映画『しあわせはどこにある』の概要:毎日を生きることに疲れた精神科医は、ある日ふと幸せが何か分からなくなる。彼は幸せを探す旅に出発。中国、アフリカ、ロスと旅をし様々な人々の幸せを記し続け、そしてとうとう、自分にとっての本当の幸せとは何かを見つけ出すのだった。
映画『しあわせはどこにある』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:ピーター・チェルソム
キャスト:サイモン・ペッグ、トニ・コレット、ロザムンド・パイク、ステラン・スカルスガルド etc
映画『しあわせはどこにある』の登場人物(キャスト)
- ヘクター(サイモン・ペグ)
- 精神科医。人生に疲れており、幸せが何かを見失う。本来は喜怒哀楽を素直に表せる人物。若干、空気が読めないところがあるも、日常生活に支障がない程度。
- クララ(ロザムンド・パイク)
- ヘクターの恋人。彼に求められるままの理想を叶えてきた、実はすごい女性。アグネスの存在に嫉妬していた。
- アグネス(トニ・コレット)
- ヘクターの大学時代の恋人で、現在は友人。ロス在住の心理学者。数学者の夫と2児の母で、3人目を妊娠中。
- エドワード(ステラン・スカルスガルド)
- 中国へ向かう航空機内で隣席だった男性。中国は上海にて、銀行家として成功を収めている。金で物を言わせるタイプ。
- ディエゴ(ジャン・レノ)
- アフリカの麻薬王。危険な面は多々あるも、妻と家族を大切にしている。
映画『しあわせはどこにある』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『しあわせはどこにある』のあらすじ【起】
昔、あるところにヘクターという精神科医がいた。彼の生活は恋人クララによって、理路整然と管理されており、毎日が同じルーティンで代わり映えのしないものだった。
仕事では患者の話をじっくり聞く上に、患者同士が決して顔を合わせないよう徹底して配慮した診察室のため、ヘクターの評判は良く街に出ればどこに行っても患者と出くわした。
クララの友人たちにも、人当たりが良いと評判の好人物だったヘクター。彼の趣味はラジコン飛行機を飛ばすことだったが、果たして共通の趣味を持った人々と友人かと言われれば、疑問である。
傍目から見れば、成功しているヘクターは十分に幸せであると言える。しかし毎日毎日、患者たちの愚痴や不安、不幸を聞き続ける生活を送ってきたヘクター。彼はふと、幸せとは何かが分からなくなる。
このままでは自分はダメになる。精神科医として、失格だと自覚したヘクター。彼は幼い頃から冒険をするのが夢だった。故に、旅に出ようと思い立つ。クララに話すと最初は渋っていたが、彼女は愛するヘクターのために理解を示し、やるなら徹底的にやっておいでと笑顔で送り出してくれるのだった。
ヘクターは意気揚々と飛行機へ。最初の目的地は中国。航空機内で荷物から日記帳を発見。白紙の日記帳は旅の思い出を記入して欲しいと、クララがプレゼントしてくれたものらしい。彼は早速、航空機内から記入を始める。隣席の客とのやり取りで、幸せは比較すると台無しになるらしいと分かった。
無事に中国へ到着。隣席の男性とは空港で別れる予定だったが、借りていたペンを返し忘れたヘクター。それがきっかけで、隣席の男性エドワードが好意で車に乗せてくれた。彼は幸せが何かを教えてくれると言うのだった。
映画『しあわせはどこにある』のあらすじ【承】
エドワードの案内で中国を観光。エドワードはやり手の銀行家で、今までがむしゃらに稼ぐうちに、幸せとは何かを忘れていたと言う。そうして、ヘクターを人気のクラブへ連れて行ってくれた。エドワード曰く、幸せとは金持ちになったり、偉くなることらしい。
クラブで豪遊したヘクターは、美しい中国人女性と知り合い、そのままホテルへ帰宅。一夜のバカンスを楽しもうとするも、女性がシャワーに入っている間、待ちきれずに眠ってしまう。何事もなく添い寝するだけで、朝を迎えたヘクター。女性とランチの約束をして別れた。
その日の昼に、待ち合わせしたヘクターだったが、女性はクラブで斡旋される高級娼婦だったらしく、クラブの支配人に強制的に連れ去られてしまう。時に幸せとは、すべてを知り過ぎないことである。ヘクターは1つ教訓を得た。
ヘクターは行く先々で写真を撮りつつ列車に乗車し、中国からチベットへ。雪山を越えて行く。チベットで僧と出会ったヘクター。彼から不幸を避けるのが、幸福の道ではないと教えられる。旅の終わりにもう一度ここへ訪れて、答えを知りたいと言う僧。山奥を再び訪れるのは大変だと言うヘクターだったが、僧はスカイプがあると事も無げに言うのだった。
寺院で保持するパソコンからクララにスカイプ。久々に彼女との会話を楽しむヘクター。浮気をしたわけではないが、心を動かされたのは確かなので、何と状況を報告して良いか詰まっている時、風が吹いてアンテナが倒れ通信が切れてしまう。山に風が吹いたと大喜びする僧たち。これは彼らが感じる幸せなのであって、ヘクターには共感できない幸せだった。
中国へ戻ったヘクター。エドワードと空港で別れ一路、アフリカへ。今にも落ちそうな飛行機内で、隣り合わせたアフリカ人女性と会話を楽しむ。彼女曰く、幸せとはこの男は自分の気持ちを上げるか、下げるかのどちらからしい。
何とか無事に空港へ到着。大学時代の友人が迎えに来てくれた。
映画『しあわせはどこにある』のあらすじ【転】
その日の夜、近くのバーを訪れたヘクター。そこで、麻薬王ディエゴと知り合う。この国は貧しく、国民は飢えて治安も悪い。物騒な国だった。ディエゴに何度も脅されつつ、幸せかを問うと、彼は家族が不幸だから自分も不幸だと言う。ディエゴの妻は精神科医に処方された薬を服薬し、症状が悪化したらしい。
翌朝、ディエゴが処方箋を持ってきたので、ヘクターは確認して投薬量について助言した。
その日は友人と共に診療所のお手伝い。友人にとって、この仕事は天職。幸せとは天職に就くことであった。友人曰く、自分が幸せに見えるのは、ありのままの姿で愛されているかららしい。
アフリカからスカイプでクララに連絡。だが、彼女はヘクターが見たことのない黒いドレスを着て、これから外出すると言う。通信はそこで途切れた。ヘクターは飛行機の隣席で知り合った、アフリカ人女性の自宅へ訪問し、大勢に囲まれて彼女自慢のサツマイモのシチューをご馳走になった。この国の国民は飢えており、治安も悪いが心は豊かである。
強かに酔ったヘクターはタクシーに乗車し、後部座席で一休み。だが、その間に車が強盗に遭う。目覚めたヘクターは、運転手と護衛が見知らぬ男達に代わっていることに気付き、ひと騒動。彼は見知らぬ館へと連れて来られた。恐怖は幸せを阻害する。
ヘクターは持ち物を奪われ牢獄へ。
捕縛されたヘクターは、ボスらしき男に審問される。銃で脅され本当の目的を問われるも、ヘクターは本当のことしか話していない。命の危機にありつつも、彼はボスに幸せを問うた。すると、男は欲しい物は奪えと言う。ヘクターは日記帳を返してもらうが、ペンがない。落ちていたペンは、ディエゴから借りたものだった。それがディエゴの友人であるという証明になり、ヘクターは無事に解放。幸せとは心底、生きている実感を味わうことだった。
アフリカ人女性の村へ無事に帰還したヘクターは、村人たちと共に無事を祝う。幸せとは盛大に祝うことだった。
後日、クララへスカイプするも、彼女は何やらピリピリした様子。ヘクターは意気消沈し、友人と別れて次の目的地であるロスへと向かった。ロスには大学時代に恋人だったアグネスが住んでいる。
だが、航空機内で問題が発生。脳腫瘍で苦しむ乗客の容態を看たヘクター。女性を自分の席へ移動。死の際にありつつも、女性は最後に妹と会うためにロスへ向かっているのだった。
映画『しあわせはどこにある』の結末・ラスト(ネタバレ)
飛行機は無事にロスへ到着。女性はこれから妹の住居へと搬送される。その別れ際、ヘクターは女性に感謝され、あなたは素晴らしい医師だと言われた。話を聞くことは愛を示すことだと言う。彼女とはそこで別れた。
思い出の海でアグネスと再会したヘクター。彼女はすでに2児の母で、3人目を妊娠中だった。アグネスの夫は数学者。ここの夫婦は仲が良く、円満な家庭を築いている。
夫婦仲を見ていて、ヘクターはクララとの関係を考え直し彼女に電話。クララはアグネスの存在を知っており嫉妬しているようだが、クララがヘクターに対して行ってきたことは、ただの世話だ。2人は口論となり、喧嘩してしまう。
ヘクターはアグネスにも幸せを問うた。すると、彼女は今が一番幸せだと答える。そんな彼女にヘクターは、もし自分とだったらと失言。その言葉にアグネスは怒りを顕わにし、ヘクターを叱りつける。理想と現実は違うのだと言い聞かせられた。過去は懐かしいが、戻ってはこない。これが現実である。
幸福論を研究する、著名な教授の講義に参加した2人。教授は脳科学から、幸福な状態を示す数値を導き出していた。その後、個人的に会い、脳波から幸福と恐怖、悲しみの数値を測定。
ヘクターは最近の記憶を思い出すも、数値が取れない。彼は再び挑戦し、幼い頃にまで記憶を遡った。ところが、そこでクララから電話がある。脳波装置をつけたまま、クララとの電話に出たヘクター。彼女は泣いていた。ヘクターは本心を語る。旅に出たのは、ただの口実で思いつき。本当は彼女に値する男になりたかったのに、そうなる自信がなかったのだ。
ヘクターはクララへの愛を再認識。恋人同士は仲直りに成功した。
チベットの僧が言っていた言葉を思い出す。幸せとは全て。生きる全てなのだと。
ヘクターはすぐさま帰路に着く。空港からスカイプでチベット僧に連絡した。人は誰でも幸せになる義務がある。それが、彼が学んだ幸せの正解だった。
帰宅してからのヘクターは、人が変わったように人生を謳歌。喜怒哀楽の感情をクララや患者たちと分け合う。そして、ヘクターはクララと結婚し幸せを堪能するのだった。
映画『しあわせはどこにある』の感想・評価・レビュー
面白かった!ロードムービーは元々好きだが、この映画はそれだけではない。
幸せとは何かを探す旅。サイモン・ペグはとても魅力的でキュートな役者さんだ。
途中で入るイラストや格言めいた一言も最高。
旅先で出会った人のペンを借りるというのも面白いし、おかげで命も助かった!
落ち込んだ時に何度でも観たくなる。
幸せについて考えてみるって素晴らしい事だな。
私は実際に旅に出ることはできないが、いつでもヒントを書けるように革の手帳を持ち歩きたくなった。(女性 40代)
主人公ヘクターが幸せを探求する、旅の物語です。幸せの鍵となるフレーズ1つ1つに、ユーモアや深味があり素敵です。「聞くことは愛すること」、個人的に大好きなフレーズです。場面転換で若干チープな演出がありますが、テーマが難しいため頭の中を1度リセット出来て良いと思います。
楽しさ・優しさ・怖さ・怒りなど、感情表現が豊かな作品です。ぜひ主人公に感情移入して観てもらいたい。自分なりの幸せのヒントが見つかるはずです。(男性 20代)
本作は、フランスの精神科医フランソワ・ルロールの原作を映画化したもの。
ロンドンに住む精神科医のヘクターが、様々なトラブルに見舞われながらも幸せを探すために世界に旅に出るというコメディー作品。
ヘクターは「幸せ」とは何か、旅で出会う人々に聞いてノートに綴っていくが、彼のイラストや小道具を駆使した演出が可愛くて素敵だった。
中でも「話を聞くことは愛を示すこと」というのがとても共感した。
そして、サイモン・ペックのほのぼのとした雰囲気に癒された。
全ての人には幸せになる義務がある。幸せについて考えさせられる作品。(女性 20代)
精神科医というのは、なかなか大変な仕事だなと思った。自分自身が疲れていると、幸せってなんだろうと疑問に思ってしまう気持ちは理解できる。ヘクターと一緒に冒険をしているような気分になり、なかなかおもしろい作品だった。「自分にとっての幸せとは一体何なのか?」を考えながら見ると、より楽しめると思う。恋人のクララの普段のさりげないサポートも凄いと思ったが、それだけでなくヘクターを旅に送り出した懐の深さが凄いと思った。(女性 30代)
サイモン・ペッグが主演ということで明るくて楽しい作品なのは間違いないだろうと安心してみることが出来ましたが、意外としっかりとしたストーリーで心に響くものがありました。
幸せの形は人それぞれで、自分にとっては幸せでも、ある人から見ればそれはつまらない日常のワンシーンかも知れません。しかし、幸せの形や価値観は自分で決めるものであって、誰かと合わせたり、誰かに導かれる必要は無いのだなと感じました。
意外な人物も登場するので最後まで目が離せません。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
①40代男の”幸せ探し旅”。男がいつまでも大人になれない理由
自分探しや幸せへの追求をテーマにした映画って、実は嫌いなんです!ただ、変人ちっくな精神科医ヘクターを演じるサイモン・ペッグのコミカルな演技が面白いんです。隣に座られたら、結構ウザイけど放っておけない友人になりそう。
幸せ探しの旅が、中途半端に気になる点がたくさんありました。中国からチベットへ行くのに、”山へ行く”という表現を使い、簡単に行けちゃうのは無理があります。高僧との対話をもっと深く描いて欲しかった。
またアフリカに行けば、ギャングに拉致され、大変な目に遭ってしまいます。世界中を旅しなくても、1つの国でも掘り下げて描けばもっと濃い話になったのではないでしょうか。
アフリカ編では、びっくりポン!な登場人物も出てきます。この登場人物がキーパーソンになるので注目して下さい。次にヘクターが帰国後、ロサンジェルスの旧友アグネスを訪ねるシーン。
”僕たちがもし、付き合っていたら?”と言って、アグネスに怒られるのだ。何気なく言った言葉だが、聞いている方は呆れてしまう。男は、過去の事を夢見る動物なのかもしれない。
適度に笑えて、現在の自分が幸せだと肯定できる、ハッピー・ムービーです!
②サイモン・ペッグ&ロザムンド・パイク、つかず離れずの迷コンビ!
2人は、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」でも共演した迷コンビです。この映画では、恋人以上夫婦未満の関係を演じています。「ゴーン・ガール」の妻役で、怖い印象が強いロザムンド・パイク。
いつ切れてもおかしくない行動にこの映画でもハラハラします。見どころは、ヘクターに言われた一言を誤解して、”別れたいの?”と詰め寄るシーン。切れられるのも怖いが泣かれるのも困りますね。
同棲中の恋人同士なら共感できるシーンがいっぱいあるのではないでしょうか。イギリス映画独特のドぎついギャグも満載ですが、最後にほんわかと温かい気持ちになれます。
またこの迷コンビが観たい!
劇中の名セリフに、”死を恐れる人は生を恐れる人”という言葉があります。死はどんな人でも避けられません。本当に大切なものは、シンプルで1番近くにあるものです!
この映画は、”幸せがどこかにあるのではなく、自分の足元にある”ことを気づかせてくれました。予定調和な物語なのに、イギリス独特のギャグで突き進む。それがまた心地よいのです。
サイモン・ペッグ&ロザムンド・パイクの迷コンビに笑って泣けます。ただ、ロザムンド・パイクが恋人役を演じていると、途中で豹変するんじゃないかという心配はあります。
この映画を観て、日々の幸せを再発見しましょう。また最近は、長く同棲生活を送る人も多いでしょう。ぜひ、恋人と一緒にご覧下さい。