この記事では、映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』の作品情報
上映時間:102分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:月川翔
キャスト:山﨑賢人、ちはる、つみきみほ、三浦誠己 etc
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』の登場人物(キャスト)
- 佐藤拓海(山崎賢人)
- 17歳の男子高校生。2人の母親と暮らしているが、思春期を迎え自分の家庭環境に疑問を覚え始めている。自分の性嗜好にも不安を抱える。
- 佐藤晴子(ちはる)
- 拓海の実母。突き抜けた明るさの持ち主で、専業主婦として家庭を支えている。思春期を迎えた拓海の変化を繊細に感じ取り、どう説明するべきか不安を抱いている。
- 平田彩(つみきみほ)
- 晴子のパートナーであり、拓海の母親。キャリアウーマンであり、外でバリバリと働く父親的役割。
- 佐藤圭一(三浦誠己)
- 晴子の弟であり、女性同士で子供を作るために精子提供という形で姉に協力している。拓海の良き理解者。
- 鈴木そら(小林涼子)
- 拓海の斜め向かいに越してきた少女。高校には行っておらず、自宅に籠って戸籍上は兄であるが父親の省吾と過ごしている。もう一人の父親・裕之と三人で暮らしている。
- 鈴木裕之(池田政典)
- カメラマンとして多くのモデルを撮影してきた男性。仕事仲間のモデルが亡くなり、娘のそらを引き取って育てている。パートナーの省吾を戸籍上息子として迎え、養っている。
- 鈴木省吾(藤井宏之)
- 裕之のパートナーであり、そらの父親。ヒモ状態で家事を担っているが、そらの母親的存在でもある。
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』のあらすじ【起】
朝食の準備をしながら斜め向かいに新居が立ったと話す母・晴子。拓海の制服の第一ボタンが取れていると気にかける晴子の向かいに座るのは、もう一人の母・彩である。外でバリバリ働く彩を見送る晴子。まるで新婚のように見送りのキスをする二人を拓海は見守っていた。しかし、拓海はこの家庭環境について高校の同級生には話せていなかった。
拓海の家の斜め向かいに越してきた鈴木家。一人娘のそらと二人の父親で暮らしている。本来ならば高校生の年齢であるそらは、学校には通っていない。自宅でゲームに没頭するそらは、窓から風船を見かけ徐に拓海の家の方へ向かった。ちょうど晴子が帰ってきて、挨拶を交わした二人。父親の一人である省吾も様子を見に来て、晴子は協力して風船を取ろうとするのだった。
生物の授業で遺伝子の異変について学んだ拓海。自分の遺伝子は「組み換え」に当たるのではないかと拓海は不安を覚え始めた。晴子はそら達を夕食に招待した。彩を姉と偽り、食事を始めようとすることに違和感を覚える拓海。そら達もまた、父親の裕之を省吾のビジネスパートナーとして紹介する。

映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』のあらすじ【承】
つい省吾を「パパ」と呼んでしまったことを機に、裕之と省吾は公私ともにパートナーであることを告白し、裕之は省吾を養子として迎えていることを伝えるのだった。
互いに「変な家族だった」と話す両家。拓海は自分の家庭のおかしさを訴え、父親の存在について晴子に問いかけるのだった。自分自身の性の悩みは誰にも打ち明けられずにいる拓海。放課後に町を歩く女性を見ながら査定する親友を見守りながら、距離の取り方を模索していた。偶然親友は若い女性と歩く父親を見かけ、複雑な家庭環境だと打ち明けた。それを聞いた拓海は、思い切って晴子の弟・圭一に自分の父親が誰のか聞く決心をする。
帰宅が遅い拓海を心配する晴子と彩。その頃、拓海は圭一と会っていた。父親が誰なのか尋ねると、圭一は正直に自分が精子提供者だと告白した。彩が圭一との間で体外受精をした卵子を晴子が受け継ぎ出産したのだった。
母親が不在のそらの家では、金銭的なわがままは裕之に相談するが、女性特有の悩みは省吾が聞いてくれる。実はそらは裕之とは血が繫がっていない。そらの産みの親が若くして命を落とし、仕事仲間の裕之がそらを引き取ったのである。
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』のあらすじ【転】
帰宅した拓海は圭一からすべて聞いたと晴子と彩に伝えた。どうしようもない衝動から家を出てしまった拓海にそらは声をかけた。互いの家庭はおかしいとふてくされた拓海を見て、そらは「おかしいのは君だ」と言い切るのだった。
再び拓海は圭一に連絡をした。「どうして精子を提供したの?」という拓海の問いかけに、好きな人との間で子供を作れない苦悩から晴子が闇に堕ちていく様子を見ていられなかったと答えたのだった。家に帰りたくない拓海だが、親友の家にも行けず帰宅する。20歳になったら話そうと思っていたという彩に対して、「20歳になったら全てを受け入れられるのか?」と拓海は疑問をぶつけ、同じ空間にいることを避けるようになるのだった。
彩が職場でもらってきたスイカをそらの家に届けるよう頼まれた拓海。そらに一緒に食べようと誘われ家に上がった拓海は、自分の不安や不満をぶつけてしまった。親の影響で同性しか愛せないという拓海に、そらは試してみたら?と煽り立て二人はキスをするのだった。
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』の結末・ラスト(ネタバレ)
登校時裕之と会った拓海は、血の繋がりがない男性が娘と一緒にいることが不安ではないか?と尋ねた。きっぱりと「家族だから」と話す裕之。その会話を聞いていたそらは3人を本当の家族にしようと省吾の子供を産みたいと言い出すのだった。
拓海は晴子の反対を押し切り、家を出て圭一と暮らすことにした。偶然玄関先で目が合った拓海とそら。二人は裕之の車で遠くを目指す。その頃、両家の親たちは圭一の家を訪ねていた。「父親」として一緒に捜索しようとする圭一を突き放す彩。家族であるのは変わらないが、彩のプライドと無断で拓海に話したことが許せなかったのだ。
拓海とそらは家から離れた公園で親について話していた。性別なんてなければいいと言うそらに共感した拓海。どうしようもないと気づいた二人は家に戻ろうとする。そこへ駆けつけた両親たち。彩と省吾は拓海を責めたが、裕之は迷わずそらの元へ向かい頬を叩いた。裕之の冷静な言葉で、二家族は和解し一緒にスイカを食べるのだった。
晴子と彩、三人で朝食を共にした拓海は、進学について話題をふられ「二人の子供だから」と言い切る。その頃、そらはフリースクールに通うと宣言していた。両親と真っ向からぶつかり合った拓海とそらは、晴れ晴れとした表情で歩み出すのである。
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
決して多くはない、いびつな形の家族像を見た。ある程度一定の年齢になると、他人の家庭との違いに気付くことがある。それはいたって普通のことだ。しかし今作は、あからさまに違いが見えている中で触れられずにいたことが、二家族の交流を持ち爆発する。ちょっとした日常の言葉が気にかかり、変に自分に当てはめてしまうのは相当悩んでいるときだ。山崎賢人演ずる拓海の繊細な葛藤がとても丁寧に描かれた一作であった。(MIHOシネマ編集部)
ジェンダーレスな世界を描いているのかと思いきや、作中には様々なハラスメントが溢れていて非常に不快な気持ちになりました。
この作品が観客に伝えたかったことは一体何なのでしょう。同性のパートナーを持つカップルでも考え方は様々なんだと言うことを伝えたかったのなら、大成功だと思います。しかし、その描写が浅はかすぎてとても熟考されたものだとは思えません。
最後まで晴子の言動に理解ができず、明るさとデリカシーのなさは紙一重だなとまで思ってしまいました。
人にはあまりオススメしたくない作品です。(女性 30代)
ごく普通の家庭の風景に見えた二つの家族の物語が、実は一つの悲劇によって繋がっていると明かされたとき、背筋がゾッとした。娘の死を受け入れきれない父と、加害者家族となった少年の苦悩。何気ない日常のなかで抱える痛みが丁寧に描かれていて、特にラストの食卓シーンには涙が止まらなかった。静かな作品だけど心に刺さる。(30代 男性)
息子の加害行為を隠しながら生活する鈴木家の母親の視点に胸が詰まった。罪を背負った家族がそれでも日常を守ろうとする姿が切ない。佐藤家の父親が朝食を通して娘を忘れないようにしている描写もリアルで、家族のかたちを考えさせられた。結末に向けて両者が“食”を通じてすれ違いながら交差していく演出が秀逸だった。(40代 女性)
タイトルからは想像できなかった重いテーマに驚かされた。日常のなかにある痛みや葛藤を、過剰にドラマチックにせず描いているのが良い。佐藤家と鈴木家、どちらにも感情移入してしまい、どちらの正しさも分かるからこそ苦しい。ラストでの父親の無言の許しとも取れる態度が、何よりも強いメッセージに感じた。(20代 男性)
全体的に静かで淡々としたトーンなのに、観終わったあとに心がぐしゃぐしゃになるような感覚。家族の再生と赦しを描いた作品で、特に母親たちの表情が物語っていたことの多さに圧倒された。台詞よりも視線や沈黙で語られることの重さを久しぶりに感じた映画。食卓のシーンがすべてを物語っていたと思う。(50代 女性)
映画の途中で「この二つの家族は繋がっている」と気づいてからの展開に釘付けになった。加害者と被害者という立場を超えて、“家族”とは何かを問われる物語だった。特にラストの料理を通じた和解の兆しには、涙をこらえられなかった。過去の罪を消すことはできなくても、歩み寄ることはできる——そんな希望を感じさせた。(30代 男性)
母親として、鈴木家の母の立場が本当に苦しかった。わが子が罪を犯したという事実を抱えながら、普通に夕飯を作って、家を守っていかなければいけないなんて…。佐藤家の父の怒りや悲しみも理解できて、ただ誰も悪者にできない物語だった。あの静けさのなかに、叫びにも似た感情が詰まっている。(40代 女性)
人が人を赦すというのはこんなにも難しいのかと思い知らされた。物語を通して、加害者家族と被害者家族の両方の視点が描かれることで、一方的に責めることができなくなる。それでも、食卓という場が、沈黙を超えて人と人を繋げていく描写に救いがあった。タイトルが結末を象徴していたのがすごく良い。(20代 女性)
静かに進行する物語の中に、日常に潜む痛みや葛藤がリアルに描かれていた。冒頭の何気ない朝食と夕食のシーンが、ラストで重く響いてくる構成が見事。食べること、作ること、家族と向き合うこと——それらがどれほど大切で、同時に困難かを描いていた。余白が多いぶん、自分の心に問いかけられる映画だった。(50代 男性)
映画『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』を見た人におすすめの映画5選
そして父になる
この映画を一言で表すと?
血のつながりか、共に過ごした時間か…父性を揺さぶる名作ドラマ。
どんな話?
病院で取り違えられた子どもを6年間育てた二組の家族が、実の子どもとの再会をきっかけに葛藤し、親としてのあり方を問われる物語。是枝裕和監督が静かに深く描く、家族の再構築の物語。
ここがおすすめ!
『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』同様、家族を題材に“正しさ”の基準を問う作品。感情を抑えた演出のなかに滲み出る人間の弱さと優しさがあり、誰も悪人ではないという視点が共通している。
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
社会の隙間で静かに生き抜こうとする、子どもたちの実話ベースの衝撃作。
どんな話?
母に置き去りにされた4人の子どもたちが、支援もなく、誰にも知られずにアパートで暮らし続ける姿を描いた実話から着想を得た物語。長男が家族を守ろうとする姿に胸を打たれる。
ここがおすすめ!
“食卓”という日常の象徴がどれほど貴重なものかを強く実感させられる作品。日常が崩れても守ろうとする絆の姿勢が、『佐藤家〜』の世界観と深く重なる一作です。
歩いても 歩いても
この映画を一言で表すと?
何でもない夏の日に浮かぶ、家族のすれ違いと再生の物語。
どんな話?
亡き長男の命日に集まる家族たちが、表面上は和やかに見えても、それぞれが抱える思いを静かに露わにしていく。食卓を囲みながら展開する“言わない”ことで溢れる人間模様。
ここがおすすめ!
“家族とは何か”を問いかける姿勢が『佐藤家の朝食、鈴木家の夕食』と同質。食事や会話を通して表現される繊細な感情描写が心に残る。派手な展開はないが、深く沁みる一本。
万引き家族
この映画を一言で表すと?
“絆”の形はひとつじゃない。血縁を超えた“家族”の物語。
どんな話?
万引きで生活を繋ぐ家族のもとに、虐待されていた少女が加わることで、彼らの暮らしに変化が訪れる。やがて彼らの“本当の関係”が暴かれていく…。是枝裕和監督のカンヌ受賞作。
ここがおすすめ!
加害者/被害者という明確な区分を超えて、人は人を受け入れることができるのかを問いかける点で、『佐藤家〜』と共鳴するテーマ。静かな衝撃が心に深く残る秀作。
八日目の蝉
この映画を一言で表すと?
誘拐犯に育てられた少女が知る、母の想いと自分の存在。
どんな話?
不倫相手の子を妊娠・流産した女性が、その妻の娘を誘拐し、逃亡生活の中で“母”として少女を育てる。やがて少女は成長し、自らの出自と向き合うことになる…。
ここがおすすめ!
“罪を抱えた者”と“その罪に巻き込まれた者”が向き合う構図が、『佐藤家〜』と非常に近い。誰もが悪人ではない、でも正義でもない。そんな複雑な人間関係を丁寧に描いた良作です。
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