映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の概要:うだつの上がらない人生に嫌気がさしていた中年男性たちが、男子シンクロで世界大会を目指し立ち上がる。実在するスウェーデンの男子シンクロチームをモデルに同じ目標に向かう日々を紡ぐ。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の作品情報
上映時間:122分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、青春
監督:ジル・ルルーシュ
キャスト:マチュー・アマルリック、ギヨーム・カネ、ブノワ・ポールヴールド、ジャン=ユーグ・アングラード etc
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の登場人物(キャスト)
- ベルトラン(マチュー・アマルリック)
- うつ病を患い家族に支えられながら生活している中年男性。妻と幼い娘と暮らしている。偶然見かけた男子シンクロチームのメンバー募集の広告に惹かれ、練習に参加することになる。
- ロラン(ギヨーム・カネ)
- 気性が荒く、自分の意見を曲げられない性格の男性。妻と息子との関係がうまくいかず、気付いた時には家を出ていってしまっていた。老人ホームにいる母親との関係にも頭を抱えている。
- マルキュス(ブノワ・ポールヴールド)
- 過去にも事業に失敗し続けていて、離婚を経験している。プール販売会社の社長であるが、資金繰りがうまくいかず倒産寸前まで追い込まれている。
- シモン(ジャン=ユーグ・アングラード)
- 25年間音楽活動を続けているが、陽の目を浴びずにくすぶっているミュージシャン。愛する娘も思春期を迎え、うだつの上がらない父親の姿に愛想を尽かしている。
- ティエリー(フィリップ・カトリーヌ)
- チーム一不器用で純粋な中年男性。どこにいても浮いてしまう存在。プールの用務員として働いているが、最新のシステムが導入されたことで戦力外とされてしまう。
- ジョン(フェリックス・モアティ)
- ロランの母親が入居している老人ホームで働く青年。老人たちの臭いが苦手で、いつも息を止めて仕事をしている。ロランに才能を見出され、チームの土台役としてスカウトを受ける。
- デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)
- 元シンクロ選手の女性。ベルトランたちのチームのコーチであったが、ある事情から精神的に立ち直ることが不可能となりチームを離れる。アルコール依存症とも向き合っている。
- アマンダ(レイラ・ベクティ)
- 水球チームのコーチ。元はデルフィーヌと同じチームでシンクロ選手として活躍していた。事故で車椅子が必要な体になってしまったが、スパルタ指導でベルトランたちのチームに指導を施す。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』のあらすじ【起】
朝食のシリアルと一緒に常備薬を服用するベルトラン。2年前からうつ病を患い、社会を遮断していた。優しく見守ってくれる妻・クレアは、面接に落ちても「まだ早かった」と慰めてくれる。そんなベルトランは娘の通うスイミングスクールで、男子シンクロチームのメンバー募集広告を見つける。
多少泳げる程度のベルトランだったが、チームに連絡し快く受け入れてもらうことができた。しかし、チームのメンバーは問題を抱えた人間ばかり。練習終わりにはサウナで不幸自慢が繰り広げられていた。
マルキュスはプールの販売を生業にしているが、需要は低く事業は倒産寸前である。シモンは25年以上ミュージシャンとして成功することを夢見ているが、主な仕事はビンゴ大会の余興だった。車上生活を送り、娘にも見放されている。
チーム1内気なティエリーは、プールの用務員として働いているが、どこにいても馬鹿にされてしまう。しかしベルトランにとってうつ病の自分を受け入れてくれる分け隔てない存在は貴重で、どこか居心地がよかった。
水球の試合のハーフタイム、チームは観客を前に公開演技を披露することになる。ベルトランはクレアと共に観客席で見守った。チームの演技に感動し、高ぶった感情を露わにするベルトラン。しかし、他の客やクレアはリアクションし難いレベルのパフォーマンスに戸惑いを見せるのだった。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』のあらすじ【承】
マルキュスは資金繰りに苦戦し、コーチのデルフィーヌに金を貸して欲しいと申し出ていた。そんなデルフィーヌはアルコール依存症に悩んでいる。元はシンクロ選手だったデルフィーヌだが、お酒を原因に全てを失ってしまった。しかし、シンクロチームと恋人の存在を支えに前を向き始めていたのだった。
気性の荒いロランは、妻と息子との関係に悩んでいた。ある日帰宅すると自宅は空っぽになっており、妻と連絡もつかなくなってしまう。
ティエリーは新たに導入されたシステムに仕事を奪われ、マルキュスは従業員に給料が払えなくなり、気が参ってしまう。ベルトランは家具販売店での仕事に就くことができたが、馴染むことができない。
うだつの上がらない日々に息が詰まる思いをしていたメンバー達。ある夜、ティエリーが男子シンクロの世界大会について情報を掴み、メンバー達を呼び寄せた。ロランは猛反対をするが、ベルトランは前向きに討論を重ねる。他のメンバーの総意を優先し、勢いで大会にエントリーするのだった。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』のあらすじ【転】
本格的な演技を目標に一致団結したシンクロチーム。しかし、コーチのデルフィーヌが恋人だと思っていた男性には妻子がいて、ストーカーのように扱われていることが発覚。チームメンバーの前で罵倒されたデルフィーヌは、ショックから再起不能となってしまった。
途方に暮れるメンバーを見兼ね、水球チームのコーチ・アマンダが指揮を執ることになった。車椅子が必要な体のアマンダだが、コーチングはとてもスパルタでメンバーは追い込まれていく。
必死に練習について行くメンバー達。しかし、2分以上潜水することができる「土台役」をこなす人員がいないことが発覚。さらにはチームで揃いの水着が必要となり、マルキュスにそそのかされたベルトランは万引き計画に加担。慌てふためいた結果、車をぶつけてしまう。マルキュス達も一緒に謝罪しようとクレアの元を訪ねるが、クレアは一蹴するのだった。
母親が入居する老人ホームに通っていたロラン。母親の状態は悪く、頭を抱えていると職員のジョンが話しかけてきた。ジョンは老人の臭いに耐え兼ねて、毎朝息を止めて仕事をしていると明かす。そこでロランは長く息を止められるジョンをシンクロチームの土台役にスカウトした。
ジョンが入ったことでチームが安定し、アマンダは指導にさらに熱を入れる。しかしメンバーは厳しすぎる指導について行けず、ロランはアマンダを車椅子ごとプールに突き落とした。この日、メンバーとアマンダは腹を割って話し合う。理解しあった後、アマンダは仕返しにメンバーを2時間サウナ室に閉じ込めるのだった。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の結末・ラスト(ネタバレ)
ティエリーは連日デルフィーヌの元を訪ねていた。熱意に負けたデルフィーヌはコーチとしてチームに舞い戻った。「チームに必要なのは対話」と説くデルフィーヌ。アマンダとデルフィーヌの指導は飴と鞭のバランスが整い、チームは一つにまとまり始めた。
メンバーはどんな時もシンクロのことで頭がいっぱいだった。以前よりも感情表現ができるようになったベルトランだが、クレアや周囲の理解は得られないままだった。世界大会当日も誰にも見送られることはなく、メンバーと合流する。
旅行気分のベルトランたち。シモンは長年、照明を担当してくれている仲間を連れてきていた。その頃クレアは近所の主婦に嫌味を言われていたが、ベルトランをかばうため冷静に相手を言い負かした。陰ながらベルトランを敬い応援していたのだった。
本番直前、ハイレベルな大会の様子にジョンは逃げ出そうとしてしまう。息子から声援をもらい覚悟が決まったロランは、ジョンに喝を入れる。
パフォーマンスが始まってしまえばあっという間だった。シモンの選曲と、照明の演出が見事に演技とマッチングし会場を魅了した。見事金メダルを掴んだメンバー達。ニュースになることはなかったが、世界大会の中継を見ていた家族や同僚たちはベルトランとチームメンバーの帰りを温かく迎え入れるのだった。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の感想・評価・レビュー
人生の分岐点は、何度でも訪れるのだと確信させてくれる一作であった。自分一人では立ち直れないような仄暗い時期も家族と仲間の支えがあれば、全く違う表情を引き出すことも可能だと物語っていた。登場人物たちの笑顔を初めて見るまでには、中々遠い道のりである。それまでに各々の背景をしっかりと見せてくれるため、物語に入り込みやすいのだ。フィールグッドコメディとして印象深い一作であった。(MIHOシネマ編集部)
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