マリアが交代で付き添い、身の回りの世話は召使のアンナが行っていた。
徐々に衰弱を見せるアグネスは近頃、20年前に亡くなった母親のことをよく思い出している。彼女にとっての母親は近寄りがたく冷たい印象があった。幼い頃はそんな母を慕いながら恐れていたものだが、年を経た今、母親が持つ孤独が理解できる。貴族の妻とはそういうものだということも、今ならよく分かるのだった。
映画『叫びとささやき』のあらすじ【承】
マリアは商人ヨアキムと結婚し一児の母親であったが、数年前からアグネスの主治医と関係を持っている。ヨアキムは仕事に忙しく妻に無関心。マリアは浮気をすることで、寂しさを紛らわせているのだった。
ある朝方、アグネスの容態が急変。急いで主治医を呼ぼうとしたが、彼は留守で酷く苦しむアグネスを姉妹とアンナは見守ることしかできない。昼近くになって、熱っぽいながら呼吸も落ち着き意識も戻った。アグネスの世話を甲斐甲斐しく行うカーリンとマリア。
主治医の話によると、アグネスは酷く衰弱しているため、死期が迫っているらしい。姉妹とアンナは覚悟してずっと傍にいた。そうして、夕方。アグネスは想像を絶する痛みを訴えながら、息を引き取るのである。
映画『叫びとささやき』のあらすじ【転】
カーリンの夫フレドリックは多忙を極める外交官だった。カーリンは嘘ばかりで塗り固めた夫を軽蔑している。教養を持ち厳格な彼女は自らを保つため、誰にも触れられたくないと思っているのだった。
アグネスが亡くなってから、カーリンとマリアの間に深い親交はない。マリアは姉と慰め合いたいと考えていたが、カーリンからは酷く拒絶されてしまう。
大邸宅を相続するはずだったアグネス亡き今、邸宅を残しておいても維持費がかかるだけである。カーリンは邸宅を売りアグネスの財産を姉妹で分けることにした。
映画『叫びとささやき』の結末・ラスト(ネタバレ)
アグネスの存在は三姉妹にとって緩衝材としての役割を担っていた。故に長女として厳しく躾けられたカーリンは甘やかされて育った三女マリアに対し、良い感情を抱いておらず、可愛さ余って憎さ百倍と言ったところ。カーリンは思わずそんな本音をマリアへと吐露し、妹を傷つけてしまう。だが、長女は自分の失言をすぐに気付き、泣きながら去って行こうするマリアへと真摯に謝罪。姉妹はようやく距離を縮め手に手を取り合った。
一方、数年前に幼い娘を亡くし、アグネスの世話をすることで喪失感を補ってきたアンナ。亡くなったはずのアグネスが亡者となって現れ、傍にいて欲しいと告げる。カーリンもマリアもアグネスに対して恐れ戦き、逃げ出して行ったが、アンナだけは彼女の遺体を胸に抱いて一晩を共に過ごすのだった。
アグネスの葬儀後、アンナには暇が出されることになり主人の形見を分けると言われる。だが、アンナは何も望まず。姉妹とその夫たちが去った後、彼女はアグネスの日記を開き、主人を偲ぶのであった。
叫びもささやきもかくして沈黙に帰した。
映画『叫びとささやき』の感想・評価・レビュー
非常に美しい映像の中、淡々と時が流れる。痛烈なまで原色の赤を多用し、女性の奥底にある心情を描いている。全てが赤い部屋、赤いベッドカバー、赤い照明、シーンの移り変わりにも赤い場面が使われている。
三姉妹の次女が子宮がんで苦しんでいるのだが、彼女を心底支えているのは召使の女性だけである。長女と三女が見舞いに訪れ、傍に付き添ったりするものの上辺だけの愛情にしか見えない。それぞれに抱える負の感情があり、次女が亡くなってからそれらが、あからさまに露呈するというのも、なかなか渋い演出である。終盤では死んだはずの次女が復活するのだが、唯一召使だけが彼女を慰める。愛情という面では召使が一番深いと思わせるシーンだった。(MIHOシネマ編集部)
本作は、19世紀末のスウェーデンの大邸宅で、優雅に暮らす三姉妹と召使の4人を描いたヒューマンドラマ作品。
次女の死がきっかけで、4人の関係性が崩れていく様子が呼吸音や発狂とともにドロドロと描かれていて静かな恐怖を感じた。
赤を基調としたセットや衣装が強烈なインパクトを脳裏に焼き付け、鮮血のように鮮やかな赤色が恐怖の象徴のように使われている。
女の愛や孤独、生と性、情念が生々しくリアルティーがあり、終始重く不穏な空気が漂っていた。
美しさと恐怖が独特で鋭い世界観を作り上げている。(女性 20代)
弟のことが大好きで小さい頃からものすごく大事に過保護に接してきた私にとって、この姉妹の仲の悪さというか、よそよそしさは理解できませんでした。子宮がんを患い、苦しみに耐えながら生きるアグネス。自分の兄弟がそんな状況だったら、何をしてでも助けてあげたい、痛みを和らげてあげたいと思うものでは無いのでしょうか?女同士だとまた事情が変わるのかもしれませんが、アグネスのそばにいてくれたアンナだけが最後まで心の救いだったように感じます。(女性 30代)
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