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映画『散歩する侵略者』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『散歩する侵略者』の概要:行方不明になっていた夫が発見され戻って来たが、以前の彼とは性格が一変していた。妻は夫の異変に戸惑いつつも生活を続けるが、実は宇宙人に乗っ取られ人間の概念を奪って地球の侵略をしようとしていたのだった。愛は地球を救う。正にこの一言に尽きる作品。

映画『散歩する侵略者』の作品情報

散歩する侵略者

製作年:2017年
上映時間:129分
ジャンル:SF、ヒューマンドラマ
監督:黒沢清
キャスト:長澤まさみ、松田龍平、高杉真宙、恒松祐里 etc

映画『散歩する侵略者』の登場人物(キャスト)

加瀬鳴海(長澤まさみ)
真治の妻でイラストレーター。愛情深い女性だが、浮気を隠している夫とはずっと不仲だった。家事と仕事を両立する立派な人物だが、性格が一変した真治に対し徐々に態度を軟化させ、愛情を取り戻す。
加瀬真治(松田龍平)
鳴海の夫。偏食が多く気に入らないものには手をつけない。平然と嘘を吐くため、妻とはずっと不仲だった。宇宙人に乗っ取られ性格が一変。鳴海をガイドに指名し彼女から家族や愛情などを教えられていく。
天野(高杉真宙)
10代の若者で宇宙人に乗っ取られる。両親からほぼ全ての概念を奪い取り、知的で冷静。理論としての善悪は理解しており、攻撃的な面はあるも行動には移さない。ジャーナリストの桜井をガイドにする。
立花あきら(恒松祐里)
女子高生で宇宙人に乗っ取られる。知性はあるも深く考えるより先に行動してしまう。非常に攻撃的。善悪の理解や罪悪感はなく、立花家の家族を経由しようやく娘に定着する。
品川(笹野高史)
厚生労働省に所属する人物で、宇宙人の侵略を知り人知れず行動。宇宙人の捕縛をしようとあらゆる手段を講じる。
桜井(長谷川博己)
ジャーナリスト。天野のガイドとして行動を共にする。情のない天野と立花の行動に抵抗を示し、人類に滅亡の危機を唱える。最終的には情を覚えた天野に同調し、身体を差し出す。

映画『散歩する侵略者』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『散歩する侵略者』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『散歩する侵略者』のあらすじ【起】

数日間、行方不明になっていた夫加瀬真治が発見されため、迎えに行った妻鳴海。しかし、再会した夫は以前とはまるで人が変わっていた。以前の真治は平然と嘘を吐くろくでもない人物だったが、今は妻にさえ敬語を使い、歩き方もぎこちない。
しかも、帰りの車内で知らないことが沢山あるので、自分のガイドになって欲しいと意味不明な言動をするのだった。

ジャーナリストの桜井は、一家惨殺事件の取材に向かっていた。事件があった立花家へやって来た桜井の前に、不遜な態度をとる天野という青年が声をかけてくる。彼は桜井へガイドになって欲しいと要請。天野は自らを宇宙人と称し、真の目的は地球の侵略だと言う。桜井は気軽に天野のガイドを引き受け、共に立花を探すことにした。

3日後、加瀬家に鳴海の妹が来訪。真治は妹から家族というものを説明してもらったが、彼は自分の立場を言葉で理解した後、妹から家族という概念を奪い取ってしまう。概念を奪われた妹は心配する姉に対し態度を一変。他人行儀となって家を出て行ってしまった。

同じ頃、天野の自宅へ来た桜井。宇宙人である天野は身近にいる両親から学習するために様々な概念を奪ったと言う。概念を奪われた両親は、解放されたかのようにどこか幸せにすら見えた。

ある朝、打ち合わせのために身支度を整えていた鳴海は、真治に対し自分のことをもっと良く知るべきだと発言。すると、彼は鳴海が理想とする真治を目指すことにした。妻は仕事のため、早々に外出。家にいろと言われたが、すぐに真治も散歩へと出掛けた。

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映画『散歩する侵略者』のあらすじ【承】

とある家へやって来た真治は、家の住人と会話した上で彼から所有という概念を奪う。所有を理解した真治は、自分が帰る家を理解した。
数時間後、帰宅した鳴海は自宅に夫の姿がないことに気付き、仕方なく夫を捜しに出て橋の下で倒れているのを発見。彼は野良犬に襲われ傷だらけだった。そうして、やはり信頼するパートナーでもあるガイドは必要だと言うのだった。

一方、天野と桜井は警察に保護された立花あきらがいる病院へ。立花も実は宇宙人に乗っ取られており天野と再会後、見張りの刑事から自分と他人の違いという概念を奪ってしまう。桜井は自由奔放に行動する彼らが本当に宇宙人なのだとようやく理解。そうして、彼らに密着し取材することにするのだった。

仕事の打ち合わせに来ていた鳴海の前に、後を追って来たと言う真治が姿を現す。彼は鳴海の上司に当たる人物から仕事という概念を奪ってしまう。そのせいで、鳴海が怒ってしまったため、真治は自分が宇宙人であることを明かした。融合した宇宙人は宿主の記憶を引き継ぐが、人格まで同じにすることができない。そのために周囲の人間から概念を奪ったと言うが、鳴海の怒りは治まらない。

同じ頃、買い物と情報収集を頼まれた桜井は、店先で厚生労働省の品川から声をかけられる。品川曰く、立花あきらは新型のウィルスに感染しているため、政府は早々に対策を練ったらしい。上手く誤魔化した桜井は、品川からGPS装置を渡されて別れた。

映画『散歩する侵略者』のあらすじ【転】

品川と接触したことで、政府と自衛隊が侵略の対策に動き出したことを察した桜井。天野と立花は仲間と連絡を取るための通信器を造ろうとしていた。人間を概ね理解した上で仲間へ通信を送ると、地球の侵略が開始される。そのため、地球に来訪中の仲間と意見を擦り合わせ、報告をすると言う。送り込まれた宇宙人は全部で3人。攻撃的な天野と立花、保守的な真治の3人だ。侵略にはおよそ3日はかかるらしい。

夜の街を歩く加瀬夫婦を大人数が密かに尾行していた。鳴海は真治を連れて逃げようとするも、真治は話を聞いてくると踵を返してしまう。恐らく尾行者は政府の手先である。概念を奪って尾行者を追い返した真治に鳴海は、1人にしないでと叫ぶ。信頼するガイドを失ったら真治は生きていけないのだからと言い訳をする妻。

罪悪感を持たない若い宇宙人2人に腹を立てながらも、共に行動することにした桜井だったが、ただ怪しいというだけで立花が銃を持った2人の男を殺害してしまう。知的な天野よりも立花は深く考えることをせず、即行動してしまうようだ。2人の男はどうやら政府の人間だったようだが、桜井が持つGPSが信号を発しているらしい。桜は騙されたと発信機を破壊するのだった。

同じ頃、以前の真治とは違う真治と過ごす内、次第に鳴海も穏やかになり夫婦仲は修復されつつあった。電話にて病院へ来るよう言われたため、向かった2人。だが、病院は精神異常を起こした人々でごった返していた。そんな中、品川の姿を発見した鳴海は逃げられる場所まで2人で逃げようと一旦、自宅へ。玄関先には桜井が待っていた。

映画『散歩する侵略者』の結末・ラスト(ネタバレ)

桜井は侵略を止めるため、真治と天野、立花を会わせないようにと言い募る。だが、真治は2人の仲間と会わせて欲しいと言う。そこへ、若者2人が登場。3人はとうとう邂逅し、短い時間で会議を終わらせるのだった。後は通信器が完成すれば、侵略が開始される。

鳴海は真治を連れてショッピングモールの広場へ逃走。地球が侵略され人類が滅亡するという事実に思考が追いつかない。だが、そんな彼女に真治は自分が最早、宇宙人なのか本当に真治になったのか分からなくなったと言う。故に、鳴海ともう一度やり直すことができると言うが、逆に鳴海を怒らせてしまうのだった。しかし、若者2人が真治ともう少し話したいと夫婦の後を追って来る。応対しようとした真治だったが、鳴海に諭され車でその場を去ろうとするのだった。

走り去る車を見た立花は、彼らを止めようと車の前へ飛び出してしまう。彼女は猛スピードの車に轢かれ、虫の息となる。立花は別の誰かに移ることはせず、完成した通信器を天野に託し息を引き取るのだった。
その隙に桜井は広場の人々に向かって、人類が滅亡の危機にあることを声高に叫んだ。だが、状況を知らない人々はぽかんとした表情である。気が済んだ桜井は落ち着いた様子で天野と共にその場を去って行く。

恐らく、真治が家族や愛について仲間に報告したのだろう。天野や立花はそれなりに愛情というものを理解したようだった。
翌日、寂れた廃工場へやって来た天野と桜井は、通信を送る準備をする。だが、そこへ政府の追手が到着。品川によって投降するよう説得されるが、天野は彼らに抵抗し邪魔者や迷惑という概念を品川から奪うことに成功する。手下によって銃撃された天野は、奪った銃で反撃し追手を撃退。品川の態度は一変し、友好的になった。

痛いという感覚が皆無である天野。死が近いことを悟るも最早、動ける身体は桜井だけである。天野は通信器を桜井へと託すことにするが、桜井は自分に移ればいいと言う。
桜井に乗り移った天野は通信を無事に済ませる。そこへ、自衛隊の戦闘機による攻撃が開始され、天野は単独で政府側と対峙し精一杯の抵抗をして命を落とすのであった。

同じ頃、ホテルに宿泊していた加瀬夫婦。通信が成功したことを察知。鳴海はこの際だから自分から愛という概念を奪えと提案。説得された夫は妻から愛という概念を奪うのだった。すると、真治はその概念の複雑さに感動。
侵略の様子が良く見える崖の上に来た夫婦。程なくして、空が赤く染まりそこから無数の炎が方々へ散らばっていく。強い風と残骸が飛び散る轟音の中、車の影に避難した夫婦は無事に助かった。

2か月後、生き残った人類が身を寄せる施設へ物資を運んで来た真治。あの後、侵略は途中で中止され人類は淘汰されずに済んだ。施設の医師は人類が進むべき道を考え直す機会を与えられたのだと、むしろ感謝している。
精神異常は続いていたが、鳴海のような症状は例がない。治療法も分からず、今のところ経過観察しかできることがなかった。
鳴海はあれ以来、全ての感情を無くし廃人同様の状態だった。恐らく、真治への愛が彼女の全てだったのだろう。そんな鳴海の傍には、愛を教えられた宇宙人がずっと寄り添っているのだった。

映画『散歩する侵略者』の感想・評価・レビュー

前半部分は新鮮で、とても引き込まれる展開だったが、後半部分がもったいない映画だった。オチがありきたりな展開で、前半が良かっただけにがっかりしてしまう。
松田龍平と長澤まさみは両名とも素晴らしい演技だった。長谷川博己も、この人独特の緊張感のある演技で見応えがあった。キャストは総じて素晴らしく、満足のいくものだった。
この脚本にするならば、もう少し映像に迫力が欲しい。キャストや前半部分が良かっただけに、なぜか観ている自分も悔しくなった。(男性 20代)


問題のある夫婦のヒューマンドラマかと思いきや、宇宙人が侵略を計画しているというSFもので驚いた。現代の日本が舞台になっていることもあり、宇宙人の言動や思惑が異質で恐ろしく感じる。しかし、単なる人間VS宇宙人といった物語ではなく、宇宙人が概念を取り入れることで様々な感情を知っていくのが興味深いなと思った。ただ、愛を知った真治と、愛という概念を無くしてしまった鳴海の関係は、切ないなと思った。(女性 30代)


日本を舞台にした宇宙人の侵略というSF作品ですが、こんなにも地味で静かに進むストーリーだとは思わず、大きな盛り上がりが無いので間延びしてしまった印象でした。
宇宙人に乗っ取られて性格が変わってしまった夫と彼を愛し続ける妻。この設定は悪くないのですが、性格が変わってしまった夫は宇宙人なのにそれでも良かったのかなと考えてしまいました。
長澤まさみの演技はどうも癖があって苦手なのですが、今作で彼女が演じた役どころは彼女の個性がぴったりだったと思います。(女性 30代)


宇宙人の侵略を予想もしなかった方面と設定で描いた珍しい作品だと思う。海外のSF映画とは全く一線を画している。実際、侵略されるとすれば、今作のような流れもあるのではないかと思わせる。しかしながら、宇宙人よ。なぜ人類を査定する際に若者を選んだのか。概念を奪うという設定も面白いし、奪われた人たちがなぜか解放されて楽し気にしているのも良かった。今作の要は夫婦の絆と愛だと思うので、作品を見終わった後、正に愛は地球を救うという言葉通りだと思った。今作の他にアナザーとしてテレビドラマもあるので、加えて観るとより楽しめると思う。(女性 40代)


行方不明になった夫がある日突然宇宙人に乗っ取られて帰ってくる。宇宙人に乗っ取られるといえば寄生獣のような映画を想像する人も少なくはないと思うが、この作品は『愛』という概念を大切にしたヒューマンドラマである。彼が奪うのは人間の命ではなく、概念なのだ。決して上手くは行っていなかった夫婦関係が、夫が宇宙人になることによって改善していく。宇宙人であると知りながらも夫を支える鳴海と、鳴海に愛を教わる宇宙人。SF物の概念を変えられる、そんな映画である。(女性 20代)

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