映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の概要:ブラック企業に就職した主人公は心身ともに疲弊し、希望を失い自殺を考えていた。そんな折、彼の前に小学校の同級生だったという謎の男が現れる。彼は主人公を励まし支え続けることによって、生きる希望を思い出させるのだった。疲れた大人にこそ観て欲しい作品。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の作品情報
上映時間:114分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:成島出
キャスト:福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、森口瑤子 etc
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の登場人物(キャスト)
- ヤマモト(福士蒼汰)
- アロハシャツを身につけ底なしに明るい性格。大阪弁を話しやや強引。山本純と名乗っているが、実は双子の兄で本名はユウ。ブラック企業で酷使され自殺した弟を隆に重ね、助ける。バヌアツの小学校にて教師をしている。
- 青山隆(工藤阿須加)
- 就職にことごとく失敗しブラック企業へ就職。とにかく真面目な性格で部長の山上から日々、いびられ続けながらも会社で仕事を続けようとする。ヤマモトと出会い本当に大切なものが何かを思い出し希望を取り戻す。
- 五十嵐美紀(黒木華)
- 営業部エース。部長の山上からパワハラを受けているが、隆のミスをカバーするなどかなりのやり手。実は売上を上げるため、隆にミスを被せ営業先を奪っている。
- 大場玲子(小池栄子)
- 山本兄弟の姉のような存在で孤児院の園長をしている。双子を5歳の頃から見守っており、全ての事情を知る人物。
- 山上守(吉田鋼太郎)
- 営業部部長。隆を目の仇にして営業部に圧政を強いている。五十嵐に対して営業売上を上げるよう過度なプレッシャーをかけたり、常に怒鳴り散らしている。売上第一でかなり強気。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』のあらすじ【起】
就職にことごとく失敗し、ブラック企業に拾われた青山隆は営業部所属だが、部長から毎日いびられ深夜までサービス残業の日々。1年半後には希望もやる気も失い、心身ともに疲れ切っていた。
その日も営業先からのクレームに対応し、損失は給料から天引き。営業先までのタクシー代も自腹を切り部長の山上からはまたも残業を言い渡され、くたくたに疲れ切って帰宅しようと駅のホームをふらふらと歩く。心配する親にもきつく当たってしまい、何のために生きているのかすら分からなくなった隆は、やって来た電車へ身を投げようとしてしまう。
その時、派手なシャツを着て大阪弁を話す、底なしに明るいヤマモトという男に助けられる。
テンションが高いヤマモトに連れられ強引に居酒屋へ向かう隆。男は小学校の同級生だったと言うが、隆にはまるで覚えがない。それでも、隆はヤマモトと酒を飲んで久々にリフレッシュし連絡先を交換した。
週末、隆の自宅へヤマモトが突然、現れやや強引に遊びへ行こうと連れ出される。まるで子供のようにはしゃぐヤマモトに影響され、隆も楽しいという感覚を久々に思い出すのだった。
翌日から覇気を取り戻した隆は、明るい表情で仕事を励む。そのお陰か以前から通い詰めていた営業先から契約を取ることができるなど、成果が現れる。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』のあらすじ【承】
だが、上向きとなった状況はすぐに後転。隆の発注ミスによって営業先からクレームが入ってしまう。営業部エースの五十嵐美紀のお陰でどうにか事なきを得たが、山上からは酷く怒鳴られ同僚達の前で土下座までさせられる。その上、せっかく取った契約の担当も外され五十嵐へと移されることになり、更に隆は無能呼ばわりされることになるのだった。
同僚達は反応を示すも誰も隆を助けようとはしない。誰もが自分に火の粉が降りかかるのを避けたいのだ。それでなくても山上は時代錯誤にも威圧的なのである。好き好んで一緒に怒鳴られたくはない。
精神的に追い詰められていた隆はその後、会社では常に慎重を期し取り戻し始めた希望を再び失ってしまう。
そんな折、仕事の移動中に駅のホームでヤマモトの姿を見かける。ヤマモトは駅から定期的に発車している霊園行きのバスへ乗って行ったが、人が変わったように酷く暗い様子だった。隆は同じ霊園行きのバスに乗ってヤマモトの後を追うが、当人に会うことはできず。
帰宅後、ネットにてヤマモトが名乗った山本純という名前を検索してみる。すると、とあるブログにて山本純が3年前に自殺していたことが分かる。ブログに乗せられた画像は確かにヤマモトと同じ容貌をしており、目を疑う隆。自分が知るヤマモトは幽霊なのだろうか。
翌早朝、会社の屋上で朝食を摂った隆は、常に朝一で出社している五十嵐が自分のPCを開いている姿を発見する。声をかけると彼女は引き継いだ営業先のデータが欲しいと言うので渡した。五十嵐には大恩があるので、礼がしたいと思っていた隆は後日、引き継ぎした担当会社の好みや情報をまとめて渡すも、五十嵐には余計なことをするなと怒られてしまう。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』のあらすじ【転】
夕方、山上に呼び出された隆は、五十嵐の手柄を横取りしようとしていると噂が流れていると怒鳴られる。更にそれまで優しかった五十嵐からも冷たくされてしまい、いよいよをもって追い詰められる。
翌朝、ビルの屋上の端に立った隆は爽やかな風を全身に受けていた。今度こそ、終わりにしようと思ったのだ。だが、そこへヤマモトが現れ、自分の人生は自分だけのものではなく、大切に思ってくれている人達のものでもあるということを教えてくれる。
隆は今まで両親へ不義理をしてきたため、今更会いに行くのは気が引けると言う。それでも直接、会って互いに本心を明かさなければ、分かり合えることはできない。ヤマモトの説得により、隆は自殺を諦め1年半ぶりに両親へと会いに帰郷した。
両親は田舎で葡萄の栽培をしている。以前は東京に住んでいたが、祖母の介護と父親の再就職のために田舎へ引っ込んだのだ。隆は笑顔で迎えてくれた両親に向かって、不義理を真摯に謝罪。両親と仲直りすることができた隆は、久しぶりに実家でゆったりとした時間を過ごした。
翌日、東京へ戻った隆は会社近くの喫茶店へヤマモトを呼び出す。そして、彼に心からの礼を述べ、ちょっと今から仕事を辞めてくるから待っていて欲しいと言うのだった。
就業時間から15分ほど遅刻して出社した隆。そのまま部長の前へ進み辞職を告げる。すると、山上はいつものように怒鳴り散らし、最近の若者は弱いし甘いと文句を言う。隆は自分の本音を明らかにし、会社から立ち去る。勝手な隆に山上は憤慨し懲戒免職扱いにするのだった。
エレベーターを待っていた隆を五十嵐が追いかけて来る。彼女は生き生きとし始めた隆に危機感を覚え、彼の発注書を書き換えてしまったことを深く謝罪。五十嵐は営業部のエースであるために山上からプレッシャーをかけられ、隆と同じように追い詰められていたのだ。隆はそんな彼女を許し、その場を立ち去った。会社から出た隆は晴れ晴れとして、鞄を振り回しながらヤマモトが待つ喫茶店へ。しかし、戻った席にヤマモトの姿は無かった。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の結末・ラスト(ネタバレ)
以来、ヤマモトと会うこともなく、連絡も取れなくなってしまう。隆は以前に見たブログへ書き込みをすることにした。
ブログの管理者はヤマモトのことを知っており、同じ孤児院出身であることを明かす。そして、孤児院の園長なら詳しい話を知っているからとその場所を教えてくれるのだった。
孤児院の園長、大場玲子はとても優しくおおらかな雰囲気を持った人物で、ヤマモトのことを5歳の頃から知っていると言う。彼女にとってヤマモトは弟のような存在らしい。彼女から過去の写真を見せてもらった隆は、ヤマモトが双子であることを知る。
山本純はヤマモトの双子の弟でヤマモトの本名はユウという名前だった。2人は両親を事故で亡くし、5歳の時に孤児院へ引き取られ育てられた。双子はとてもそっくりで、1つの魂を分けて生まれたと周囲にも思わせる程だったと言う。純はとても前向きな性格で常にユウを励ます存在であったらしい。
2人は幼い頃、両親の死から立ち直るきっかけとなった南太平洋に位置するバヌアツ共和国に憧れを抱き、純は医師を目指しユウは教師を目指すことを夢に掲げた。しかし、ユウは無事に大学へ進学するも、純は受験に失敗。やむなく、純は就職して仕事をしながら医師を目指すことにした。だが、入社した会社がブラック企業であったために次の年の受験も失敗。その頃、ユウは順調に教師としての勉強を進め一足先にバヌアツへ行くことになる。双子はここにきて初めて、それぞれの道へ分かれて進むことになった。
ユウはこの時、会社を辞めて一緒に行こうと純を誘ったが、弟はどうしても医者になると言って聞かなかった。結果、会社に追い詰められた純が自殺。ユウは弟を救えなかったことを酷く悔やんだ。
それから3年後、駅のホームで隆を見かけたユウは、弟の姿を彼に重ね合わせ今度こそ救おうと心に決めたのである。そうして、隆を支え励まし続けた。そうして、とうとう彼を救ったのである。同時にユウもまた、隆の存在により弟の死から立ち直るきっかけを得ていた。そして、玲子に隆が来たらバヌアツでの教え子の写真を渡すよう頼み、自分は一足先にバヌアツへ向かっていたのである。
後日、ユウがいるバヌアツのとある村へやって来た隆。彼はこの地でヤマモトの手伝いを名乗り出ることにし、人生のやり直しをしようと決めるのだった。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の感想・評価・レビュー
北川恵海の同名小説を実写映画化。原作は他に漫画化もされている。主演は福士蒼汰で、ブラック企業に就職し、悩める社会人を工藤阿須加が演じている。
疲れた社会人にこそ今作を観て欲しいと強く思う。ストレス社会と言われる現代において、追い詰められて自殺する人々は多い。社会人なら誰もが一度は考えるのではないだろうか。人生は会社が全てではないということを今作で描いていると思う。会社という狭い世界に囚われない生活が徐々に推奨されているが、まだまだ追いついていないのが現状だ。それ以外でも問題は多々あるだろうが、今作を鑑賞し有意義な人生を送れたらそれに越したことはない。もっと広い世界に目を向けようと思わせてくれる作品。(女性 40代)
この作品の展開は賛否両論分かれるものだと思う。わたしは嫌だと思った。急な現実逃避のように感じられたので。前半までは現実に熱く向き合っていたと思ったのに、裏切られ、夢のような話という感じだった。確かにヤマモトの背景を考えれば良い話かもしれないが、仕事に病み死のうとしたくらいの人間にあれくらいの対応では結論に結びつけるまでがあまりに難しい。実際にあるとは到底思えなかったので、評価としてはかなり低いものだが、学ばせてはもらえたのでトータル微妙だ。(女性 20代)
題名だけ聞くと凄く気軽に会社を辞めるかのように思えるが、作品を見てみると決断するまでの過程に深い苦しみと悩みが感じられた。青山隆のように上司の言動に苦しんでいる人は、現代において本当に多いと思う。自分も苦しんでいた過去があった。だからこそ、ヤマモトの言葉は胸に沁みた。自分の人生は自分だけのものではないというのは、本当にその通りだと思う。自分で命を絶ってしまう前に、そこから逃げ出すことも考えて欲しいなと思った。(女性 30代)
ブラック企業やハラスメントに厳しい現代では、なかなかここまでの企業はないのかもしれないが、気付いたら感情移入してしまい苦しくなってしまう。主人公のように過労やパワハラ、いじめによって自殺に悩んでいる方は今もどこかにいるのだろうかと考えさせられる。そんな彼が突然現れた男によって救われ、ようやく会社を辞めることができた時、自然と笑みがこぼれてしまう。こんなにも主人公の気持ちに寄り添えるのは、工藤阿須加の演技の素晴らしさからだろう。
しかし、物語として個人的には会社を辞めるまでの話でよかったのではないかとも思う。終盤にきての急展開は現実味がなく、少し飽きが来てしまった。(女性 20代)
『ちょっと今から仕事やめてくる』このタイトル通りに仕事が辞められたら、どれだけの人の命が救われたのだろうと感じてしまいました。
ブラック企業と呼ばれるような、過酷な状況を強いられる会社に勤めていても多くの人が仕事を簡単にやめてしまうという決断は出来ないと思います。日本人の真面目な部分が現れているのでしょうか、この作品のように何かのきっかけ、誰かの一言で「仕事を辞めてもいいんだ」という思考に変えられたのがとても良かったです。
苦しんでいる人に寄り添い、言葉をかけてあげることは自分が思っているよりとても大きな救いになるのだと感じました。(女性 30代)
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