映画『詩季織々』の概要:中国の生活の基盤である「衣・食・住・行」をモチーフに、3つの物語が描かれている。『陽だまりの朝食』では「食と行」が、『小さなファッションショー』では「衣」が、『上海恋』では「住と行」がテーマになっている。
映画『詩季織々』の作品情報
上映時間:74分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春、アニメ
監督:イシャオシン、竹内良貴、リ・ハオリン
キャスト:坂泰斗、伊瀬茉莉也、定岡小百合、寿美菜子 etc
映画『詩季織々』の登場人物(キャスト)
- シャオミン(青年:坂泰斗 / 幼少期:伊瀬茉莉也)
- 『陽だまりの朝食』の登場人物。北京に暮らしている。幼い頃、祖母と一緒に毎朝食べていた三鮮ビーフンがふるさとの味。
- イリン(寿美菜子)
- 『小さなファッションショー』の登場人物。トップモデル。両親は既に亡くなっており、ルルが唯一の家族、努力家。
- ルル(白石晴香)
- 『小さなファッションショー』の登場人物。イリンの妹。イリンに比べて大人しい性格。服飾の学校に通っている。姉のことを尊敬しながらも、無理しているのではないかと心配している。
- リモ(大塚剛央)
- 『上海恋』の登場人物。建築設計士。仕事が上手くいっていない。幼い頃、上海の石庫門に住んでいた。シャオユのことが好きだった。
- シャオユ(長谷川育美)
- 『上海恋』の登場人物。リモのことが好きだった。リモやパンとは違い、生粋の上海人ではない。
- パン(中務貴幸)
- 『上海恋』の登場人物。リモとシャオユの幼馴染。明るくおおらかな性格。
映画『詩季織々』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『詩季織々』のあらすじ【起】
『陽だまりの朝食』
北京では久しぶりに雨が降っていた。この街は人で溢れていたが、皆無表情で冷たい雰囲気を漂わせていた。そこに暮らすシャオミンも同じような感じだった。日々繰り返すように過ごし、心が荒んでいた。
シャオミンは季節が巡る度に、ふるさとで食べたビーフンの味を思い出していた。その中でもシャオミンに元気を与えたのは、季節の食材を乗せた三鮮ビーフンだった。湖南省で暮らす人々の朝は、熱い湯気が立ち上るビーフンを食べることから始まった。シャオミンも祖母が買ってくれた三鮮ビーフンを食べていた。両親が共働きだったため、朝一緒に食べてくれるのが祖母だった。
シャオミン達が買いに行っていたビーフン屋は、化学調味料を使わず夫婦2人だけで手間暇かけて美味しいビーフンを作っていた。その店の主人は以前北京でお抱え料理人だったことがあり、湖南省でトップクラスの調理の腕を持っていた。ある日、その店の女将と大将が、突然店を畳んで出て行った。順調な商売を妬まれて追い出されたという噂や、昔の顧客が北京に呼び戻したという噂が流れた。だが、本当のことは何も分からなかった。
中学生になったシャオミンは、学校の近くのビーフン屋に通っていた。祖母と食べていた店のビーフンとはまた違っていたが、熱々の具材が乗ったその店のビーフンも気に入っていた。だが、半分ぐらいは、ビーフンを食べる以外の目的があった。その店の前を通って通学する1つ上の先輩に恋をしており、彼女を見るために通っていたのだ。だが、シャオミンのそんな幸せな日々は、あっけなく終わりを迎えた。転職を考えていた旦那さんが女将さんを説得し、ビーフン屋から釣具屋に店を変えてしまったのだ。
ある日、学校で生徒達の喧嘩をし、殺傷事件が起きた。刺されたのは女将さんの息子だった。喧嘩の理由は分からず、その日から釣具屋は閉まったままになった。シャオミンは中学3年生になった。釣具屋はビーフン屋に戻り、旦那さんと息子が店を手伝うようになった。その一家は前より幸せそうに見えたが、シャオミンは初恋の終わりを自覚して悲しくなった。好きだった先輩が遠くの学校に進学してしまい、密かに見ることも叶わなくなったのだ。
映画『詩季織々』のあらすじ【承】
大人のシャオミンは、三鮮ビーフンを食べた。昔よりも値段が上がりトッピングが少なくなったそのビーフンに、懐かしさは感じなかった。食後、父から電話があり、シャオミンは久しぶりに故郷に戻った。シャオミンが見守る中、祖母が息を引き取った。脳裏には、ビーフンを渡してくれた優しい祖母の笑顔が思い浮かんだ。
『小さなファッションショー』
イリンは長身を生かし、モデルとして活躍していた。両親のお蔭なのでお礼を伝えたかったが、その前に両親は亡くなってしまっていた。イリンはいつも失ってから「大事なこと」に気づく女性だった。
服の流行・人の流れ・モデルの活躍、世界は凄いスピードで移り変わっていた。イリンは初めて雑誌に載ったとき、離れて暮らす妹のルルにも見てもらえたので喜んだ。しかし、現在はその感動を無くしつつあった。
イリンの誕生日、ルルはケーキを用意して姉に連絡を入れるが、一向に返信が返ってこなかった。その頃、イリンはルルの連絡に気づかず、仕事の関係者にパーティーを開いてもらい祝ってもらっていた。そのパーティーにイリンの恋人もやってくるが、恋人はイリンよりも若手モデルのシェイジンに興味を持っていた。イリンは不満を抱き、酒を飲んだ。
イリンは寝坊してしまい、慌ただしくオーディション会場に向かった。イリンは落選してしまい、シェイジンが受かった。イリンはシェイジンのことを気にして落ち込んでいる自分にウンザリしていた。しかも、苛々してルルに当たってしまう。
映画『詩季織々』のあらすじ【転】
両親が亡くなってから、ルルとイリンは別々の親戚の家に預けられていた。イリンはそこで辛い思いをしていた。イリンの推測に過ぎないが、ルルも似たような環境だったのは間違いなかった。そのため、周囲の反対を押し切ってルルを引き取ることを決めていた。イリンはモデルのキャリアも、ルルにとっての憧れの姉である自分も捨てられなかった。だから、無理な食事制限をし、運動を頑張って体を絞った。
イリンはファッションショーのランウェイを歩いている途中に倒れてしまう。しばらく休んでいる間に、イリンの居場所はなくなり、シェイジンが雑誌の表紙を飾ることになった。イリンはモデルの仕事を辞めることを考え、何気ない感じでルルに服飾のことを教えて欲しいと頼んだ。ルルは服飾の仕事を気軽に考えている姉に腹を立て怒った。イリンも反論し、ルルのために働こうと思っていると口にしてしまう。ルルは恩着せがましいイリンの言葉に腹を立て、家を飛び出した。
イリンはマネージャーに明日の16時にココに来て欲しいと、地図が書かれたメモを渡される。イリンは失敗することを恐れ、身動きが取れなくなっていた。だが、そのメモに「がんばれ、お姉ちゃん」とメッセージが書かれているのを見て、行く決心をする。メモの場所にはルルが待っていた。イリンはルルが作った服を着て舞台に立った。
学校を卒業したルルは、服作りの仕事を始めた。イリンは楽しんでモデルの仕事を行うようになった。そして、ルルが作った服をイリンが着て、2人だけの小さなファッションショーを開いていた。
映画『詩季織々』の結末・ラスト(ネタバレ)
『上海恋』
リモは仕事が上手くいかず苛々しており、両親との生活にも煩わしさを感じていた。そこで、突発的に1人暮らしすることを決める。リモは友人のパンに手伝ってもらいながら、荷物の整理を行った。その荷物の中に、幼馴染のシャオユが預けたカセットテープが入っていた。リモはそのテープの存在を知らなかったが、パンは知っていた。それは、リモが受験勉強を頑張っているときに、シャオユがパンに預け、パンがリモの母親に預けた物だった。
1999年夏。リモとシャオユとパンは幼い頃から仲が良かった。シャオユとリモは密かに思い合っていたが、きちんと告白することはなかった。ある日、シャオユが足を怪我してしまい、学校を休むことになった。リモはシャオユのために授業を録音することにした。シャオユは授業以外のことも吹き込んでくれと頼み、リモはシャオユが笑顔になるならと引き受けた。それから、2人はメッセージを吹き込んだカセットテープを交換するようになった。
リモは父親からの命令で、楊浦大付属高校を受験することになった。そこは、かなり頭のいい学校だった。しかも、現在の家からは通えず、引っ越すことが決まっていた。リモは父親の言いなりになっているシャオユに、勝手にしろと怒鳴ってしまう。だが、リモは楊浦大付属高校を受験することを決め、猛勉強を始めた。ただ、落ちたら恥ずかしかったので、シャオユには伝えなかった。
リモは楊浦大付属高校に合格したが、シャオユは落ちてしまっていた。しかも、受験に失敗したことを怒り、父が暴れてシャオユは入院していた。リモはシャオユと会話できないまま両親と共に引っ越しすることになった。リモがトラックの上で落ち込んでいると、シャオユが歩道橋の上から手を振っているのが見えた。2人は笑顔で手を振り合った。
2002年春。リモは祖父母の家に帰ったときにシャオユに会うが、離れている時間が長すぎて今更どんな会話をすればいいのか分からなかった。そうこうしている間に、シャオユは留学することを決め、アメリカに旅立ってしまう。
リモは上海の石庫門にある祖母の家に行った。石庫門は開発工事の途中で、祖母の家の前で解体工事がストップしていた。リモはその家で、引っ越しの荷物の中から出てきたカセットテープを聞いた。そこには、リモと離れたくないから楊浦大付属高校の受験を止めると言った、シャオユの声が入っていた。リモは泣きながらメッセージを聞いた。その後、リモは石庫門で、パンとモーテルを営んでいた。そのモーテルに美しい女性が訪ねてきた。リモはその女性を見た後、驚いた表情をした。そして、微笑んだ。
シャオユとリモとパンは仲良く空港にいた。そこには、イリンとルルの姿もあった。シャオミンは1人で飛行機を眺めた後、アナウンスを聞いて立ち上がった。
映画『詩季織々』の感想・評価・レビュー
日本の生活の基盤と言えば「衣・食・住」ですが、中国ではそこに「行」が含まれるそう。行とは日本で言う「交通」や「インフラ」に近い意味です。それを踏まえてこの作品を見ると、中国の社会情勢や生活を知らなくてもなるほどなと学びながら楽しめるのでは無いでしょうか。
3つのオムニバス作品が登場しますが私が一番好きだったのは食をテーマにした「陽だまりの朝食」。日本の朝食はご飯かパンで済ませてしまうことが多いですが、今作に登場したのは「三鮮ビーフン」これがとにかく美味しそうで、見ていてお腹が空いてしまいました。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー