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映画『死の棘』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『死の棘』の概要:夫の浮気を知った妻が突如、心の均衡を崩し豹変してしまう。それまで慈悲深かった妻は夫を責め立て、浮気相手へと恨みを募らせる。夫は家族の絆を取り戻そうと、ひたすら謝り続ける日々を送ることになる。狂気の果てにある夫婦の愛を描いた衝撃の作品。

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映画『死の棘』の作品情報

死の棘

製作年:1990年
上映時間:229分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:小栗康平
キャスト:松坂慶子、岸部一徳、木内みどり、松村武典 etc

映画『死の棘』の登場人物(キャスト)

ミホ(松坂慶子)
トシオの妻。思慮深く慈悲深い女性であったが、夫の浮気を知りショックから心の均衡を崩してしまう。浮気相手の邦子に対し、深い恨みと殺意を抱いている。
トシオ(岸部一徳)
元特別攻撃隊に所属し中尉であったが、出撃せずに終戦を迎える。妻ミホに邦子との浮気がばれ、延々責められ続け自身も心の均衡を崩し始める。ミホの言うことに生涯従うと誓う。子供達を叱ることはなく、面倒を見る良い父。
邦子(木内みどり)
トシオの浮気相手。穏やかな性質のトシオに好きだとはっきり告げ、誘惑しようとする。毅然とした態度で、ミホと対峙する強さを持った女性。

映画『死の棘』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『死の棘』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『死の棘』のあらすじ【起】

夫トシオの浮気が露呈し妻ミホが突如、心を病んで暴れ狂い死にたいと言い出した。トシオはミホへと真摯に謝罪したものの、一度壊れた心は容易には戻らない。ミホは夫を電気の計測板に例え、都合が悪いと姿を消し様子を見ては、また姿を現す卑怯な男だと辛辣に詰るのだった。

太平洋戦争末期、特別攻撃隊として奄美島の基地に駐屯していたトシオは、島の娘ミホと恋に落ちる。しかし、トシオが出撃する前に戦争が終わってしまい、彼はミホを妻に迎え作家として稼ぐことにした。夫婦は2人の子供を儲け穏やかな暮らしを送っていたが、しばらく後にトシオが長い間、邦子という女性と浮気をしていたことが判明する。このことにより、ミホは心の均衡を崩してしまい、彼女は衝動的に暴れては死ぬと言い張り、家の中は荒れ果てた。

トシオはそんなミホに寄り添い、発作が起きた際は彼女が望むままに冷水をかけるなど、一心に妻へと尽くす。
そんなある日、出版社へ顔を出すことになったトシオ。ミホは子供達と駅にて笑顔で見送ってくれたが、帰宅すると妻がいない。しかも、子供達は荷物を持って出て行ったと慌てる様子も見せない。トシオは心配していた通りになったと慌てて方々を探し回った。

浮気相手の邦子の家へも訪れ、ミホが殺しに来るかもしれないからと注意を促す。彼は確かに邦子を好きではあったが、ミホの代わりになる者などいない。トシオはもう二度と、ここへは来ないと告げた。暗くなってから自宅へ戻ると、留守を頼んだ青年からミホが戻って来たと教えられる。彼女は家の裏手にひっそりと立ち竦み、家にはもう帰らないと言う。トシオは彼女を引き止め、辛抱強く帰宅を促すのであった。

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映画『死の棘』のあらすじ【承】

帰宅後も夫婦は面と向かって話し合い。トシオの信用はほぼ皆無で、ミホは夫が言うことをほとんど信じない。彼女は自分の着物を全て売り払い、3万円で探偵を雇ってトシオと邦子のことを調べさせていた。故に、夫が嘘を言ったらすぐに分かるのである。トシオは邦子を産婦人科へ受診させるため、大金をも渡していた。このことを問い詰めたミホは、衝動的に夫をビンタ。すると、トシオは反射的に妻へと手を出してしまう。このことにショックを受けたトシオは咄嗟に家から逃げ出そうとするが、ミホは鬼のような形相で夫を引き留める。そして、妻は足に縋りついてすすり泣くのだ。

10年もの間、彼女は夫の健康を気遣い生活を支えてきた。現在に至るまで、彼を作り生かしてきたのはミホが一心に世話をして、家のことをやってきたからである。故に、彼女の10年を無にすることは、それまでの生き方を否定することだ。トシオはその姿にふと、出撃前のことを思い出し、当時の強い思いを胸に再び宿らせるのだった。
そうして、彼はミホへと約束をする。今後、妻の言うことは全て叶える。その代わりに過去のことは持ち出さないで、これからの10年に至る自分を見て欲しいと。

ミホはようやく納得し、その後も講義へ向かった大学へ迎えに来たりしたものの、トシオは彼女の不安をことごとく解消するよう、行動で示すのであった。
そんな日がしばらく続くと、さすがの彼にもストレスが溜まる。家族全員の夕食中、唐突に邦子とのことを聞いてきたミホに対し、トシオは逆切れして殺すなりすればいいと怒鳴り返してしまう。夫婦は再び口論となり、ミホの心理状況は更に悪化。夫と子供達はまた彼女が暴れ狂うのではないかとハラハラしたものの、ミホは落ち着きを見せたまま朝を迎えるのであった。

映画『死の棘』のあらすじ【転】

その後もミホは唐突に不機嫌となり、急に邦子とのことを責め立てる。すると、とうとうトシオも限界を迎え、急に叫び出したかと思うと走り出して線路へと飛び出そうとする。妻も苦しんでいるが、責め続けられる夫も苦しんでいるのだ。ミホはそんなトシオを目にして、自分の行いを振り返るのだった。

どうにか無事に年越しを迎え、家族一同で正月を楽しむ。ところが、凧上げに行った帰り、駅のホームで邦子の姿を目にしたと急にミホが叫び出す。トシオはすぐに彼女を捕まえ、子供達と帰宅。

その夜もまた、夫婦は面と向かって話し合い。今やトシオは献身的にミホと子供達に尽くしているが、いつまで経っても彼女の疑惑と恨みは晴れない。そこで、彼は着物を全て脱ぎ、下着一枚となって肺炎になってやると断言。すると、ミホもまた下着一枚となり我慢勝負が開始。これでは埒が明かないので、トシオは室内灯のコードで首を吊ろうとしたが、ミホが阻止。コードが切れてしまったため、今度は家の梁に紐を括りつけ首を吊ろうとした。夫婦はまたも揉み合いとなるが、ミホが急に腹痛に襲われてしまう。そこで、正気になったトシオ。着物を身に着け、雨戸を開けた。

すでに夜は明け、朝日が差し込んでくる。朝ですよと幼い息子が両親へ声をかけた。この一件により、トシオは一家で生まれ故郷へと旅に出ることにした。
ミホは旅行中、塞ぎ込んで自分のことを邦子と呼べと言うなり、呆けてばかりいる。
数日後、我が家へ帰宅。一家には僅かながらでも笑顔が見えた。

映画『死の棘』の結末・ラスト(ネタバレ)

そんなある日、自分がどうしたら良いのか分からないとミホが言うため、とうとう精神科へと受診させることに。すると、妻は酷く暴れ、怖いと言って泣き叫ぶ。安定剤を注射されたミホは安らかな眠りへと誘われ、ストレッチャーにてすぐさま、病室へと運ばれて行った。

以降、子供達の面倒はトシオが見ることになったが、下の子は嘘ばかりついて父を振り回すし、ミホからは会いに来ないと抗議の電話がくる。はがきは毎日送っていたが、それでも満足しない様子だったので、今度から手紙にすると約束した。
ところがそんなある日、病院からミホが着の身着のまま帰って来てしまう。

トシオは家を売って資金を手にすると、一家で別の家へと引っ越した。田舎の町で酷く殺伐とした場所だったが、ひとまずは落ち着いた生活が送れるはず。ミホは自分が育った島へ帰りたいと言う。そこで、トシオは子供達だけでも先に島へ送って、ミホの病が良くなったら自分達も島へ向かおうと話し合うのだった。

しかし数日後、一家が住む家に邦子が訪れる。近所の人たちで見舞金を募ったため、届ける役目を任せられたと言う。ミホは訪問者が邦子だと知ると、鬼のような形相で彼女を捕まえ自宅へと引き入れる。そして、トシオに自分と彼女とどちらが大事かを問い、邦子を殺そうと襲い掛かるのだった。

幸い、隣人の仲裁と警察により事なきを得たが、ミホは再び病院へ連れ戻され、今度こそトシオが付き添うことになる。子供達は親戚を頼って妻の故郷の島へ送り、預かってもらうことにした。その日の夜、ミホは忽然と病室から姿を消してしまう。トシオは看護婦たちと一緒に妻の姿を探したが、見つけられず。肩を落とし病院へ戻ると、廊下に立つミホの姿を発見。彼女はトシオが泣く声が聞こえたから、戻って来たと話すのだった。

映画『死の棘』の感想・評価・レビュー

原作は日本文学賞や芸術選奨受賞を受賞した作家、島尾敏雄の同名私小説。発表当時はフィクションとノンフィクションが入り混じったものと思われていたが、後の世に実はほとんどが事実であったことが判明している。妻のミホもまた作家島尾ミホとして数々の素晴らしい作品を世に送り出している。

作中は根底にどんよりとした重い空気が延々、漂っておりかなりヘヴィーな内容。原作となった私小説が受賞するのも頷ける。夫の浮気によって狂ってしまう妻役を松坂慶子が演じており、真に迫った演技を見せている。更に夫役を岸部一徳が演じ、彼の無表情さがまた作品へ多大な重さと暗さを加え、妻の狂気を引き立てている。とにかく、淡々としていながらも背筋が凍るような作品。(MIHOシネマ編集部)


浮気はした人が100%悪いと思っているので、トシオが延々と責められる姿を見ても自分が浮気をしたのだから当たり前だと思っていましたが、改心すると誓ってもずっと浮気相手のことを許せずにいるミホはトシオの事だけでなく、自分のこと更には家族のことまで不幸にしているなと感じてしまいました。
浮気を許すのは簡単なことではありませんが、浮気によって家族や夫婦の関係が崩れてしまっては一緒にいる意味がありません。ミホがやっていることはただ、自分の今までの生き方を守りたいだけのように見えて、ミホにもトシオにも同情出来ませんでした。(女性 30代)

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