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映画『迫り来る嵐』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『迫り来る嵐』の概要:90年代後半、経済発展に向け中国社会が激変。これまで主流だった工場文化が廃れ人々は心の拠り所を失っていた。そんな中、小さな田舎町の国営製鉄所にて保安部の警備員の主人公は、連続殺人事件の捜査に刑事気取りでのめり込んでいく。

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映画『迫り来る嵐』の作品情報

迫り来る嵐

製作年:2017年
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:ドン・ユエ
キャスト:ドアン・イーホン、ジャン・イーイェン、トゥ・ユアン、チェン・ウェイ etc

映画『迫り来る嵐』の登場人物(キャスト)

ユィ・グオウェイ(ドアン・イーホン)
国営製鉄所保安部の警備員。ジャン警部と懇意にしていることから、事件の捜査にのめり込んでいく。眼力のある男性で強い正義感を持っている。公安局からは私立探偵と呼ばれ、いい気になっている面もある。
イェンズ(ジャン・イーイェン)
ユィの恋人。香港で美容師として働くことを夢見ている。黒髪で猫目の美しい女性で、現在は夜の仕事をしている。ユィの紹介で美容院を開店する。控え目でありながら、意思の強い女性。
ジャン警部(トゥ・ユアン)
定年を前にした老年の公安局警部。ユィと懇意にしており、一緒に飲む仲。常に落ち着いた様子で、長年培われた洞察力で連続殺人事件の捜査を行っている。情が深く静かな口調で道理を説く。
リゥ(チェン・ウェイ)
ユィの部下で舎弟。ユィを信奉し師匠と呼んで慕っている。ユィと共に事件の捜査を独自に行い、連続殺人事件の犯人と思われる人物を追跡するも、その過程で感電、転落し脳出血で亡くなる。気の好い青年。

映画『迫り来る嵐』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『迫り来る嵐』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『迫り来る嵐』のあらすじ【起】

1997年、中国の小さな町で若い女性の刺殺体が発見された。同様の手口で他にも1体の遺体が発見されていたことから、警察は連続殺人だと断定し捜査を継続。担当のジャン警部と懇意であった国営製鉄所保安部の警備員ユィ・グオウェイは、ただの警備員であるにも関わらず刑事気分で事件の捜査に首を突っ込み始める。

遺体の発見現場で怪しい男を見つけたユィは男を捕まえて話を聞いた。すると、男は仕事が夜勤であるため、日中は暇で殺人現場を見に来たと言う。更に殺された若い女性は、行員広場と呼ばれる場所では尻軽だと評判で、きっと相手の男を怒らせたから腹いせに殺されたのだと話すのだった。

行員広場とは集まった人々がダンスを楽しむ場所だが、金を払えば触らせてくれる女がいるらしい。その日の夜、行員広場で出会った女性から怪しい男が来ていたので、数日は広場に来ないようにしたという話を聞く。

製鉄所でも模範行員として授賞されるほどのユィは、行員達からも絶大な人気を得ている。仲間達からも公安局へ昇職するべきだと言われていたが、今の地位がいいのだと笑う。
その後、新たな被害者女性の遺体が発見され、ジャン警部からは立場をわきまえろと言われてしまう。それでも、諦めきれないユィは舎弟のリゥと新たな遺体発見現場の捜査を独自に行い、鍵束が落ちているのを見つける。

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映画『迫り来る嵐』のあらすじ【承】

恐らく犯人は行員の誰かではないかと思われ、ユィは鍵束の存在を公安に知らせもせず、その写真を工場の掲示板に貼り出し様子を窺うことにした。
工場の出入り口に張り込みをしてから3日目、掲示板に見入っている人物を発見したリゥとユィ。気付いた男が急に逃げ出したため、追いかけたが、リゥが電線を触ってしまい感電。幸い怪我はなかったが、しばらく動けそうになかったので1人で追いかけた。男は工場内を通って貨物列車方面へ逃走。反撃され姿を見失ってしまう。ただし、襲われた際に落としたと思われる靴と腐ったような匂いがしていたという手掛かりを入手した。

リゥを拾って帰る途中、彼から工場で発生した窃盗事件について明かされる。窃盗集団は行員を買収して製鉄所に侵入する経路やシフトの情報を得ていたらしく、リゥもそれに加担したと言う。彼はそのことを酷く反省し、意識を失ってしまう。急いで病院へ連れて行ったが、感電と転落のせいで脳出血を起こしすでに手遅れだと医師から告げられるのだった。

リゥが落ちた時にすぐ病院へ連れて行っていれば、助かったかもしれない。ユィにはイェンズという恋人がいたが、彼女の夢は香港で美容師になることで、現在その資金を貯めている途中だ。そんなある夜、イェンズの家を訪ねると彼女の左頬には殴られた痕があった。彼女から実家で撮影したという写真を貰う。美容師を目指すイェンズのため、ユィは引っ越すという理容院から店舗を譲ってもらった。

映画『迫り来る嵐』のあらすじ【転】

その後、新たな殺人事件の被害者が発生。若い人妻が刺殺される。その頃、ユィに紹介された店舗にて、イェンズが美容院を開店。
しかしそんなある日、製鉄所では大幅な人員削減が行われ、ユィもリストラされてしまう。朝に出勤すると名簿にて名前を呼ばれ、呼ばれなかった者はもう来なくていいと中にも入れてもらえなかった。ユィはイェンズにイヤリングをプレゼントし、彼女の元へと身を寄せることにする。2人で金を貯めて、町を出ようと話し合った。

一方、人妻殺人事件での犯人が殺された人妻の夫であることが判明。その頃、ユィはイェンズの店を見張れる食堂で日夜、犯人が現れるのを待っていた。彼女がこれまでの連続殺人被害者の女性とどこか似ていたからだ。ユィは恋人を囮にしたのである。怪しい男に目を付けた彼は男の身元を調べ、動向を探ることにした。

男の実家は刃物屋だったが、しばらく帰っていない様子。男は無職なのか仕事をしているでもなく、日がな一日ぶらぶらと町を歩き回っている。数日尾行した後、ユィはとうとう男と接触することにした。だが、男は何も言わず去ってしまう。

その様子を外から窺っていたイェンズ。ユィの様子がおかしいため、彼をこっそり尾行していた。彼女はユィが出掛けている間に荷物を探り、手帳に目を通す。その手帳には連続殺人事件を独自に捜査している様子が赤裸々に綴られていた。そして、手帳にはイェンズがあげた写真も挟まっている。彼女はユィが自分を囮として扱っていることを知ってしまう。

翌朝、ユィを呼び出したイェンズ。彼に真実を知ったことを明かした。すると、ユィは必ず守ると言うが、裏切りを易々と許せるほどイェンズは優しくない。彼女は別れを告げ、1人で町を出る決意を固めてしまった。

映画『迫り来る嵐』の結末・ラスト(ネタバレ)

そこで、ユィは雨が降る中、以前から目を付けていた男を捕縛し2人目の被害者女性が発見された原っぱへ。追い詰められたユィは、自分はやっていないと逃げる男を殴り倒してしまう。通行人がその様子を目撃し、公安へ通報。彼は逮捕されることになった。
ユィに殴られた男は重体だったが、事件には何の関与も見つからず容疑者候補から外されていた。ジャン警部はユィに連続殺人事件が解決間近であることを明かし、なぜ勝手な思い込みで暴行に及んだかを静かに問う。

すると、ユィは泣きながらイェンズと別れた時のことを思い出す。町を出ると彼女が告げたあの日、イェンズはユィに裏切られたショックで線路へと身投げしたのだ。

2008年、刑期を終え釈放されたユィ。彼が働いていた製鉄工場はすでに閉鎖され、商業施設が建設される予定となっていた。彼は世話になったジャン警部を訪ねることに。警部は2年前に脳梗塞で倒れ、施設に入所中だった。ユィはジャン警部が健全だった頃に書いたと思われる手紙を施設職員から受け取る。

手紙に目を通したユィは、封筒に入っていた新聞の切り抜きを手掛かりにある男性を訪ねた。ユィが犯人を追いかけ見失ったあの雨の日、犯人は逃走中通りかかったトラックに轢かれていた。男性は最初に犯人を轢いた人物だった。犯人は轢かれても起き上がって更に逃走しようとしたが、別の車に轢かれ死んでいた。

男性はその一部始終を全て目撃していたのである。犯人の遺体は血塗れで顔の判別もつかなかった。更に遺体の保管期限がきても、身寄りの者が誰1人現れなかったため、火葬されたと言う。その後、ジャン警部がやって来たらしい。

ユィはその後、閉鎖された製鉄所を訪れ長年働いていたという老爺と出会う。97年に模範行員として表彰されたことを話したが、老爺曰くその年に表彰された者はいないらしい。ユィは愕然としてその場を去り、製鉄所が爆破される様子を眺めそして、イェンズが身投げした場所を訪れた。彼は新たな身分証を手にやって来たバスに乗り込む。だが、バスの調子が悪くエンジンがかからない。その時、空からは白い雪がちらちらと降り始めるのだった。

2008年1月10日、中国南部に大寒波が襲来。影響は20省以上にも及び、多大なる被害と損害が出た。

映画『迫り来る嵐』の感想・評価・レビュー

東京国際映画祭にて最優秀男優賞、芸術貢献賞を授賞した作品。今作が監督ドン・ユエの長編デビュー作となる。監督自らが脚本を書いた作品でもあり、どこにでもいる人物が時代の性質次第でいかに影響を受けるかを描くことで、時代を剥き出しにし、社会の精神性みたいなものを浮き彫りにしたかったと語っている。

主人公は工場の警備員であるにも関わらず、連続殺人事件の捜査へのめり込んでいく。作中では序盤、彼が何者であるかも明かされず、刑事なのかと錯覚するほど。中盤で彼がただの警備員であることが分かるが、そうなるともう現実逃避をしているようにしか見えず、その執着がとても滑稽に思える。監督の目論見通りの作品に仕上がった、とても重厚な作品。(MIHOシネマ編集部)


本作は、連続殺人犯の捜査にのめり込んでいく田舎町の製鉄所の警備員の運命を描いた中国ヒューマンサスペンス作品。
1990年代の中国の時代性、貧困、田舎の閉塞感といった社会的な部分にフォーカスしていて、モノトーンの色調がマッチしていた。
また、現実と幻想の境が曖昧で非常に混乱した。
結局、自分が罪を犯してしまうという結末はとても後味が悪く、雨も止まないどんよりとした空気感がより一層絶望的な雰囲気を深めていて、どことなく韓国映画のような既視感を感じた。(女性 20代)


殺人事件よりも、事件に執着するユィ・グオウェイの方がだんだんと恐ろしく感じる作品だった。自分を慕ってくれていたリゥが亡くなった時点で立ち止まっていれば、まだ彼は全てを失うことはなかったのではないかと思う。ここまでユィを追い詰めたのは一体なんだったのか、彼の心情や考えていることがイマイチよく分からなかった。
事件がすっきり解決せず、モヤモヤっとした気持ちが残る結末だった。ラストを見て、今までのユィの行動に現実感がなくなった。悪い夢を見ていたかのような作品だった。(女性 30代)


雨や雪、暗すぎる描写がとても印象的な作品で、タイトルにある「嵐」とは一体なんの事、誰の事なのだろうと考えながら鑑賞しましたが、個人的には主人公のユィこそが嵐だったのではないかと思いました。
犯人を捕まえるなんてそんな単純なストーリーではないし、復讐ともなんとも言えない想像していなかった方向にストーリーが進んでいくのでハラハラはしましたが、とてもモヤモヤする気持ちの悪い展開でした。
手紙で事件の真相、全てを知ったユィ。それを見た観客は何を感じるのが正解なのだろうと考えてしまいました。(女性 30代)

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