映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の概要:筋肉が徐々に衰える難病・筋ジストロフィーを患う実在の男性をモデルに、多くの人の手を借りながら自らの夢や欲に素直に生きた日々を描く。大泉洋を主演に迎え、前田哲監督が手がけた一作。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:前田哲
キャスト:大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人 etc
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の登場人物(キャスト)
- 鹿野靖明(大泉洋)
- 難病を患いながら家族に頼らず自立した生活を目標として生きる男性。わがままに見えて、ボランティアや家族のことを何より大事に想っている。たくさんの夢を持つ34歳。
- 安藤美咲(高畑充希)
- 恋人の医大生・田中が熱心に取り組むボランティア活動を覗きに行き、鹿野と出会う。わがまま放題に見える鹿野の本音や弱音を聞きどんどん惹かれていく。
- 田中久(三浦春馬)
- 大きな大学病院の医院長を務める父親を持つ医大生。医師という仕事に夢を抱いているが、鹿野のボランティアを介して少しずつ自信を無くしてしまう。美咲の恋人。
- 高村大助(萩原聖人)
- ベテランボランティアの男性。鹿野とは昔から友人で、仕事をしながらずっと寄り添っている。ボランティアのスケジュール管理などを請け負っている存在。
- 前木貴子(渡辺真起子)
- ベテランボランティアの女性。小さな娘を持ちながら、鹿野を支えている。はきはきとした女性で、美咲と鹿野の関係の変化を誰よりも見守っている存在。
- 野原博子(原田美枝子)
- 鹿野の主治医。頑固な鹿野の願いを受け入れながら、病気が悪化しすぎないように手助けをしている。凛とした、女医。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のあらすじ【起】
「今日は鹿野のハーレムデイ」そう呼ばれる日に美咲は初めて鹿野と会った。恋人の田中が明け暮れるボランティア活動を覗きに来たのだった。その日も泊まりのボランティアにキャンセルされ、田中は急遽代理の対応をすることになる。断り切れず美咲も一緒に一晩過ごすことになるが、深夜2時にバナナを食べたいという鹿野のわがままに唖然としていた。
鹿野は進行性筋ジストロフィーという難病を抱えている。20歳まで生きられないと診断された鹿野も34歳を迎えたが、手の指先と首から上しか自力では動かせず、何をするにもボランティアの手がないとままならないのだ。
鹿野のお気に入りとなってしまった美咲は、田中のシフトと同じ日にボランティアに入ることになる。しかし、人の手を借りながら生きているのに、横柄な態度を続ける鹿野に苛立った美咲は「そんなに偉いのか?」と怒鳴りつけ出ていってしまった。その夜も泊まりになった田中は、鹿野に代筆を頼まれ美咲に詫びの手紙を書いた。その手紙はデートの誘いでもあった。
田中に頼まれ美咲はバーベキューデートに出向いた。その日同席した田中は鹿野に結婚歴があることやたくさんの夢があることを初めて聞く。少しだけ鹿野を見る目が変わった美咲は、その日を境にボランティアに積極的に参加するようになった。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のあらすじ【承】
鹿野は拡張型心筋症も併発している。主治医の野原に入院を勧められるが、病院嫌いの鹿野はきっぱりと断る。これまでもボランティアの力を借りてやってきているのだから、大丈夫だと言い切るのだった。さらに鹿野は母親にも素っ気なく対応する。障害を持つ体に生んでしまったと後悔する母親を縛り付けないようにするための、鹿野なりの配慮であった。
障害者が生きやすい世界をテーマにした公演にパネラーとして登壇した鹿野。「英検2級を取って、アメリカに行く」という夢を同じ車椅子生活の若者の前でかかげ、ジョーク交じりに勇気付けるのだった。さらに鹿野はボランティアを集め、家族の手を借りずに生活できる状況をつくるまでの道のりは楽なものではなかったと語った。「人の手を借りる勇気」も必要だと正直に話し、会場に共感を呼ぶのだった。
田中とデートしていた美咲は両親と会ってほしいと言われ、「教育大生」ではなくフリーターであることを正直に打ち明けた。親の目を気にする田中は、許したい気持ちもあり揺らいでしまった。その姿を見た美咲は親には会えないと言い切り、その日以降ボランティアのシフトもずらすようになった。
相手が田中だとは伝えずに、鹿野に嘘をついてしまったことを相談した美咲。「嘘を本当にすればいい」と助言した。鹿野に感化された美咲は、初詣で「大学合格」を目標にすることを明かし、田中をハッとさせるのだった。なんとか力になろうと参考書をかき集めた田中だったが、鹿野が美咲に参考書をプレゼントしている様子を見かけ渡せずにいるのだった。
新しいボランティアを集めの声掛けにも美咲は積極的参加した。鹿野と過ごす時間が多くなっていく。アダルトビデオを見つけた美咲が、「これを見て何するの?」と聞くと、鹿野は病気と性欲は別だと正直に打ち明けた。その話の後、鹿野は美咲の手に触れ「普通の男なら抱き寄せるのに」と呟くと、美咲はそっと鹿野を抱き寄せてしまった。
少し気まずくなった美咲はボランティア休みがちになった。田中に美咲が来なくなるのではないかとこぼした鹿野は「もう少しでベッドインだった」と大げさに話すのだった。
美咲がボランティアを休んでしまった日、ベテランの貴子が代わりに残ることになった。しかし、子供の迎えがある貴子を気遣った鹿野は「少しなら大丈夫」と一人で過ごした。その矢先、バランスを崩してベッドから落ちてしまった鹿野。急いで戻った貴子に見つけてもらい病院に運ばれるのだった。
美咲も入院のことを聞きつけ急いで病院に向かう。自分の責任だと泣き出す美咲を見て、鹿野は「死ぬ前におっぱい触らせて」と冗談を言い、カラオケに行こうと約束をするのだった。しかし。鹿野の病状は思ったよりも悪く、呼吸器をつけるよう野原医師に説得された。呼吸器をつけるということは、声帯を切るため話すことができなくなる。絶対に嫌だと言い切る鹿野の姿を見た田中は、父親に頭を下げ大学病院でマスクを使用して酸素を吸入する治療をして欲しいと願い出た。田中のボランティア活動をあまりよく思っていない父親だったが、熱意に負けて自分の病院に受け入れてくれることになった。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のあらすじ【転】
慣れない機械を使った呼吸に戸惑う鹿野。さらに、英検の試験日に外出許可が下りず、田中に内緒で退院してしまった。自宅に戻った鹿野だったが、やはり調子が崩れ呼吸器をつける手術を受けることとなるのだった。
手術を受けると知り、鹿野の両親も駆けつけた。病気を知り1度は息子と死のうとした母親だったが、絶対に大丈夫だと信じ、手術の結果を待つ。機械に繋がれた鹿野は、久しぶりに両親に甘えるのだった。
声が出せなくなった鹿野の世話は、今まで以上の過酷な状況を作った。頼みたいことがある度にベルで知らせる鹿野。呼吸器を付けたことにより痰が詰まりやすくなるため、ボランティアは24時間傍に居なければならないのだ。交代制で鹿野を支える中、美咲が「呼吸器を付けた人が声を出せた実例」があったと情報を入手した。ボランティアの負担を考える鹿野はやってみたいと答え、その日から試行錯誤が始まる。
久しぶりに田中とゆっくり話す時間ができた美咲。医者を諦めたいと話す田中は、美咲を魅了する鹿野に嫉妬し「同情すればベッドインできるのか?」と聞いてしまった。「私が鹿野さんを好きになっちゃうこともある」と答えた美咲に何も言えず走って逃げてしまった田中。別れを覚悟した美咲は、鹿野の傍で泣き明かすのだった。
病院で朝を迎えた美咲。「おはよう」という声で目覚めた。それは鹿野の声である。なんと鹿野は声を出せるようになったのだ。大喜びの美咲はご褒美に鹿野の手を取り、自分の胸を触らせるのだった。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の結末・ラスト(ネタバレ)
退院したいという鹿野に、野原は猛反対する。しかし、医者や看護師が仕事終わり家に帰るのと同じく、自分も家に帰りたいと懇願した。痰吸引は医療従事者か家族しかできないというルールの中、ボランティアは自分の家族だと言い切った鹿野。粘る鹿野とボランティアの熱意に負け、野原は退院を許可した。
鹿野の退院を聞いた田中は、ボランティアを辞めたいと連絡した。医者として患者と向き合う自信を失った田中は、鹿野の生き生きとした姿に劣等感を抱く。退院パーティーの誘いも断り、その場を去るのだった。
退院パーティーではボランティアの人々に大いに感謝を伝えた鹿野。さらにサプライズで美咲にプロポーズするが、「夢を諦めた好きな人が忘れられない」と丁寧に断られてしまった。その後、徐々に寝ている時間が多くなる鹿野。野原からも「やりたいことを今のうちに」と助言を受けていた。
美咲と田中は行かなかったが、ボランティアをつれて鹿野は美瑛に旅行に行った。和気あいあいと過ごす中、鹿野が倒れてしまう。その連絡を受けた美咲と田中はすぐに駆け付ける。しかし、鹿野はケロッとした表情で二人を待っていた。それはプロポーズの時の美咲の返事を受け、二人の関係に気付いたのだ。朝方、鹿野と田中は腹を割って男同士の話をした。その姿を見た美咲も加わり、田中は医者をもう一度目指すと宣言する。美咲の大学受験も応援した鹿野は、朝日に向かって車いすを走らせるのだった。
7年後、鹿野は亡くなった。医師と小学校教員となった美咲は結婚し、空の上にいる鹿野に恥じないよう人生を謳歌している。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の感想・評価・レビュー
わがままに見えて皆に愛される要素の強い実在の人物を、見事に演じ切った大泉洋。他のキャストも実にナチュラルで適材適所の一作であった。ノンフィクションを原作に実写化した一作として「ブタがいた教室」が印象深い前田哲監督だが、今作もいい人間模様を切り取ってくれたと思う。身体は自由でも心が不自由だと感じている人が多い世の中に宛てたメッセージは、ポップな仕上がりからとても浸透しやすい。現実ではもっと山場もあったであろうが、綺麗にまとまった作品であった。(MIHOシネマ編集部)
あまり邦画は見ないのですが、その中でも感動しました。
実話を基に作成されたこともあり、演者のセリフや行動が深く作りあげた感じが一切ありませんでした。初めは貪欲でわがままな障がいを利用した質の悪い大泉洋の役柄かと思えば、次第に心の内が明らかになっていくにつれ、ちゃんと考えているんだ。自分なりに周りも理解して行動しているんだ。と心を動かされました。「自立」は障がいのない人がするのも苦労する。しかし障がいを持ってなお自立しようと奮闘する姿勢に周りの人は感化され勝手に人が寄ってくる。そんな人にいずれはなりたい。そう思える作品でした。(男性 20代)
予告編と本編の印象が全く違った今作。予告編では大泉洋演じるキャラクターがただわがまま放題しているようにしか見えず、イライラしましたが本編を見ると彼のキャラクターは非常に愛らしくて、周囲に明るさと元気をもたらしてくれました。
誰かに助けてもらわないと生きていけないのは、皆同じです。だからと言って、わがまま放題していては助けてくれる人も離れて行ってしまうでしょう。それを理解していて、思いやりや優しさを持ちつつ、わがままを言う主人公の姿は、他の作品では見たことの無いキャラクターでとても面白かったです。(女性 30代)
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